東国戦遊志(東国幻想郷シリーズ) 作:JAFW500/ma183(関ケ原雅之)
この作品は2次創作です。
強さは自分と相手の相性などで決まる相対的なものになります。
時系列は旧作終了の時点で、そこから先は原作本来の流れと少し違う流れになります。
このシリーズでは「オリジナルキャラクター」・「大幅のオリジナル設定」が出ます。
東方とドラゴンボール二つの要素を持ちながら、「どちらでもないお話」です。思い切って始まってしまったこの新しい「この幻想郷」を心ゆくまでお楽しみください。
それでも大丈夫!という方はこのままお進みください。
それでは始めましょう。
~エイジ762年12月24日ナメック星~
「やめだ…。」
「や…。やめだとは、どういうことだ…。」
「貴様は100%のパワーを使った反動でピークを過ぎ気がどんどん減っている…。これ以上戦っても『無駄』だと、オレはそう思い始めた…。」
「もうオレの気は済んだ、貴様のプライドはすでにズタズタだ。『この世でだれも超えるはずのない自分』を『超える者』現れてしまった…。」
しかもそいつはたかが
『サイヤ人』
だった。
「オ…、オレは『宇宙一』なんだ…。宇宙の帝王『フリーザ』なんだ…。」
「だから…、だから…、貴様は…。サル野郎の『貴様』は…。『このオレの手によって死ななければならないっ…!!」
「『貴様は』…。オレに…、オレにっ!!」
殺されるべきなんだ――――っ!!!!
「…っ!!!」
バカヤロ――――っ!!!!!
「…。」
苦々しい日だった。
右手に持ったワイングラスとワインを見つめていたとき、ふと鮮やかにあの時の記憶が蘇った。
「…。」
憎しみのような混ざった感情が沸き上がる。
コンッ、コンッ。
「フリーザ様、私です。ザーボンです。例の件の調査が終わりましたので報告に参りました。」
「入りなさい。」
しばらくの沈黙のあと彼は答えた。
「失礼します。」
ドアを開け、ザーボンが入ってきた。後ろを振り返り、いつもの尋ねる。
「どうでしたか…。」
「やはり、我々のいた場所とも他の星とも違うようです。見たことのないやつらがいましたが、我々の相手には及びませんでした。」
「そうですか…。では、『環境』についてはどうでしょうか。」
「『最高』とのことです。それも、我々の星とも『あの地獄』とも比べ物にならないほどです。」
「…。」
「如何なさいますか。」
目を閉じしばらく考え込むフリーザ。そして、口を開いた。
「ザーボンさん、司令部にこう伝えなさい。『緊急招集』をすると…。」
「っつ、はっ!了解しました。」
ついに、この日が来た。長年の雪辱を晴らす日が。
フリーザが率いる組織フリーザ軍。
数多くの部下で構成され、様々な惑星で、破壊や地上げを行い宇宙規模で勢力を広げている。 侵略した惑星はフリーザ自らのコレクションにしたり、軍の基地へと再開発を行ったり、他の異星人に売り飛ばすなどいろんなことを行っていた。その支配していた星の数は数百にもおよぶ。数々の星を征服しつつ、同時に星々から戦闘能力が高い者を集めて自らの配下を増やしていった結果、フリーザ軍は様々な異星人が揃った混成部隊となっていた。
界王神など神々の耳にも轟くその悪名を振り回し、宇宙の平和を守る銀河パトロールは軍の力があまりにも強大な過ぎる故対抗出来ず、見て見ぬふりをせざるを得ない状況となっていた。
しかしナメック星でのドラゴンボールを巡る孫悟空やベジータなどサイヤ人の生き残りの達との戦いで大打撃をうけ、その後フリーザとコルド大王が殺されトップを失う形となった。 その後も新体制で立て直しを図っていたが、主要幹部が死亡した事が支配下の星にまで知れ渡り多くの星から反乱を起こされ、弱体化が進んでいく形となっていた。
しかし、フリーザが地獄で復活し、優秀な幹部がそろい鍛え直したこの軍はこれまでとは比べ物にならないほど強くなった。
