長ソファに座って、長時間PCとにらめっこするあなた。メールの確認に表の作成、支出の計算の打ち込みと、提出された申請の承認。ずっとずっと、画面から目が離せない状態。
目をこすったり、周囲を揉んだり、何度も何度も瞬きをしたり……。あなたの眼球は酷使をされて悲鳴をあげています。
あと少し、あと少しで休みをとるから、終わるから。自分を誤魔化し、騙し騙し作業を続行してます。
その甲斐あってか、計算の打ち込みは終わり。だけど、何度あくびをして目を擦ったかわかりません。お仕事だって、まだまだ残ってます。休憩なんて、とる暇がありません。
ため息をつきつつマグカップに手をかけます。が、先程まで飲んでたコーヒーがなくなってる事に気がつきました。
……仕方ない。
座ってた為に凝り固まって悲鳴をあげる筋肉を伸ばして立ち上がります。
コーヒーを淹れたら、すぐに作業を再開しないと……。
仕事に追われて悲観的に、迫られるように終わらせることを目標に、無理矢理垂直に伸ばした脚を動かそうとすると、
「よっと!」
背後からを肩を掴まれて強い力に引かれて、ソファに寝そべる形になりました。先程まで壁と平行の関係になってたのに、今は天井と平行に。驚愕と困惑に体を強張らせていると、自分の顔にかかる灰色の髪と、呆れたように笑う二つの星。
「ダメだよ指揮官。ちゃんと休まないと」
頭側から顔を覗いてきたのはUMP40。 404小隊に所属するUMP45とUMP9の姉妹機に当たる戦術人形。
40が何故ここに?いや、いつの間に居たのか?それとも自分が気づいてなかったのか?様々な疑問が頭の中を瞬時に過ぎりますが、今は仕事を続行するのが優先だ。プログラム通りに動くロボットよりロボットな単純思考で、あなたはまた立ち上がろうとします。
「あっ!だからダメだって!」
しかし、40は立つことを許してくれません。頬を膨らませながら、肩に手を置いて動きを封じられてしまいます。
人間は肩を押さえられると起き上がることが出来なくなります。それを40も理解してるからこその対処でしょう。
それでも首から下に力を入れて立ち上がろうとしてみますが、頬を膨らませて対抗する40の力には敵うはずもなく、諦めた様に力を抜きます。40が起こしてくれないのを、脳の奥底から理解したからです。
抵抗が弱まったのを感じて、40も肩に置いた手の力を抜き、膨らませてた頬を萎ませると、ふぅと一息をついて微笑みます。
「うん。休もうよ指揮官」
40がソファに座りなおした勢いで体が弾んで、ソファと頭の間に隙間が出来ます。その隙間に手を入れて40は頭を持ち上げると、彼女の腿の上に乗せて来ます。所謂、膝枕の体勢です。
40は髪の毛に手を置くとそのまま髪質を確かめるような優しい手つきで撫ぜ上げます。疲れ果てささくれ立った心を癒すような穏やかな撫で方と彼女の温かい手は、指揮官の体の隅々にまで彼女の試合を伝えるかのようです。
「お疲れ様、指揮官」
労うように微笑みかけてくれる40。彼女の笑顔と優しい手つきに安心感を覚えて、今まで押さえつけていた倦怠感が体から吹き出してしまいます。
無理もありません。1日大した休憩も取らずに働き続けた結果です。安らぎを得て、押さえつけていた疲労感を意識することになってしまったのです。
特に、ずっと画面を見ていたからか、眼球はまるで針に刺されたかのような鋭い痛みを発します。
その痛みを誤魔化すために目を擦ります。ゴシゴシと強く、他の痛みで上書きするように。
しかし、その手は40に掴まれて目を擦るのを阻まれてしまいます。
何をするのだと抗議の視線を送ると、40はニッと口元を持ち上げると、
「はいっ!」
彼女の手によって目元が覆われてしまいました。彼女の柔らかな手はお湯に浸かる時のような程よい温かさを発しています。その心地よさに思わず、ほぅっ、と息を漏らしてしまいます。どうやら彼女は、体温を操作して程よい温かさを提供してくれているようです。
「あたい特製、ホットアイマスクだよ!」
自分で言ってて気恥ずかしかったのか、思わず語尾が跳ね上がっています。そんな彼女が愛らしくて、思わず口元を緩めてしまうのも仕方なのないことでしょう。
40特製のホットアイマスクの効果は絶大です。目の周りを温められたことにより、体中がポカポカと温まって、力が自然と抜けたリラックス状態に。それに、先程まであんなに意識せざるを得なかった目の痛みもすっかりと無くなっています。
「どう?どうかな?」
自信と期待、それとほんの少しだけ不安を声に乗せて加減を聞く40。
答えはもう決まったようなものでしょう。脳に命令を送り、言葉にして出す前に、体は反射的に動いて頷いてました。
「はあ……やったー!」
40は声を弾ませて喜んでいます。彼女の元気が伝染したように、思わず笑ってしまうのは自然の事だと言えるでしょう。
目元を温められてリラックスした状態と、溜まっていた疲労感を意識してしまったせいか、酷い眠気が襲って来ます。
でも、自分には仕事が、そう長くは休めない。そんな風に葛藤してると、目元を覆っていた手に隙間が開き、彼女の顔が疲れた瞳に投射されました。
雲の隙間から漏れる太陽光の様に、彼女は明るく朗らかで、至福を与えてくれる様な微笑みを向けてくれていたのです。
「いいんだよ、寝ちゃっても。あたいも、手伝ってあげるから」
胸を張って微笑む40。その堂々とした様相に、笑みを返してあげます。
40が再び指の隙間を埋めます。眠りに向かう意識を妨げない様に。
40がもたらしてくれた闇に埋もれていく視界。光が差し込む隙間が無くなる寸前、優しい闇をもたらしてくれた彼女にありがとうと一言を伝えます。
「いいんだよ。おやすみ、指揮官」
慈しむ様な優しい声に送り出され、意識は優しくて温かい闇の中に溶けていくのでした。
因みにホットハンドアイマスク編とか言ってますが、他のは思い浮かんでません。誰かアイディアください(切実)