ごちゃまぜドルフロ短編集   作:なぁのいも

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RPK-16にボイスが実装された頃に書いたお話です。



『RPK-16』今日も俺はRPK-16に勝てそうにない

 どこに惹かれたなんて正直な話答えられそうに無い。

 

 ――指揮官様

 

 抑揚を感じさせないどこか涼やかに感じる彼女の声音?

 

 ――指揮官様、どうしましたか?不意打ちを食らった鉄血みたいな顔をして。

 

 瞳に色が籠もってないのに、豊かに変わる彼女の口元?難解な彼女の例え?

 

 ――指揮官様。ふふ、なんでもないですよ。

 

 それとも、もっと別の何か?

 

 ――指揮官様。

 

 わからない。オレには全くわからない。何故、ここまで彼女に惹かれたのか。

 

 ――指揮官様。

 

 何故、彼女の微笑みがこうも胸を高鳴らせるのか。

 

 ――指揮官様。

 

 わからない。本当にわけもわからず、彼女に惹かれ続けている。

 

 ――指揮官様

 

 だから、だから、オレは――

 

 

 

 

「あなたか私、どちらが炎と蛾なのでしょう。もう少し特別な関係になってくださいね、指揮官様」

 

 そんな不思議な返事で、オレからの誓約の申し出はRPK-16に受け入れられた。

 

 視線を奪われて、聴覚を支配されて、心を埋め尽くしてきた彼女に、指揮官であるオレは彼女に誓約を申し込んだ。

 

 どんなに考えても、答えは出ない。

 

 だからオレは、RPK-16と誓約した。

 

 

 

 RPK-16と誓約してから数日が経った。

 

 オレの気持ちに答えは出てないが、誓約という判断は間違っていなかっただろう。

 

 いや、いい加減認める。オレはRPK-16が、人形、部下という垣根を越えてRPK-16という『存在』が好きだと言うことがよくわかった。

 

 彼女の声が好き。難解なたとえ話を自慢げに言う彼女も好き。時折発する心臓に悪い冗談も好き。

 

 振り返ってみると、オレの気持ちは彼女へとベクトルを向けられた好意で溢れていた。

 

 そんな気持ちに気がついたオレはどうなったか?どこぞの女性を見かけたらナンパをしまくる国の人間のように情熱的になったのか?

 

 答えはノーだ。

 

 オレ自身の気持ちに決着がついて落ち着きはしたが、特別な変化はない。

 

 自分で自分を顧みても大きな変化と言えるモノは存在しない。

 

 踏み込んだスキンシップは増えたが、それだけだ。

 

 だが、RPK-16はどうだ?

 

 彼女は

 

「うふふ♪」

 

 変わった。

 

 何が変わったか?それは簡単だ。

 

 彼女はオレにベッタリとなった。

 

 今オレとRPK-16は一日の訓練を設定するために訓練所に向かっているのだが、彼女はオレの腕に身体を巻き付けるようにして抱きしめている。ご丁寧に手の方はオレとRPK-16の指を絡ませてしっかりと結合されている。

 

 RPK-16はスタイルがいいから、彼女の豊かな胸部がオレに押しつけられる形になっている。最初こそは唐突にこんなコトされたからどぎまぎとしていたし、その度に「かわいいですよ」なんてからかって来たものだ。

 

 が、今はある程度日にちは経ったし、この行為も何度もしてきた。良くも悪くも今は馴れてしまった。反応が薄くなったオレに「残念。指揮官様は毒への耐性をつけてしまったのですね」なんて拗ねられたものだが。

 

 けど、彼女はオレの反応を主目的としてこの行為をしていた訳では無い。

 

「指揮官様」

 

 彼女がオレのことを呼ぶ。オレはそれに応えるように彼女に視線を預ける。

 

 彼女は口元を緩めて満足すると、また前を向いて一緒に歩き出す。オレの手を握る力と、オレの腕を抱きしめる力を強めて。

 

 ここ数日で気づいた。

 

 彼女は、心を許した人物の傍に常に居たがるのだ。ソーシャルディスタンスなんて気にしないと言わんばかりに、物理的に隙間を埋めて。

 

 そんな彼女が愛おしくて、オレは彼女の手を強く握り返した。

 

 

 

 

 誓約してから気づいたことがもう一つある。

 

 正直に言うと、誓約してから彼女の態度が想像の斜め上に変わりすぎてて脳の処理が追いついて無い。

 

 ただ、確実に気づいて驚いたことを言わせて欲しい。

 

 今度は執務室。執務室なんて言ってるが、オレの作業用のデスクのある部屋だ。仰々しくて絢爛な部屋なんかじゃ無い。

 

 そのソファ席にオレとRPK-16は隣り合う形で座っている。ここも大きな違いの一つ。

 