ここは、時空の狭間に建てられたフリーザ軍の新しい基地。緊急招集で兵士たちが集まってきている。久々の招集で皆意気込んでいるようだ。
「『緊急招集』か、ついにきたな…。」
「ここまで苦労したもんだぜ…。しかし、俺たちは『運がいい』ぜ。」
「おいっ、お前たち口を慎め。始まるぞ!」
「「はっ!!」」
隊長に注意される兵士二人。隊長も変わり、より締まりがある部隊になった。
「全員注目!!!」
最高司令官の号令がかかった。
そして、モニターが現れ映像が映し出される。
「皆様お久しぶりです。貴方たちのおかげでこうして安心してこちらに来れました。感謝しますよ。」
「さて、今回招集したのは他でもありません。ついに時は来ました。」
「「「!!」」」
「皆さんの様子を伺わせてもらいましたが、こんなに嬉しいことは久しいですよ。皆さん本当にお強くなられました。貴方たちのその強さをしっかりと見せつけてあげなさい!!」
「あとは、任せましたよ。」
映像が終わった。
そして、最高司令官が壇上に上がった。
最高司令官を務めるのは第3星域の参謀ソルベ。
「これより、作戦に移る。現場では各隊長の指示に従え。お前たちの健闘を祈る。我々フリーザ軍の強さを見せつけろ!!」
「「「うおおおおっ!!!!!!」」」
ついに動き出すフリーザ軍。こうして、世紀末へのカウントダウンが始まってゆくのであった。
「夜も明けそうだな…。」
「おい、起きろっ。」
「何だ…。こんな朝から…。」
眠い中起こされ不機嫌なバーダック。まったく知らない環境と一昨日のチルド戦と昨日の戦いでいつもよりかなり疲れが出ていたのだ。
「お前を元の世界に戻せるか聞きに行く。あの『フリーザ』とかいうやつと戦いたいんだろう。」
元の世界に戻る。それを耳にしては行かないわけにはいかなかった。
「しょうがねえ…。そいつのところへ案内しろ。」
こうして、戻せるかを知っている者に会いに行くため二人は人間の里に向かうことにした。
「ったく、大体何でこんな朝早くから行かなきゃならねえんだ…。」
「我慢してくれ…。そいつは、朝早くから『寺子屋』っていうのをやっていて、ちょっと早くいかないと話ができないんだよ。」
有明の中、里に繋がる道を歩く。出発から約半刻(30分)ほどたっている。
バーダックは飛んでいけばすべて片が付くと思ったのだが、他の惑星では見られない植物や心に来る景色があったので別にいいかと考えるのをやめた。
<人間の里>
「よし、ここだね。」
出発して一刻、やっと着いた。
「…。(本当に変わった街だ。見たことのない建物ばかりしかないとはな。)」
目の前にたつ寺子屋とここまで来る途中で見た家々を思い返した。どれもバーダックにとって見たことのないものばかりだった。
「ごめん下さい。」
妹紅が訪問したことを告げる挨拶をした。しかし、返事がない。
「しょうがねえか…。ちょっと待っててね。」
そう言い残すと、彼女は少し回り込んで垣根のところから中に入っていった。
「お~い。慧音、邪魔してるよ。」
呼びながら探す妹紅。彼女にとって慧音は数少ない理解者で、自分の世界を変えた恩人の一人なのだ。
【上白沢慧音】
人間の里には妖怪と人間が仲良く暮らしている。彼女、上白沢慧音はその一人だが少し特徴があった。ワーハクタクと呼ばれる半人半獣の「獣人」、それが彼女の姿なのだ。獣人は先天性のものと後天性のものがある。彼女は後天的な方で、後天的な方は何かしらのことがあってで獣に変身するようになった元人間で、変身しても人間としての原型を保つ場合が殆どである。そんな慧音だが、人間を愛しており、人間の里を襲う妖怪がいれば率先して里を守るために動くほどである。「人」として生きているのであった。
