僕は 『生きたガイアメモリ製造機』   作:しゃしゃしゃ

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『それでいいんです。
 本から教訓を得ようとか学ぼうとか人生に活かそうとか、そういう風に構えることはないんです。
 面白いことを考える人がいるなーって 本を閉じれば。
 物語ですから。』
   by.掟上今日子
 


1日目・上「Gの戦慄/あなたの全てが欲しい」

1日目

 

 くそ寒い。

 夏真っ盛り、蝉時雨が轟く8月の昼間だったはずなのに、目の前には夜の暗闇、吐く息までまっしろしろ。

 落ち着け、僕。

 こういう時は素数を――じゃなくて、ボケに走るな現実を見ろ。現実、現在、今に至るまでの道を思い出せ。大丈夫、僕は正常。おかしくない、酔ってない。そもそも酔ったことない。

 

 

 5W1Hだ。

 まずは「だれ(who)? 」

――僕は(ごう) 秋敏(あきとし)。大学二年生、彼女無し、友達0人、一人暮らしのクソ童貞。オタ歴14年の冴えない男。

 

 次、「いつ(when)? 」

――感覚からいってここは冬。震えるほど冬。

 

 「どこ(where)? 」

――わかんない。公園。でも見知らぬ公園。暗いからよくわかんないけど空気が違う。

 

 「なにを(what)? 」

 「なぜ(why)? 」

 「どのように(how)? 」

――わかんない…。

 

 

 最後の記憶は………あーっと、夏休みに入ったから、新幹線に乗ってー? 実家に戻る途中でー…それで…それで…? うとうと、し…て…

 

 

 

 さっむ。

 やばい。半袖やばい。

 風強い寒い、冷たい耳痛い。いった!

 なんかない――荷物がない!

 財布! スマホない! PCも! ない!

 

 小屋っぽいあれ!

 入る。

 風が弱くなってマシになった。

 

 ふう。

 

 

 

 さて、寒いのは変わらないが冷静になろう。

 冷静に、現実的に考えれば、僕は拉致されて寒冷地にほっぽり出されたとか、そんなのが思い浮かぶけど…ないな。ない。

 

 これはあれだ、あれ。

 転生とか転移とか、そういうあれだ。

 

――俺のサイドエフェクト(二次元思考)がそう言ってる。

 なんちゃって…自分でも何言ってるんだろう。サムッ…!

 

 でもそれが一番考えられるというか、そうであってほしいというか。

 ……だって拉致されてとかだったら、デスゲーム的なサムシングしか思いつかないよ?

 転生とかだったら特典とかあって勝ち組なれるかもだけど、デスゲーム的に連れられてきたモブだったら間違いなく僕ザコ死担当だよ。画面端で死んでる役割だよ。

 

 神様的なナニカには会った記憶ないけど、消去されてるとか、会ってないとか、そんな感じなんだろう。

 寒い。

 

 ………寒さがやばい。

 この世界が異世界だと決めつけるのはまだ早いかもしれないけど、とにかく動かないと…。

 

 

 お腹もすいてきた。

 朝食の鯖味噌から何も食ってない。

 うぅぅ…風、隙間風入ってくるじゃん。うずくまってても凍えちゃう…。

 衣・食・住、全て足りない。

 

 財布はカバンに入れてて、そのかばんは手元から消えていて、(イコール) 自分は今、一文無し………。

 

 この世界が異世界なら文字も言葉も通じない可能性アリ。……まぁ、ここから見える夜景色は現代日本…ビルとか見えるから杞憂だと思うけど。

 

 

 いやいやいや。現代日本だとしてもヤバい。

 金がないから飯も服も買えない。異世界なら当然僕は存在していない者であり、したがって戸籍もない。…働いたことのない僕でもわかる。戸籍無しとかどうしようもないのでは? 『はたらく魔王さま!』でやってたような戸籍づくりなんてできないぞ…? 住む場所確保するにも戸籍とか保証人とかいるんじゃないの…? 僕には誰もいない。なにもない。

 

 異世界とか馬鹿なの? 死ぬの? 死ぬわ! 僕がね!

 日本だとしても死ねるわ。このままじゃホームレスルートしかない。生活保護受給とかもできないし、保険証ないから病院行っても診てもらえないんじゃないの…? だめだ不安になってきた。

 

 

 やばいやばい、何かないのか? 何か。

 これが転生モノなら、自分にはなにか能力とか備わってるはず。このままじゃ凍死か餓死か…。

 そんなんじゃ読者が失笑だぜ? 僕がモブキャラ・引き立てキャラならそれで正解だけどさ!

 

 

 

 パワー!

 能力!

 アイテム!

 武器!

 なんか、なんかすごい力~!

 

 転生特典ー!

 

 うんうん念じていたらバラバラ ゴトンゴトン と音が。

 なに?

