マミが屋上に現れてから、妙な静けさが立ち込める。まどかとさやかは何故ここまで静かなのかは分からなかった。一つ言えることは、ほむらはマミに気を許してはいないこと。
そもそもほむらは転校してから一日しかたっていないので、知り合いも少ないだろうし気を許す仲を作っているほど長い時間いるわけではないのだが、それでもクラスで知らない人物である周りの人に質問攻めをされたとしても、ここまでの雰囲気は出してはいなかった。一つ上の先輩だからという解釈をするのも何か違うような気がする。まどかたちがマミのことをさん付で呼んでいる時点で、マミが自分たちよりも先輩というのはある程度予想できることなのだが、それだけで片付けてもいいのかと思うほどに、二人の間には険悪とまではいかなくても、引っ掛かりを覚える雰囲気が出ていた。
「マミさん、ほむらちゃんのこと知っているんですか?」
「ええ、知っているわ。昨日に転校してきた子でしょう?魔法少女として活動している時に私と会ったから、その時に彼女を初めて見たの。それに、私以外に見滝原に魔法少女が居るなんて驚きだったわ。見滝原で活動している魔法少女は私だけなんだけど…とにかく、あの裏路地でほむらさんに会った時、学校で是非お喋りしたいと思ったの。急に参加してごめんなさいね?」
お詫びを言うように微笑みながら可愛らしく舌を出す。まどかたちは大丈夫だと言わんばかりに手を振り、マミと一緒にご飯を食べようとしていた。
ほむらからすれば、この時間軸のマミは謎が多く、ある程度情報を集めておいてから対話を試みる方が良かったのだが、マミの様子からするとこちらの行動はある程度把握されていることが分かるので、思うように動くのは難しいだろう。
マミはほむらと話をしたいと思い屋上に足を運んでいる。まどかたちの様子から、マミのお願いで自分が屋上に来ることが分かっていた訳ではない。となると、彼女はこちらに真っすぐ向かってきた。何を考えているのかはわからないが、いつものように動けないことがやりにくいと心の中で軽く舌打ちを鳴らす。
「ほむらさん、今はそんなに警戒していなくても大丈夫よ…そういえば、ご挨拶がまだだったわね。私の名前は巴マミ。あなたと同じ魔法少女をやっているわ」
「…暁美ほむら。どう呼んでも構わないわ」
「そう、それじゃあ暁美さんって言わせてもらうわね」
「好きにして頂戴」
警戒しないでいいとマミに言われるも、言われてはい分かりましたと素直に警戒を解くようなことはできない。彼女がどういう意図でこちらに関わっているのか分からないが、経験上彼女には気を付けなければならないと思い体が強張ってしまう。
いくつもの世界線を渡り歩いてきたほむらだからこそ言えることなのだが、巴マミは精神的に弱い部分が見受けられる。正義の魔法少女を貫くことで、心の均衡を保っている節もある。だからこそ、彼女の精神が壊れた時の代償は大きい。ほむらはその姿を何度も見てきた。そして、何度も体験してきた。
マミに魔法少女の真実を告げたとき、彼女は自分と同じ魔法少女を知らぬ間に手にかけてたことや、自分自身が絶望を振りまく魔女になることが我慢できず、周りの魔法少女を殺す暴挙に出たこともあった。彼女はそれだけの行動を起こす危険を秘めている。何が原因でこちらがやられるかがわからない。目の前にいるマミからしたら何のことだかわからないかもしれないが、ほむらから見れば十分な危険因子なのだ。そのため、警戒を解くわけにはいかない。
「今日ここに来たのはね、暁美さんと魔法少女についてのお話をしたかったからなの。まず初めに、魔法少女の活動中以外であなたと争う必要はないと思っているわ。私たちは魔法少女の前に一人の中学生…学生としていきたいと思っているの。と言っても、正直な話私たちは魔法少女故にそういった話はどうしても付きまとってしまうし、完全に線引きをすることは難しいと思うわ。だけど、あまり学内に争いごとは持ち込みたくはない。暁美さんもそうは思わないかしら?」
「……」
ほむらは静かにうなずく。マミの言っていることも確かにわかるが、魔法少女と言いうものにはある程度の衝突は避けられない。ただ、学内では険悪になる必要はないということなのだろうが、やはり無理な話だとは思う。しかし、マミが学内でまどかたちに魔法少女の話を極力したくはないというのであれば、こちらとしてはありがたい話ではあった。