さて、人間の里のある一画にある少し前にできた場所、寺子屋。花屋の娘、棟梁の息子など通いに来ている子は様々である。慧音は、平日その場所でいろんな子に授業をしている。最初は分かりにくいと言われていたが、なんとか深すぎる説明を減らして最近は分かりやすくなってきたようで里の人たちから親しまれている。
「どうしましたか…、こんな朝早くから…。今日は休みですよ…。」
寝ぼけ気味の慧音。昨日の仕事の疲れかいつもより遅く今起きたばかりだったらしい。
「久しぶり。」
「妹紅か、今日は何の用…?」
「ちょっと『頼み事』があって…。」
「事情はよく分かりました。」
あれから一刻たった。バーダックは嫌々ながらこれまで起こったことをほとんど話した。自分が惑星ベジータにいたサイヤ人だったこと、帰るべき場所が既にないこと、決戦で散りゆく中今度は、過去に飛ばされそこで宇宙海賊と戦いそうしてここにたどり着いたことを。
「こいつは、帰れるのか…。」
妹紅が尋ねる。
「帰れないことはないけど…。」
いつもはバシッ言う慧音だが歯切れが悪い。
「はっきり言ったらどうだ。『無理だ』ってな。」
説明から沈黙していたバーダックが口を開いた。
「…。はっきり言います、『無理です』。」
沈痛な面持ちで慧音が答えた。
「…。」
半分状況が理解できずに、戸惑う妹紅。
慧音は、二人にもう一度簡単に説明した。
幻想郷には外来人という幻想郷の外の世界から数少ないが定期的に来る者たちがいる。彼らは、里の西側にある洞窟、博麗神社のところの結界、または八雲紫という人物を通じて往来しているのだ。しかし、バーダックがやってきたのは迷いの竹林。場所が全く違うのだ。さらに、やってくる外来人にも共通点はあった。皆、地球に住んでいる者で我々のいる日本と何かしらの繋がりがある者たち、そして帰るべき場所があるのだ。だが、バーダックは違う。彼はサイヤ人という名の『宇宙人』で、そして第一に『帰るべき場所』もないのだ。
バーダックがこの先とれる道は一つしかない。この幻想郷で『生きる』か『死ぬ』か。その道しか無いのだ。
ゴーン
正午を告げる寺の鐘が響く。
「…。」
重い空気に妹紅は沈黙するしかなかった。
昨日聞いたことに加え、彼の故郷が変わってしまったどころか消滅していることに。
妹紅は、長い年月を生きているうちに気づいたらここに着いた。その時、すでにこの場所は彼女が生きる場所になっていた。だから、特に思うことは無かった。
しかし、彼は違う。彼は仲間を助けられず失い、そして自分たちの惑星が消滅することを誰にも信じてもらえない中、一人で敵うはずのない相手に立ち向かい敗れ、自分が散りゆく中生きてきた星が消滅するのを見ていくしかなかったのだ。
昨日までは、彼のことを少し羨ましいように思っていた。それが今、話を聞いて、がらりと見方が変わってしまったのだ。
「…。そうか、邪魔したな…。」
バーダックが立ち上がり出ていこうとした。
「ちょっと待てよ!」
咄嗟に止める妹紅。
「うるせえっ!!!」
妹紅たちを背に、バーダックは怒りの声を上げた。
「それぐらい知ってる…。これから先、オレが生きていかなきゃならない状況ぐらいはな。だが…、オレは『サイヤ人』だ、命ある限り戦う。それだけだ…。」
「…。」
何とも言い難い感情が妹紅に流れる。
「じゃあな…。」
「待った。」
再び出ていこうとする彼を慧音が止めた。
「どの道、『ここで生きていくしかない』。ならば、今日ぐらい楽しんでもいいではないですか?」
<人間の里にある蕎麦屋>
「昼飯にしようってか…。」
「まあ、そういうことですよ。昨日の夜から何も食べてないのでしょう…。」
「ふんっ。そこまでする必要はねえよ。」
相変わらず無愛想な面のバーダック。
「まあ、そう思い詰めるな。強い奴はまだまだいるんだからさ。」
妹紅がなだめるように言った。
「お前が一番強いんじゃないのか。」
ちょっと意外だった。バーダックは、昨日の戦いで妹紅と自分の圧倒的な差を実感したのだ。とても今のままじゃあ勝てない、そう思っていたのだ。
