見習い軍師は夢を見る   作:サキナデッタ

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※祝!クリス実装!! 私用があって今日の16時まで完成させられませんでしたが、何とかその日の内に仕上げられました。

クリスの声(特に男の方)が自分のイメージしていたクリスとまんま同じで大興奮! 是非ともカタリナと支援を組ませて活躍させてあげたい!!


夢見る少女

 

『私は元あった肉体から分離して生まれた存在。

あの軍勢との戦いでその存在はなくなり、あの狂った心の中へ消えていった……はずだった。

だが、意識を取り戻すと私は見たこともない世界で目を覚ました。白夜でも暗夜でもあの世界でもない全く別の異界で』

 

「つまりあなたという存在は一度消えてしまったのですか?」

 

『あぁ…しかし何故かまた蘇ってしまった。

前のように不安定なものではなく完全に独立した存在に』

 

「そうだったのですね。でも何故自分とは無関係の異界を救おうと思われたのですか?」

 

『……君の仲間達が私の希望の芽になったみたいに、私も誰かの希望になりたかったのかもしれない。

もしかしたらそれが私の生きている意味かもしれないと思ってね』

 

「とても優しいのですね」

 

『ふっ、娘にはよくお人よしだ。と言われているがね…。

だが私のせいで一人の少女を深く傷つけてしまった……』

 

「それって…カタリナ殿のことですか?」

 

『影の英雄が私と行動していることを悟られない為に、確かに私は彼に関係する全てのものを消した。

にも関わらすあの少女だけは彼のことを忘れずにひたすら想い続けていた』

 

「カタリナさんは以前エンブラとの契約で元いた世界から離れていた時期があります。もしかしたらそのタイミングと重なって……」

 

『いや、それはあり得ない。彼女以外にも異界に渡っていたものはいたがその者達の記憶も消えていた』

 

「……確かに召喚士殿もアスクで彼のことを知っているものは誰もいなかったと言っていた」

 

『……そうなると答えはもう一つしかない。

彼女には私の力など物ともしない程の強い想いが彼にあったことになるな』

 

「そんなことがあり得るのでしょうか?」

 

マルスが不思議そうに尋ねるとハイドラは笑いながら答えた。

 

『何を言うか神の力といえど万能ではない。

それは伝承で語り継がれている多くの英雄達が証明してくれたではないか』

 

「!!!」

 

『どんな強大な力を持つ者の前でも彼らは決して希望を捨てずに幾度となく運命を変えていった』

 

「運命を……」

 

『そうだ。彼女もまた他の英雄達と同じように運命を変えたのさ』

 

そうして二人が会話をしていると突然彼らのいる時空に変化が起こる。

彼らを取り巻く世界の歪み【戦渦】が急激に収束しだしたのだ。

 

その様子を見たハイドラは満足そうに笑みを浮かべる。

 

『どうやら渦の元凶を断ったようだな。さすがこの世界の英雄達だ。

さて…これでこの世界での私達のやるべきことは終わった。私はここで失礼するよ』

 

「もう行ってしまわれるのですか?」

 

『あぁ、長い間引き留めてすまなかった。

また出会うことがあれば今度は異変解決の為に共に戦おう』

 

「……はい! 是非とも!」

 

『それではまた会おう。未来を知る王女よ……』

 

ハイドラはそう言い残し、マルスの目の前から姿を消していった。

そして一人残ったマルスは戦渦に向かって行った英雄達を迎えに行く為に静かに歩きだした。

 

「また会いましょう。優しき透魔の神よ」

 

 

 

 

異界のクリスが消えた後、私はクリスからこれまでのこと全てを聞いた。

別の世界からやって来た神様と共に数多の異界を救ってきたこと。

そしてこのことで皆さんに迷惑をかけないようにマルス様以外の人の記憶を消したことも。

 

「それでも何故かカタリナだけは俺のことを忘れずにいてくれた…何だか嬉しいな」

 

「あっ、えっと、その…ありがとう、ございます……」

 

「何でカタリナが礼を言うんだよ。礼を言いたのはこっちの方なのに」

 

「す、すみません……」

 

「でも本当にすまなかった。長い間お前を苦しめてしまって…俺のせいだ…。俺のことなんか忘れてしまってもよかったのに……」

 

クリスがそう呟いた瞬間、これまで感じたことのない感情が私の中を覆いつくした。

私は飛び掛かるように彼の襟元を両手で掴み、眼前まで迫って叫んだ。

 

「バカなことを言わないでください!!私は……あなたのお蔭でここまで生きていられたんです!!!

あなたと出会わなければここに私はいなかった!!! 一生人形のままだった!!!

私を暗闇の奥底から救い出してくれたあなたに、どれだけ感謝しているのか……。

返しても返しきれないほどの恩を受けているんです!!!