 つむっていた目を開けると、銃のような何か・四角くて分厚い何か・多種多様なUSBメモリのようなものが小屋の中に散らばっていた。

 

 

 

 

…………………。

…………………どうやら、

 僕の転生特典(仮)はガイアメモリらしい。

 

 

 地面に散らばったガイアメモリは念じると体の中に潜るように消えていった。気持ち悪いが僕は僕の“中”にガイアメモリを収納することができるようだ。

 

 手の内に出現するように集中してみると、フッ と一本出てきた。

 感触は…機械的? 冷たくて、ざらざらしているような、つるつるしているような…少し重い、プラスチックではなさそうだ。

 

 出てきたのは『MAGMA(マグマ)』だった。…寒さを何とかしたいと、無意識から出したんだろうけど溶岩は暑すぎる。

 

 

 ともかく、ガイアメモリを僕が出したり消したりできる以上、非現実的な…転生とか転移とか、僕がよく読んでいた小説のようなことが僕の身に起こっていると、そう考えるべきだろう。

 なぜ僕が? とか

 ここはどこよ、 とか

 何をすればいいのさ、 とか

 疑問は尽きないが『力』が手に入った。ひとまずは安心して良いだろう。いざとなれば…だ。

 

 さっそくこの力でもって、「くそ寒い&お腹すいた」この現実をいい方向に変えていきたいが、どうするか。

 “変身”すれば、寒さはどうにかなるかも。でも少し、…かなり怖いな。

 だってガイアメモリだし。

 ガイアメモリってあれだぜ? ほぼほぼ麻薬だぜ? 僕の精神が化け物になってしまいました、暴走しました。じゃあアウトだろ。

 

 

 

 うーん………。

 

 

 あ、

 さっきばらまいた中に四角い、ドライバーっぽいのあったな。もしかして、それか?

 

 ばらまかないように注意(集中)して自分の中にあるものを全て外に出してみる。

 

 …………………。

 

 

 数えてみると、ガイアメモリは全部で69種類。

 仮面ライダーWに出てきたおよそ全てのメモリがあった。

 ネット版の京都とか歌舞伎とか、レジェンドライダーのメモリ、Wとアクセル、スカルのメモリはないけど。T2ガイアメモリもない。

 怪人…ドーパントのメモリだけだ。

 テラーやユートピア、ゼロもあるのにジョーカーやサイクロン、エターナルなんかはなかった。メモリガジェットもギジメモリも。

 

 

 Living_Connector_Setting_Operation_Gun(生体コネクタ設置手術銃)と書かれているものもあった。これがあれだろ、本編にもたびたび出てきたコネクター手術のためのあれだろ。

 

 そんで、ガイアドライバーだと思ってた四角いのだけど…変な感じ。

 確かにベルトのバックル…というか仮面ライダーのベルトの腰にくっつけると「ジャー」って巻き付くあれだけど、変。ガイアドライバーじゃない。

 かといって風都探偵に出てきたガイアドライバーrexでもない。

 穴が違う。メモリを入れるための穴が。

 

 前にも横にもメモリを入れるための穴がない。

 そこじゃなくて、ベルトの上に穴がある。4つ。4つのスロットがある。

 あれ、あれ。デスクトップパソコンのメモリの入れる奴。あんな感じに4つ並んでる。穴が。

 

 

 よくわかんないけど、オリジナルということだろうか。

 じゃあ、名前は「ネオガイアドライバー」で。

 

 最後に、Vシネに出てきた「ガイアメモリ強化アダプター」もあった。

 

 

 

 

 変身しよう。

 暴走とか毒とか言ってらんない。

 自分がこんなに我慢できない性格だとは知らなかった。寒い。

 

 寒い。寒さがここまで人間を追い詰めるとは知らなかった。

 震えが止まらないし指先感覚ぶるぶるだし、息子は小指以下に縮んじゃってるし。もうやるしかない。

 

 まずは『GENE(ジーン)』で服を冬服にする。あと食べ物を作る。

 それだけでもやろう。寒い。公園で火なんか出したら目立つし、服だけでも冬用にして…毛布とかも作るといいかもな。

 

 

 「ネオガイアドライバー」を腰にくっつける。

 

 おおう…! 腰に巻き付いた。すげぇ。

 状況忘れてちょっと感動する。ぐっとくる。僕の中の少年魂が暴れちゃう、くっはー!

 

 ジーンメモリ、構える。

 

 わくわくする。ドーパントでも、変身だ。変身できるんだ、僕。

 

 

 押す。「GENE」とガイアウィスパーが鳴る。

 どきどきだ。どっきどき、心臓うるさい…。

 

ん。

 

 いつの間にか僕はジーン・ドーパントになっていた。なにが起こった?