 誓約する前なら隣同士のデスクでお互いの作業をやるだけだったが今はこのようになっている。これも彼女からの要望に押し切られる形だ。

 

 ヘリアンさんや他の職員達の目が怖いが、RPK-16のために我慢することに決めた。オレもこうしてるのは悪くないし、不思議と仕事の効率は上がった気がした。

 

 RPK-16は優秀だから、書類作成は人間より正確で尚且つ早い。デスクが隣だった時は、もしかしてオレに合わせてペースダウンして作業していたのではと勘ぐってしまう。

 

 オレより仕事を早く終えたRPK-16はオレの肩に頭を預けている。オレのミスを見つけては指摘したり、改善の提案をしてくれたり。

 

 同じモノを二人で見てるから、すぐに間違いも修正できる。それが横並びの利点。

 

 時折寝息が聞こえるから彼女の顔を覗き込もうとすると、彼女は『ひっかかりましたね』と言わんばかりに自慢げに微笑んでたりする。

 

 作戦の時はこういった露骨な罠には引っかからないのに、RPK-16が仕掛けると簡単に引っかかってしまう。

 

「ダメですよ指揮官。そんなんでは食虫植物に捕食されるハエと同じです」

 

 なんて、意地悪な笑みと共にダメ出しを食らう。

 

 参ったな……。なんて返しに困ってると、職員の誰かが強めにエンターキーを叩く音で現実に戻されて、活を入れ直す。

 

 そんな風に右往左往するオレの姿を見てRPK-16はまた笑う。

 

 どうやっても、オレは彼女の術中からは逃れられないようだ。

 

 ……すまない。無駄話が長くなった。

 

 でも、ここからがオレの言いたいことが出てくる状況になる……筈……。

 

 仕事はすっかり長引き、部屋に残ってるのはオレとRPK-16だけになってしまった。

 

 そんなオレ達、と言うよりもオレは仕事をなんとか終わり、ノートPCの電源をOFFにした。

 

 仕事が終わり、ふうと一息を付く。

 

 吐き出した吐息と共に緊張感から解放され、身体は脱力してソファーに沈んでいく。

 

「指揮官様」

 

 鈴の音の様な凜と済ました声色。

 

 RPK-16がソファに沈むオレの身体を留まらせる。オレの身体を抱きしめる形で。

 

「お疲れー」

 

 気の抜けた声で、オレはRPK-16に礼を言う。彼女の背中をぽんぽんと叩きながら。彼女の仕事はとうの昔に終わっていた。先に帰っても誰も文句は言わなかった。

 

 でも、彼女は残ってくれた。

 

 ああ、うん。言われなくてもわかってる。彼女はオレにべったりだ。オレと一緒にいたかった事くらい、よくわかってる。

 

「はい、お疲れ様でした」

 

 オレの労いに同じく労いで返してくれるRPK-16。彼女の声色は若干あがっていて、喜色に満ちてるのがわかる。表情も多分緩んでいる事だろう。彼女は、以外と感情豊かなのだ。

 

 そのまま動くことも、かといって離れようとすることも無いオレとRPK-16。

 

 お互いの温もりを分かち合うこの時間は疲れた身体を少しずつ癒やしてくれる。

 

 RPK-16の息づかいがよく聞こえる。あ、鼻を鳴らしてる。匂いを嗅いでるな。変な匂いはしないと思うが少し恥ずかしい。

 

「ふふっ」

 

 匂いを嗅ぐのにも満足した彼女は、体重を全てオレに預けてくる。オレの身体は彼女の体重を支えきれず、ソファに仰向けで倒される形となる。

 

 ソファに身体が沈む寸前にRPK-16の頭を胸に抱え込む。怪我なんてするはず無いのに、ついついやってしまうのは、動物としての本能だろうか?

 

 ソファに二人で倒れ込む。RPK-16はオレの胸に顔をぐりぐりと愛玩動物が甘えるように押しつける。

 

 その姿は誰もがこういうことだろう。愛らしい、と。

 

 RPK-16の気が済むまで頭を撫でていると、彼女は顔を上げて、オレに目を合わせてきた。

 

「指揮官さま」

 

 甘えるような、少しだけ不安感を滲ませた、オレだけに向けてくれる声の音階。

 

 違う。オレのうぬぼれで無ければ、オレだけが今の声に不安を忍ばせている事がわかる。

 

 少しだけ、本当に少しだけ震えた声で、RPK-16はオレに問う。

 

「私達の関係は、どのようなものですか?」

 

 と。

 

 これが気づいたこと。

 

 RPK-16は案外心配性だと言うこと。

 

 オレはRPK-16に指輪を贈った。オレなりの誠意と愛を込めて。

 

 でも、彼女は指輪だけでは信じられないのだ。

 

 彼女は指輪をこう表現した。

 

「お互いの信頼があるのなら、こんなもので縛らなくてもいいですし、逆に壊れているのなら、こんな指輪に頼っても維持できません」

 

 と。

 

 ああ、確かにその通りだ。

 

 指輪というのはかっこたる愛の証明にはなり得ない。

 

 モノによる関係というのはいつだって希薄で、当人達の都合によって簡単に切れる。

 

 彼女のような例えをマネするのなら『金の切れ目が縁の切れ目』といったものだろうか?

