素晴らしい!!
「シュタイアー、パンツを見せて欲しい」
なぜそんなことを思い言ったのかは、指揮官にもわからない。それでも、理由をつけるとするならば、雨が降ったことで気温がジメジメとした気持ちの悪い温かさであるからか、鉄血との戦いが均衡状態のため戦況を優位に傾けろと焦れた上層部からのお達しにイライラとしてるからか。
いや、本心のままに言うとしたら、興味と気の迷いだ。シュタイアーのスカートの丈はあまりにも短く、立ち姿次第では彼女の黒の下着を常に拝めてしまう。
だから口から出てしまった。いつも下着を見せる様な佇まいだからと邪な心が表に出てしまった。
余りにもイライラしているため、倫理に反したことをしてみて、人道に反することをして一気に心にあったら不満感を解放したかっただけなのだ。
そんな邪な心から出てきたのが、その言葉だった。
自分で最後まで口にしておきながら、指揮官は自分の口を手で覆った。すでに出切ってしまった言葉だが、これ以上余計なことをしてしまわないように。
指揮官は品行方正な人物として信頼を受けている。上層部からも、目の前にあるシュタイアーことIWS2000からも。
シュタイアーは戦術人形の中でも、特に指揮官には品行方正であり、正しくあり続けることを望んでいる。
今の発言はシュタイアーの願いを、これまで築いてきた彼女からの信頼を全て失ってもおかしくない発言だ。
それを恐れた指揮官は、口を覆っていた手を外し、
「ち、違うんだこれは!!」
つい反射的に言い訳を連ねようとしてしまう。こんなことしても、シュタイアーから『指揮官、あなたはそんな人だったのですね…』と、更に信頼を失う結果になると、わかってはいても、だ。
だが、奇跡が起きた。否、起きてはいけない災厄が舞い降りてしまった。
指揮官の唐突なお願いにフリーズしていたシュタイアー。彼女は、指揮官が失言を撤回する前に、そのお願いを『指揮官が自分を頼りにしてくれた!』という思考パターンで理解し、既にスカートに手をかけていたのだ。
頼られた喜びにシュタイアーは、サプライズプレゼントを披露する子供のような無邪気な笑顔を浮かべて、
「はい、わかりました!」
元気いっぱいな声と笑顔を浮かべて一息にスカートを捲りあげ、レースのセクシーな黒いランジェリーを指揮官に披露したのだ。
完全なる不意打ち。ノーガードであった指揮官に、シュタイアーのセクシーな下着という、男の本能を縛る理性という鎖を壊すような衝撃を食らう。しかし、理性の鎖は最後の抵抗にでた。鎖の破片が突き刺さるように、指揮官の鼻腔の血管に亀裂を走らせ。
「ぶっ!!!」
右の鼻の穴から赤黒い崩壊液を放出させる最終手段をとり、頭に回る血液を減少させる最終手段を取ることで、指揮官の名誉を守った。
普段は品行方正を望むシュタイアーが、そんなことをしてしまったのは、指揮官が深刻そうな声色で言ったからだろうか。
指揮官の思考に深刻なバグが発生する。なぜお願いを聞いてくれたのかという困惑と、清廉潔白が服を着て歩いてる様な性格のシュタイアーが喜びの表情で下着を見せてくれているのだ。
何が起きてるかわからない。どうしたらいいかわからない。謝るか?謝ればいいのか?それとも言わなければいいのか?言わずになんとか彼女のスカートを下させればいいのか?
だが、指揮官の雄としての本能がこう訴えかける。もうちょっと拝んでも、まま、ええやろ、と。
謝るか?スカートを持つ手を離させるようにいうか?それとも目の前に露わになった白い太腿と黒いパンツが織りなす白い夜拝み続けるか?それともなんでそんなに攻めた下着をいま穿いているのかを聞いてみるか?
罪悪感と、威厳と、本能と、好奇心の板挟みになった指揮官の思考は短絡を起こし、直立の姿勢で背後に倒れた。
「指揮官!?」
突如、倒れた指揮官にシュタイアーが近寄る。指揮官の肩口に座り込み、鼻から生者の証である赤黒い崩壊液を垂れ流しながら天井の照明を見つめて無心になろうとしている指揮官の顔をのぞき込む。心配そうに瞳を潤ませ、表情をこわばらせながら。
数秒間、ぼうっと照明を見つめて平常心を取り戻した指揮官は、顔をシュタイアー側に動かして、
「だいじょ――」
大丈夫だ。心配をかけてすまない、と彼女にそう声をかけようとした瞬間、指揮官の冷静な観察眼は目敏く異常を発見した。
それは、シュタイアーの白いスカートが何故か彼女のほどよく実った西瓜に付かんとばかりに持ち上がっていることに。情緒も風情も無い言い方をしてしまえば、彼女のスカートは未だに彼女の意思で捲りあげられたままだったのだ。
つまりは、だ。指揮官が少し視線を彼女の方向にむけるだけで、再びセクシーな黒い秘密の花園が目に入ってしまうのだ。
悲しい男の性か、それとも見目麗しい戦術人形に囲まれながらも理性的であろうとした代償からか、彼の双眸はシュタイアーの女性としての機能を守る最後の砦に茎付けになってしまう。
どこからどこまでが透けているかとか、下着のゴムが食い込んでムッチリとしているのが何ともけしからんとか、よく見たら少々はみ出した臀部がみえてるではないか!とか、もはや理性が残した最後のセーフティも機能しなくなっている。
