強く気高く孤高のマミさん【完結】   作:ss書くマン

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7話 生を持つ意味

 魔法少女には休みは無い。全てが全ての魔法少女が無いわけではないが、巴マミは無いと言っていいほどだろう。

 

 魔女の活動時間は昼頃が多いように感じる。魔女の元が人間というのもあるのかもしれない。しかし、魔女が活動をしていない時間帯があったとしても、魔女に使役されている使い魔や、街の暗闇に漂っている使い魔は、魔女とは別に活動していることがある。極論ではあるけれども、全ての人間を救うのであれば、朝昼晩全ての時間帯をカバーしなければいけない。魔法少女が二十を超えていない中学生だろうとも、容赦なくその活動は続いていく。マミが授業中に勉強していようとも、今この時間に襲われている人間も少なからずいるだろう。

 

 まどかとさやかにテレパシーで喋りかけてから数時間が経っている。お昼休みまで時間が経っている訳ではないが、学校のスケジュールでいえば三時間目が終わり、四時間目が始まったところであった。

 勉強はそこまで得意というわけではないと思っているが、新しいものを覚えることは好きだった。そのため、得意ではないが勉強をすること自体は苦だと感じたことはない。そのことを勉強嫌いの友達に話すとよく羨ましがられることがある。幸い、 地頭は良いほうなのか、友達に勉強を教えてあげたり、何かしらの意見を求められたりするときにマミが発言すると、先生よりも教え方が上手といわれることがあったり、マミの意見が相手にとって良いものに受け入れられることが多々あった。そういったことがあって、先生からの信頼はほかの生徒よりも高いらしい。

 魔法少女になってから街の人を守るために少しの間だけ授業を抜けることがあったのだが、強く咎められることもなく、途中で抜ける理由などもしつこく聞いてきたりはしなかった。勿論、その行為自体は良くないものだとは分かっているが、普段の素行や先生や友人との信頼関係を築いてきたのは良かったと思っている。

 

 今はまだ授業を抜けることが許されていたこともあったが、いずれは目を付けられるのも時間の問題だろう。マミ自身も、このままでいいとは思っていなかった。先ほどもいった通り、新しいものを覚えるのは好きだし、地頭は良いほうだと思っている。それが魔法少女としての意識にあっていたのか、魔法少女になってから魔法に関しての研究は、周りの魔法少女がどんな風にやっているかは分からないが、人一倍やっていたほうだと思っている。自分の願いで生まれた魔法の性質に加えて、自分以外の様々な魔法少女が使う魔法の性質に関しても余念はなかった。研究せざる負えない状況だったというのもあるかもしれない。

 魔法少女が魔法を使うためにはグリーフシードが必要不可欠になるのだが、魔女はグリーフシードを落としたとしても魔女以外のものはグリーフシードを落とさない。そして、魔女という存在も無限に湧き続けるものではない。だからこそ魔法少女は、必ず一定数は魔女を狩り続けられる場所を確保しておかなければならない。そうすると、魔法少女たちは場所を確保するために、自分が魔法を使い続けれるようにするために争うようになった。それが、魔法少女の縄張り争いにつながる。

 マミ自身もその縄張り争いに巻き込まれたことは多々あった。キュゥべえと契約をしてから少し経った頃に、自分以外の魔法少女と関わることがあった。その時はまだ小学生と幼く、何も知らない小さい子供だったのが幸いしたのか、魔法少女の縄張り争いについてを教えてもらうことがあった。そして、魔女や使い魔を倒している最中に他の魔法少女から不意に襲われることもあった。自分は戦いたくなかろうとも、相手はそれを許してはくれない。自分がいればグリーフシードの数は減ってしまう。ならば、その原因となっている魔法少女を倒すしかない。最悪、それが相手の命を絶つことになっても。そう思って攻撃する魔法少女も少なくはなかった。

 

