強く気高く孤高のマミさん【完結】   作:ss書くマン

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45話 前夜祭

 

 

 

 ワルプルギスを討伐することを話し合い二日が経った。

 たった二日だが、話し合いが行われた時には予定日まで一週間と少ししか無く、残される時間を限界まで活用しようと行動に移していた。

 しかし、残り少ない時間を活用しようにも、少女たちにはとある問題があった。

 

 魔法少女という特異な力を持っているとしても、四人の内三人は学生の身分であり、残りの一人は妹を養おうと働いている身分なのである。

 だが、今回起こる戦いは世界の命運をかけてしまうかもしれない戦いであり、学校に行っている暇なんてものは無いのが現実だった。

 

 残り一週間だ。

 その一週間を特訓に使わず他の時間に使った結果、世界が滅んでしまいました___なんてことになってしまえば目も当てられない。

 とは言え学校や職場に休みを入れようとしても、魔法少女の活動があるので休むと言える訳がない。

 考えた末、どのように対処したのかは___

 

「無断欠勤に無断欠席なんて、あたし達も不良になったもんですな」

 

「事態が事態だ。それに、一応連絡はしてるだろ? 休む理由は言えないけどさ」

 

 全くの連絡も無しに休んでしまえば面倒事になりかねない。

 それを避けるように、学校には諸事情により一週間ほど休みを貰うことだけを伝えていた。

 言わずもがな、休む理由は伝えていない。

 

 家族が身近にいないマミとほむらは良いとして、問題はさやかと杏子だ。

 さやかは家に帰れば家族がいる。もし欠席をしていることが知られれば、それに関して問い詰められる可能性があった。

 

 さやかは魔法少女の契約を考えたとき、思わぬ深夜徘徊をしてしまい注意を受けたことがある。それにより、さやかには踏み込んだ行動は出来なかった。

 

 しかし行動を起こさない訳には行かない。

 意を決したさやかは学校へ連絡を入れる前日。両親に一週間だけ休みたいと相談し、更にその一週間はマミの所で生活をさせて欲しいとも頼み込んだ。

 それを聞いた両親は、当たり前だがさやかのお願いを了承する訳が無かった。

 

 世界の危機だと説明すれば了承してくれるだろうか。

 そう思ったさやかだったが、魔法少女の話など出来る訳が無く、出来たとしても信じられるはず訳がないと思い、口を閉じることしか出来なかった。

 

 このままでは考えてもらう余地もなく断られるのは目に見えている。

 さやかも親の立場なら、そんなもの了承するはずがないと理解出来ていた。

 だからこそさやかは、今まで培ってきた全てを込めた渾身の一撃を与えたのだった。

 

 土下座だ。

 全人類の存亡をかけるかもしれないと言う想いを込めた渾身の土下座。

 それを目の当たりにした両親は言葉が出なかった。

 出るわけがなかった。

 その土下座は、今まで見てきた誰よりも迫力のある土下座だったはずだからだ。

 

 さやかの背中にはこの街の命運だけではない。全世界の命運が背負っている。説明が出来ないかもしれないが、想いを体に乗せることは出来る。

 子供の土下座だからとは言え、小さく見えるはずが無かった。

 

 小さく見えないからとは言え、娘の土下座など見たくなかっただろう。その姿を目の当たりにした母親は、小さく嗚咽を漏らし始めていた。

 それでもさやかは頭を上げることはなかった。

 両親を泣かせてしまう覚悟など、とうの昔に決まっていたからである。

 

 そして、さやかの必死な想いが伝わったのか、一日に一回は家へ連絡を入れることを条件に、さやかと両親の話は終了したのであった。

 

「___まぁ、あたしは良いよ。だけど杏子は大丈夫なの? だって働いて妹さんの世話してるんでしょ? 無断欠勤なんてしたら……」

 

「ん? あー、そうだな」

 

 本来なら中学生の立場である杏子だが、様々な理由により少女ながらも身を削り働いていた。

 そんな杏子が無断欠勤なんてことをすれば、最悪職場を立ち去らねばならない。

 職場を失えば妹を養うための働き口が無くなるのではないかとさやかは考えていた。

 

