剣に化けるまで   作:にんころ

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第五章:予感と直感と

ダンジョン四階層。

 

俺は先に戦闘を終えたのでベルの戦闘を眺めた。

(ベル、お前は強くなったな)

少し羨ましいような、気がしないでもないが。俺には俺のペースがあると納得していた。

「ギィ!」

考え事をしていたら後ろからダンジョン・リザードが襲ってきたが強化した拳で頭蓋骨を粉砕して沈黙させた。

 

「ベル、そろそろ帰るぞ」

「うん、そうだね」

そんな話をしつつダンジョンを上がり、始まりの道と呼ばれる一階層

に出た。

 

「シロウ!あれ何!?」

「ん?」

ベルの指さした方向を見てみると、檻に入ったモンスターが居た。

 

「ああ、なんかモンスターフィリアって言うので使うらしいぞ」

「何それ?」

「ベルと同じ時期にオラリオに来たんだから見たことないよ」

「そうだよねー」

祭りの話で盛り上がりながらシャワー室へ歩を進めた。

 

 

「・・あんた、いつまでそうやっているつもりよ?」

「・・・」

「私、これでも忙しいんだけど?」

「・・・」

「そこで縮こまってられると、気がそがれて仕事の効率落ちるんだけど?」

「・・・」

「ヘスティア?」

「・・・はぁ」

 

神の宴があったあの日、ヘスティアから鍛治の依頼をされた。友人のよしみで格安にするのも子供達の努力を蔑ろにする事なので論外のなだが。ヘスティアは宴が終わった後も何度も何度も頭を下げてきて現在に至る。

 

「そもそも、あんたは昨日から何やってるの?なんなのよ、その格好」

「・・土下座」

「ドゲザ?」

「これをすれば何をしたって許されて、何を頼んでも頷いてもらえる最終兵器ってタケから聞いた」

もう無理だ、とヘファイストスは嘆息。仕事に身が入らないので必死に頼み込む理由を聞く事にした。

 

「ヘスティア、教えてちょうだい。どうしてあんたがそうまでするのか」

「今あの子達は変わろうとしてるっ。一つの目標を見つけて、ベル君は、高く険しい道のりを走り出そうとている!シロウ君は自分に足りない物を必死に探している!だから欲しい!あの子を手助けしてやれる力が!あの子達の道を切り開く武器が!」

視線は床に向けたまま。ヘファイストスの方を見向きもせずに言葉を続ける。

「僕はあの子達に助けられてばっかだっ!ていうか、ひたすら養ってもらってるだけだ!ボクはあの子達に何もしてやれていない!そんなのは嫌なんだよ、、、」

最後の方は消え入りそうな言葉だったがしかしヘファイストスを動かすに足りた。

 

「わかったわ。作ってあげる、あんたの子達にね」

顔を振り上げたヘスティアに、ヘファイストスはかたをすくめる。

「私が頷かなきゃ梃子でも動かないでしょ」

「・・・ありがとうヘファイストス!」

 

昔のグータラしていた引きこもり駄女神よりは今のヘスティアになら手を貸すのもやぶさかではないと思っている自分がいた。

「で、言っておくけど、ちゃんと代価は払うのよ」

天下のヘファイストス・ファミリアがタダ働きするのもありえない。

「わ、わかってるさ僕だってやるときはやるんだっ」

ヘファイストスは壁に作り付けされた飾り棚へ向かった。

「あんたの子達が使う得物は?」

「シロウ君はわからないけどベル君はナイフだよ」

わからないとは何だと聞き返したい。さっきまで必死に懇願してきたのにおかしな話だと思って聞き返した。

「わからないって何よ。さっきまで必死に作ってくれって言ってたじゃない」

 

「実はシロウには普通の武器が使えないんだ」

「普通の武器が使えない?」

何なのだそれは冒険者としてやっていけないじゃないか。

「君は親友だから教えるけど、このスキルが関係してるんじゃないかと思ってるんだ」

そう言って用紙を渡してきた。

 

 

<スキル>

[剣化の加護]

・魔法を使う度体は剣になる

・経験値は戦闘では得られず武器から得られる

 

「これは、何?」

上の文も気になるが一番は下の文だ

「経験値は武器から得られって、、」

「なんだいそんなに凄い事なのかい?」

「凄いなんて物じゃないわよ、、鍛治師の努力をこの子は一目でわかるって事なのよ!?」

「!?」

ヘスティアも気がついたようだった。そう、この意味は鍛治師にしか分かりづらいかも知れない事だが、武器から経験値を得られると言うのはつまり武器そのものの構造、素材、歴史、その全てを一目で把握すると言う事に他ならない。

「ねぇヘスティア、シロウ君とやらに少し会えないかしら?」

「なぜだい?」

「少し確認したい事があるの」

そう言い放つ私の顔はきっと嬉々としているでしょう。

 

 

ヘスティア様が出かけてから三日の朝。まだヘスティア様は帰ってきていない。

「ベル、そろそろ行くぞー」

「ちょっと待って」

そんなやりとりをしながらメインストリートを歩いていると。

「おーい、待つにゃそこのバンダナー!」

俺か?と確認すると頷いているので駆け寄ると。

「どうしたちんちくりん!」

「ミャーはちんちくりんじゃないのニャ!」

この三日間ずっと豊穣の女主人に赴きこのアーニャと仲よくなったのだ。

 