マミの考え方は分かった。しかし、それでもこの違和感は拭えない。過去に経験してきたマミは、学校だろうが何だろうが魔法少女の素質のあるまどかやさやかに勧誘を持ち掛ける人物であった。なのに、今回のマミは真逆の考えを持っている。マミには悪いが、今のマミを見ていると、気持ちが悪いという感情がこみあげてくるように思えた。同じ人物のはずなのに同じ人物ではない。自分が持っている人物像に当てはまるところもあれば全く違う部分もある。こんなことはなかったはずなのに、根本的な部分は同じなはずなのに、何かが違う。
今のマミは何かが壊れている。マミとの関係は決して短くはないし、むしろ長いほうだと自負している。長い付き合いがあるからこそ、こんなことは思わなかったはずなのに。それに、マミは警戒していないと言っているが、マミのほうこそほむら以上に警戒しているように思えた。何を隠しているかは分からないが、この違和感はほむらだからこそわかるものなのだろう。
「頷いてもらえて嬉しいわ。鹿目さんたちは知らないでしょうけど、私と暁美さんってあの路地裏で一度衝突しているの。だけど、学内までそういうことを持ち込みたくはないからって言ったのだけど、魔法少女の活動中に暁美さんと出会ったら、はっきり言えばもう一度衝突は避けられないと思うわ」
「そんな…どうにかならないんですか?魔法少女同士で戦うなんて、そんなの…」
「仕方ないわ。魔法少女の活動にはグリーフシードが必要…わかるわよね?」
「そうですけど…」
「(どういうことかしら…)」
妙に聞き分けのいいまどかに疑問を覚える。いつものまどかなら、強い自己犠牲を働かせて魔法少女同士戦うことを辞めれないのかと言うはずなのだが、何も反論せず静かになるその姿はあまり見覚えがない。やはり、マミに何かを言われたのだろうかと思いながら、そもそもの目的であったまどかとの魔法少女についての話を聞くことが先決だと考え、ほむらは二人の話に口を出すことにした。
「鹿目まどか。私をここに呼んだ理由を話してくれないかしら」
「あ、そ、そうだね、ごめんねほむらちゃん…今日はね、ほむらちゃんが転校してきた時のお話をしたかったの。ほむらちゃんは私に魔法少女にならないように言ってたよね?どうして私に魔法少女になってほしくないって言ったのか、もしかしたら、ほむらちゃんは魔法少女について何か知ってるのかなーって…」
「そうね…いろいろ知っているわ」
「(どういうことかしら、転校初日には鹿目さんが魔法少女になれることを知っていた…?)」
マミは、謎の多いほむらから何か聞けるかもしれないという期待を含ませながらもここに足を運んできている。ほむらが絡んでいる話は少しでも聞いておきたいと思い注意深くまどかの話を聞いていたのだが、ほむらが転校してきたときにはまどかの素質を見破っているという話が出てきた。些細なことかもしれないが、マミにとってはこの話は重要なものだった。
魔女や使い魔の位置はもちろんのこと、魔法少女がそれぞれ持っている魔力の質まで感知することにはある程度の自信はある。魔女の位置がわかれば、街を歩き回る時間も少なくなる。時間が少なくなればより多くの時間をほかのものに使える。魔法少女が一人一人持っている魔力の質を把握することができれば、その魔法少女が何処にいるのかを感じることができる。ほむらがこの学校にいることや屋上にいるのを知っていたのは、これを応用したものだ。そして、魔法の総量を感じることができれば、自分が対処できる魔法少女なのかを判断できる。魔法少女の魔力の質を知ることができるのは、その少女が自分と同じ魔法少女だからだ。
素質を持つだけの少女の魔力を感知することと、魔法少女の魔力を感知することは、同じようなことに見えてしていることは全く違う。魔法少女がほかの魔法少女や使い魔を感知できるのは、自分たちと同じように魔力のようなものを持っているからだと思っている。しかし、素質を持つ少女は、素質を持っているだけの少女に過ぎず、魔法を使えるわけではない。テレパシーなどは確かに使えるが、マミと同じように何もない場所にリボンを精製したりと、空間に関与する力は出すことはできない。もしかしたら例外はあるかもしれないが、少なくともマミは見たことがない。
魔法少女の可能性ある少女たちが持つ力を、奥底に眠る才能を形として引き出せるのはキュゥべえしかいない。そして、それを見分ける力を持つものもキュゥべえしかいないはずだ。キュゥべえ以外に魔法少女が見分けれる方法があるとするならば、魔法少女の素質を持つ少女を見分けれるように、そう言った類のものをキュゥべえに願ったのか。