 親に土下座したとはいえ、帰る家が無くなる訳でもなければ学校を辞める事も無い。

 所詮は一週間だけ学校を休ませて貰うだけである。

 

 だが、杏子は違う。

 杏子の立場はさやかとは比べ物にならない程過酷な人生を送っており、住む場所すらまともに無い状態で過ごしている。

 妹は病院に居られるかもしれないが、杏子は家も無ければ職も無くなるかもしれない。

 そんな事になってしまえばと思うと、さやかは心配で仕方がなかった。

 

 しかし、そんなさやかの心配が無駄だと思うほど、目の前にいる赤色の少女は笑って見せていた。

 

「あたしの働き口は、そもそもちゃんとした契約なんて結んでないんだよ。中学生なんて雇えるわけないし、魔法なんて説明出来ない力を利用して手伝ってる訳だからね」

 

「心配とか無いの?」

 

 確かに中学生を雇っている時点で問題が出ている。杏子の言う通り、契約なんて結べない。無断欠勤の騒ぎではない大問題を抱えている。

 だが、それでも杏子にとっての大切な働き口に変わりはない。大きな問題を抱えつつも杏子を雇ってくれているのも事実だ。

 それを断ち切られてしまえば、今後の生活にも支障が出てしまい、多少なりとも心配があってもおかしくはないはずなのだが___

 

「無いよ」

 

 それでも杏子は一切の迷いも感じられない声で返した。

 

「働き口が無くなったて、地面這いずり回って探せば絶対に見つかるし、代わりはいくらでもある。だけど、モモには代わりはない」

 

「そうだけど……」

 

「世界が滅べばモモがいなくなる……ほら、どっちが大切かなんて簡単だろ? それに、さやかは他の人のことを心配しすぎだ。もう少し自分のことを考えないといけないんじゃない?」

 

 笑いながらさやかの背中を叩いている杏子は、何処までも落ち着いている表情をしていた。

 

 虚栄の類ではない。

 本当に何も心配はいらないと語っている表情であった。

 

「美樹さん、杏子。続きを始めましょう」

 

 二人が話していると、特訓を再開しようと声をかけてくるほむらが近寄っていた。

 ほむらの向こう側には大量のグリーフシードを抱えるマミが立っており、話していた二人を待っている様子であった。

 

「ん、了解」

 

「次は連携の特訓だよね」

 

「ええ、そうよ」

 

 インターバルを挟みながら特訓を重ねていたのだが、これからしていくのは四人の魔法少女がワルプルギスと対峙したときの模擬戦。つまり、連携の特訓であった。

 

 連携の特訓をする際、さやかは疑問に思うことがあった。

 さやかやほむら個人のレベルアップはまだしも、四人で連携を高めたい時は相手が必要になってくるからだ。

 

 その相手を何処から用意するのだろうと思っていたのだが、その解決方法は随分と身近にあったもので、さやか自身も何度もお世話になっていた方法だった。

 

「それじゃ、一気に孵化させるから気をつけて頂戴ね」

 

 それは複数のグリーフシードを無理矢理孵化させ、多くの魔女を一度に相手にするという流れであった。

 

 この方法はグリーフシードから孵化させた魔女を相手にしているため、倒した魔女からは確実にグリーフシードを落としていく。

 魔女と戦い終わり、溜まった穢れを利用し孵化させ続ければ、ソウルジェムに溜まるはずの穢れは一定。もしくは少なくなっていく。

 グリーフシードの総量自体は変わらないが、戦い続けようと思えば永遠に戦い続けることが可能で、インターバルも取りやすい方法であり、一定の流れを即座に確かめられる手段だった。

 

 その方法で連日戦い続けており、何通りもの連携の確認を取り始めた結果。お互いに分かったことが出て来始めていた。

 

「何だかさ、あたし達って予想以上に連携取りやすくない? お互いがお互いに邪魔してないっていうか、寧ろしっくり来るっていうか……」

 

 特訓をしてから数日たった今。さやか以外の少女達も気付いてはいたが、それについて最初に声を出したのはさやかだった。

 

 個人競技の世界である魔法少女が連携を取り始める事になれば、良くて一週間。最悪限界までは時間を費やすかと思っていた。

 だが、実際に蓋を開けてみれば連携が取りやすいと感じることが多く、今では完璧と言える程に足並みを揃えれてしまっていた。

 