「強いっちゃあ強いけど、相性があるからな…。それを考えると同じかもう少し上の奴はいるさ。」
そう妹紅が返した。そして、丁度話が盛り上がろうとしたところで、蕎麦が届いた。
「お待ちどうさま。蕎麦三つですね。」
蕎麦かの温かさが辺りに染み渡る。
「すみません。いつもおいしいものを。」
慧音が頭を下げた。
「いいんですよ。先生のおかげで子供たちが楽しく生きているんです。私も最近それを見ていると元気がでるのですから。」
おかみさんがやさしく微笑みながら返した。
「それでは、ごゆっくり。」
そう残しておかみさんは振り返った。振り返る際にバーダックをちらりと見たが外来人だと思ったらしくそのまま厨房の方へ下がっていった。
「何だ…、これは…。」
初めて見る蕎麦に微妙に戸惑うバーダック。
「ああ、これは『天ぷら蕎麦』っていうんだ。」
「てんぷらそばか…。」
蕎麦。天ぷら、寿司と並ぶ日本の代表料理のひとつである。その歴史は古く、蕎麦の実自体は約一万年前から、麺の蕎麦としては江戸時代からあるらしい。
そして、天ぷら。これもまた日本の代表料理で歴史も長い。室町時代、西洋から来た『フリッター』が由来。江戸時代初期になると、油の生産量が増え、天ぷらは庶民の味として徐々に広まっていった。
「どう食べろというんだ。」
「こんな感じですよ。」
慧音が例を見せる。
「こうか…。」
バーダックがそれに続いた。
「なるほど、悪くねえ味だな。」
蕎麦の美味しさに、バーダックは感心させられた。
「ここの蕎麦はとてもおいしいのさ。」
妹紅も満足そうに語った。
こうして、温かい昼の時間が過ぎていった。そして、食事も後半に差し掛かった。
妹紅もバーダックも硬い表情が解けていったように見えた。
「よかった。これで――――」
慧音がそう思った時だった。
ドオン!!!
「「「「!!」」」」」
凄まじい爆発が彼方から聞こえた。
「な、なんだ。」
突然のことにうろたえる妹紅。
「…(この感じ、まさか)。」
「爆発…。」
さっきの轟音の正体に慧音がいち早く気づいた。
「い、一体なんですか…。」
おかみさんは何が起こっているのかまだよくわかってないらしい。
「わからない、ただ何か『嫌な予感』がします。」
慧音が答えた。
「慧音!!」
外に出た妹紅が叫んだ。
「どうした!」
妹紅に呼ばれて慧音は外に出た。
そして、
「こ、これは…。」
なんと、南の彼方に巨大な土煙が見えた。そして、二人とも気づいた。平穏なこの街にただならぬことが迫っているのを。
「…。!!」
妹紅があることに気づいた。
「まずい、慧音。あいつが、バーダックがいない!!!」
<人間の里の南口>
先ほどの爆発から少し前に戻る。
「なんだこれ…。」
皆絶句している。里の玄関口の門が跡形もなく破壊されているのだ。
「あれは!!」
誰かが叫んだ。
空にいくつもの黒い点々があった。しだいにそれが近づくにつれはっきりした。人だ、人らしきものが空を飛んでこっちに向かってきているのだ。
「…。」
誰も言葉が出なかった。
そして、ついにその者たちが空から無数に降りて来た。
「フフフフフ…。」
黒いローブを身に着け怪しい笑みを浮かべる者たち。その手には見たことのない不思議な物体をつけていた。
「何なんだ手前らは…。」
一番前にいる男がにらみつけるように問いかけた。しかし、正体不明の相手に怯えているのか声に張りがない。
「ほう、なかなか威勢のいい野郎どもだ。」
空からやってきた彼の者たちの奥から黒いローブを着たガタイのいい者が現れ、口を開いた。服装から見て戦闘部隊の隊長らしい。
ふと、そこに白髪まじりの少しガタイのいいおっさんが出てきた。
「長老…。」
どうやら、この里の長老らしい。
「一つ、聞いていいか。お前たち一体何者だ。」
長老が、尋ねる。
「ほう、いいだろう。この俺たちを前に背を向けて逃げずにいた褒美に教えてやろう!」
