本日はえー……UMP40セカンドライフ保障会立ち上げに際して、あー……こんなにも多くの方にお集まり頂きえー……誠に恐縮でございます。
うーんと、この会はDDにて失われた筈の機体UMP40が現世に再び舞い降りた事を祝いあー……彼女の二度目の生、うー……その幸福を保障するという志の元に集まったあー……人員による会でございます……らー……その……。なんて書いてあんだこの字……あっ、なるほど、現在もその……会員を募集中であり、みんなでUMP40の幸せを願い……幸せが続く事を祈り、その実現をーー
んあああ!!!
こんな原稿いらねぇ!!(バリバリザリバリィ
私は!私たちは40の二度目の生命を幸福に満たすんだよ!そのために頑張るんだ!!
幸せになれ 40!!二度目の生を謳歌しろ 40!!! 嫌と言っても絶対に幸福で満たしてやるかなぁあああ!!!
UMP40セカンドライフ名誉会長の創設記者会見(通称、盛大な放送事故)より抜粋した映像です。
会員は随時募集中であります。皆様も40の二度目の生を幸福で満たそうと思いませんか?会員は随時募集中であります!今なら創設者の一人、UMP45の直筆サイン色紙も貰えちゃいますよ!
UMP40セカンドライフ保障会をよろしくお願いしまーす!
「45!大変だよ!」
昼下がり、グリフィン基地にある戦術人形スプリングフィールドに運営が任されたカフェ施設で、一人の戦術人形が厨房にも聞こえるような大音量を発した。
自然と席を立ち、手をテーブルの上に乗せて、鼻息荒く興奮した面持ちを隠せないのはUMP40。様々偶然と奇跡が重なって、この基地に着任することになった戦術人形。
彼女の星を浮かばせた瞳に映るのは、彼女の姉妹であるUMP45。ブラウンの瞳を瞼で覆って、呆れたようにため息を吐いている。
「はいはい。取り敢えず座って、後、ボリューム下げて」
「あっ、ごめん」
45に指摘されて苦笑を浮かべて40は席に着く。
席に着いた40を一瞥する45。組んでた腕を解いて頬杖をつくと、どこか疲れたように息を吐く。
一見辛辣に見える態度を45が実の姉妹分である40に取っているのには理由がある。
こういう風に40が言い寄ってくる時は、大抵が40の思いつきで発せられるロクでもないことか、しょーもないこと、或いはどうでもいいようなことばかりなのだ。
最初こそは、慣れてない事と彼女のお茶目さを忘れかけてたとことと甘く見てたことが災いして、無駄にオーバーなリアクションを披露していたが、今はもう完全に慣れてしまった。
どうせ、また、その三つに分類される何かだろう。とは、思っても、45にとってかけがえない。本当に掛け替えのない、代わりなどいない大切な存在が話すしてくれることなのだ。彼女に甘いという自覚はあるが、心の内では楽しみにしながら、45は聞いている。
「で、言いたいことはなんだったの?」
「大変だよ45!あたい、気づいちゃったんだよ!」
大変だと彼女がいうくらいなのだから、本当に大変なのだろう。一体何に気づいたのだろうか?パフェに乗ったプリンにスプーンを差し込みながら、45は横目で胸を張って次の一言を発しようとする40を見つめる。
「あたいね、指揮官に惚れられてるみたい!」
「…………………はっ?」
指揮官に惚れられている?その言葉が理解できず、45は思わず呆けたような声を出す。
指揮官に惚れられている?40が指揮官に惚れてる、と言うのならわかるが、惚れられているとは……?