「新人のさやかは他の奴に合わせて戦う必要のない裏方。ほむらは中距離で、得意な武器も中距離向き。あたしも背中を預けてる相手がほむらだから前線で思いっきり戦えるからね」

 

「あなた達は初めて連携を取るでしょうけど、私は遠い昔からあなた達と共に戦っていた経験がある。私と一緒に戦う事に違和感を感じるのは少ないはずよ」

 

「私も佐倉さんとさやかさんの師匠でもあるから、二人との連携は元から取りやすいわ。暁美さんもサポートの方がやりやすいと思うから、相手と連携を取ることは不得手では無いと思うし……」

 

「つまり、あたし達って何だかんだ相性は最高だったってことですか」

 

 少女達はさやかの答えを用意していたかのように、すらすらと答え始めていた。

 

 決して一枚岩ではない、複雑な想いや信念を抱えている少女達。

 こうしてお互いがお互いに手を取り合えるまでには、相当な時間や覚悟。紆余曲折を乗り越えた賜物だ。

 そして一度手を取り合ってみれば、歪みの多い関係だったはずの少女達は、美しく形取られた歯車のように噛み合ってしまう程の関係だったのだ。

 

 こうして、長い時間を費やすはずだった連携は、早くも終わりを告げていた。

 だが、それで全ての過程が終了したわけではない。

 残りの時間をさやかとほむらの特訓に使い。ある程度成長を遂げれば連携の確認をする。その繰り返しを続けていた。

 

 さやかは一日の内多くの時間を魔法少女の特訓に時間を使えるようになった事や、特訓の相手が相手なだけに成長の速度は凄まじく伸びていた。

 ほむら自身もこれ以上成長する見込みは少ないと思っていたのだが、思っていた以上に魔法を使用する時の効率や、苦手だった魔力感知などの基礎を伸ばせることが分かり、少しづつ成長していった。

 

 特訓をする度に体には多くの傷を作りながらも、決戦を迎えるその日まで時間を使えるだけ使おうしていたのだが___ワルプルギスが現れる前日の事である。

 

「おじゃましまーす!」

 

「いらっしゃいまどかさん」

 

 マミが住むマンションの一室に迎えられていたまどかは、少しだけ大きな荷物を抱えていた。

 

「よーまどか」

 

「うぇひひ、さやかちゃんすっかり馴染んじゃってるね」

 

「いやぁ、一週間も生活してたらそりゃ慣れちゃいますよ」

 

 まどかが家の中に入っていくと、まるで我が家のように寛いでいるさやかの姿が現れていた。

 

「美樹さんは少しだらけ過ぎよ」

 

「家主が遠慮するなって言ってるんだから良いんじゃねぇか?」

 

 マミの家に泊まり込んでいたさやかの他にも、小さく座りながら紅茶を嗜んでいたほむらや、その隣で机に肘を突きながら笑っていた杏子の姿もあった。

 

 まどかを含めた五人の少女。不思議な運命を共にしている彼女達が集まり、最終決戦の前日に何をしようとしていたのかと言うと___

 

「それじゃ、休養を兼ねたパジャマパーティーでも始めましょうか」

 

 マミはそう言いながら、まどかに約束をしていたパジャマパーティーを開催していたのだった。

 

 

 

 

「マミさーん。メモに書かれていた食材集めてきましたー」

 

「ありがとうまどかさん。私も探し終わったからレジに向かいましょう」

 

 まどかがお泊り用の服などが入っていた荷物を置きに来て数分後、今夜食卓に並ぶ料理の食材を求めて商店街にやって来ていた。

 

 一人暮らしが長いマミは様々な食材を求め、魔法少女の力を利用して街中を走り回った経験がある。その御蔭で何処のお店に何があるか。価格や品質を全て把握している。

 マミは魔法少女ではないまどかと共に近場にあるお店へと向かい、他の三人は遠くのお店にある食材を求めて飛んでいった。

 

 詳しいお店の場所はマミと共に生活していたさやかが知っている。

 道に迷うことは無いだろうと思いながら、まどかが持ってきた食材が入ったかごを持ちながらレジカウンターへと向かっていた。

 

