「カエルの体内って、いい感じに生温かいんですね……知りたくもない情報が増えました……」
と、僕の背に背負われためぐみんが暗く沈んだ声でそう言った。
ちなみに、何故僕がめぐみんを背負っているのかと言うと、爆裂魔法を使用した影響で一歩も動けなくなった彼女をカズマが運ぶ事を渋ったからだ。……まあ、カエルの粘液まみれになっためぐみんに触りたくないと思うのは分かる。
「うえっ……ぐすっ……生臭いよぉ……生臭いよぉ……」
そしてアクアは未だ泣き止む事なく僕の服の裾を掴んで離してくれない。別にいいのだけど、せめて泣き止んで欲しい。何もしていないのに僕が泣かせてしまったような気になって来る。
街までの道すがらめぐみんに聞いたのだが、魔法を使う者は自身の限界を超えて魔力を使うと、魔力の代わりに生命力を消費する事になってしまうらしい。
……ステータスを見る限り、他の項目に比べて生命力の値が極端に低い。魔力が高いからそうそう生命力を消耗する事はないとは思うが、注意しておこう。特に、僕が得たクラスカードは使用している間常時魔力を消費してしまうようだし。
ゲームのような世界のこの異世界も、死んでしまえばそれまでの現実なのだから。
「今後は、緊急時以外爆裂魔法は使用禁止だな。これからは、他の魔法で頑張ってくれよ、めぐみん」
別に構わないのだけど、僕に色々と押し付けて手が空いているカズマがめぐみんにそう言った。別に気にしてはいないのだけれど。
「……ません」
首に回されためぐみんの腕が締まり、起伏に乏しい彼女の体が更に背中に押し付けられた。
「え? なんだって?」
離れていた聞き取れなかったらしいカズマに、めぐみんは言い辛そうに口を開いた。
「……私には、爆裂魔法以外の魔法は使えません」
「……マジか」
「…………マジです」
カズマとめぐみんが沈黙する中、疑問を覚えたからかようやく泣き止んでくれたアクアが会話に参加する。
「どういう事? 爆裂魔法を習得出来るほどのスキルポイントがあれば、他の魔法だって習得出来るはずよ?」
「……スキルポイントって?」
「……すまん。俺も知らん」
聞き覚えはある。冒険者ギルドの受付の女性が確かに口にしていた。が、詳しい話を聞く事を失念していた。
冒険者としても転生者としても先輩となるカズマも、スキルポイントに関しては知らないらしい。
なんとなく気になり始めたのだが、カズマも微妙に――いや、何も言うまい。
疑問を顔に浮かべる僕たちを見て、アクアが得意気に説明を口にし始めた。
「スキルポイントっていうのはね、職業に就いた時に貰える、スキルを習得するために必要なポイントよ。優秀な者ほど初期ポイントは多くて、このポイントを振り分けて色々なスキルを習得するの。例えば、超優秀な私なんかはまず初めに宴会芸スキルを全部習得して、それからアークプリーストのスキルを全部習得したわ」
「へえ……流石、と言うか、凄いんだね、アクアは」
「ふふん。そうでしょう? やっぱりライはカズマなんかとは違って優秀ね。もっと私の偉大さを称えてもいいのよ?」
「あとでね」
つまりそれだけポイントに余裕があると言う事なのだと思うのだが……宴会芸スキルとはどこで使うのだろう。
将来的に大道芸で生きて行くつもりなのだろうか、この女神は。
「ところで、宴会芸スキルってのは何に使うものなんだ?」
「スキルは、職業や個人によって習得できる種類が限られてくるわ。例えば、水が苦手な人は氷結や水属性のスキルを習得する際に通常よりも多くのポイントを消費したり、最悪習得事態ができなかったり。……で、爆発系の魔法は複合魔法って言って、火や風系列の魔法の深い知識が必要な魔法なの。つまり、爆発系の魔法を習得できるくらいなら、他の属性の魔法なんて簡単に習得できるはずなのよ」