しかし、この説には大きな穴がある。そう言った願いで魔法少女になったのであれば、強い感知能力を持つ魔法少女になる可能性が高い。だが、ほむらの魔法は瞬間移動であった。願いと魔法は強い結びつきがあるので、この仮説は薄いと思える。となれば、彼女は元々強い感知能力を持っているのか、それとも、元々鹿目まどかに魔法少女の素質を持っていることを知っていたのか。
「もしよかったら、ほむらちゃんがなんで私に魔法少女になって欲しくないのか、話してほしいの」
「それは…」
「お願いほむらちゃん。大切なことだから」
「……」
「(あら…?)」
ほむらはまどかの様子に困惑していた。ほむらが知っているまどかは、自分にあまり自信がなく、人に何かを強く言える人間ではなく、しかし、強い自己犠牲を働かせて、自分のことを考えず周りの人を助けようとする心優しい女の子。ほむらもまどかに助けてもらった1人だった。そのはずなのに、今のまどかには何か強い意志を持ちこちらに話しかけている。今までこんなことはなかったのだが、正直今はその話を持ち出したくはない。まどかとさやかだけであれば、そう言った話をするのもやぶさかではない。むしろ、彼女たちに自分の思いを打ち明け、魔法少女になってほしくない。その理由も言いたいと思うのだが、今はマミが近くにいる。マミがいると、その理由を口に出すことはできなかった。
まどかがほむらに魔法少女の話を持ちかけてきた時、ほむらはマミの方に視線を動かしたことにマミは気づいていた。注意深くほむらを見ていなければ気づかないほど、一瞬の出来事ではあった。一瞬の出来事ではあるけれども、マミにとってこれは大きい情報である。そう思っていると、ほむらは静かにその口を開いていく。
「申し訳ないけれど、今はそのことについて話すことが出来ないわ。ただ、鹿目まどかと美樹さやかに魔法少女になって欲しくはない。そうとしか言えないわ」
「なんで私にだけ魔法少女になって欲しくないって言ったの?」
「それも…言えないわ」
何も言ってくれないながらも、まどかとさやかに魔法少女になって欲しくない。その真意は本当かどうか、まどかとさやかはテレパシーでどう思うか話し合ってみるが、お互い嘘を言っているようには見えないという意見が出ていた。
そして、ほむらに漠然とした質問ながらも、大切な質問を投げかける。
「ほむらちゃんは、魔法少女について…どう思ってる?」
「…魔法少女は、みんなが思っているものとは全く違うわ。夢も希望も溢れてはいない。その先にあるものは何もないわ」
「どうしてそう思うのか、聞いてもいいかな」
「それは…」
ここまで強く、愚直とも言っていいほどに話しかけてくるまどか。気圧されているようにも感じてしまい、ほむらの表情は無表情とは言えないほどに、困ったような表情に変えていた。話したくないわけではないが、今は話せない理由がある。その理由は全て分かるわけではないが、その視線や表情から一部の理由は、マミにも察せられるものだった。
「(…私がいると話が進みそうにないわね)」
ほむらは何かしらの理由でマミに話を聞かれたくはないのは分かる。しかし、まどかとさやかに話をしてしまう以上、マミとの友好関係が築かれている今、後々マミがまどか達に何を話したのかを聞いてしまえばその問題は解消されてしまう。つまりは、今この状況でマミに話を聞かれたくはない。それか、まどかとさやかがマミに話すことができない理由がその話にはあるのか。
ほむらの行動からここまで考えたのだが、この考えは何かが間違えているように感じてしまう。そう、マミはほむらの細かい行動だけにしか注意していない。そもそも、最初に考えたマミに話を聞かれたくないという部分に違和感を感じてしまう。本当に聞かれたくないのであれば、まどかたちの話しに付き合わないのが得策だと思う。自分の敵と思われる人物の近くで話をすること自体が論外だ。ならば、何故ここまでマミを気にする必要があるのか。そして、ほむらとまどかの会話を思い出し、とある仮説が新たに出る。
「(本当に私に話を聞かれたくない内容なのかしら…もしかして暁美さんは巴マミに聞かれたくはないというよりも、魔法少女に聞かれたくない内容じゃないのかしら。暁美さんは、魔法少女には夢も希望も溢れてはいないと言っていた…もしかして…)」