「ねぇ、マミさん」

 

「どうしたのまどかさん。欲しいものでもあった?」

 

 マミは今夜作ろうとしていた料理の手順を思い返しながら鼻歌を歌い歩いていたのだが、まどかに呼ばれその足を止めた。

 

「明日なんですよね。ワルプルギスの夜が現れるのって」

 

「ええ、暁美さんの資料によれば明日に現れるわ」

 

「……」

 

「心配?」

 

「正直、分かりません」

 

 予定日が明日であることを確認してきたまどかに対して、心配だから聞いてきているのだろうかと思っていた。

 しかし、マミの予想は外れて曖昧な答えを返していた。

 

「心配だって思ってるはずなんです。明日には世界が変わってしまうかもしれないなんて聞かれされたら、不安で不安で仕方がなかったはずなのに……」

 

「不安に思わない自分が、不安に感じてしまう……かしら?」

 

「っ!」

 

 不安に思うはずの出来事に対して不安を感じなくなっている。

 自分自身も知らない内に変わっているのではないかと思うことに不安を感じている。

 マミに伝えることもなく指摘されたまどかは、ハッとした表情で見上げていた。

 

「私が私じゃなくなる感覚があるんです。まるで別の場所に引っ張られていくみたいに……どうして分かったんですか?」

 

「私も私自身が変わったって思うことがあったから、かしら。まどかさんとは違う感覚だけど、似たような出来事があったから分かったのかもしれないわ」

 

「もしかして……魔法少女の真実を知った時、ですよね?」

 

「ええ。でも、まどかさんには私と全く異なる、別次元とも言える変化が起きてるのかもしれないわね」

 

「別次元の変化……ですか?」

 

 見渡す景色が大きく変わってしまった出来事。

 マミにとって、人生の分岐と言っても過言では無かったあの時。

 だが、マミが思っている感覚とはまた違う何かがまどかの中で起きている。それをマミも分かっていたが、一体何が起きているのかは理解が出来なかった。

 

「多分、あなたに巻き付いている因果が影響しているのかもしれないわ。ほんの少しの因果と技術があれば、人の身を超えた力を手に入れてしまう。だけどあなたには、数多の因果が巻き付いているもの」

 

「因果ですか……」

 

 自分の体には数多の因果が巻き付いている。

 そう言われて自分自身の体を見渡しても、意識しても、何の変化もないように感じていた。

 だが、因果が影響していると言われて、まどかはとある出来事を思い出していた。

 

「夢を見たんです」

 

「夢?」

 

「はい。夢なんですけど、夢じゃなくって……その夢には、ほむらちゃんが戦っていました。多分、他の時間軸で起きた出来事が、私の夢として現れたんだと思います」

 

 その時まどかが見ていた夢は、夢とは思えないほどの雰囲気があった。

 質感も匂いも、空気も色も。曖昧ではなくはっきりとまどかの目の前に映し出されていた夢の中。

 

 ただの夢とは違う。

 他の時間軸で起きた出来事だと理解出来たのは、そこに現れた一人の少女___ほむらが現れたからだった。

 

「ほむらちゃんがずっと戦っていたんです。一回だけじゃないんです。何度も何度も、分からないぐらい戦って、その度に私が契約をして……魔法少女になった私が、ワルプルギスの夜を倒していました」

 

「それだけの光景を見ていたはずなのに、まどかさんは心配や不安を抱えなかったの?」

 

「はい、不思議と受け入れることが出来ました……だけど、眼の前で起きている全ては光景は、私がほむらちゃんに縛り付けている枷なんだと思うと……私はなんて酷いことをしたんだろうって……」

 

 まどかが見ていた夢は、膨大な量の因果が巻き付いてしまった影響により見せられた、実際に起きていたであろう光景だ。

 その時現れるほむらの表情は苦悶に染まり、契約しようとしていたまどかに向けて悲痛な叫びを上げ、そんな姿をまどかは見続けていた。

 

 目を逸らすことも、耳を塞ぐこともなく、全てを受け入れようとした。

 そこまでほむらを追い込んでいるのは、この夢を見ている自分自身であることを理解させるために。

 

「良いじゃない」

 

「え?」

 