全員、ローブを掴み空へ投げた。そして、
「我れらは、フリーザ軍。宇宙最強の帝王、フリーザ様に仕える最強軍団!今日からここはわれらフリーザ軍のものとなる光栄に思うがいい!!」
さっきの戦闘隊長が声高く叫んだ。
「フリーザだか知らんがここは我々、人の里。『人間』と『妖怪』その永き争いの末、皆『人』仲良く暮らして居る場所。貴様らのような何も知らん無骨者にくれてやるような地ではない!!」
長老の鋭い一言が辺りに響いた。長老は、薄々ながらも分かってはいた。彼の者たちと今ここにいる自分たちとでは力に圧倒的な差があることを。しかし、黙っているわけにはいかなかった。この「今の人間の里」は先祖代々続いた「人間」と「妖怪」の争いの末、できた場所なのだ。やっと今、新しい時代が始まろうとしているのだ。それを、何も知らず踏みにじろうとする奴らにこのまま「誇り」を踏みにじられたくなかったのだ。
「長老の言う通りだ…。」
ふと、長老の奥の方から声がした。
「俺たちの誇りを踏みにじる…。こんな奴らにくれてやるほど俺たち里の人の誇りは安くない。」
人ごみを通り抜け数人の男が前へ出た。腰には刀、裾と袖には白い山形模様。背中には『誠』の文字。あの幕末に死闘を繰り広げた新撰組の生き残りらしい。そして、同じ新撰組の仲間だろうか。陣羽織を着てピストルを腰に下げた者や鉢金や甲手などの防具で全身を纏ったものまでいる。
「ほう、なかなか面白い奴らがいるようだな。だが、銃は剣よりも強し。お前たちのような負け犬がどんなに頑張ろうと俺たちには勝てないのだ。」
さっきと変わらず不敵な笑みを浮かべる隊長。そして、
「力なき人間と妖怪風情が…。どうせ死ぬことに変わりはないのだ。いい機会だ少し遊んでやろう。」
そう言って、パチンと指を鳴らした。そして、鎖につながれた者が二人連れてこられ、地面に伏せさせられた。連れてこられた者はボロボロであるがどうやらどちらも見たところ幼い少女の妖怪らしい。
隊長が近づき、そして、威厳をもって問い詰めた。
お前の隣にいるそのお友達に二つの道をやろう。ここで死ぬか生きるか。
死にたければ、見捨てるんだなお前の『連れを』、生きたければ…
全力であいつらを『殺せ』。
少女は青ざめ、そして手を顔の横にに当て絶望した。
「一分間だけ待ってやる。」
そう言い残し、隊長は振り返った。そして、部下に懐中時計を渡すと
「この時計で十秒ごとに秒読みし一分測れ。時間になっても答えを出せないなら構わん、この刀でそいつの『友達』とやらを殺せ。」
低く凍てつくような声で、けれども彼女にわずかに聞こえるように伝えた。隊長は数歩進みもう一度振り返り、腕を組んで彼女を見下ろした。そして、里の人間の方を向き言い放つ。
「これから、こいつらに一分くれてやる。お前たち人間と妖怪の関係がいかに脆いか見せてくれよう。変な動きをするなよ。少しでも変なことをしようものならこの女共の首をはねてやる。」
「…。」
誰も動ける者はいない。相手は妖怪といえどほぼ普通の少女と同じ姿なのだ。
軍の兵士たちが彼女の反応を興味深そうに見る中、秒読みが始まった。
三十秒。
少女は相変わらず青ざめ、ガタガタと震えている。人を襲うことはできても殺すとなれば話は別。前回の大戦でそのことをこの場にいる誰もがよく分かっているのだ。
少女の頬を一筋の涙が伝わり流れる。
「一分。」
時間になった。
「決まりだ…。やれ。」
刀が振り下ろされる。
「待て!!!」
振り下ろそうとした刀が彼女の首の寸前のところで止まった。
「や……ます。」
消え入りそうな声だった。これでも十分隊長に届く距離だった。
しかし、隊長は
「うん?よく聞こえないじゃねえか、もう一度言ってみろ…。」
優しく、けれどもその奥に隠れた凍てつく恐怖をにじみ出るように問うた。