 

 いや、少し違う。彼女は動物を使ったたとえを好むから。そうなると……いや、今は置いておこう。

 

 RPK-16はモノによって縛る関係を信頼していない。

 

 だから、さっきの言葉の後に、

 

「指揮官様、私達の関係ってどっちだと思いますか?」

 

 と問いかけた。

 

 答えは決まっている。

 

 かつてオレに投げかけた問いに対しても、今のRPK-16が聞いた問いに関してだろうと、オレからの答えは決まっている。

 

「夫婦だろ。お互いの事を確かに好き合って愛し合ってる。指輪で信頼できないなら、オレは言葉にして伝える。オレはRPK-16の事が好きだ」

 

 ああ、そういえばその時だったか。オレがRPK-16の事が好きだって気づいたの。順番がおかしいな。

 

 RPK-16にバレたら「指揮官は繭になることなく蝶になれるのですね」ってからかって来そうだ。

 

 今のところはバレてないから、墓場まで持って行く予定だ。

 

「ふふっ」

 

 オレのお決まりの答えにRPK-16は満面の笑みを浮かべる。

 

 確かに決まり切った言葉だが、彼女にとってはこれ以上無い完璧な答えだった様だ。

 

 実は、別の日に『私達の関係ってどうなんですかね?』って聞かれたときに別解をしてみたのだが、彼女は唇を尖らせた。苦言を呈さなかったことから、外れでも無いが完全な当たりでも無かったのだろう。

  

 それからはあの答えだ。

 

 RPK-16が満足してくれる上に、笑顔を見せてくれるなら、オレは何度だって言おう。

 

 意外と心配性な愛おしい存在のために。

 

「好きだぞ、RPK-16」

 

「私もです」

 

 ああ、そうだった。オレには一つ課題がある。

 

「RPK-16の言葉で想いをきかせて欲しいんだが?」

 

 実は、RPK-16の方から、『好き』とか『愛してる』と伝えられたことが無い。

 

 今日こそはなんとか言わせたいが、

 

「んっ」

 

 オレが文句を言う前に、RPK-16の唇がオレに重なった。

 

 オレの身体はRPK-16が唇を奪うタイミングを覚えてしまったらしい。彼女の整った顔が近づいてきたときには条件反射で瞼を閉じていて、そこから間を置かずに彼女の瑞々しい唇の感触が、乾ききったオレの唇に伝わる。

 

 RPK-16はオレの頭を掻き抱く。逃がさないように。

 

 彼女の唇が微かに震えてるのを感じる。視界が真っ暗闇のおかげで触覚が一時的に過敏になってるからわかってしまう。

 

 もしかしたら、彼女は何か言葉を発しているのかも知れない。けど、言葉というのは口から出さないと伝わらないモノだ。

 

 だから、はっきりと伝えて欲しい。そう言った文句をつけようとしたが、残念ながらその言葉はオレの口から出なかった。

 

 オレ達が一つになっていた時間はどのくらいだったのだろうか。一分?三分?それとも十秒?

 

 わからないし、気にしても無い。RPK-16が満足した頃に、オレ達はまた二つの独立した存在として現実世界に舞い戻った。

 

「伝わりましたか?」

 

「言葉で言って欲しいんだが」

 

「うふふっ」

 

 オレの文句はRPK-16の唇を指で押さえた色っぽい笑顔で打ち消されてしまう。

 

 決まり切った台詞から始まる決まり切ったやりとり。

 

 この決まり切った穏やかさと、彼女が唯一素直にならない行いが、何とも心地よくて愛おしい。

 

 笑みを浮かべたまま、彼女はまた顔を寄せる。

 

 彼女の動きに反応して、オレはまた瞳を閉じる。

 

 いつもこんな風に押し切られてばっかりだ。

 

 彼女の要望ばっかり通って、オレの要望は通らない。

 

 でも、それに文句をつけることはしない。

 

 素直に気持ちを伝えないRPK-16も大好きだから。

 

 そう、こんな甘いオレだから、

 

 RPK-16という存在が好きで愛おしくて仕方が無いオレだから、

 

 だから、だからオレは――

 

 今日もオレはRPK-16に勝てそうにない。




彼女には色々な背景がありますが、実装を楽しみにしています。
私好みのキャラクターなので(笑)
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