シュタイアーのイヤらしいランジェリーから視線を1フレームでも早く目を離すべきなのはわかっている。でも、彼の押さえつけていた獣はその場所に釘付けになってしまっていた。
指揮官の理性をゴリゴリと削る要因はもう一つある。それは、彼女から漂う香り。
指揮官の鼻孔は一つが自分の体液に塞がれた状態だ。だが、生物としての生存本能からか、片方が塞がれた分、もう片方の鼻孔が二つ分の役割を果たそうと普段より嗅覚を過敏に鋭敏にさせてきたのだ。
指揮官の生物としての本能と、彼女が至近距離にいることが相乗効果を生み、彼女のまとう香りが、熟れた桃のような甘い香りが、よく感じ取れるようになってしまったのだ。
シュタイアーが香水を付けているのか、或いは匂いを消す薬剤がそういう匂いを出すようになっているのかはわからない。指揮官にわかるのは、彼女の香りが自分の中の獣欲の覚醒を促していることだ。
さらにさらに指揮官の中の獣欲を擽るのは、嗅覚に弱体化パッチが入ったことで、視力に強化パッチが入ったこと。これの何がいけないのかというと、彼女の足の疑似汗腺が開き彼女の黒いランジェリー周りを水晶のような汗が浮かび上がっていること。執務室の中が蒸し暑いからか、それもともシュタイアーが足に高負荷をかけていたのかはわからない。血液が体内から逃げていく思考回路の中で指揮官がわかるのは、汗の輝きが彼女の研磨がかけられた真珠のようなおみ足を彩っているのが、なんとも艶めかしいと言うことだ。
ここで止めを差すと言わんばかりの現実を指揮官は実感する。ここまで満身創痍なのに思考だけは続けているのはさすが指揮官と言うべきだろうか。話を戻そう。その現実に気づいた瞬間、指揮官の体は震え始めたのだ。
先ほどあげた三つの要素、それはシュタイアーが指揮官の様子を見ようと身を乗り出すたびに、彼の視界に先ほどより拡大して映る。彼女の色気に満ちた太股と、下着が、彼の視界に接近してくる現実に彼は気がついたのだ。
シュタイアーが心配そうに声をかけるたびに、香水の甘ったるい香りを纏いじんわりと汗を滲ませた程よい肉付きの太腿と、黒い下着に包まれた少女の秘密の楽園が近づいてくる。
今度は鼻血を流して無かった鼻孔からも、頭に血が上りすぎないようにと緊急措置を図って片方と同じように鼻から赤黒い冷却液を噴出させてきた。
「指揮官っ!?」
シュタイアーが驚きの声を上げる。でも、指揮官の聴覚へと割かれるリソースは全て視覚へと回ってしまったため、彼の耳に届くことは無い。
段々と頭に血が上らなくなり、血眼になってシュタイアー汗ばんだ太腿と黒く上部が透けているセクシーランジェリーに意識が吸い込まれる中、考えることだけは止めてなかった指揮官は一つの真実へとたどり着いた。否!たどり着いてしまった!
人間のお願いは優先度次第では人形側の判断で拒否出来る。それは、人間を守る、人間の生活を豊かにするためには、人間の命令やお願いを却下しないといけない場合がある。例えば、重傷人が他のけが人を優先させる為に拒絶するように。
今の指揮官はある種危機と言ってもおかしくはないだろう。指揮官の生命を維持させるためのプロトコルが発令してもいい状況だ。
それなのに続けているということは、最初こそは指揮官のお願いを聞いていただけかも知れないが、危機的状況にある中でもスカートを捲って黒いパンツを見せつける行為は、シュタイアーが自らの根幹に組み込まれたプログラムに抗ってまで、彼女の意思で見せつけることを続けているということ。
あくまで推測でしか無いがその答えに行き着いた瞬間に、指揮官の思考回路はそれに支配され、頭の中でぐるぐると駆け巡ることに。
シュタイアーが自分の意思で進んでパンツを見せてくれる優越感と背徳感と罪悪感に支配された結果、指揮官の頭脳は過渡現象を起こして、
「がふっ……」
「しきかーん!!」
指揮官は小さく吐血し、満足そうな微笑みを浮かべて意識を手放したのであった。
その後、シュタイアーは目まぐるしく変わる状況にいっぱいいっぱいになりながらも気を失った指揮官に何度も声をかけ、その声で異常を察したG36が駆けつけて医務室に運び指揮官は一命を取り留めた。
G36に指摘されてシュタイアーは初めて自分が指揮官に下着を見せ続けていることを理解し、顔を真夏の太陽のように真っ赤にしてスカートを押さえたとのこと。
数十分後、指揮官が意識を取り戻したとき、傍らで看病していたシュタイアーは彼の背骨と肋骨がギシギシと悲鳴を上げるくらいに強い力で抱きしめたと言う。
「は、はしたないマネをしてごめんなさい!」
と。元はと言えば、指揮官の気の迷いのせいなので指揮官はシュタイアーを許し、自分も「変なことをいってすまなかった……」と謝罪し、二人の仲は無事修復された。
ちなみにシュタイアーが、
「仕事があるので、失礼します……」
と立ち上がったとき勢いがあったのか、シュタイアーのスカートが大きく宙に持ち上がり、シュタイアーのセクシーな黒い下着が見えたため、指揮官が再び気絶しそうになったのは、指揮官だけの秘密。
そして、
「指揮官……うふふっ♡」
医務室を出る直前、シュタイアーが跳ねる胸を押さえ、何処か艶のある笑声を漏しながら退室していったのはシュタイアーだけの秘密である。