「それでどうしたアーニャ」

「ちょっと面倒ニャこと頼みたいニャ。はい、コレ」

「これはベルに頼んだ方がシルが喜ぶと思うぞ」

「そうなのかニャ?なら白髪頭に任せるニャ。これをあのおっちょこちょいに渡して欲しいニャ」

そう言ってベルに渡したのはがま口財布を渡していたがベルはいまだに何のこっちゃって顔をしていた。

説明をリューに任せたアーニャは手持ち無沙汰みたいなので喋りかけてみた。

 

「アーニャは祭りには行けないんだろ?」

「ミャーは店があるから行けないのニャ」

「なぁアーニャお前から見てベルはどう見える?」

素朴な疑問がふと湧いた。

「あんな、なよなよした男は好みじゃないのニャ!もっとカッコいい男はいっぱいいるのにミャーにはシルが理解出来ないのニャ」

なるほど外見はやはりそう見えているのかと納得する反面少し悲しくもあった。自分の家族はもっと凄いんだぞ!っと胸を張って言いたいが。

(まぁあんなにあたふたしてたら仕方ない)

そんなこんなでベルとリューさんのやりとりは終わったのかこちらに駆け寄ってくる。

 

「シロウ、シルさんにこれ渡さないと行けないんだけど一緒についてくる?」

少し思案したが。すぐに答えは出た。

「いや俺は別行動させてもらうわ」

そう言ってベルとは別れた。

 

 

一人で祭りを練り歩くぼーっと歩いていたので覚えていないが出店を見てるだけでも楽しかった。

そして少し歩いていたら。

「あっ」

「アイズたんどうしたん?」

「・・・」

出会いたくない二人に出会ってしまった。あの酒場の件以来の再会だが正直アイズさんは別としてロキは死ぬ程苦手なのである。

 

「なんや自分一人で祭りかいな寂しいやっちゃな〜」

「いや、仲間は少し野暮用で逃げられたんでね」

それじゃって感じでアイズさん達から背を向けると。

「まっ待って」

呼び止められた。

 

「えっとあの子は、、怖がっていました、か?」

不安な顔をしてこちらに問いかけて来た。

「あー、アイズさんには感謝してましたよ。ただベルは恥ずかしくて逃げただけなんで気にしない方が良いですよ」

そんな言葉を吐き捨てるように立ち去ろうとするとロキが問いかけて来た。

 

「自分前の言葉に後悔はないんやな?」

そう問いかけてくる。そんな物決まっている。

「ええ、あの言葉に後悔なんて無いですよ」

そう言って返した。

「なら何であの時ベートに反論も反撃もしなかったんや?」

そんな物は決まっている。

「俺はまだ弱いから。勝てないのならまだ挑まないそんな時間があるのなら自分の剣を研ぎますよ」

そう言い残して立ち去った。

 

「ふん、それが実現することを願ってるで?挑んでくるもんに容赦なんてせんからな」

鋭い視線と共後ろからかけられた言葉だった。

 

ロキと会ってから少し経ったが様子がおかしい。ギルドの職員が慌ただしくしているように見受けられた。

「なぁあんた一体何の騒ぎだ?」

相手の男はこちらを見て怪訝そうな顔をするが俺の戦闘服を見て顔色を変えた。

 

「あんた冒険者か?」

「そうだが?」

「なら少し手を貸して欲しい」

最初に頭を掠めていた不安感が徐々に大きくなりその一言で爆発する。

「モンスターが脱走しちまった」

聴き終える前にベルを探して走り始めた。

「ベル!どこにいる!?」

あのトラブルメーカーの事だ確実に巻き込まれているに違いない。

 

探し回ったが一向にみつからない。焦りが募るばかりである。

(まさか、、)

頭によぎる可能性は一つダイダロス通り。あそこは地上の迷宮と言われる程入り組んでいて住人ですら迷うような場所だ。

 

(ベル!)

絶望感に打ちひしがれていると何かに呼ばれている感覚に陥った。

(この感覚どこかで)

前の酒場事件の時ベルを追っていた時にも感じた感覚。

それを感覚を信じて走っていると。

「ベル!」

「シロウ!?」「シロウ君!」

見つけた。今まさにベルがステイタス更新をしている最中だった。

「俺が足止めするからちゃっちゃとしろよ!」

ヘスティア様が強く頷くのを確認してシルバーバックと対峙する。

 

弓は持ってきていないので体一つで戦わなければいけない。

「ガァァァァアアッ!!」

「くっ!」

拳で吹き飛ばされるのを何とか包帯でガードしつつ耐えていた。右から来る拳は包帯で受け。左から来る拳は半身になってかわしていた。

 

そしてその時が来る。

「おまたせシロウ!」

「遅いぞベル」

俺の相棒が横に立った。頼もしさを感じている。

合図も無く二人同時にシルバーバック目掛けて駆け抜ける。

「はっ」

まず先手を打ったのは俺上にぶら下がっているタオルを顔面に被せて強化した拳で一撃を見舞う。

 

「ガァァァァアアッ!」

暴れるが目を潰された事により混乱状態に陥るシルバーバックだったが俺とベルがその隙を見逃す事も無く。

「はぁぁぁああっ!!」

ベルがナイフをシルバーバックに突きつけた。

「ガァッ!」

だが浅かったのかベルは振り回されるが負けじとナイフに縋り付く。それはまるで何かを待つように、そして。

 

「せいっ!」

ありったけ魔力で強化された蹴りがナイフを直撃し勢い余ってシルバーバックを貫通した。

「ーーーーッッ!!」

歓声が響き渡る。俺、ベル対シルバーバックの戦いの行方を見守っていた、ダイダロス通りの住人達がこうふんを爆発させたのだ。

 

そんな中一人だけ意識が薄れ行く者が一人居た。

「ベル、お疲れ」

そう言い残して意識は途絶えた。

 

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