なのに…なのに……忘れられるわけないじゃないですか!!! 私のっ…大切な…人、を……」

 

これまで一度も伝えられなかった想いがとめどなく溢れ出す。

感情を全く制御することが出来ない。ただひたすらに悲しかった。

今まで私という存在を作ってくれた人のことを忘れた方がいいと言われるのが。

たとえそれがクリス本人であってもたまらなく悲しかった。

 

「カタリナ……」

 

「……私がこうして今ここにいるのはクリスのお蔭なんです。

だから何があっても私はあなたのことを忘れたりしません」

 

「悪かった。本当にお前に言わなきゃいけないことを間違っていた…。

ずっと俺のことを忘れないでくれて…ありがとう」

 

「はい! どういたしましてです」

 

「……それにしてもカタリナ。今のといい、さっきのといい凄かったな。

あそこまで感情的になったお前を見たの初めて見たぞ」

 

思わず感情的になってしまったことをクリスに追及されて、再び羞恥に染まる。

 

「あ、あれはもう忘れてください!

……ずっとクリスと出会えなくて寂しかったんですから」

 

「ん? 後ろの方なんて言ったんだ?」

 

「な、何でもないです…」

 

恥ずかしくて徐々に声を小さくしていったせいか上手く聞き取れなかったようです。

私としては聞こえなくて一安心でしたが。

 

そんな会話をしていると、急に私達のいる大地に大きな揺れが起こった。

慌ててクリスの方を見ると彼も少しだけ焦りを見せていた。

 

「そうか…この【戦渦】を引き起こしていた元凶は異界の俺だったんだな」

 

「そ、それがこの地震とどう関係が?」

 

「元凶を倒したことによって【戦渦】が収束し始めているってことだ。

つまりは俺達のいるこの場所はあと少しで消えてなくなってしまう」

 

「じゃあ早く脱出しないと!!」

 

「あぁ、お互い元入った時空から脱出しないとここから出られなくなる」

 

「それでしたらクリス、こっちに来てください。

私、確か向こうの林から出てきた覚えがあるんです」

 

クリスの手を引っ張って連れて行こうとしますが、何故か彼はその場から動かないでいた。

 

「どうしたんですか? 急がないとこのままじゃ私達……」

 

「すまないが俺は一緒に行くことが出来ない」

 

「え? それって?」

 

「まだ俺にはやらなければいけないことがある。

だからお前と一緒に皆の元へは行けないんだ」

 

「そんなッ! せっかくこうして会えたのに!!」

 

「カタリナ…本当にすまない。でも俺は……」

 

申し訳なさそうに頼み込むクリスを見て、ほんの少しだけ私は考えた。

そして私はクリスを掴んでいた手をそっと離した。

 

「えっ?」

 

「行ってください。それがクリスの決めたことなら、私ずっと待ってます。あなたが無事に私達の元に帰って来るまで」

 

「本当にいいのか…?」

 

「はい。でも約束してください。絶対に帰ってくるって」

 

「分かった…約束するよ」

 

「じゃあクリス、また」

 

「ああ…またな。カタリナ」

 

私達はそう言ってお互いに背を向けて歩き出す。

……でも私はすぐに向き直り、クリスの元へ駆け出した。

 

「クリス!!!」

 

「ん? どうしたカタリ__ッ!!」

 

呼ばれて私の方に振り返ったクリスに向かって私は精一杯背伸びをした。

そして…………

 

「約束。ちゃんと守ってくださいね」

 

「あ、あぁ……やくそく、する」

 

 

 

 

「ありがとう英雄達、君達のお蔭でこの世界は救われた」

 

「へへっ、俺達の手にかかればこんなもんよ」

 

「何言ってんのよ、アンタは敵陣突っ込んでメチャクチャに暴れまわってただけじゃない」

 

「全くだ。それを後ろで援護する私達の身のことも考えろ」

 

「ま、まあ無事この異変を解決したからよかったじゃないですか」

 

「良くねーよライアン! くっそ~、あと一歩で俺が元凶をぶっ倒せると思ったのにあのヤロ~」

 

手をわなわなさせながらルークが悔しがっていると【戦渦】から出てくる一人の影が見えた。

それを見た途端、セシルは顔を輝かせてその者へと走り出した。

 

「カタリナー!!」

 

「セシルさん。みんな…無事だったんですね__ってわぶっ」

 

「アンタねー! 何一人で勝手に行っちゃうのよ!

どれだけアタシ…心配したと思ってんのよ!!」

 

「せ、セシルさん…くる…苦しいです……」

 

第七小隊の仲間達と再会できて安心するカタリナの元にセシルが抱き着く。その他のメンバーも彼女の帰還に安堵していた。

 

「セシル、そのくらいにしておけ折角カタリナが無事に戻れたのに無事じゃなくなってしまう」

 

「い、いいんですロディさん…私皆さんに迷惑をかけてしまったので…これくらいはッ……」

 

「アンタ達、アタシの抱擁を拷問か何かと勘違いしてない!?」

 

「実際拷問だろ」

 

「何ですってぇ?!!」

 

「痛ッ! 何も殴ることねーだろ、暴力女っぷりは相変わらずだな!」

 

「あ~らそれならアタシの熱い抱擁(サバオリ)の方が良かったかしら?」

 

「字面と読み方の落差が激しい!!」

 

「それはともかく、カタリナさん無事に戻ってきて本当によかったです」

(オイ、ライアン! ともかくって何だこの怪力女に折られた暁には無事じゃ__)

 

「ありがとうございます。ちょっと危険な目に遭いはしたんですが、あの人に助けてもらったんです」

(セ、セシル…待て、落ち着け。話せば分かる…話せばきっと……ぐわあああああ!!!)