 様々な魔法少女に出会い、苦悩したが、マミの魔法少女としての在り方は昔からも変わらない。もしかしたら変わっているかもしれないけれど、自分は変わらずグリーフシードが少なくなるからだとか、使い魔を倒せば魔女が生まれにくくなるだとか言われようとも、街の人々を護るという考えは今もなお続いている。自分が魔女になる存在だとしても、それを知ったからと言って護ることを放棄してしまったら、自分はそれこそ魔女と変わらなくなってしまうから。自分が授業を受けているから街を護れないなんてことは言わない。そのために、小学生から何時間も、何日も、何週間も、何か月も、そして年が回ったとしても、自分は魔法少女として生き続け、研究を続けていた。

 

 魔法少女になったものの命は短い。たった一年間魔法少女として生き残り続けただけで、ベテランと呼ばれてしまうほどにシビアな世界である。だからこそ、今ある命を大切にして生きていきたい。それは、マミがキュゥべえと契約したときに交わした願いにも関係はある。短い時間しか生きられない魔法少女だから。魔女を倒さなければいけないから。そんな風に言い訳を作りたくはなかったし、使いたくもなかった。だからと言って関係のない人間を巻き込むようなこともしたくはない。ただ、自分は魔法少女として、一人の人間として、少女として、その時を自分ができる限りのことをして生きていきたかった。

 

 ストイックに思うかもしれないが、決して無理をしているわけでもない。魔法少女としての研究は、図書館にある難しい参考書を開いても、情報が充実しているインターネットで検索をしても決して出てこないような発見がある。人間としての知識欲のようなものが刺激されるというのか、子供相応そういったファンタジーなものに触れると楽しくなるし、魔法少女として強くなっていくのが実感できて嬉しくもある。

 クラスメイトとのコミュニケーションも疎かにしたくはない。マミ自身何かしらのカリスマのようなものあるのか、人から頼みごとをされたり、お礼をされたり、そういったことで友好関係が増えていくと嬉しいと思うし、放課後に友人と遊びに行くのも楽しいと思っている。生きるか死ぬかの戦いに身を投じているのか、そういった日常を大切にしていきたいと強く思っているからこそなのだろう。

 学生の本分と言われている学業だって手は抜きたくはない。魔法少女としての活動で時間は取られるかもしれないが、それでも予習復習を大切にしていけば何とかなっているし、先生からの信頼も獲得している。

 マミにとっては何気ない日常が大切だった。自分がこうして生きていることがそもそも奇跡のように思えてしまうから。いや、実際には奇跡を願ったからこそ自分はこの場所に留まっていられる。その思いが人一倍強いからこそ、巴マミという少女は少女らしからぬ雰囲気を持っているのかもしれない。

 

 マミの目の先には教卓で先生が生徒に向けて授業の内容を喋っている。周りにいる生徒からは、ペンを走らせている音が聞こえる。制服がすれる音や、机に脚が当たったのか、静かな教室に一際目立つ音が響いている。学生の本分は学業とは思いながらも、マミの右手にはペンを持ってはいたが、そのペン先はほかの生徒よりも勢いはなかった。その代わり、左手には指輪状にしてはめていたソウルジェムが形を戻し、淡い光を放っている。蛍光灯の光や、開放感あふれる一面ガラス張りの教室にはその淡い光は目立ってはいなかった。

 

 マミの意識はソウルジェムに強く向けられていた。淡い光が徐々に強くなっていく。学校にいる間は魔女や使い魔を探すこともできない。しかし、街を歩き回る時間が惜しいと思い研究を重ね、使い魔などの位置を特定するため作り上げた街中に仕掛けているビーコンがマミに知らせてくれる。そして、その使い魔たちをこの学び舎の中で狩る方法も会得していた。

 マミは魔法に意識を強めるためにそっと目を閉じた。意識が先ほどよりも強く集中しだしたのか、先ほどまでのペンの音や教師の声が聞こえなくなる。代わりに、街に溢れている人の声や足音。裏道にある空調設備の強い風の音が響いて聞こえる。ビーコンの反応を頼りに使い魔を追いかける。一つ、一つ、また一つその反応が消えていく。魔法少女としての衣装を身に着けている訳ではないが、確かにマミはソウルジェムを光らせ魔法を使い、使い魔を倒していく。疲れからなのか額には汗がじんわりとにじみ出ている。それと同時に、手にしている黄色いソウルジェムも濁ったような色に変化していく。