仮定の話だ。もし彼女が、巴マミに話をしたくはないのではなく、魔法少女に話を聞かれたくはないとしよう。そして、彼女は魔法少女について夢も希望も無いと断言した。もしかしたら、彼女は魔法少女が魔女になることを知っているのではないだろうか。もしそうだとしたならば、彼女が魔法少女の契約を止める理由にもなるし、まどかたちに話したとして、何も知らないと思われているマミにその真実を伝えることはできないはずだ。
魔法少女にこの真実を伝えるのはリスクが伴う。ソウルジェムはその持ち主の精神の揺れ幅で濁りが深くなることもあれば、抑えられることともできる。つまり、持ち主が絶望などの負の感情に囚われてしまえば、ソウルジェムの濁りは強まり魔女化に近づいてしまう。そして、精神を壊しかけてしまう事実でもあるが故に、魔女化だけするならまだしも、自暴自棄になり何をするかもわからない魔法少女もいる。マミはそのことを伝えられた場合、魔女化を抑えれたとは思うが一歩間違えれば後者のほうだろう。
とにかく、今までの行動や喋っていた内容を察するに、ほむらは魔法少女が魔女になる真実を知っている可能性がある。彼女がいつそれを知ったのかは分からない。そもそもキュゥべえが契約を交わしていないと言っているイレギュラーだ。彼女に関してはまだまだ情報が集まっていないものの、もし、魔女化の真実を聞かれたくないと思っているのであれば、こちらから手を回すことが話の流れをよくする行動だと判断し、ほむらに対してテレパシーを送ることにした。
『ねえ、暁美さん。もしかして、あなたは魔法少女がどんな存在に変化するのか知っているの?』
「っ!」
明らかにほむらの表情は変化した。今までも視線が動いていたり、無表情を保とうとしていた時の些細な動きとは訳が違うほどに。
今までマミに対しての関心を少しでも見せないように演技はしていたようだが、マミがテレパシーで話しかけたとたん、目を見開きながらと言っていいほどにこちらに顔を向けてくる。まどかとさやかは何があったのか不思議な様子ではあったが、とにかく、これで確信が得られた。暁美ほむらは魔法少女が魔女になることを知っている。
「今、暁美さんにテレパシーを送ったの。魔法少女が何になるか知っているのかって」
「え、それって…」
「そうね、十中八九私たちが想像しているもので間違いはないと思うけれども、出来れば彼女の口から聞きたいわ。ねえ、暁美さん。魔法少女って、一体何になるのか教えて欲しいのだけれど」
「巴マミ…あなたが何時その情報を手に入れたかは分からないけれど、あなたはそれを乗り越えている…いえ、乗り越えているのかはともかくとして、そうね、私の口から言わせてもらうのなら…魔法少女は魔女になる…そうでしょう?」
「あなたも…やっぱり、そうなのね」
ほむらの唇は微かに震えていた。本当に言ってもいいのか。口数は多くなり、言葉を選びながら慎重にその言葉を吐くように。魔法少女は魔女になる。たったそれだけの言葉かもしれないが、彼女のその言葉には重みが存在した。マミは、彼女がその言葉を吐くことにどれだけ勇気のいることだったのかが理解できるし、その表情などからも、過去に何があったのかがなんとなくではあるが想像がつく。
ほむらの口から重みを吐くように、マミに対する警戒心も一緒に流れていくように感じた。警戒心がなくなっていることはないが、少なくなっていることには間違いはなかった。つまり、マミに対する引っ掛かりは魔法少女が魔女になることを伝えた時に、何をするかがわからないというのもあり警戒していたのかもしれない。
確かに、実力のある魔法少女が自暴自棄になり暴れれば、どれだけの損失が出るかは想像がつかない。魔女のように知能もなしに無差別な悪意を振りまくのならともかく、魔法少女は考える力を持ちながらも周りを攻撃するのだから質が悪い。
何を理由に警戒心を軽くしたのかは置いといて、話を聞き出すのに警戒心が少なくなることには越したことはない。このまま話を続けるべく、まどかとほむらに続きを促す。
「鹿目さん、話の続きをお願いしても宜しいかしら」
「あ、そ、そうですね…そっか、ほむらちゃんは魔法少女が魔女になることを知ってたんだね…」
「それはこちらのセリフよ」
「マミさんが魔法少女の話をした時に教えてくれたんだ…ねえ、ほむらちゃん。私が魔法少女になるのが反対な理由、今なら言えることはできないかな?魔法少女が魔女になるからって思ったんだけど、本当にそれだけなのかなって…」
