強く気高く孤高のマミさん【完結】   作:ss書くマン

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第一章 見滝原の魔法少女
2話 イレギュラーな二人


 

 

 

 

 魔力が反応し、巴マミはそれを頼りに街の中を疾走する。住み慣れた街だからこそ、その移動ルートには迷いがなかった。

 

 目的地には魔女の結界が張られている。

 止まることなく中には入り、襲ってくる使い魔を倒し進む。

 

 その先には、キュゥべえを抱えている少女と、その友人であろう少女が使い魔に囲まれて怯えていた。

 魔力を展開し、自身に黄色いリボンが張り付き、独特の衣装が彼女の体が包む。

 魔法少女に変身し、魔法を行使する。

 

 その姿には、一切の迷い、戸惑い、油断はない。襲われている少女を助けるその意思で、巴マミは歩き出す。

 

「大丈夫」

 

 魔法を彼女たちの周りに包む。

 

「あなたたちはもう安全よ」

 

 彼女たちを戦いに巻き込ませたくはない。

 

「だから…おやすみなさい」

 

 だからこそ、彼女たちの意識を一時的に遮断する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「この子達はキュゥべえが見えている…魔法少女の素質がある子達なのね」

 

 キュゥべえという生物は、基本的に人間の目には見えない。

 しかし、魔法少女の素質があるものはキュゥべえを視覚することができる。

 

 彼女たちは、遠目から見えるほどに傷だらけのキュゥべえを抱え逃げてきた様子だった。

 そして、このような裏道を通るような破天荒な少女たちには見えない。

 つまりは、キュゥべえは意図的に彼女たちをこの裏道に呼んだことになる。それか、呼ばざるをえない状況だったか、その他に理由があったか。

 

「キュゥべえの傷に何か焼けたような跡…? 使い魔の攻撃を受けるような子ではない」

 

「つまりは、意図的にキュゥべえを狙い攻撃をした人がいる」

 

 キュゥべえを視覚した上で、小さい隙間を潜り素早く逃げられる動物を捕らえることができるものは限られる。

 魔法少女。

 彼女たちならそれが可能である。

 

「そして、キュゥべえを狙う理由は限られる…その前に」

 

 ある程度答えが出た所で、少女たちを狙う使い魔が周りに集まってくるが、巴マミはそれを許さない。

 彼女がその場にいる限り、使い魔は気絶している少女に傷一つ、悪意一つ振りまくことができない。

 

 巴マミもまた、魔法少女なのだから。

 

「消えなさい」

 

 巴マミは少女たちに魔法で作った結界を張り、安全を確保し地面を蹴り空中へ飛ぶ。

 空中にいる巴マミの周りには不思議な模様の円がいくつも作られる。

 

 そして、その円からは大量のマスケット銃が作られ、群がっている使い魔に対し銃口を向ける。

 鉄が打ち付けるような音がする。

 その瞬間、火薬が爆発した音とともに大量の魔力の雨が使い魔に降り注ぐ。

 

 蹂躙する。

 そこにいた使い魔がはじけ飛ぶ。

 ただひたすらに魔法を使い魔たちに押し付ける。

 一切の抵抗を許さない。

 激しい音が止んだ時、そこにいた使い魔は消え去っていた。

 

「結界が消える…魔女は逃げたようね」

 

 魔女の結界は魔女を倒す以外に消えない。

 それ以外で消えたということは、魔女はここから移動したということ。

 

 魔法少女は魔女を倒さなければいけないが、今は結界に守られている少女たちが優先だった。

 

「とりあえず、彼女たちは問題ないようね…それと」

 

「ねえ、そこにいるのでしょう? 出てきて欲しいのだけれど」

 

 巴マミは誰もいない場所に視線を向けて声を出す。

 広い空間に声が響き渡る。

 そして、しばらくすると、視線を向けていたその場所にとある少女が現れる。

 

「……」

 

 キュゥべえを襲ったであろう黒く長い髪の毛の少女は、何も言わず、ただそこにいる。そして、彼女もまた、巴マミと同じ奇抜な衣装に身を包む。

 

 魔法少女。

 その表情は冷静で、巴マミを一瞬だけ視線を移し、すぐさまその先を見つめ直していた。

 

 巴マミはその一瞬を逃しはしなかった。

 そして、違和感に気づく。

 

「(同じ魔法少女である私に敵対意思が少なすぎるわね)」

 

 魔法少女という存在は複数人で集まり行動することは少ない。

 何故ならば、魔法少女には魔女を倒した際、魔女から落とすグリーフシードという卵のようなものが必要不可欠だからだ。

 

 魔法少女の素質を持つ少女たちは、キュゥべえと契約をすればソウルジェムという宝石が生み出される。

 ソウルジェムは魔法少女に、魔法を使うために必要なもの。しかし、魔法を使用するごとにその宝石の色は濁ったような色になってしまう。

 