「人は何かに縋って生きていく。貴女が枷だと思っている物を、暁美さんは喜んで付けてるわよ」

 

「それでも、ほむらちゃんは私の願いのためにこれ以上無いほど頑張ってくれました。もう、休ませてあげたいんです……勝手な考えでしょうか?」

 

 違う時間軸のまどかが約束した願いとは言え、同じまどかには変わりない。

 だからこそ勝手な考えだと思ってしまった。

 約束を取り付けたその本人が、約束を破ろうとしているのだから。

 

 それでもこれ以上ほむらを時間の間に縛り付けたくはない。

 勝手だとしても、隠すことが出来ないまどかの本心だった。

 

「それに、今日の事も良いのかなって思ったんです。私が家に行きたいって言わなかったら、マミさん達は特訓の時間に使えたかもしれないって……」

 

 今日の事とはパジャマパーティーを指していた。

 

 パーティーの切っ掛けはまどかの一言である。

 さやかがマミの家に泊まり、それを聞いたまどかが何気なしに言った事だったのだが、最悪世界の運命を決めかねない戦いの前日に開かれるなど思いもしていなかった。

 

 まどかは最初、邪魔をしては悪いと思い断りを入れようとしていたのだが、マミからこの日が丁度良いと強く言われた事によりそのまま家にお邪魔することになっていた。

 

 主催者であるマミ達が良いと言うのなら甘えれば良いのかもしれない。

 だが、それでもまどかは無理をさせているのではないかと心配していた。

 

「確かに特訓の時間に使えたでしょうけど、それでも私は休養の時間に割り当てたと思うわよ? だから、今日が丁度良いって思った……それに、今日じゃないと駄目なのよ」

 

「……え?」

 

 今日じゃなければいけない。

 マミは強調するように言った。

 

「明日を乗り切れば、私達五人がこうして集まることは絶対に無くなる。だから、今日じゃないと駄目なの」

 

「そんな……」

 

 元々は敵同士だったはずの少女達が協力関係を結べているのは、お互い目的が重なり合い、それを達成するには手を組むことが必要だと考えたからこそだ。

 つまり、目的を達成してしまえば元の敵同士に戻ってしまう。

 そんな事はまどかも理解していたのだが、マミの口から迷いなく断言され、まどかは顔を少しだけ俯いてしまった。

 

 明日を乗り切ってしまえば、まどかの知り合いである少女達は殺し合う。

 その事実を避けて通れないと思っていると、そんなまどかの肩にマミの手が優しく置かれた。

 

「大丈夫よ。多分、まどかさんが思うような事にはならないと思うから」

 

「それってどういうことで___も、もしかして、協力関係が続くって事ですか?」

 

 まどかが思ったこと。つまりは敵対関係が続く様な事にはならないと言われ、驚いたような顔をしてみせたのだが、マミは首を振っていた。

 

「それも少し違うかな。でもね、私の予想通りなら、まどかさんが思ってる事には絶対にならないわ。だから今日はみんなで楽しみましょう? まどかさんがそんな顔をしてたらみんな心配しちゃうわよ」

 

「そう、ですよね……折角みんなと遊べるのに、暗いままだと、みんなに心配かけちゃいますよね」

 

 敵対関係が続くが、まどかが想像したような殺し合いにもならない。

 それがどういう意味なのかは、まどかには理解出来なかった。

 だが、今だけはこの時間を楽しもうと、気持ちを切り替えようとしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 食材を買いに出かけて数十分が経った。

 マミとまどかが先に家へと帰り、食材を冷蔵庫に入れたり下ごしらえをしようと準備を進めていると、玄関からバタバタと足音が聞こえ始めていた。

 

「ただいまー!」

 

「戻ったぞー」

 

「ちょっと二人共、靴を揃えてから入りなさい」

 

「おかえりさやかちゃん。杏子ちゃんにほむらちゃんも」

 

 頼まれていた食材を抱えてさやかと杏子が先に入って行き、後ろに居たほむらは三人分の靴を揃え、遅れて入っていた。

 

「マミさん買って来ましたよ」

 

 さやかは杏子と共に食材を渡そうとキッチンへ行くと、そこにはエプロンを身に付け腕まくりをしていたマミが迎えていた。

 

