「これが【戦渦】……本当に彼はこの中にいるのですか?」
「えぇ、この奥には"影の英雄"と称されている異界の英雄がいる……
どう? 私のこと少しは信じてくれたかしらぁん?」
「たとえ真実でなかったとしても、彼に繋がる手掛かりがほんの僅かでもあるのなら……私は前に進むだけです」
カタリナはそう言い放ち、【戦渦】の中へと足を踏み入れた。そして残されたロキは__
「……健気ねぇ、だけど【戦渦】には無数の英雄達が待ち構えている。
あなたはそれを切り抜けられるのかしら? 仮に彼の元に辿り着いたとしても……ふふっ。
さあ見せて頂戴、あなたの願いの果てを……」
☆
「セシルさん! ロディさん!」
「ライアン! よかった無事だったのか」
「はい。ジョルジュさんとゴードン兄さんのお蔭で……それよりも一体何が起こってるんですか」
「分からないわ…突然、空から巨大な渦が現れたと思ったら凄まじい地震に巻き込まれて、私もロディも気が付いたらここにいたの」
「とにかく他の仲間達も探そう。もしかしたらマルス様もこの異変に巻き込まれてるかもしれない」
「その心配はいらないよ。彼は元の世界で特務機関の者達と連絡を取り合っている」
「あ、あなたは?」
「僕は…………僕の名はマルスだ」
ライアンの質問に答える仮面の英雄。それを聞いて各々が驚いた反応を見せた。
「英雄王に仕える勇敢な騎士達よ。君達の世界は【戦渦】という大いなる災厄によって引き裂かれてしまった。君達の世界を救うために、どうか僕に力を貸してほしい」
マルスと名乗る英雄の頼みに困惑する近衛騎士達、だがそこにある人物が話に割って入ってきた。
「つまり俺達は世界を救うためにその【戦渦】とやらをどうにかすればいいってことだな」
「君は…!!
「お前は……!!」
その人物を見て、マルスとロディの目が見開く。そこにいたのは__
☆
一方、アスクでは新たなる紋章の世界で起きた【戦渦】による災厄を止めるため、慌ただしく進撃の準備が進められていた。
「はい。準備が整い次第、僕達も向かいます。
くれぐれも無茶をしないように気をつけて……」
「お兄様、どうでしたか?」
「マルス王の話によると既に多くの民達が戦渦に呑み込まれてしまっているみたいだ。彼の仲間達も一緒に……
それとさっきマルス王からとんでもない知らせが届いた。どうやらカタリナがロキと共に【戦渦】に向かったらしい」
「そんなッ…! カタリナさん、どうして……」
「おそらくロキに何かそそのかされたのだろう。多分…クリスに関係することで」
「お兄様、早く【戦渦】のある場所に向かいましょう! じゃないとカタリナさんが!!」
「アルフォンス! シャロン! 準備が出来たわ、いつでも出撃可能よ!!」
「……よし、それじゃあ急ごうシャロン」
「はいッ!!」
☆
「……まさかお前とこんな所で再会することになるなんてな」
「ホントよね、アンタ今まで一体どこにいたのよ」
「本当ですよ、ずっと心配してたんですからね」
「ハハハ、俺にもいろいろとあったんだよ」
「何にせよ相変わらずで安心したよ、ルーク」
「でも凄いですね。まさかこんな形で第七小隊のメンバーが揃うなんて」
「そうね、あとはカタリナがいれば全員集合になるわね」
「……いや、あと二人だ」
「えっ?」
「どういうことだよ。俺達、第七小隊は五人のはずだぞ」
「今の君達は覚えていないかもしれないが、確かにもう一人いるんだ。
歴史の影にその姿も名前も潜めてしまったが英雄王マルスの為に戦ったもう一人の英雄が」
『…………………』
「さあ行こう。この世界と君達の仲間、そして大切な記憶を取り戻すために」
★
「ハァ……ハァ……」
数多の異界で様々な英雄達と戦ったことによって、もう私の体力は限界に近づいていました。
この異界で確か6つ目…あとどれだけ進めばいいのでしょうか……
私は疲れた身体を奮い立たせて、意を決して新たな渦の入り口に飛び込む。
目を開けるとそこはついさっきまでいた場所と全く景色の違う緑豊かな大地にいた。
どうやらまた別の異界に行くことが出来たみたいですね。
ホッと安心するのも束の間、私はこの異界にある違和感を抱いた。違和感…というよりは既視感の方が正しいのかもしれない。
慌ててもう一度、周りの景色を確認してみる。私の目に映る景色は__
私のいる平地をぐるりと円で囲むように連なる山、その奥に存在する二つの砦、更にその奥に見える大きなお城。
間違いない、この場所は……あの時と同じ!
ある確信を持った瞬間、ふと何処からか強烈な殺気を感じ、大きく後ろに飛ぶ。
すると今さっき、私の立っていた場所に巨大な剣が振り下ろされた。
ゾッと悪寒を感じながらも武器を構えて、敵と対峙しようとした瞬間、とても信じ難いものが目に入った。
私に向かって攻撃してきた敵。私はその人物に見覚えがあった。
見慣れたアリティア騎士団の鎧。マルス様と同じ綺麗な青髪。何度も思い浮かべていたあの顔。
「クリス…?」
私の声に反応したのか、ゆっくりとこちらに目を向けるクリス。
その表情は私が知るクリスとは全く異なっていた。
頬は瘦せこけて目には生気が全く宿っておらず、虚ろな表情をしていた。
「あの……私のこと、分かりますか?!」
「……………………」
「ずっとあなたのことを探してたんです」
「……………………」
「やっと再会できたのにどうしてこんな__
「______」
言葉を最後まで言い切る前にクリスは私何かを呟いて、再び剣を構えて私へと飛び掛かった。
やっとの思いで会えた大切な人との再会……それは私を希望から絶望へと叩き落す最悪の再会となった。
※風花雪月発売前までにこのシリーズを完結させるつもりで頑張ります。
次回、第8話 影の英雄