40は指揮官に惚れられてるという心当たりを思い出してか、ぽっと頬を桜色に染めて小麦色の両手を当てている。
「なんで、そういう風に思ったのよ?」
45の口から頭脳部に溜め込んだ質問が排出される。
先程述べたように、惚れたならわかるが、惚れられたとなるとわからない。
45から出た疑問に、40はふふんと鼻を鳴らすと、頬を緩ませながら答える。
「だって、食堂では近くの席に座ってくれるし」
それは、この基地に入って日が浅い40を指揮官が気にかけてるからであり、良くも悪くも指揮官は誰にでもやる。
が、45は敢えて口に出さない。そうした方が面白いからと言う悪戯心で無く、その発言を嬉しそうにする40に真実を伝えるのは酷であると判断したから。
「訓練を終えたら凄く褒めてくれるし」
確かにこの基地の指揮官はよく褒める。それは、確かに実力をつけたと言う自信を持ってもらう為だと言うのを45はよく知っている。そして、それは誰にでもやることも。
が、45は口に出すことはしない。真実とは時に残酷なものであるからだ。
「この前、挨拶のつもりで頬っぺたにキスしてみたら、指揮官も返してくれたし」
頬を両手に当てたまま気恥ずかしそうに顔を振る40。何とも乙女チックな仕草だろうか。
もうお分りかもしれないが、そういうことをあの指揮官は誰にでもやーー待て、そんな場面見たことない。と言うか、そういうことは45でもしたことはない。
あざとい、流石40あざとい。
だが、そんな事は口に出すことは45は口に出すことはしない。40の緩み切った表情を見ればそう言うことは余計な一言であることくらい、誰にだってわかることだ。
ちょっと羨ましく思って、机の下で手のひらを握りしめたりなんてしてない。
UMP45は特殊部隊『404小隊』の隊長なのだ。いくらこの基地の指揮官の情に惹かれたからと言ってこの程度の事で揺らいだりはしない。彼女の名を冠する銃の祖国の人だって言っていた。『ドイツ軍人は狼狽えない』と。だから45も狼狽えない。彼女の手に持ったティーカップが揺れて、中に入っていたコーヒーが溢れてなんかいない。
40の話を『ふーん』と言った様子で、興味なさげに聞き流していた45であるが、流石に今の40の発言にはかなり思うところがあったのは、もうお分かりだろう。
が、自分の世界にトリップしてる40には、45の気持ちを汲み取る余剰領域は無かったようだ。彼女は相変わらず頬を染めて、記録の中に旅立っている。
「あっ……!」
が、トリップしていたはずの40が突如として正気を取り戻した。
「なに?」
唐突にあげた大きな声に、45も吹き出していた感情を抑えることに成功して、40に問いかける。
「指揮官が呼んでる気がする!」
やはり、40の行動と発言は45の数歩先を言っている。全く予想出来ない言葉が彼女の口から出てきたのだ。
これには45も唖然。開いた口が塞がらないと言った感じでポカンとよく磨かれた白い歯と桃色の舌を露わにした。
45の記録が確かなら、確かにこの時刻に指揮官がやっている会議が終わるのだ。40はそのことを知っていたのか、或いはメンタルモデルの中にある『オトメゴコロ』から出力された勘の様なものなのか。その答えを知るのは目の前の40のみだ。
「じゃあ、あたいは行ってくるから!」
40は親指を立てて45にウィンクをすると、勘定を机に置いて、スキップをしながらカフェから出て行った。
嵐のような激しい印象を45に植え付けて去って行った40。唯一わかるのは、40が置いて行った勘定は彼女の頼んだ分だけで無く、45の分の勘定を入れてもまだ余ると言うくらい。
話を聞いてもらったお礼と言うことだろうか。抜け目ない。流石40抜け目ない、と45は思ったが、その言葉を伝える相手はもういない。
「はぁ……」
45は疲れた様に息を吐く。が、その仕草には合わず45は小さく頬をあげて笑みを浮かべていた。
UMP40の生涯。それはUMP45のために捧げられたものであった。 45を破滅の運命から救うために自分の全てを投げ出して、最後には40が居なくても生きれる様に諭して送り出して。
それが彼女の1回目の生。 自分の全てを犠牲にして、 45を救い出した人生。
でも、今の彼女はどうだろうか?45と指揮官の奔走と重なり合った奇跡によって、40が得れた二度目の生はどんな感じなのだろうか?
それは、先程見てもらった通り。
誰かのためでは無く、自分のために、自分の好きなように生きる道。
45から見ても、自由奔放な彼女らしい生き方。
そうやって誰かのためにでは無く、自分のため、いや、自分の好きなように生きている今を見て、45は胸に暖かさを募らせる。
そして、同時に40は40だと、45に意識させてくれる。彼女は昔と変わらず45の度肝を抜いてくる。
40の話は、最初こそはどう聞いても40が指揮官に惚れてるだけだと思ったが、もしかしたら指揮官も40のことを、と 45を焦らせるには十分であった。
45と40は姉妹機であるが、あまり似てないと言う自負があった。まさか、同じ相手を意識することによって姉妹機であることを再認識することになるとは思わなかった。
「はぁ……全く……」
ーーやられっぱなしは、今の私の性に合わないわ
そう言いたげな45の表情は、強力なライバルの出現に焦りを覚えながらも、40がライバルとなったことを喜んでいる様にも見える。
彼女の抱えている苦悩。深く根の張る筈のそれは、何故か彼女の中では、自分らしく生きる40の姿を見て幸福なものである分類されていた。
数日後、
「45、大変だよ!」
「なぁに40?」
「あたい、指揮官に惚れてるみたいだよ!」
「……はぁ」
45の幸せな苦悩は暫く続く事になりそうだ。
読んだ方は強制入会です。
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