「や、やりますっ…!!彼らを皆殺しにしてみます。ですから、どうかお願いします…。彼女を、彼女を殺さないでください!!!」
悲鳴のような叫びが辺りに広がった。
「いいだろう。その望み、自分の力でかなえて見せろ。」
意地の悪い笑みを浮かべ、そして隊長はもう一人の、涙を流しうな垂れている囚われたままの少女の方を向きそして悪い笑みを浮かべ語りかけた。
「いい友達を持ったな。」
「ご卑怯な!」
「侵略にに卑怯って言葉などないのだ。」
「見ていないでご自分でお殺しなさいまし!!」
「ほう…、『殺せ』と申すか…。」
怒りと悲しみの混じったような叫びが辺りに轟く。
「く、くそお…。っ!!」
立ち向かおうとする侍たち。しかし、
「あっ!!」
彼女が起こすすさまじい風圧に全く歯が立たなかった。
そして、もう一人の少女は囚われたままだった。そして、その足からは血が流れていた。
あれから、あの妖怪の少女との戦闘となった。戦いは里の者たちが少し離れてかたずをのんで見守る中始まった。最初は、お互い相手に気を使ってか手加減していた。
だが、一発の弾丸で、場が変わった。
あの妖怪の少女のお友達の足に弾丸が撃ち込まれたのだ。
「言ったはずだ。全力でやれと、次はどこがいいか。頭がお望みか…。」
凍てつくような低い声で隊長が言い放った。顔は笑っているようだが声は全く笑っていなかった。
それからは、互いに本気にならざるを得なかった。しかし、妖怪本来の能力を開放し、本気になった少女はとても手に負えず。今に至った。
「ち、ちくしょうが…。」
既に立てるものはいなかった。これまでの戦闘で侍の半数かが負傷、残りは何とか倒れずに攻撃に堪えているのが精いっぱいだった。やり場のない葛藤が彼らの中に渦巻く。そして、怒りを覚えた。さっきからまるでゲームをしているみたいに楽しんでいる彼の者たちの姿に。
「はあっ、はあっ…。」
少女も状況は同じだった。全力を使い果たし、息が絶え絶えになっている。
彼女は、二週間前までいつもと変わらぬ日々だった。自然の中、自由気ままに飛び回り、たまに近くを通る人間を脅かしては遊ぶそんな日々だった。しかし、そんな日常があいつらによって踏みにじられた。フリーザ軍の襲来。彼女はたまたま一緒に遊んでいた友達と戦いに巻き込まれた。最初は数人だった相手に苦労はしなかったが時間がたつにつれても一向に減らずとうとう力尽き倒れたのだ。それからは語るに堪えない生かさず殺さずの日々だった。彼女たちはみるみるやつれ、精神も限界に来ていた。
そして、今日の戦闘。少女の方も限界に近かった。
「っ…。」
ついに少女が脱力し倒れ込んだ。
「見てないで自分で殺せ…。お前は確か言ったな…。」
腰に下げた光線銃を左手にはめ、その男は前に歩み出た。
「今ここでその言葉を返すか、外道が!!」
「何とでも言え…、勝ったか負けたかそれがすべてだ。」
そして、戦い疲れ倒れ伏している少女の頭にその銃口を向ける。
「さらばだ…、弱き者よ。」
次の瞬間、
隊長の体がはるか後方へ吹っ飛ばされた。
「何だ、てめえは!」
傍にいたほかの兵士が銃を向ける。
「遅えよ。」
撃つ間もなく吹っ飛ばされた。
「やれやれ、これじゃあウオーミングアップにもならねえな。」
「その尻尾、貴様まさか…。」
隊長は、フリーザから伝えられていたある種族のことを思い出した。かつて、フリーザが唯一敗北した種族のことを。
「戦闘民族『サイヤ人』だ…。」
左頬の十字の傷跡、左右非対称の特徴的なハネのある髪、常に気を許さぬ険しい目。
その十字傷をつけた者は里の住人たちの方を向きこう言い放った。
「死にたくなかったらとっとと消えろ、邪魔だ。」
しかしあまりにも突然のことで、皆理解が追い付かずなかなか逃げようとしなかった。
「邪魔だと言っているんだっ!!!」
しびれを切らした彼は、一発、気弾を里の人たちの少し前の方に向かって撃った。