 

「ふぅ……」

 

 数分間、マミは街中にいる使い魔を倒し続けていた。ある程度倒し終わったころには、ビーコンには先ほどまで反応していた使い魔は消え去っている。全てを倒しているわけではない。魔女や使い魔にはある程度の思考能力や感情といったものは存在している。仲間が突如倒されていく異常さに気づき、身を陰に隠したのか、その場から立ち去ったのだろう。身を隠していても反応が消えるわけではないのだが、使い魔が動かなければ被害も出ることはない。そう思い、疲れからなのか息を吐き肩を撫でおろす。手にしているソウルジェムには汚れが目立っており、あらかじめ用意していたグリーフシードを近づけて汚れを吸い取ると、元の綺麗な黄色の輝きを取り戻し、濁りは消え失せ透き通るほどになっていた。

 

 授業が終わるまではまだ時間はある。ソウルジェムを指輪に戻した後、額についていた汗を丁寧に折りたたまれたハンカチでふき取り、体を落ち着かせるために軽く深呼吸をする。授業の予習はある程度済ませているので、先生の話を多少は聞いていなくても問題はなかった。先生には悪いかもしれないが、他の生徒や先生の邪魔さえしなければ何も言われることはないだろう。

 

「(予習は欠かせないわね…あら?)」

 

 教室や廊下に設置してあるスピーカーから独特の音楽が鳴り響いている。どうやら授業が終了したようで、それと同時に周りの生徒は背伸びをしたり、ため息を吐いていたりしていた。マミたちは現在三年生位置にいる。つまりは、来年からは高校生なので、それを意識して余計に疲れをため込んでいるのだろう。

 

「はいはい、それじゃあ挨拶を」

 

 先生は手をたたきながら終わりの挨拶を促すように、日直の役割の生徒を呼んでいた。生徒はその声に一斉に立ち上がり声をそろえて挨拶をしていく。日直は最後に着席と言って、生徒が座っていく。それと同時に先ほどまで疲れで沈んでいた空気は消え去り賑やかな声で埋まっていた。四時間目が終わり、その次は待ちに待ったお昼休みなのか、いつもよりもその活気は溢れているように聞こえていた。

 教科書やノートを閉じて、お弁当箱をカバンの中から取り出そうとすると、こちらに向かってくる足音が聞こえる。

 

「マミさん、さっきの授業のことで聞きたいことがあるんだけど」

 

「分からないところかしら?」

 

 どうやら、友人が先ほどの授業で分からないことがあったのか、助け舟を求めてマミの正面の椅子に座り、机にはノートを広げて見せた。友人の分からないところを教えながら話していると、それと同時にいつもと同じようにお昼を一緒に食べようとのお誘いが来るのだが。

 

「ごめんなさい、今日は他の子と一緒に食べるかもしれないの。もし約束ができそうになければ、一緒に食べに行っていいかしら?」

 

 勝手なお願いながらも気にしない様子で受け入れてくれたので、マミはお弁当を片手に教室を出ていく。実際には約束など取り付けてはいないのだが、迷いもなくその場所に向かっていく。

 

「ふふ、一緒に食べてくれたらいいのだけれど…緊張しちゃうわ」

 

 その言葉と裏腹に、彼女の声は楽しんでいるようにも聞こえた。ただ、足取りは少しだけ遅く、まるで誰かのペースに合わせるような、そんな雰囲気を出していた。

 マミが目指すは先ほどから引っかかっている大きな魔力の反応。魔女のような禍々しく粘り気の濃いような魔力ではなく、願いを叶えた一定の規則性を持つ魔法少女の反応。あの時裏路地で出会ったマミが警戒している黒髪の少女の方向に迷いなく進んでいった。

 

 

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