剣に化けるまで   作:にんころ

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行間を意識して書きました。もし読みづらいとかありましたらコメントよろしくお願いします。


第三章:理性は静かに。感情は鮮烈に。

ー地獄を見たー

 

戦場には何も無かった。死体と泣き叫ぶ弱者、それと爆音が鳴り響くだけだった

 

ー地獄を見たー

 

間接的な物だった。目に見える物では無かった。だが人の本性を見てしまった俺は、さながらそこが地獄に見えた

 

ー最後に無力を知ったー

 

なんて事はない。師匠が殺されたのだ、、助けた筈の人々に。何も出来はしなかった、、魔法が使えるからっていい気になっていた。師匠なら死なないと何処かで思っていた。

師匠との旅で最後に得た物は正義に解を見つける使命と圧倒的無力感だった、、、

 

(俺はまだ弱い、ベルを守れなかった)

 

後悔の念が押し寄せて来た。普通の人だったら仕方ないとかしょうがないと言うだろう。だが、この男にそれは出来ない、、許されない、、正義を探し力を求めると言う事は自分に理性の鎖を巻き付ける事と相違ない。

 

(ベル待ってろ、お前を一人にはしないっ)

 

バベルへ必死こいて走る無様に転びそうになっても前に進む、、また後悔しないように。

少しずつ、だが確実に、自分が違う物に侵食されている事に今はまだ、誰も気がついていない。

 

 

ここはダンジョンの中、防具も着けずに戦う少年が一人

(ここどこだろう)

なんて能天気な事だろうか、理性をやっと取り戻した所は僕の未踏の地

 

(5階層、、、いや6階層)

曖昧な記憶を辿り、自分の下った階段の数を計算した。

そして理性が戻ったとは言え、まだ熱が冷めない僕に引き返すと言う選択肢は無かった。

 

「はっ、は、、」

口から漏れる息が乱れる。疲労は思っていたより蓄積されているらしい。

 

(そういえばシロウを置いて来てしまった)

ベルは四度目の置いてけぼりを使っていた。流石に今回は怒られる、そんな事を考えていたら。

 

(、、ここは)

広間に出たらしい。正方形の形をしており視界を隔てるものは何一つない。

僕は部屋の半ばまで足を進め中央付近で立ち止まる。周囲を見渡しても来た道以外は無いようだ。

行き止まりだとわかり引き返そうとした直後。

ピキリ、と

静まり返っていた広間に響く音、僕は顔を上げて周囲を見渡す。

亀裂から現れたモンスターはウォーシャドウ身の丈160cmほどはある人型モンスター。黒一色の体には毛や皮などは見受けられず唯一、十字の形を描く頭部に顔面と思しき真円状のパーツ。

6階層出現モンスター、[ウォーシャドウ]

 

「・・ッ!」

がしゃりっと後方からも上がる音に振り向けば、もう四匹のウォーシャドウが同じように産まれ落ちていた。

そして囲むように四方を包囲された僕は確信する。

 

(今の僕じゃ勝てない)

この五匹を一気に相手する事は出来ない。

(ああ、僕は死ぬのか)

絶望感が押し寄せて来た。まだ憧れの人に追いついていないのに

(、、神さま。シロウ。ごめん)

心は折れかけていた僕だった。無理だった最初から僕みたいな泣き虫な人間があの人に追いつくなんて。

諦めかけていた心に喝を入れるかのような。鋭く風を切る音が聞こえた。

「ヒュッ」

そしてその音源がウォーシャドウの頭を貫く。こんな芸当が出来る人なんて一人しか居ない。

 

「何諦めてんだベル!!お前ヘスティア様との約束を破る気か!?」

 

「・・っ」

(そうだ僕は生きなければいけないんだ。僕はもう一人だけの命じゃない)

 

 

シロウside

 

ダンジョンの上層を探しても一向に見つからないベル。

(まさか未踏の階層まで行って無いよなぁ)

正直ありえると思っている自分がいる。ベルは多分理性がきかない状態だろう、強くなる為にそんな無謀を犯しても不思議ではない。

 

「・・・」

何か聞こえた気がした。呼ばれている気がする。何か懐かしい様なそんな不思議な感覚に包まれながらなすがままに歩く。そして、、居た。

だがモンスターに囲まれているベルの顔は絶望した人のそれだった。

頭に一瞬で血がのぼるのがわかった。激情を押し殺して矢を射る。そんな精神状態でも外さない自分に驚いたがそんな事はどうでもいい。

 

「何諦めてんだベル!!お前ヘスティア様との約束を破る気か!?」

そう何より一番頭にきているのはベルが諦めてヘスティア様を泣かせる事だった。俺にとってもベルにとっても恩神であるあの神との約束を諦める事が許せなかった

 

強化開始<トレースオン>

魔法で拳を強化してモンスターにひた走る。さっきの一喝でベルは再帰したのか鋭い眼光が瞳に宿っていた

 

(いい男の面構えだ)

そう思いながらウォーシャドウに飛びかかる。二匹同時に相手するのは至難の業だがベルに負けていられないのでやるしかない。

「はっ!」

右から伸びてきた手を強化した包帯でガードして巻き付ける。それと同時に腕力強化も施して左の敵にぶつける。

「だぁぁあッ!」

泥臭い戦法だが大きな隙が出来たのでその間に矢を射る。

動く的だろうが何だろうが矢を射れば集中力が上がる俺にとっては関係なかった。

「ヒュッ、、スト!」

二匹の頭を同時に貫通した。

 

「ベル!」

敵を打倒した安心感に浸る時間も無いまま一匹また一匹と増えていき、唯一の通路を塞がれてしまった

 

「シロウ、僕は強くなりたいんだ。」

鋭い眼光が俺を射抜く。

 

(そうだベルは今強くなろうとしている。俺も強くならなきゃ、こんな所で逃げてなんかいられない!)

「ああ、ベルしょうがないから俺も付き合ってやるよ、こんな所で逃げたら男じゃねぇよな」

 

ベルは安心した様な笑顔を俺に向けてくる。

高揚した心に呼応してステータスが熱くなる。イメージが強固になる。

 

「やってやろうよシロウ」

「ああ!こんな所でくたばる訳にはいかないんでね」

決意をより強固にし、泥臭い戦いが始まった。

 

 

 

 

 

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