○小林麻里菜(こばやし まりな)・・・主人公。父が施した封印が解け、額の第三の目が開眼する。性格は、普段は謙虚でおとなしいが、いじめなどの悪いことは許せないので、自分から注意することがある。
⒈ 覚醒
桜も散り始め、6年生になった麻里菜。読書が好きで、特に『妖界ナビ・ルナ、新 妖界ナビ・ルナ』と『トリシアは魔法のお医者さん‼、魔法医トリシアの冒険カルテ』が好きでした。何度も何度も読み返しては、二つの本の世界に浸りこんでいました。
新しいクラスになったばかりのある日、麻里菜はいつものように本を読んでいました。
『魔法医トリシアの冒険カルテ 竜の騎士と伝説の名医』
この本は2018年10月12日に発売され、18年の『トリシア』シリーズの幕を閉じた本でした。
読み返して5回目の、一番いいところを読んでいたそのとき、
「何その定規?ボロボロだぜ?新学期に新しいの買ってもらえなかったんだ、かわいそう。」
前の席の方から声が聞こえてきました。
麻里菜はふと顔を上げて、呆れた顔をします。
「荒井が浅間と一緒にいる……。嫌な予感。」
「確かにボロボロだけど、父さんからもらったんだ。高校の時に使ってた、思い入れがある定規だって。まだ使えるし、新しいのはいらないよ。」
荒井は学年で一番のいじめっ子で、何人もの先生が手を焼いてきました。
浅間は昨年引っ越してきた人で、勉強も運動も大の苦手。そのせいで、この学年のほとんどの人に馬鹿にされています。
「新しく買ってもらえば、バカじゃなくなるんじゃね?じゃ、いらねーな。始末してやるよ。」
荒井が定規の両端を持ちます。
「ちょっと、返せよ!俺のだから!」
浅間が定規に手を伸ばした瞬間。
バキッ
「あっ、定規が……。」
麻里菜が目を見開いてつぶやきました。
荒井は2つに割れた定規を床に落として、踏みつけます。
「俺の…定規…。」
荒井は浅間の青ざめた顔を見てニヤリとすると、定規を壁に向かって蹴飛ばしました。
蹴飛ばされた定規の片割れが、麻里菜の足元に転がってきました。
「どうしてあんなことを……。」
麻里菜は定規を拾います。
「次は…これか。お前が使ってたらこの鉛筆がかわいそうだな。」
水色の塗装がある鉛筆も荒井の手に渡ります。
「このままじゃ、あの鉛筆も……。」
麻里菜は心に決めます。
「あんなの見過ごすわけにはいかない。私が言ってやんないと!」
バンッ
麻里菜は読みかけの本を、わざと音を立てて机に置くと、荒井に目をやりながら話しかけます。
「ねぇ、さっきから話聞いてるとさ、あんた、かなりひどいな。」
「はぁ!?邪魔だ、どっか行け。」
「どっか行けじゃないでしょ、人の物壊しといてさ!ほら。」
麻里菜は手の中の定規を見せます。
「この定規がいるかいらないか、何であんたが勝手に判断してんの!」
「だから?」
荒井は開き直ります。
「『物を粗末にしてはいけない』って知ってる?まぁ、知らないよね。こんなことするんだから。」
麻里菜は定規を荒井の目の前に持ってきます。
「知ってるけど何か?」
「じゃあ、例えばの話。」
麻里菜の目の色が変わります。
「確か、あんた、お父さんからもらった野球のグローブ持ってるでしょ。噂だと、お父さんがあと一歩で甲子園に行けなかったから、あんたには行ってほしいって言って、グローブをもらったんでしょう?」
「そうだけど。」
荒井は、余裕そうな顔をしています。
「もし、家に友達呼んだ時とかに、そのグローブ壊されたらどう思う?」
「そりゃあ、ムカつくに決まってんだろーが!」
荒井が怒鳴ります。
「今、浅間はそう思ってんの!ねぇ、そうでしょ。」
麻里菜が浅間の方を振り返ると、浅間は荒井の目を見てうなずきます。
「大切にしていた物を他人に壊された時の気持ち、分かった?」
荒井は「チッ」と舌打ちをして目線を下げました。