カズマの質問をさらりと流している辺り、聞かない方がいいんだろうな。
聞かない方がいい気もする。
「つまり、爆裂魔法なんて高位の魔法が使えるのなら、下位の魔法が使えないわけがない、と」
「そう言う事。やっぱりライは優秀ね。どこかの誰かさんとは大違いよ」
「そうだな。俺もカエルに三度も食われたどこかの誰かさんよりもライの方がいいわ。……で、宴会芸スキルはどこで使うんだ?」
微妙に僕の首を締めつつ、めぐみんがぽつりと呟いた。
「……私は爆裂魔法をこよなく愛するアークウィザード。爆発系統の魔法が好きなんじゃないんです。爆裂魔法だけが好きなのです」
僕からすれば爆発も爆裂も同じに思えるのだが……彼女にとっては明確に違うものらしい。
こだわり、というやつか。魔法使いにはそう言ったこだわりがあるのかもしれない。不用意に突っ込むのは止めておこう。
……まだ僕は、魔法に対する対抗手段を有していない。敵対は可能な限り避けなければならない。
「確かに、他のスキルを取れば楽に冒険ができるでしょう。火、水、土、風。この基本属性のスキルを取っておくだけでも違うでしょう。……でも、駄目なのです。私は、爆裂魔法しか愛せない。例え、今の魔力では一日一発が限界だとしても。例え、魔法を使った後に倒れるとしても。それでも私は、爆裂魔法しか愛せない! だって私は、爆裂魔法を使うためにアークウィザードになったのだから!」
「素晴らしい! 素晴らしいわ! 非効率的でもロマンを追い求める姿に、私は感動したわ!」
感動したのか……
どうやらアクアとめぐみんは互いに気が合う様子だ。多分駄目な方向だと思うが、仲良くなる事はいいことだ。
それはそうとめぐみんだ。
彼女が熱弁を奮うだけあって、確かに爆裂魔法は強力無比。あれほどの大威力なら大抵の相手は仕留められるに違いない。例えば――魔王ですら、直撃を喰らって無事でいられるかどうか。直接魔王と相対したわけではないが、めぐみんの爆裂魔法にはそう思わせるだけの説得力があった。
だが、問題は一日一度の回数制限だ。
はっきり言って、いくら強力な魔法であろうと、一日一度きりでは話にならない。おそらく、めぐみんがアークウィザードという上級職でありながらどのパーティーにも所属していなかった理由はそれだ。爆裂魔法がいかに強力だろうと――いや、強力だからこそその用途は限られる。
広い場所で、攻撃範囲内に味方がおらず、相手が一歩も動かない状況。……群れた雑魚相手ぐらいにしか使い道がない。しかも、それで決め切れなかったら一気にお荷物だ。
これで採用する方がどうかしている。
僕の隣を歩くカズマも同様の結論に達したのか、妙に晴れやかな笑顔をめぐみんに向けていた。
「そっか。多分茨の道だろうけど頑張れよ。応援しているからさ。おっ、街が見えて来たな。じゃあギルドに着いたら今回の報酬を山分けにしよう。うん。まあ、機会があればまた会う事もあるだろう」
「ふっ。我の願いは爆裂魔法を放つ事のみ。報酬はおまけにすぎず、なんなら山分けではなく食事とお風呂とその他雑費を出して貰えるのなら我は無報酬ですらいいと思っている」
それは実質僕たちが全て負担している事にならないだろうか。
「いやいや。めぐみんの強力な力は俺たちみたいな弱小パーティーには宝の持ち腐れすぎる。俺たちには普通の魔法使いで十分すぎる。ほら、俺とライなんて最弱の冒険者だしさ。なあ、ライ!」
いや、そこで僕に同意を求められても。
そしてめぐみん。気持ちは分かるけど縋るように腕に力を込めないで欲しい。首が締まる。
……うん。
カズマの言いたい事はよく分かる。多分それが正しい選択なんだと思う。