そして、皆我に返ったらしく奥の方へ散り散りになって逃げていった。
そして、人がいなくなるのを待ちそのサイヤ人は相手の方を向き直した。今、ここに残っているのは意識を失った少女と軍に囚われたままのあの少女だけだった。その男は、一瞬でこれまでの短い間でこれまでの状況を理解した。
「さて…。」
バーダックが軍の方に向かって歩き出した。
「てめえら、『フリーザ軍』だな。」
「そうだ、だがこいつは驚いた。まさか、絶滅したはずのサイヤ人が生きているとはな。」
隊長が答える。
「なるほど。」
バーダックはその足を止め、首を一ひねりした。
「どうした恐怖のあまりおかしくなっちゃったのかい。」
隊長の隣にいた兵士があざ笑うかのように言った。
バーダックは口を締め、言い放った。
「ちげえよ、三下野郎。」
「な、なにぃ!?こ、こいつ…。」
兵士が、目につけているスカウターのボタンを押し戦闘力を測った。
「ふ、脅かしやがって…。戦闘力たったの50じゃねえか。」
「愚か者が!」
隊長が一喝した。
「スカウターの数値を見ているから、我々はあの星でナメック星人やベジータ、そしてあんなガキどもに負けたんだ。おそらく、こいつもベジータたちと同じく瞬間的に戦闘力を上げる。そういうタイプに違いない。」
隊長は自分と対峙しているサイヤ人を見て感じていた。彼の底知れない力の可能性を、そして同時に焦りを感じた。早いうちに潰さないと厄介なことになると。
「全力でかかってくるんだな。てめえらまとめて全員相手をしてやる。」
バーダックの目つきが変わる。
「全員かかれえ!!!」
同時に、隊長の号令が辺りに響き渡った。
「ち、ちくしょおが…。」
辺り一面に転がる兵士たち。そのざまは様々だった。木に串刺しになり絶命している者、地に倒れ伏しつつも何とか生き残った者…。だが、立ち上がって残っている者は既にいなかった。
「所詮はこの程度か…。」
バーダックの手が倒れ伏す兵士たちの方に向けられた。そして、
「もういい、邪魔だ。」
辺りを白い閃光が包んだ。
「おい、バーダック!!」
しばらくして妹紅が、そして慧音が到着した。そして、さっきの閃光で変わり果てた里の入り口を見て、妹紅は悟った。
「大丈夫なんだな…。」
「それよりこいつらを連れて行ってやったらどうなんだ。」
意識を失い倒れる少女、そして鎖が外された少女の姿がそこにはあった。
妹紅も慧音もその光景を前に何も語ることは無く、ただ優しい声で大丈夫かとだけ言った。
「長老…。」
慧音は、冷たくなってゆく長老に黙とうをささげた。そして、ゆっくりとその体を担ぎ上げた。
その時、
「おめえら、下がれ!!」
バーダックが叫ぶと同時に二人の前に飛び出した。
そして、
まぶしい光と凄まじい土埃が辺りに舞う。
「…。」
辺りに舞った土で辺りは覆われ何も見えなかった。しかし、バーダックは気づいた。南の、この埃の先にいる者に。
辺りに舞った土が風に流され視界が開けた。
やはりおまえか…、ドドリア。
【チームバーダックの最期】
惑星ベジータの最期の日、バーダックは制圧に向かったカナッサ星で受けた傷を治すため、治療カプセルに入っていた。
「どうなんだ…。隊長は。」
バーダックの仲間のトーマが医師に尋ねる。隊長のバーダックが治療中の今、副隊長のトーマが実質的に隊長だった。
「肉体的には全く問題はない。だが、脳波に少し異常があるとコンピュータは診断していてな…。」
「そうか…。」
顔を曇らせるトーマ。
「しかたねえ、今回はバーダックはおいていくことにしよう。」
パンブーキンが提案した。
「ああ…。」
少し、バーダックを心配しつつトーマは決めた。
「今度はどこの星に行くんだ。」
医師が尋ねる。
「惑星ミートだ。」
こうして、バーダックを残し他の仲間たちは先にミート星に向かった。
しばらくして、バーダックの妻ギネが見守る中、バーダックの意識が回復した。