「何か言うことあるんじゃないの?」
荒井は渋りつつ言います。
「ごめん。」
「ちゃんと、浅間の方を見て!」
「ごめん…なさい…。」
「定規はどうすんの?」
「俺が…弁償する。」
麻里菜はため息をつくと、荒井に言付けをします。
「いい?他人にされて嫌なことは他人にもしない。常識よ!」
荒井は場が悪くなり、持っていた鉛筆を置いて、教室から姿を消しました。
ふと、麻里菜は我に返りました。教室にいる人全員がこちらを見ています。ドアには騒ぎを聞きつけた他のクラスの人たちが人垣を作っています。
「あ……、ど……どうも。」
急に恥ずかしくなってきました。
すると、ドアのところにいた人が拍手を始めたのです。それはだんだん広まり、やがてみんなが拍手をしました。
「すごい!」
「荒井を黙らせた!」
「すっげー!」
みんなが口々に言います。麻里菜は余計に恥ずかしくなりました。
「小林。」
自分を呼ぶ声に振り向くと、浅間が微笑んでいました。
「ありがとう、言ってくれて。俺じゃあ、言い返せないな。」
麻里菜も微笑むと、もう一つの片割れを拾います。
「これを持って、後で先生に言って。折られた定規のことも、先生と相談して。」
麻里菜は定規を浅間に渡します。
「私の仕事は終わり!そこの野次馬もさっさと退散!」
麻里菜はドアの方に、しっしと手を振ります。
麻里菜は自分の席に戻って、再び本を読み始めました。
「小林…すげえな…。」
浅間がぼうっと立ったまま、麻里菜を見ていました。
その日の夜、麻里菜はなかなか眠りにつけませんでした。
突然襲ってきた、強い額の痛みにうなされていたからです。
「痛い……。何でおでこが……?」
頭の中から何かが突いているような、奇妙な痛みです。
それに、熱を持っているような気がします。
「うぅ……痛い……。何で……何で……。」
しばらくすると治まりましたが、麻里菜の体力がかなり奪われ、どっと疲れてしまいました。
「いったい、何だったの……?」
次の日の夜、麻里菜はソファーに寝転がりながら本を読んでいました。昨日読んでいた本の続きです。
夕食を食べ終わり、風呂にも入り、歯磨きも終えていた麻里菜の自由時間です。
「やばい、超面白いんだけど!」
ふと、麻里菜は時計を見ました。
「やっべ、10時だ!」
そこに、ちょうど風呂から上がったお母さんが来ました。
「麻里菜、まだ起きてたの?10時になってるわよ。」
「分かってる。今そう思ったところ!」
「って、また読んでたの?この本。」
お母さんは麻里菜が読んでいた本を取り、ブックカバーを外します。
「ちょっ、何すんの!?」
「ふーん。自分の小遣いで買った本がこれか。魔法なんて存在するわけがないのに。こんなのを読むなら、もっと為になる本を読みなさいよ。」
お母さんはパラパラとページをめくり、また「ふーん」と言いました。今度は何を言い出すのかと、麻里菜は身構えます。
「絵ばっかり。字も大きいし。6年生が読む本じゃないでしょう。」
「いや。対象年齢は小学中級~上級からってなってるけど。」
麻里菜は本屋でそのコーナーから、今、お母さんが持っている本を見つけたのです。
「だから、もっと難しい本も読めるよね、って言いたいの。」
「もう、誰がどんな本を好きだろうと、別に関係ないでしょ!」
麻里菜はお母さんから本を取り返します。
「しょうがないじゃん。図書室に置いてあるこの本のシリーズ、全部読んじゃったんだから。自分で買うしかないの!」
麻里菜はブックカバーをつけ直してから、ランドセルの中に入れました。
「はいはい。」
お母さんは呆れた様子です。
「いい?自分の小遣いで買ってるんだからいいでしょ!」
「じゃあ、小遣いを麻里菜にあげてるのは?それを稼いでるのは誰よ?」
「う……。……もういい。とにかく、いちいち言ってくるのはやめて!おやすみ!
バタン!
