「このっ!!」
「……」
人通りも少なく、廃れていた土地では2人の少女が可愛らしい衣装をはためかせていた。しかし、その衣装とは似合わないほどに激しく動き回り、赤い衣装を着ていた杏子は、長く鋭い槍を振り、空を裂く音と共に何度も地面を蹴り上げ、マミの後を追いかけていた。魔法少女の敵は自分より巨大な魔女だけではない。魔法少女も時には敵になりうる。それを考慮し、マミは杏子に自分に対して攻撃を当てれるようにと指導していた。
マミの動きを見つつ攻撃を繰り出しているにも関わらず、一向に当たる気配はなかった。攻撃の速さを上げようと、体に魔力を巡らせ身体能力の底上げをする。しかし、それでも攻撃が当たる気配はなかった。固有魔法を使ってはいないものの、身体強化に魔法を使っている杏子に対し、マミはその攻撃を何も使わず最小限の動きだけで避けていく。時には紙一重と言ってもいいほどの些細な動きで、杏子の攻撃を避けていた。
「だぁっ……!なんでっ!!当たらないっ……!はぁ……はぁ……!」
「……固有魔法、使っても構わないのよ」
「えぇ!?良いのかよ!」
「全力で当てに来なさいと言ったわよね」
激しい攻撃を繰り出して息を上げている杏子に対し、マミは静かに一定の呼吸を保っていた。この特訓を始める前に、マミの言う通り全力で攻撃を当てるようと言われてはいたが、マミとは経験の差があるとは言え、魔法少女の攻撃を当ててしまえば大きな怪我に繋がりかねない。杏子はマミのことを強く慕っており、万が一のことを考えて勢いのある攻撃を放てずにいた。
特訓を始めてから数分間、力を籠めていないとはいえ、杏子の攻撃はマミに対し掠りもしないでいた。負けず嫌いな所がある杏子は、無意識に徐々に攻撃を強めていくも無駄に終わり、痺れを切らしたのか、淡々と避けるマミに対し魔法で身体強化をするということだけを伝え、何も言わないマミを確認した後、その攻撃を放つも先ほどの通りの結果に終わってしまった。
全力で攻撃を仕掛けて来いとは言われても、一口に魔法とは言え、固有魔法と単純な身体強化をする魔法では訳が違う。無抵抗なマミに対し、魔法少女に非常に効果的な幻惑魔法を使ってしまえば、それこそ勝負が決まってしまうと分かりきっているはずだ。しかし、マミは全力で来いと伝えた。それは、固有魔法の使用も許可していると意味だったのだ。確かにこのまま続けていても、悪戯に杏子の体力が消耗していくだけで終わってしまう。そうなると、杏子が現在持っている強力な手札は固有魔法しか残されてはいない。
「魔法……本当に使っちゃうよ?」
「これは佐倉さんの特訓なの。良いから使ってきなさい」
無理に言っているわけではない。マミの語気はしっかりしたもので、決して余裕を見せているわけではない。それを見越していた特訓だと、マミの真剣な表情からはそう受け取れる。
杏子は荒くなった息を整える。そして、槍をマミに構え、体中に魔力を込め始めると、杏子の体からは赤い煙のようなものが現れ始め、もう一人の杏子を形作る。単純に言えば、これから繰り出される攻撃の手数は二倍にもなるはずなのに、それでもマミの表情は先程と変わらず焦りの一つも見せずにいた。
地面を蹴り上げる音が二つに増える。先程以上の、正真正銘の全力を込めた攻撃だった。魔女を倒すほどの力を秘めているその攻撃を生身で受けてしまえば、マミの体は最悪真っ二つに分かれるだろう。しかし、それでもなお、紙一重で、ほんの少しの動きで二倍の攻撃を軽やかに避けていた。
「(冗談じゃねえぞ!?手加減なんて一切してないのに!)」
杏子の攻撃を先程と変わらず避け続けていく。手数が二倍に増えようと、マミの取る行動は変わりはしなかった。腕や足などを使い、攻撃を受け流すこともしない。杏子の決して遅いとは言えない動きを眼で追い、脚を滑らせ避けていく。