「本当に、大丈夫か。まだ安静にしていたほうがいいって。」
「大丈夫だ、心配する必要はねえよ。仲間はずれにしやがって。あいつらに先を越されてたまるか。」
ギネが心配することをよそに、出撃の準備をバーダックはしていた。
「惑星ミートか…。すぐ近くか。ようし。」
支度が終わった。
「あ、おいっ。バーダック、一度ぐらいカカロットに会ってから行けよ!!」
暗闇に消えていく彼の背に向かって、ギネが大声で言った。
数刻遅れてバーダックはミート星に着いた。辺りは既に荒野と化していた。
「ずいぶんまた派手にやりやがったな…。あいつら…。」
ピピっ
彼のつけているスカウターに反応が現れた。
「!!いやがった、奴ら夢中になって暴れてやがるな…。ふっ!!」
反応が現れた方に向かってバーダックは飛んで行く。
呆然と立ち尽くすバーダック。辺りにはつい数刻前まで一緒にいた仲間が変わり果てた姿で倒れていた。
「い、一体…。」
何が起こったのか理解できなかった。
「ば、バーダック…か。」
弱い声だが聞こえた。トーマの声だ。バーダックは走って彼のところに向かった。
「トーマ、どうしたんだ一体。ここで何があったっ!!」
「へっ…馬鹿な野郎だぜ…。大人しくおねんねしていればいいものを…。」
「そんなことより…。まさか、ミート星人なんかに…。」
「ふっ、あんな奴らはすぐに全滅させた…。」
「それじゃあ、誰がおめえたちを!!」
「ふ、フリーザだ!やつが…、『裏切り』やがったんだ…。」
薄れゆく意識を保ちつつ、トーマは声を振り絞った。
「そんな、バカな…。」
バーダックは信じられなかった。毎度、自分たちを丁寧に扱い、しっかりサイヤ人にあった仕事をくれていた。彼の持っているスカウターや戦闘服、そしてあの医療機器もすべてフリーザが支給してくれたものだったのだ。
「うっ…。」
トーマの口から血があふれる。しかし、トーマは目を閉じながらも気力を振り絞り、話を続けた。
「フリーザの野郎は、オレたちを利用しているだけだったんだ…。オレはもうだめだ…、だがこのままじゃ…。サイヤ人全員フリーザの野郎にやられちまう…。」
そして、トーマはバーダックの肩に手をのせ、目を開き、最後の力を振り絞って言い遺した。
「いいか、よく聞け。すぐ惑星ベジータに戻れ…、そして、仲間を集めてフリーザを倒すんだ。ふっ…、奴に『サイヤ人の強さ』を思い知らせて…くれ…。頼んだ…ぞ…。」
トーマは力尽き、息を引き取った。
その後、いきなりドドリアが現れ。バーダックは重傷を負った。そして、悟った。フリーザが裏切ったことを、ドドリアとその部下があいつらを殺したことを。
「っへへ…。なかなかやるじゃねえか。まさかあの一瞬で切り返して相殺されるとは意外だったぜ…。」
「………。」
「ほう…、てめえはあのときのサイヤ人か…。」
普通なら、あの一瞬で切り返され驚くのだが、ドドリアは違った。彼はそれでもなお不敵な笑みを浮かべているのだ。
険しい表情のまま、バーダックはドドリアの方をにらみつけていた。そして、近くにいる妹紅たちに伝えた。
「そいつらを連れていけ、オレはこいつとケリをつける。」
妹紅と慧音は互いに顔を見合わせ、そして互いに頷いた。
「分かりました。私と妹紅で連れていきます、バーダックさん無理しないでください…。」
そう言い残し北の方へ向かっていった。
こうして、バーダックとドドリアが対峙する形となった。
「やっと、これで一対一だな。」
バーダックはドドリアに向けて言った。その声には静かなる怒りと覚悟が混じっているようだった。
「フッ、あいつらもあっけなかったぜあの時のお前のようにな…。まあ、てめえが生きているのは意外だったが、今度はしっかりお仲間のいるあの世に送ってやるぜ。さっきの戦闘をみたが、この俺に比べればまだまだだからな。」
「……。」
静かな炎が互いを包んだ。
そして、
時を告げる鐘が鳴った。