普通なら、めぐみんのような極端にすぎる戦力など編成しない。戦力外もいいとこだ。けど――カズマには悪いが、そもそも僕は戦力を期待していたわけじゃない。
僕が必要としていたのは、あくまでカズマの注目を、詮索を、僕に向けさせないための壁役だ。
カズマも、アクアも、めぐみんも。僕が魔王を下し、願いを叶えるための踏み台にすぎない。
だから、僕は意識した笑みを浮かべて、口を開いた。
「いいじゃないか、カズマ。めぐみんはこのままで」
「……えっ?」
僕の言葉が余程予想外だったのか、カズマは唖然とした表情で僕を見ていた。
……気持ちはよく分かる。僕だって何を言っているのかと、逆の立場であれば同じ事を考えただろう。
「いやいやいや。えっ? マジで言ってるの?」
「マジだ。……よく考えてみてくれ、カズマ」
さて、ここからが腕の見せ所。いかにしてカズマを納得させるかが重要だ。
まあ、これまでのカズマを見ている限り、争い事とは無縁に、平和に暮らして来たのだろう。命をかけた交渉など経験したこともないのだろう。
何が言いたいのかと言えば――僕の特技の一つは弁論だ。
「――そうか……そう言われればそうだな! 確かにめぐみんがいてくれれば今後どんなモンスターが来ても安全確実に倒せるしな! めぐみん、これからよろしくな!」
――と、まあカズマはちょろかった。
めぐみんの爆裂魔法の火力は文字通り最強であり、その特性もあって他に習得している人はほぼいないであろうこと。
めぐみんがいた場合といない場合では討伐における危険度がどれだけ違うかという事。
爆裂魔法使用後のデメリットについてはレベルが上がればある程度緩和されるであろうこと。
これらを多少過剰に盛り上げつつ熱弁を揮えばカズマはあっさり納得した。
そして――
「ふっ、ふふっ、ふははっははははははっ! 流石だな、
僕の背中でめぐみんが呵々大笑していた。
自分の爆裂魔法が認められた事が余程嬉しかったのだろうか。
利用するための方便にすぎない言葉でこうも喜ばれると罪悪感で――いや、違う。寝惚けるな。そんな思考は切り捨てろ。
心を偽れ。本音を隠せ。痛みなど塗り潰せ。
出来るはずだ。得意だったはずだ。僕の名前はライ。――嘘つきなのだから。
「あー、うん。そこまで喜ぶとは思ってなかったんだけど、耳元で大きな声を出さないでくれ」
「あっ、すみません。嬉しくて、つい」
「分かってくれて何より。……ところで、白銀の騎士って?」
「ライの通り名です。色々悩んだ結果、今回はシンプルに名付けてみました。かっこいいでしょう?」
「恥ずかしいんだけど」
至極当然と言った顔で言われたのだが、何故急にそんな中学生が考えたような通り名を……ああ、年齢的にはちょうどか。
僕のささやかな抗議の声は聞き入れられる事はなく、めぐみんは強く、僕に体を預けて来た。
そっと、顔を寄せて、彼女が囁く。
「……ありがとうございます」
「…………うん。これから、よろしく」
僕は、今、どんな顔をしているのだろうか。
上手く、表情を作れているだろうか。
肩に顔を沈めためぐみんの、心の底から嬉しそうな声に。
僕は、どうにかそんな言葉を絞り出した。
§
「そう言えば聞くのを忘れてたんだけどさ、スキルってのはどうやって習得するんだ?」
カエル討伐の翌日、ギルド内に集合し遅めの昼食をとっていた僕たちは、カズマのふとした疑問の言葉に手を止めた。
スキル――そう言えばあったな、そんなものも。
僕のギアスも、分類上はスキルになっていた。この世界に来た影響でギアスの力が変異している可能性もあるが……生憎、それを検証する気にはなれない。
それはそうと、冒険者登録をした時にも言われていた。確か、僕とカズマの職業……《冒険者》は他の全てのスキルを習得出来るのだと。そうなると、僕のギアスをカズマが習得できる可能性もあるのか……? 危険だ。クラスカード以上にギアスに関しては秘密にしなければ。