 その濁りが一定量貯まると魔法が使えなくなってしまうと、魔法少女たちは認識している。そして、その濁りを取るための道具がグリーフシードである。

 

 魔女の使い魔を倒すだけではグリーフシードを取ることができない。

 必ず魔女を倒さなければならないため、一定数の魔女を狩り続ける環境が魔法少女たちには必要なのである。

 複数人で戦えば、数が限られているグリーフシードを分け合うことになるため、魔法少女たちは一人で戦うことが多い。

 魔法少女は魔法が使えなくなることを恐れ、同じ魔法少女同士で戦い、自身の縄張りを守ることが多い。

 

 だからこそ、巴マミは不思議でならなかった。

 同じ魔法少女が対面すれば、基本的に警戒を強め攻撃を加える、もしくは逃げる隙を伺う。

 

 巴マミが見つめているその魔法少女にはその意識が余りにも少なすぎる。

 そして、何よりも疑問に思ったのが…。

 

「(彼女のような魔法少女は知らない…そしてこの魔力、キュゥべえですら知りえないイレギュラー)」

 

 魔法少女は一歩間違えれば死んでしまうシビアな世界。

 そんな中、巴マミは魔法少女としての活動を始めて年数を重ねているベテランと言われる者。

 生きるために、自身が扱う魔法に関して、魔法という未知の分野の研究を積極的にしていた。

 

 巴マミが扱う魔法の知識の中には、魔力を探知するという技術もあった。

 その技術を掘り下げ、魔法少女が一人一人持っている魔力の質というものも分かるようになっていた。

 

 だからこそ、巴マミは分からなかった。

 この見滝原という街に、彼女のような魔力は知らなかった。

 

「(たとえ敵対意思が少なく、目的は彼女たちだろうと油断してはいけない)」

 

「(イレギュラーである彼女が現れた今だからこそ、早いうちに手を打たなければならない)」

 

「(彼女はその場に現れた。 高速で移動しているわけではない)」

 

「(瞬間移動という線で考え、彼女を制圧する)」

 

 巴マミは今まで起きた出来事を考え、今に反映させる。

 思考を回転させる。

 油断すれば最後、命を落とす可能性は多くある。

 

 そして、巴マミは動く。

 

 

「はあ!!」

 

「!?」

 

 巴マミは、力強い息遣い共に、目の前にいる魔法少女の意識が少ないところを利用し魔力を爆発させる。

 瞬間移動を防ぐように、大量のリボンを周りに張り巡らせる。

 

 その空間には、人が満足に歩ける隙間は少なくない。

 そして、このリボンは自分で作ったものであるため、巴マミ自身には影響はない。

 強引に突破するれば、魔法で作ったリボンが襲いかかる。

 身動きがとれないところを一気に制圧する。

 

 リボンが体に巻きついた状態でも瞬間移動が可能で、反撃をしようとしても対策はとってある。

 彼女は逃がさない。

 必ず捕らえ、何者なのかを全て吐いてもらう。

 

「(不安定要素は全て拭う…私の目的のために)」

 

「(さあ、未知の魔法少女さん…あなたの魔法、私に見せて頂戴)」

 

 その表情は先程までのような優しさはなく、鋭く冷たい眼光が彼女を貫いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「(巴マミ…まどか…)」

 

 一瞬巴マミに意識向けながらも、直ぐにまどかに意識を向ける。

 

 暁美ほむらは何度も時間を繰り返し、目的を達成するために生きている。そのため、巴マミがここで現れることも知っていた。

 元々、暁美ほむらは巴マミの弟子の様なものであり、魔法のイロハを教えてもらった先生である。

 

 別の時間軸ではあるが、長い日を暁美ほむらと巴マミは過ごしてきた。

 だからこそ、巴マミの性格は把握していた。

 彼女は魔法少女同士の争いを好まない。

 

 巴マミは魔法少女の素質を持つまどか達の付き添いを優先し、暁美ほむらにその場から立ち去るように言う。それが、今までの流れ…の、はずだった。

 

「はあ!!」

 

「!?」

 

 巴マミから突然魔力が展開される。

 ありとあらゆる場所に黄色いリボンが張り巡らされる。

 余りにも突然なことで、暁美ほむらの表情が崩れる。

 

「(どういう事!?)」

 

 繰り返していた状況で巴マミが攻撃を仕掛けることはなかった。

 暁美ほむらが関わらなければ、基本的な状況は変わらないはずだった。

 

 いつものように、何もアクションを起こさず巴マミを受け流そうとした。

 しかし、起こった出来事は余りにも違う状況。

 

 繰り返してきた時間の中に、このような状況は今までなかった。

 

「(…イレギュラー!)」

 

 イレギュラー。

 それは、暁美ほむらが時間を繰り返す上で何かしらの要因でズレた時間軸。

 今までも繰り返してきた中で違うことがあったのは少なくない。

 それは仕方のないことで、前回体験した時間軸をそのまま再現しようということが無理である。

 しかし、今回は余りにも違いすぎた。

 