「あなたの力はもっともっとあるはずよ。手数が足りないなら増やしなさい。それでも足りないならもっと増やしなさい。限界まで増やしても足りないなら、相手の視覚に、聴覚に、触覚に訴えかけなさい。あなたの魔法は分身だけではないわ。全てを使い、私を倒しなさい」
これでは足りないと言うように、攻撃を続ける杏子に挑発を入れていく。このままでは自分に攻撃を当てることは叶わず一日が終了してしまうと、急かすように声をかけた。しかし、馬鹿にするような含みは入ってはいない。挑発をしながらもアドバイスを加え、杏子の動きに変化を加えさせるような意図を持ち、杏子の背中を押していく。
「っく……はぁあぁああああ!!」
マミに対し攻撃をし続けている杏子は、魔法を使用し一人で攻撃を仕掛けている時よりもより多くの疲労が溜まり、それでも体にムチを入れるように吠えていた。冷静に杏子の攻撃を対処しているマミに挑発を入れられながらも、師匠であるマミのアドバイスが頭に入り込み、戦いの本能のようなものを焚きつけられ、杏子の体に変化が起きていく
限界を超えていく。電流が走るような感覚が体に流れたような気がする。もしかしたら気のせいかもしれないが、雄叫びを上げると同時に、杏子の体から赤い煙が増えていく。その煙は徐々に大きく、周りに拡散していく。一人、二人、三人と、杏子の攻撃は増えていき、瞬く間に全てを合わせ六人の杏子がマミに対して攻撃を放っていた。
予想通りの杏子の変化に笑みを浮かべながらも、六人の魔法少女から繰り出される圧倒的な物量差に、マミの動きは大きくなっていく。最小限の動きでは避けきれないことを判断したのか、マミの動きにも変化が出始める。
マミの体から細かい魔力の粒子が一瞬吹き、六人の杏子の体を包み込んだ。杏子は攻撃に集中し気づいてはいないが、それを境にマミの動きはまるで、軽やかで繊細なステップを刻むように、徐々に攻撃が増えていくのに合わせていくように、マミも徐々にその足取りを増やしていく。
杏子の手数は六倍に増えていたにも関わらず、無抵抗を貫いているマミに対して一度も攻撃を当てられずにいた。相手はひよっこの魔法少女である自分よりも、数多くの戦いを生き残り続けてきたベテランであり、歴戦の魔法少女ということはマミの弟子になってから、身近でその姿を見てきたからこそ、言葉以上に杏子へと伝わっていた。そして、我侭な自分を、危険を顧みずに特訓に付き合ってくれる。強くするために考えてくれている。こちらの全力を、マミはその寛大な心と体で受け止めてくれる。だからこそ、マミに対しての敬愛は尽きない。
杏子は、全力を込めた攻撃が全て避けられているにも関わらず、不思議と悔しさはなかった。負けず嫌いなはずなのに、寧ろ、妙な高揚感が体を包んでいた。魔女と戦っている時には、こんな感覚に陥ったことはない。生と死が隣り合わせの戦いで、自分が出せる全力を魔女にぶつけるには、のちのリスクが大きいと分かっているからだろうか。自分の中にある魔法少女としての力を、満足のいくまで出したことはなかった。
今は違う。自分の持つ力の全てを、目の前にいる魔法少女が受け止めてくれる。その安心感が、杏子の能力を限界すら超えさせた。マミといれば、自分は空をも飛べるような気がした。自分の知らない世界に、その手を伸ばしてくれるような、ふわふわとした感覚が身を包んでいた。それでいて、目の前のマミに視線を離さずにいられない。自分はどこまでも行ける、そう思えて仕方が無かった。
「(気持ちいい……マミさん一緒だから……力の使い方が分かっていく……どこまでも、飛んでいける!)」
「……っ!」
マミの正面にいたはずの杏子が突如消える。しかし、消えたはずなのに、何もないはずの空間から魔力のようなものがマミへと伸びていく。戦局が変わる。杏子の魔法が変化していく。杏子は自身の姿を透かすように見せる幻覚魔法を使ってきていた。それに対処している途中で、マミの見えている世界が反転する。マミの視覚に訴え、世界の見え方を変化させていった。