場合によっては、対象の殺害も視野に入れなければならない。
「スキルの習得ですか? そんなもの、カードに出ている現在習得可能なスキルってところから……ああ、カズマの職業は冒険者でしたね。そう言えば、ライの職業はなんなのですか?」
「僕の職業も冒険者、カズマと同じだよ。……それよりめぐみん、こっち向いて」
「うむっ?」
お金がなく、僕たちと出会う前まではろくな食事を取れていなかったらしいめぐみんはテーブルマナーそっちのけで定食を貪るように食べていた。そのせいで口元が食べカスやらソースやらでべとべとだ。
呼びかけて振り向かせためぐみんの口元をハンカチで拭う。
ちなみにアクアは手近な店員を捕まえておかわりを要求していた。宗教家ではないが、こう……女神の威厳とかはいいのだろうか。
人の気も知らないで暢気なものだ……いや、知られても困るか。
「ぷはっ……ありがとうございます。ええと、初期職業と言われる冒険者は、誰かにスキルを教えてもらうのです。目で見て、スキルの使用方法を教えてもらうとカードに習得可能スキルという項目が現れるので、そこからポイントを使ってそれを選べば習得完了なのです」
「へえ……つまり、僕らがめぐみんから爆裂魔法を教えてもらえば習得出来る、と」
「その通りです!」
うっかり僕がそんな事を口にしてしまったせいで、めぐみんが赤い瞳を輝かせて詰め寄った。失策だ。
一体何が彼女をここまで駆り立てるのか……めぐみんの爆裂魔法へのこだわりには並々ならぬものを感じる。
「その通りですよライ! それでこそ我が盟友! 深淵なる白夜の騎士! 習得に必要なポイントは馬鹿にみたいに食いますが、冒険者はアークウィザード以外で唯一爆裂魔法を習得出来る職業です! 爆裂魔法を覚えたいのなら幾らでも教えて上げましょう。いえ、むしろ爆裂魔法以外に覚える必要のある魔法などあるのでしょうか? いや、ない!」
「反語を使ってまで強調するほどか……」
僕の隣からカズマの呟きが聞こえるが、予想以上にぐいぐいくるめぐみんを落ち着かせる気はまるでないらしい。
昨日ギルドへの報告を押し付けた恨みでもあるのか。どちらかといえば恨みがあるのは僕の方なのだが。
いや、それはともかく近い。とても近い。ほんの少し唇を突き出せば口づけを交わせるほどに近い。
慄くように顔を引きながら、僕は苦笑を浮かべた。
「いや……せっかくだけど遠慮しておくよ。めぐみんは僕らの切り札。いざという時の決戦戦力だ。職業冒険者の僕たちが爆裂魔法を習得したところで威力が落ちるなら、パーティーに足りない部分を補う事にポイントを使った方が利口だろう?」
「む……確かに一理ありますね。……決戦戦力……切り札……ふふっ、ふふふふふふふふふっ……」
苦し紛れの僕の言葉がめぐみんの何かしらの琴線に触れたのか、納得したように着席した後にやけながらぶつぶつと何やら呟いている。
何を言っているかは聞こえない。僕には聞こえない。ああ、聞こえないとも。
なにやら再び恥ずかしい二つ名を恥ずかしげもなく与えられた気もするが、それも僕には聞こえなかった。
「つーかさ、爆裂魔法を習得するにしたって、俺のスキルポイントは3なんだけど、これで足りるのか?」
「冒険者が爆裂魔法を習得しようとするならスキルポイントの10や20じゃきかないわよ。十年ぐらいかけてレベルを上げて、その間一切他のスキルにポイントを振らなかったら……多分習得出来るんじゃない?」
「待てるかそんなもん」
まあ、実用的でない事は確かだ。
しかし、カズマのスキルポイントが3……? 僕のポイントはカズマのそれを優に超えているが、レベルは変わらず1のままだ。これもまた個人差があるのか?