麻里菜はリビングのドアを思い切り閉めます。
麻里菜にはおそらく、お母さんの
「ドアが壊れる!」と怒鳴った声は聞こえていないでしょう。
麻里菜は階段の電気をつけると、なぜか不安になってきました。また眠れないかもしれないと思ったからです。
「はぁ……。」
麻里菜は憂鬱な気持ちで階段を上がりました。
2階に着いたそのとき、麻里菜は座り込みました。
「うぅっ!」
昨日の夜のあの痛みが、また襲ってきたのです。尋常ではない痛みは昨日よりもずっと増していました。
麻里菜は右手で額を押さえます。
ヌメリ
「!」
麻里菜は思わず手を引っ込めました。まるで蛙や蛞蝓を触ったかのような感触です。
もう一度触ってみると、ヌメリとした部分が盛り上がっていることを確認できました。
(何なの……?)
麻里菜は立ち上がりましたが、少し吐き気を覚えて、また座り込んでしまいました。
(何か景色がおかしい……?ゆっくり動いてる……?)
麻里菜は壁に手をつけながら、何とか立ち上がりました。やはり、スローモーションの景色は変わりません。
(でも、あの気持ち悪い物体の正体を知りたい。)
2階の納戸の隣には洗面台が取りつけてあり、三面鏡になっています。麻里菜は周りの景色を見ると気持ち悪くなってしまうので、片手で両目を押さえ、もう片方の手を壁につけながらそこへ向かいました。
景色が見えなくても自分の家なので、麻里菜は感覚で洗面台まで行くことができました。照明のスイッチも感覚でつけました。
麻里菜は両目を押さえていた手を放しました。自分の顔を見た瞬間、麻里菜は膝の力が抜け、くずおれてしまいました。
額に『目』があったのです。
鏡越しにその目が麻里菜を睨みつけているようでした。
「おでこに……目が……!」
麻里菜は立ち上がり、もう一度鏡を見ます。
今度は口が閉じられなくなりました。
麻里菜の黒目の部分が空色になっていたのです。その上、瞳がぐるぐると渦を巻いているではありませんか。
それだけではありません。金髪になっていたのです。
麻里菜は自分の身に何が起こったのか分からず、泣いてしまいました。
「私は…『化け物』になってしまったの……?」
麻里菜は壁に背をつけて座ります。
「どうしたらいいの……?」
頬を伝った涙が手の甲に落ちました。
すると、両手が急に冷たくなりました。涙を拭こうとする手が頬に触れると、微かに冷気を感じました。
「ついには冷気まで……。」
麻里菜は両手で顔を覆いました。指の間からは垂れ下がる髪の毛が見えます。その髪の毛が根元から元の色に戻ったのです。
麻里菜が手を放すと、また金髪になるのです。
「顔を隠すと元に戻るの……?」
麻里菜は鏡を見ました。思い当たる節があったのでしょう。右手で下から顔を隠していきました。
ちょうど、額のところで元の姿に戻りました。
「やっぱり、この『目』が原因だったのね。」
麻里菜は確信します。
「でも……ずっと手で隠すわけにはいかないし……。」
麻里菜は両手を見ました。
「この冷気……うまいこと使えるかな……。」
麻里菜が両手を握りしめると、冷気はいっそう強くなり、氷の粒が舞うようになりました。手を開くと、氷の粒はくるくると渦を巻き始め、合体していきます。
「わぁ……。」
麻里菜は思わず見惚れていました。
やがて氷の粒は、小さな長方形のシートになっていました。麻里菜はそのシートをつまみます。
「すごい!氷なのに冷たくない。布みたいにしなやかで、薄っぺらいし。の割には丈夫だし。」
表裏や洗面台の照明で透かして見ても、見た目は普通の氷です。
「不思議……。」
そして、麻里菜は鏡で位置を確認しながら、氷のシートを額の目に貼りつけました。すると、麻里菜の瞳と髪が元の色に戻りました。
「よかった……戻った……!」
麻里菜は鏡に向かって笑顔を作ります。
しかし、このときの麻里菜は知る由もありませんでした。
自分の驚くべき正体を知ることになるとは。
次話は『2.過去』です。
サブタイトルの通り、麻里菜の過去が明かされます。
それは悲しく、辛いものでした......。
ぜひ評価と感想をお書きください!私へのアドバイスも書いていただけると嬉しいです。
麻里菜の第一印象は?
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ワイワイと話す明るい人
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静かで穏やかな人
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言いたいことはハッキリ言うしっかり者
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怖いものが苦手で臆病な人
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その他