「あー……」
矢野を見送ったあと、俺はすぐさま部屋に戻り、ベッドの上にダイブした。
あれだけ汚かった二階の掃除もチート性能な
ゲームはないし、マンガもない。
つまり、特にやることがないのだ……。
「……暇だなぁ」
ベッドの上で寝転がりながら一人呟く。
―――一日中惰眠を貪る。
前はそれだけで幸せだなと思えたのに、この体になってからは、そうは思えなくなった。
燃費が良すぎるというのも考えもので、
今も目が冴えていて、目を閉じてもすぐに開けてしまう現状。
自宅に引きこもっていた時は、携帯を見て時間を潰せたのでそこまで暇だと思わなかったが、最近はどうも携帯を開く気にはなれない。
あの記事を見て以降、ネットに繋ぐことに抵抗があった。ぶっちゃけ、トラウマだ。
それこそ本当に重要な時以外には使わないと決意をするぐらいには。
その為、俺は。
「暇暇暇暇暇暇暇……」
こうして呪詛のように同じ言葉を連呼し、足をバタバタと上下させるほどに暇を実感していた。
常々思う。
――暇なことがこんなに苦痛だとは思わなかった……と。
永遠に暇な時間が続けば良いのに……とか長期休みに入る度に、何度か考えたことがあるが、実際に本当の『暇』を体験してみると三百六十度見方が変わる。
正直、ただの地獄だ。学校行ってた方が刺激があるだけ何倍もマシだった。
引きこもり生活は今日だけではない。
今後ほぼ毎日。
こんな退屈な日々をこれから毎日送っていくなんて、とてもじゃないが耐えられない。
故に――
「ゲームでも買って貰おう……そうしよう」
――故に俺は決意した。矢野が帰ってきたら脅してでも
――早く帰ってきてくれないかなぁ……
そんなことを考えながら、俺は全然動かない時計の針を睨み付けた。
矢野が帰ってきたのは昼過ぎだった。
早く帰ってきてほしいとは思っていたが、流石にそんなに早く帰ってくるとは思いもしなかったので、急いで階段を降りて話を聞いたところ……。
「いや、オレにもよく分からないんだが……当分会社に行かなくていいらしい……安静にしておけだってさ……」
矢野は困った表情で何かよく分からないことを言っていた。
いや……マジで何が起きたんですか……? 会社ってそういうものなんですか?
と、まぁまぁ、
……とりあえず……グッジョブ! これでやっと暇を潰せる。悪く思わないでくれよ、矢野。
俺は矢野の肩に手を置き、ソッと耳元で囁くようにして言った。
「ねぇ、お父さん。暇…………私、超暇なの……このままじゃ暇すぎて、暴走しちゃうかもしれない…………何が言いたいか分かるよね?」