目まぐるしく変わるその攻撃に、マミに向けて放っていた攻撃が肉薄していくのが分かる。感覚が研ぎ澄まされ、このままいけば、目標であったマミに対しての一撃を当てれるような気がしていた。いや、当てられる確信があった。杏子の放つ魔力が広がっていく。マミに手を握られ、坂道を一緒に駆け上っていくように、その感覚に体を委ねてしまう。
このまま攻撃を続ければ、マミに対して攻撃が当てられる。そう思っていたのだが、それは、思いもよらない衝撃により、全ての意識が削がれてしまう。
「はぁっ!!」
「ぐえっ!?」
無抵抗だったはずのマミから硬い拳の一撃を、杏子のお腹に防御を知らないまま直撃していた。思わずカエルが潰れたような声を出してしまい、それと同時に、マミの見ていた世界は元の位置に戻り、本人含め六人に増えていた分身も、煙のように消えてしまう。
杏子は何が何だか分からず、地面にうずくまりながらお腹を抑えてバタバタと暴れてしまう。とはいえ、本当にマミの重い一撃を受けたのであれば、暴れることもできずに気絶するのだろうが、そんなことはお構いなしに、杏子はその痛みで唸り声を上げていた。
「マ、マミさん?何、するんだよ…折角、いい所だった、のに…!」
「そうね、あのまま行けば傷を負わされていたでしょうけど…佐倉さん、あなたの魔力はどこから来ているのか知っているかしら?」
「……あっ」
マミに向けて放った文句をそっと受け止められ、代わりに、簡単な問題を出すかのように、杏子の体に向けて指を指されていた。魔力がどこから出ているのか。それと同時に、自分が今までどれだけの魔力を使っていたのかを理解した。そして、全てを思い出したかのように、魔法少女に変身した際に取り付けられた、胸にあるソウルジェムを確認する。そこには、信じられないような闇がソウルジェムを染め上げていた。
マミとの特訓で、自分の持つ可能性が翼を広げるような感覚に陥り、いわゆる暴走状態だった杏子の脳からは、快楽物質であるアドレナリンなどが大量に分泌されていた。それにより、普段であれば気づくはずのソウルジェムの濁りに、一切気づかないで魔法を使用し続けていた。マミはそれにいち早く気づき、杏子の攻撃を無理やり止めるべく、無抵抗の状態を解き杏子の目を覚まさせる一撃を放ったのだ。
ソウルジェムの濁りが酷いことを視覚的に確認したせいか、表情は青白くなり、何とも言えない気持ち悪さがこみ上げてくる。先ほどの高揚感は消え失せ、今はただひたすらに憂鬱で、吐き気のようなものに襲われていた。
マミの弟子になる際に必ず守るようにと注意されたことがある。ソウルジェムの輝きを絶対に失わせるなということ。つまりは、濁りを強くしすぎない。もし、普段の体調にまで影響が出ている状態は、非常に危険な状態だと言うこと。そして、濁りが限界にまで達してしまったら命が無いと思えと忠告されていた。つまり、今がその危険な状態であることは、地面に倒れ伏せている杏子でも分かりきったことだった。
マミは杏子のソウルジェムに向かい、手に持っていたグリーフシードを近づける。ソウルジェムの濁りを限界まで吸い取り、元の輝きを取り戻していた。そして、ソウルジェムの輝きを取り戻すように、先程までの憂鬱な表情や吐き気などで青白くしていた顔色は、元の血行の良い顔色に戻って行き、ホッとしたように一息をついていた。限界まで汚れを吸い取ったグリーフシードは一度の使用で使い物にならなくなる。やはり、それだけ危険な状態だったことが伺える。
「大丈夫かしら?」
「ごめんマミさん……あたし、調子に乗っちゃって……」