 

「あの人って……もしかしてクリスさんですか?」

(口は禍の元。よく覚えておくといい…ルーク)

 

「え?」

 

ライアンの口から出た思いもよらない発言にカタリナは目を丸くする。

彼女が元いた世界の人達は皆クリスについて忘れているはずだと思っていたからだ。

 

「じゃあ…ら、ライアンさんはクリスのことを覚えていたってことですか!?」

 

食い入るように問い詰めようとするとその場にいた3人は不思議そうな顔で彼女を見つめる。

 

「何言ってるんだ、カタリナ? 俺達がアイツのこと忘れるわけないだろ」

 

「ルークの言う通りだ。彼は私達第七小隊の大切な仲間だったじゃないか」

 

「あ、あれ? 一体どうなって…?」

 

【戦渦】に入る前と後で反応が違う仲間達に混乱していると、再びセシルがカタリナの元に近づいて耳打ちをした。

 

「それよりカタリナ。久々にクリスと会ったんでしょう?

どうだったのよ? 何か進展はあったの? あったんでしょう!?」

 

「し、進展って…私はそんな……」

 

 

『約束。ちゃんと守ってくださいね』

 

『あ、あぁ……やくそく、する』

 

 

セシルの言葉を否定しようとしたが、クリスとの別れ際に行ったやり取りを思い出してカタリナの顔は火が付いたように真っ赤に染まった。

その反応を見た一同は……

 

「やっぱりー! ほら何があったのか素直に白状しなさい!!

 

「そ、それは……内緒! 内緒ですッ!!」

 

「アノヤロー、いつの間にそんなことを!

くぅ~、俺も女の子とそんなイチャついたことしたぜ」

 

「奥手な君と鈍感な彼がそんなことになるとは…私の予想より早い進展だったな」

 

「カタリナさん。おめでとうございます!」

 

「み、皆さん何想像してるんですか!!!」

 

「…………」

 

和気藹々とした雰囲気になっている第7小隊だったが、その輪から外れた所で一人寂し気に眺めている者がいた。マルスだ。

 

「第一声は僕だったのに完全に蚊帳の外になってしまっている…ど、どうしよう……」

 

「おっ、無事に【戦渦】は終わったみたいだな」

 

マルスが途方に暮れていると援軍として駆けつけてきた特務機関の一員が【戦渦】の前にやって来ていた。

 

「今回の騒動は彼らのお手柄だったね」

 

「アルフォンス王子、そしてエクラ殿も!」

 

「しょうがないさ、僕達は【扉】を出てすぐにマルス王子と一緒に【戦渦】から出てくた軍勢とずっと戦ってたんだから」

 

「……外ではそんなことが起きていたのか」

 

「お蔭でこっちは援軍一人だけ送るのが精一杯だったよ」

 

「援軍?」「一体誰のことだい?」

 

アルフォンスとマルスが尋ねるとエクラは、第七小隊のメンバーの一人に向かって指を差す。

それに気づいた人物は3人に向かって手を振った。

 

「ルーク殿か」

 

「そ、出撃の準備をしていた時に偶然会ってね。

ルークがここの世界の住人だったことを聞いて、急いで向かってもらったんだ」

 

「エクラ…いつの間にそんなことを」

 

「へへっ」

 

 

「カタリナさーん!!」

 

そんな会話をしているとアルフォンス達から少し遅れてシャロンが駆けつけてきた。

シャロンの呼びかけに気づいたカタリナは小走りで彼女に近づく。

 

「カタリナさん…無事でホントに、本当によかったです!!」

 

「ごめんなさい。シャロンさんやその他の大勢の方々に迷惑をかけてしまって……」

 

「いやいや、全然気にしないでくださいよ。私達友達じゃないですか」

 

「はい…! そうですね!!」

 

 

こうして新たなる紋章の世界で起きた事件は無事に解決した。

カタリナと特務機関の一員は【戦渦】の前でマルスと、アリティア城で第7小隊との別れを告げてアスクへと帰還した。

 

一時的ではあったが想い人と再会できたカタリナ。

もうこれで彼女が悩み苦しむことはないだろう。

だが彼女の物語はまだ終わったわけではない。

いつか彼と約束した再会の日が訪れるまで彼女の物語は終わらない。

そして再開が果たされた時、彼女はまた新たな物語を紡いでいくだろう。

 

 

 

見習い軍師は夢を見る。いつかもう一度クリスと再会し、共に道を歩むその時を____

 

 

 





※次回、エピローグです。

カタリナの物語の結末、どうぞ楽しみに!!
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