「ありがとう。私はご飯の用意をしてるから、みんなはリビングでゆっくりしてていいわよ」

 

「それじゃ、あたしも手伝いますね」

 

 一週間とは言え二人で寝泊まりをしていたさやかとマミは、料理をするとき一緒にすることが多かった。

 その流れでさやかも手伝おうと、マミから借りている水色のエプロンを取り出し、同じように腕まくりをしていた。

 

「流石に三人もキッチンに居たら邪魔になるわね。私達はおとなしくリビングでゆっくりしておきましょう」

 

「みたいだな」

 

「さやかちゃんって料理出来たんだぁ」

 

「手伝いながら教えて貰ってたんだ。流石にマミさんには勝てないけど、これでも結構上手くなったんだからね」

 

 ほむらと杏子は昔ながらの癖で、マミに料理を作ってもらうのには慣れていた。

 自然とリビングへ足を運ぼうとしていたのだが、まどかはさやかが料理をしていることが物珍しい様子でその姿を眺めていた。

 

「今日は何を作るんです? あたし達が買ってきた食材って魚介類が多いですけど……」

 

 さやかはそう言いながら、先程買って来た袋の中身を取り出していく。

 袋の中からはエビやホタテや魚など。さやかの言う通りに多くの魚介類が取り出されていた。

 

 五人分とは言え過剰と言えるほど量が多く、品質と価格を両立している場所に買いに行ったとは言え、決してお財布には優しくない値段であった。

 

「今日は豪勢に食材を使って魚介のパエリアを作ろうと思ったのよ。勿論デザートも用意してるわ。クラッカーやソースも多数揃えてるから、食後の夜はパーッとしましょう」

 

「おー! って……パエリアなんてそんな洒落たもの作ったことないですよ」

 

「言われた通りにしていけば簡単よ。早速作っていきましょう」

 

「了解です!」

 

 マミの指示を受けながら、さやかは料理を始めていく。

 上手くなったと言うだけあって慣れた手付きで料理を進めており、それを見ていたまどかは感嘆の声を漏らしていた。

 

「まどか、料理が出来るまでこちらで遊びましょう」

 

「あ、うん!」

 

 料理を姿を眺めていると、リビングに居たはずのほむらが近づいており、まどかの肩を優しく叩いていた。

 一緒に遊ぼうと誘われたままリビングへ行くと、ほむらが淹れていた紅茶を飲み初めながら、ほむらと杏子の会話に混ざっていた。

 

「ふふっ……」

 

「どうしました?」

 

「こうしてあの子達を眺めてみると、何も変わりないただの女の子だなって思ったの」

 

「……なーに言ってんですか」

 

「え?」

 

 まどか達が会話している姿を見てそう言うと、さやかは呆れたような顔をしていた。

 

「あたし達は何だかんだでただの女の子ですよ。マミさんだって、そのうちの一人です」

 

「あら、そうかしら?」

 

「ええ、さやかちゃんが言うんだから間違いないですよ」

 

 自信をたっぷり含んだ表情で、さやかは胸を張りながら答えていた。

 

 表情をコロコロ変えるさやかを見ていたマミは、何かを思いつきリボンを伸ばし始める。

 突如リボンを出したことでさやかは不思議そうに見ていたのだが、戻ってきたリボンの先には携帯電話が巻き付いていた。

 

「携帯なんて取り出してどうしたんですか?」

 

「さやかさんの顔を見てたら、写真でも撮ろうかなって思ったの。この光景を残してあげられないのは、何だか勿体ないって思ってね……ほら、さやかさん」

 

「おわっ……えへへ、いえーい!」

 

 携帯を片手にまどか達の姿を写真に収めると、その次に隣りにいたさやかの肩を抱き寄せ、カメラの中に収まるよう体を密着させていた。

 

「さやかさんの料理姿も撮っちゃいましょう。エプロン姿の女の子にときめかない男の子なんていないわよ」

 

「それを言うならマミさんだって!」

 

 笑いながら話すさやかのエプロン姿を写真を撮りながら、マミ達は料理を再開していた。

 それを発端に多くの料理が作られた後も、五人の少女たちは写真を撮り合っていたのだった。

 

 

 

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