「カズマのレベルは今どのくらいなんだ?」
「俺? 俺は今4だけど……そう言うお前はどうなんだよ」
「……僕はまだレベル1だよ」
「1!? おいおい、冒険者はレベルが上がりやすくて、あのカエルも駆け出し冒険者がレベルを上げやすい部類のモンスターなんだぜ? それが全然上がってないってどういう事だよ」
「僕に言われても……なんでだろう?」
カズマと二人、首を傾げたが答えが分かるはずもない。
答えの分からない問題を延々と考えるのも建設的ではない。レベルはそのうち上がるだろうと結論付けて、僕たちはまず手頃に使えそうなスキルを覚えているであろうアクア――爆裂道を突き進むめぐみんは選択肢から除外する――にご教授していただく事にした。
「というわけですまないが、アクア。何か手頃なスキルを教えてくれないか? 初めてだからなるべくポイントを使わないもので頼む」
「ふふん。まあ、ライがどうしてもと言うなら教えてあげるわ。このアクア様の半端ないスキルを
「なんかお前俺とライとで対応違いすぎねえ?」
特別に、をやけに強調して得意気に胸を張るアクア。彼女の耳にカズマの声は果たして届いているのだろうか。
そして彼女は僕の話を聞いていてくれたのだろうか。
身近い付き合いだが、扱い方はなんとなく掴めて来た。
「いい? まずはこのコップを見ててね。この水の入ったコップを自分の頭の上に落ちないように載せる。ほら、やってみて」
周囲の目を気にしつつも、カズマはアクアがやったようにコップを頭の上に載せた。これがどんなスキルかは分からないが、僕もカズマに習ってコップを頭の上に載せようと――って、ちょっと待て。よく思い出せ、僕。昨日アクアはなんて言っていたかを思い出せ。
頬が引きつるのを自覚しながら、一縷の望みをかけて僕は本人に尋ねてみる事にした。
「ねえ、これもしかして宴会芸スキルなんじゃないか?」
「ええ、そうよ?」
「誰が宴会芸スキル教えろっつったこの駄女神!」
「ええーーーーーー!?」
僕の問いかけにさも当然のように肯定したアクアはカズマの罵声にショックを受けたのか、いじけたように次の工程で使う予定だったのだろう植物の種をテーブルの上で転がしている。それでも頭の上のコップは落ちない。……どうなっているのだろうか。
ちょっと宴会芸スキルに興味が湧いたがそれはそれ。流石にこれはフォローする気も起きない。
ため息をつきながら僕は手にしたコップをテーブルに置いた。
「あっはっは! 面白いね君たち。ねえ、君たちがダクネスの入りたがってるパーティーの人? 有用なスキルが欲しいのなら、盗賊スキルなんかがお勧めだよ?」
明らかに僕たちへ向けられた言葉に、カズマ共々視線を動かす。
声の発生源は隣のテーブル。そこに、二人の女性がいた。
声をかけて来たのは頬に小さな刀傷のある、快活そうな銀髪の女の子。歳は……見た限り僕たちとそう変わらないように見える。その隣には僕にとって馴染みのある金属鎧を身に付けた長い金髪の女の子。凛々しい顔立ちの彼女は、その装備も相まって騎士を思わせる。
ふと隣を見れば、カズマがその女騎士を見て驚いたように小さく目を見開いていた。
昨日、僕たちと別れた後、ギルドで知り合ったのだろうか……?
「えっと、教えてくれるのはありがたいんですけど、盗賊スキルにはどんなのがあるんでしょう?」
盗賊スキル、という言葉には不穏な物しか感じないのだが。
カズマの問いに銀髪の少女は上機嫌に笑って答えた。
「よくぞ聞いてくれました。盗賊スキルは使えるよー。罠の解除に敵感知。潜伏窃盗、とにかく持ってるだけで役立つスキルが盛りだくさん!」
「でもお高いんでしょう?」
「ノンノン。今ならなんとクリムゾンビア一杯でお買い得! 初期職業の冒険者なら習得にかかるポイントも少ない盗賊スキルはお得だよ? さあ、どうする!?」
「買った!」
……なんだろう、この茶番。
カズマには分かっているらしいこのやり取りはもしかしてこの世界における常識か何かだろうか。正直僕は置いてけぼりだ。
カズマが近くにいた店員を捕まえ少女の要求通り注文しているのを尻目に、僕はなんとなくスキルを教えてくれるという彼女に目を向けた。
「おや? そこの銀髪のイケメンお兄さん。あたしに何かご用かな?」
「……いや、すまない。不躾だった。不快に感じたのなら謝罪する」
「あははっ! お兄さんは真面目さんだねえ。いいよいいよ。こーんなイケメン紳士を間近に見れるなんてこれこそお得だからね!」
少女の言葉に愛想笑いで返し、僕は視線を未だにいじけるアクアに向けた。
何故だろうか。
顔も、性格も、雰囲気も何もかもがまるで違うのに――どうしてだか僕には眼前の少女とアクアが似通って見えた。
作中、ライのレベルが上がっていないのはきちんとした理由があります。
このすばの設定を知ってて、察しのいい人は気付くかも?