「良いのよ。佐倉さんを焚きつけたのは私だからっていうのもあるけど、ソウルジェムが濁ればどれだけ危険なのかも分かってもらえたなら好都合だわ。それに、とても良い魔法だったわ」
「マミさん……えへへ、やっぱりマミさんには敵わないなあ……あーあ、それにしても、あんなに魔力を使って攻撃したのに、結局マミさんには当てれなかったのは驚いたよ。マミさんのソウルジェムも全く濁ってないし、どうして当てられなかったんだ?」
「そうね、それじゃあ反省会を始めましょう。もう一度言うけど、あなたの魔法は凄く良かったの。私じゃなければ絶対に倒されていたわ。だけど、私はこうして傷一つ無く立っている……どうしてか答えられるかしら?」
「いーやさっぱりだ。考えながら攻撃した結果あんな風になっちゃったんだけど、最後まで当てられなかったし、やっぱり経験なのかな?」
「経験は近からずも遠からず、ね。魔女や魔法少女に対しての場数を踏んでいるかよりも、元々の基礎的な能力を全く伸ばしていないのが、今回の要因になっているわ」
経験というのは確かに必要な要素だろう。近からずも遠からずと言ったように、経験の差というものも今回の特訓で大きな影響を受けているのは間違いではない。しかし、それ以上に大きな要因となっているものは、魔法少女の持っている基礎的な能力であった。
マミの願いにより得た固有魔法はリボンだ。たかがリボンと思うかもしれないが、このリボンは非常に応用が利き、相手を拘束することはもちろん、普段使っているマスケット銃などと、様々なものを精製することができる。攻撃の面ではマスケット銃を好んで使用しているが、本来の願いの性質の通りに魔法を使うのであれば、拘束魔法を得意とする固有魔法だろう。
ここまで言えば多才な能力に見えるかもしれないが、それはマミ自身が研究を重ね、その結果、応用が利くように調整したといったほうが正しい。杏子と比べるのであれば、魔法の能力は幻惑魔法を使用する杏子に軍配が上がるだろう。つまり、元々の魔法はそこまで強くはない。だからこそ、マミは基礎的な部分を伸ばすことを意識していた。ほかの魔法少女であれば、強い固有魔法を手に入れたとたん、その能力に固執しがちで頼りきってしまうことが多い。今まで対峙してきた魔法少女にも、強い魔法を持つものはそれに頼り切りのものが多かった。
魔法少女として活動を続けて、魔女や魔法少女と長期において戦い続けて来たが、全てが全て今のように自分の思うように勝ち続けてきたわけではない。時には逃げ、時にはやられそうになった事があった。強力な魔法を扱う魔法少女に負けそうになることも珍しいことではない。しかし、そんな強力な魔法を扱う魔法少女だからこそ、自分の能力に驕り、頼り切り、マミが粘り強く対処を続けた結果、元々持っている基礎的な能力で押し切られ、勝利をもぎ取ることが多々あった。
固有魔法が強力なのに越したことはないが、強力だからと言って過信し続けてしまえば足元を救われる。それが、今回の要因だと考えている。
「基礎的な能力て言うと、身体強化とか?」
「その通りよ。そして、身体能力よりも最も重要なのが魔力感知よ。私が幻影魔法を使った時に説明したのを覚えているかしら?眼だけで佐倉さんの動きを追うのは、正直不可能に近いわ。だから、眼だけではなく感知能力を高めて行動すれば、相手の動きを全体的に把握することができる。そして、幻惑魔法に対してもそれは有効よ。佐倉さんが途中から分身を作り上げるだけではなく、分身に対しても更に魔法をかけたり、私に対しても魔法をかけたと思うけど、そうよね?」
「うん。絶対いけると思ったのに、全部避けられてたんだよね」
「いい攻撃だったわよ?これに関しては経験の高さでカバーしたって感じね。咄嗟のことに対しても冷静に判断出来るのは、それだけの場数を踏んでいるからとしか言いようがないわ。話は戻して、幻惑魔法で分身を透明にしたとしても、私の視界を乱したとしても、本当の世界を乱しているわけではない。私の目に対して魔法で作り上げた世界に過ぎないのだから、魔力がそこには通っている。だからこそ、感知能力が高ければ、それに乱されることなく対処ができる……理解したかしら?」