「申し訳ないけれど、それについてはあまり口をしたくはないの。ただ、私はあなたたちに魔法少女になって欲しくない。魔女になる可能性を背負って生きてほしくはない。今が幸せだと、そう思って生きて欲しい。私が言えることはこれだけよ」
「…うん、わかった。だけど、それでも願いを叶えたいって思う時が来るかも知れない。だから、そのときは相談させてもらってもいいかな?」
「……分かったわ。ひと声かけて頂戴。私が解決できることならば、手伝わせてもらうわ」
「勿論、私にも相談して頂戴ね?本当は何が何でも契約を止めたいところだけど、どうしようもない時があるかもしれない。そういった場合は、自分の身を守ると思って契約をするのも一つの手かも知れないわね」
ほむらはまどかの提案に不服そうではあったが、契約の際に自分が関与できる時間をもらえるだけ良いと妥協した様子だった。
一番意外なのは、キュゥべえとの契約を一番強く拒んでいたマミが、契約することも一つの手だと進めるようなことを話すのかもしれない。
「契約をするかもしれないって言ったら、マミさんに怒られるかもしれないって思ったんですけど、正直意外でした」
「そうね…確かに魔法少女にはなってほしくはない。その気持ちは変わらないわ。だから、さっきも言った通り、何が何でも止めたいっていうのが本心よ?だけど、それでも契約を迫られる時は来るのかもしれないの。私がそうだったから、これに関しては強く口出し出来ないのかもしれないわね」
「もしよければ、マミさんは何を願ったのか、聞いてもいいですか?」
「面白くないわよ?私は両親と車で移動してた時に大きな事故に遭ってね、その時に生きたいって願ったの。じゃないと、私はあのまま死んでいたから」
「マミさん、もしかして…」
「ふふ、気付いてるかもしれないけど、私の両親は死んじゃったの。今思い出しても凄い後悔してるわ。あの時、私だけが助けてって願ったから…私だけじゃなくて、みんなが生きられる願いを言えてたら…ってね、もう、そんな暗い顔しないで。過ぎたことよ」
「そんな、そんなのって…」
「マミさん、そんなことがあったんですね…」
マミは生きるか死ぬかの選択に迫られていた。そのときは魔法少女のまの字も知らない状態で、魔法少女がどんな存在なのか全く分からなかったかもしれないが、説明を受ける時間すらない状態だった。願いを言わなければ死んでしまう。
まどかをどんなことがあっても守れるとは言っているが、どうしても願いを言わなければいけない事態に巻き込まれるかもしれない。マミのように、生きるか死ぬかの選択を迫られる可能性もゼロではない。だからこそ、そういった事柄に関しては強く言えない部分があるのだろう。
「とにかく、もういい時間だわ。丁度話も終わったようだし、今日はここまでにして、聞きたいことがあるのなら放課後とかいかがかしら?」
「それなら、放課後一緒に帰りませんか?」
「お、いいねまどか。マミさん一緒に帰りましょうよ!」
「残念だけど、私は他に用事があるから今回はご遠慮させていただくわ」
「そう…残念ね。また誘わせていただくわ」
時計を見れば午後の授業がもうすぐで始まる頃だった。食事は喋りながらの合間合間に食べていたので早めに済んではいたが、重要な話をしていただけあって、緊張が解かれた身体には妙な疲れが襲いかかってくる。食事を取りながらする話ではなかったかもしれないが、学校でゆっくり話す時間があるとするならば、このタイミングしかないだろう。
隠し事の多いほむらではあったが、まどかはほむらとの距離が縮まったように思えて、非常に嬉しそうに笑っていた。幸い、さやかも冷静に話を聞いていたおかげでほむらと衝突を産まずに済み、悪い印象は与えていなかったとは思う。
気になるのはほむらとマミの関係だった。裏路地で衝突したと初めて聞き驚いたが、これからも魔法少女としての活動中に衝突は免れないと聞き、まどかは心配で仕方が無かった。出来れば、仲良くして欲しいのが本心ではあったが、魔法少女でしかわからない関係というものがあるのだろう。素質しか持っていない自分では、その間に入り込むことはできないのかもしれない。しかし、ほむらとの会話をしてから思う事がある。魔法少女などが絡んだ出来事は、長い付き合いになるだろうということであった。