 今まで体験した繰り返しである程度の行動は効率化している。

 それ以来イレギュラーは少なくなり、あったとしても軌道修正できる些細な出来事しかなかった。

 

「(だけど、今まで巴マミと初対面で攻撃することはない!!)」

 

 目の前にいるマミは今までとは何かが違う。ほむらは今までの経験からそう感じた。

 先程も述べた通り、巴マミは魔法少女との戦闘は好まない。

 警戒を強めることはあるにしても、会話を交わさず攻撃を仕掛けることはありえない。

 だからこそ、そう思わずにはいられなかった。

 

「(この状況から切り抜けないといけない…巴マミが私を倒そうとするのなら、こんなにも面倒なことはしないはず)」

 

「(巴マミは、何かしらの理由で私を捕らえようといている)」

 

「(今捕まるわけには行かない…ここから逃げるのが最優先)」

 

 巴マミは基本的に冷静沈着。

 不安定要素が多く残る場合は深追いはしない。

 このリボンの結界から逃げれることができれば、それ以上追われることはない。

 そして、巴マミの近くには鹿目まどか、美樹さやかが眠っている。彼女たちを一人にすることは、最もありえない。

 

 それは、この時間軸が今までに体験したものと違っても。

 巴マミの何かが違ったとしても。

 変わることのない、巴マミの正義だから。

 

「(そして、私はここから逃げる手段を持っている)」

 

「(情報を集めなければならない。この時間軸の巴マミについて。)」

 

 暁美ほむらの腕についている盾が、勢いよく開き、回転する。まるで、砂時計を回転させるように。

 その瞬間、暁美ほむらを中心に周りの世界の色がなくなる。

 モノクロの世界。

 その世界は、暁美ほむら以外の物の動きが静止する。

 

「ここは私の世界。 例え身動きの取りづらい結界を貼られたとしても」

 

「隙間があるのなら、私はあなたに知覚されずに抜け出せる」

 

「またね、まどか‥今度こそ、私があなたを助けるから…」

 

 その言葉と共に、暁美ほむらはその場から消え去る。そして、暁美ほむらが脱出し、盾の仕舞うと、世界に色が戻り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 巴マミには油断はなかった。

 例え圧倒的に有利な状況だとしても、彼女は視線を謎の魔法少女に向けたままであった。

 相手への対策は完璧…とは言わぬものの、今出来る最善の手を尽くしているつもりだった。

 

 そして、二人の間には数秒静寂が包まれ、最初に行動を起こしたのは謎の魔法少女。

 カシャンと何かが開く音とともに動き始める。その瞬間。

 

「嘘でしょ……?」

 

 消える。そこにいたはずの魔法少女が。

 まるで、そもそもその場所には居なかったように、その場から消え去っていた。

 

「魔力が移動している。追いかけるにしても距離が離れすぎてるわ」

 

「これが彼女の魔法? 相手に移動する瞬間を全く知覚されずに移動する」

 

「余りにも強力すぎるわ。それじゃあ、相手に敵意があれば、私は死んだも同然だもの」

 

「何か条件があるはず…落ち着いて考えれば、彼女の魔法について分かるはずよ」

 

 巴マミはブツブツと口に出しながら考えることを止めなかった。

 黒髪の魔法少女に対して警戒心、油断を怠ってはなかった。

 そのはずなのに、巴マミはいとも簡単にあしらわれてしまう。

 

 彼女は危険すぎる。

 このままでは、今は敵対する意思が少なくても、今後彼女に何があるかわからない。

 なにかの拍子に魔法少女への敵対心が強まり、巴マミは何もせずに倒される。

 そんなことも有り得てしまう。

 

「対策を練るのよ。彼女が使う魔法の分析。それに対しての対抗手段」

 

「油断すればやられてしまう。 私の素性を知られてしまうことも致命傷になる」

 

「考えるのよ…考えるのよ巴マミ…私が今ここで倒れるわけには行かないのよ」

 

 自分の世界へと入り込む巴マミ。

 その姿は少し異様であるが、そんな彼女に声がかかる。

 

「マミ。 今はそんなことをしている場合かい?」

 

「ひぁ!…あ、キュ、キュゥべえ」

 

 傷だらけで鹿目まどかが抱えていたキュゥべえが巴マミに声をかける。巴マミは、集中して考え込んでいたところに声をかけられたため、少し素っ頓狂な声を上げてしまう。

 

「君があの魔法少女に対しての警戒心を強めることはいいことだと思う」

 

「だけど、ここに倒れている魔法少女の素質を持つ彼女たちの保護を最優先するのが、君なんじゃないかな?」

 

「そ、そうね…今は考えている場合じゃないわ。 落ち着ける場所に、私の家に運びましょう」

 

 キュゥべえに諭され、巴マミは本来の目的である守るべき対象の少女ふたりを保護する。

 巴マミが気絶させた彼女たちを安全な場所へ移すため、大量のリボンを消し去り、移動するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

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