「それじゃあどうすればいいんだ?私の幻惑魔法は魔法で作られるものなんだし、それだけ強い感知ができるマミさんには効かないってことじゃないのか?」
「もちろん、この方法にも穴があるの。確かに佐倉さんの言う通り、どうしても魔力が通っているものであれば感知をされ対処される……言っていることは間違いではないわ。だけど、佐倉さんの魔法が私の感知できない領域のものだったら?私はきっと、その魔法に対処ができずにやられてしまうでしょうね。私の感知能力は、願いで得られた固有魔法の領域にあるものではないから、所詮は基礎に過ぎないもの。洗練された固有魔法に対しては何もできないわ」
「私の魔法が未熟だったから対処がされただけだったんだ」
「佐倉さんの固有魔法は相手の五感に訴えるものなのだから、私の感知に誤情報を混ぜさせるというのも効果的よ。だからと言って、今回私は無抵抗で佐倉さんの攻撃を受けたけど、本来であらば、相手からの攻撃を対処しながら、魔法を使わないといけないことをちゃんと意識すること。そして、ソウルジェムの濁りを、自分の魔力の総量を考えて魔法を使うこと……良いわね?」
「はい!」
反省会が長くなってはしまったが、自分たちに何が出来ず、何が出来るのかを理解することは大切なことである。出来ないものが理解できれば、それに対しての対抗策を練ることができるし、出来ることが分かれば、そこから何につなげていけれるのかを考えることができる。そして、二人で反省会をすることで、お互いの意見を交換し合えることができる。それは、同じ者同士で争う魔法少女という存在にとっては、非常に貴重な時間である。
魔法というものには正解は無い。いくつもの可能性がそこにはあり、マミの考え方は高いものに作られてたとしても、それ以上のものは必ず存在する。自分だけの思考では、凝り固まった考えになってしまう可能性があるのだ。だからこそ、他の魔法少女との意見を交換するのは、お互いにとっても大きなメリットに繋がる。出来るときに意見を交わす。命が隣り合わせの魔法少女にとって、時間は有限だ。
マミは長く喋り続けたので、大きな息をつく。杏子は今持っている能力の限界を超えるほど動いていたので、その疲労はマミ以上であり、地面に大の字になりながら大きなため息をついていた。傷を治せる魔法少女だとしても、精神的な疲れは癒やせれないのだから、魔法というものも中々使い勝手の悪いものである。
地面に寝転んでいる杏子を起こすように大きく手を叩く。その音に素早く反応して起き上がるも、やはり体に疲労感がたまっているのか、表情は重く物憂いそうであった。マミは、こうなることを見通して、反省会は今のうちに終わらそうと考えていた。面倒なことは先に片付けておく。そうすれば、後々考えることもないし、ゆっくり疲労回復に望めれるからだ。
「さ、早く帰りましょう。疲れているのはわかるけど、家に戻れば美味しいケーキが待っているわ。ケーキを食べながら反省会なんて嫌でしょう?休憩するときは休憩に集中したいものね」
「ケーキィ……マミさん、ケーキ食べたい……」
「ええ、家に戻ればあるわよ。さ、肩を貸してあげるからこちらに寄りなさい」
「へへ……マミさん……」
疲労で体はボロボロのはずなのに、その表情は満足げで、マミの肩に甘えるように体を預けていた。足取りは回っておらず、マミがいなければ満足に帰れていたかも怪しいが、その距離感が、それだけマミに対して信頼を表しているのかもしれない。今日この瞳は疲労感が表れていながらも、特訓で時間がたった夕焼けを反射しながらも輝いていた。