 

 ……押して、音が鳴って。

 僕が挿入してないのにドライバーのスロットにメモリが、吸い込まれていった…? 見えなかったぞ? 目にもとまらぬスピード…あれか、宇宙刑事か。『0.5秒の変身プロセス』というやつか。

 

 …変身できずに、というのを防ぐための仕様だろうか。親切設計で怖い。なにやらせるつもりだよ僕に。

 

 

 で、ジーン・ドーパントになったわけだけれど、うん。最弱と言われようがさすがドーパント。さっきまでの寒さが嘘みたいだ。風が当たる感触はあっても冷たさは感じない。早速毒素にやられてるのか、なんだか気分もよくなってきた。ふわふわする感じ、なんだか浮ついた、風呂の中でウイスキーがぶ飲みした時と同じような変な気分だ。

 

 

 ぐるぐるのストローみたいな右手を小屋の外に出て拾ってきた葉っぱとかゴミとかの山にあてる。

 

 

  ぐーるぐる ぐーるぐる

 

 

 完成。もふもふあったかコート。

 自分でやって思うけど、ジーンのこれ遺伝子組み換えとかそんなレベルじゃないよな。

 

 そしてもうひとーつ。遺伝子操作ぐるぐる~。

 

 完成、みかん。果物は果糖でカロリー高いって聞いたことある。

 ………なんで枯葉やゴミがみずみずしい果実に変わるんだろう。

 

 『地球の記憶』すげぇなー…。

 

 

ん?

 

 

 

あ、

 

 

 

 

あ。

 

 

 

 

 

 

 

 やっちゃった。もとい…いやいやいや。言葉遊びはやめろ、不謹慎。

 やっちまった僕、ああ。

 人を殺してしまった。

 いくら姿みられて驚かれたとはいえ…。ミキサーでグサッとしてしまった。なんで?

 

 なんで?

 

 僕は悪くない、はずだ。ガイアメモリのせいだ。

 ガイアメモリの毒のせいで。

 そうだ、僕は被害者だ。僕は悪くない。メモリのせいだ。メモリが僕をおかしくしたんだ。僕は悪くない。僕は人畜無害な男、僕ぐらい人畜無害な紳士はいない。

 …5つぐらいの頃、ふざけて女の子(の股間)を追いかけたりしてたな………。子どもの頃の話だ、本能が僕をそうさせたんだ。

 今もそうだ、そのはずだ。僕は人殺しなんかじゃない。

 僕は怪物なんかじゃない。

 

 そうだ、僕は人なんて殺してない。これは物だ。物を壊しただけだ。僕はうっかり壊しちゃっただけなんだ。

僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない

僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない

 

 右手を見る。

 血まみれだ。

 僕の手だ。人の胸を貫いた手だ。

 

 違う、人じゃない。

 

 違う、人だ。

 

 違う、違う違う違う。

 僕は違う、そんなわけがない、違う。違うんだ。僕が殺した。僕は壊しただけだ。違う僕は殺したんだ。

 僕が殺したんだ。

 

 僕が、

 自分で、

 僕の意思で、

 僕の手で、

 

 殺した。

 メモリのせいなんかじゃない。僕は、僕だ。

 僕は正気だ。言い訳するな。この人殺しが。

 

 前を見ろ、目をそらすな。

 

 ごめんなさい。僕が、僕が、僕が、

 

 

 ごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 遺体をどうするか。放置はできない。埋葬なんかできない。右手を見る。

 分解しよう。

 

 ジーンならできる。

 

 よし。

 

 待て、待った。

 

 …………。悪魔的だ。最悪だ。でも、何にもならないのは、ダメだろ。

 僕が殺したんだ。ならせめて利益にしなきゃ。食わないのに殺しちゃったんだ。せめて有効活用しなきゃいけないだろ。

 

 「なりすまそう」。殺したこの人になり替わる。この人の顔も住処も金も、全部もらおう。川尻浩作になりかわった吉良吉影みたいに………。

 僕は何もないから。殺したこの人の物を貰おう。最悪かな、最悪だな。人生強盗とでもいってしまおうか。最悪だな。ネーミングのセンスも、行為も。

 僕、結構な鬼畜外道の悪党になっちゃうな。どうしてこうなったんだろう。体感で数時間前は、「実家に帰ったら録り溜めたアニメをどうやって消化するか」とかクソ平和なこと考えてたのに。

 

 『オラのとーちゃんはとーちゃんじゃないゾ』するなんて……。

 ジーンの力ならそれができる。僕の顔や体指紋までそっくりそのままに変えることが。ダミー・ドーパントでも可だけど。長期間変身してる必要があるからジーンで生身から弄った方がいい。

 この世界で生きるためには、僕は僕じゃだめだ。いつまでも公園にたむろしているわけにはいかない。立場が必要だ。

 

 …………………………………………………………。

 ごめんなさい。

 名も知らぬあなた。

 あなたの全てをいただきます。

 

 

 

 

 

 




 前書きの通り、『面白いことを考える人がいるなー』って感じにお楽しみいただければと思っています。

 タイトル元ネタはW本編9・10話「Sな戦慄/メイド探偵は見た!・名探偵の娘」より。
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