『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス 作:護人ベリアス
言えない…まさか普通の文章を書くよりもステイタスを書くのに手間取っただなんて言えるわけがない…
想い人は誰だ?(1)
「むむ!!」
僕は目を大きく見開いた。
「むむむむむ!!!!」
僕は驚きのあまり絶叫した。
「どうかしました?神様?」
ベル君が僕の驚きをまるで気づいていないかのように普段通りの様子で聞いてくる。
【深層】から帰ってきて以来ベル君の療養を優先した僕はベル君のステイタス更新を頑なに断っていたーもし更新して新しいスキルでも発現してしまえば、ベル君はスキップでダンジョンに潜っていってしまいそうだったからー
そして一ヶ月が経ってウラノスやヘルメスの協力もあって左腕が元に戻った今日。
ついにステイタス更新を実行したのだ。
「神様?ついに僕も…」
ベル君が喜びを全く隠せていないウキウキしたような声で問いかけてくる。
「うん。君もついにLV.5だ。ベル君。おめでとう。」
「やったー!!」
ベル君は僕が跨っているのも御構い無しに大喜びして暴れ出す。
「ちょっ!ベル君!」
と言った時にはすでに遅し。
僕はベッドから転げ落ちていた。
「かっ神様!!すいません!!」
僕のことも顧みずに暴れてしまったことに気づいてベル君は申し訳なさそうにこちらを見下ろしてくる。
「全く…勘弁してくれよ…」
本当に勘弁して欲しい。
まさかLVが上がるだけでなくまたまた
ベル・クラネル
LV.5
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
幸運:E
対異常:I
逃走:E
《魔法》
【ファイアボルト】
・速攻魔法。
・想い人を思い浮かべることで効果向上。
・解呪式【私はウェスタ。炎は消える。されど想いは消えない。】
【
・詠唱式の付与魔法。
・風属性。
・想い人を思い浮かべることで効果向上。
《スキル》
【
・早熟する。
・懸想が続く限り効果持続。
・懸想の丈により効果向上。
【
・能動的行動に対するチャージ実行権。
【
・猛牛系との戦闘における全能力の超高補正。
「さ!て!ベ!ル!君!」
ベル君の神として。ベル君のことが大好きな者として。
僕は確かめなければならない。
「このステイタスはどういうことだね!?」
僕の前で正座させておいたベル君に勢いよくステイタスを記した更新用紙を突きつける。
ベル君はマジマジと見つめるとだんだん表情がだらしないものになっていく。
「僕も…LV.5かぁ…えへへ…」
「ち!が!う!」
「え?」
ベル君の表情には僕が何を騒いでいるか全く分からないと書いてある。
「君の目は節穴か!下を見たまえ!下を!」
首を傾げたベル君は少し視線をずらしてじっと見つめる。するとベル君の表情はすぐに一つの感情で埋め尽くされた。
「かっ神様!?ぼっ僕についに新しい魔法が…!?」
「ちっがーう!!」
「ぶへっ!?」
飛びつこうとしてきたベル君についに僕は蹴りをかましてやった。
「ベル君。君はとんでもない節穴のようだ。ここを見たまえ!ここを!」
そう言って更新用紙をひっくり返ったベル君に投げつける。ベル君はアワアワしながら受け取ると再び更新用紙に目を向けた。
「なんか…前から発言してた魔法に色々文章が加わってますね。こんなことってあるんですか?」
「僕は知らないよ!」
「神様教えてくださいよー!」
拗ねたように言ってはいるが実は僕は本当の本当に知らない。下界に来てからまだ一年経ったか経ってないかの僕が全てを知っているはずがない。今すぐへファイストスのところに行って実はレアだからベル君にいうべきじゃなかったかとか聞きたいくらいである。
「ベル君。この文章が現れた理由に思い当たりは?」
「ないです…かね?」
嘘である。
神の僕には分かる。神には
ステイタスをマジマジと見つめるベル君をよそに僕は思考の渦に突入する。
ぐぬぬぬ…
やはりあの四日間のせいかと僕の直感は告げる。
というよりあれしかない。ヘルメスとかが言っていた『ろみおとじゅりえっとこうか』なるものが発生しかねない状況にあったのだ。
だが証拠がイマイチ見られない。
ベル君は特段外には出たがらず安静にするという言いつけを素直に守っている。
一方のエルフ君は見舞いに来ることもなく、今まで通り『豊穣の女主人』で働いている。
四日間も二人きりだったというのになんと淡白なこと。
二人の間では何もなかったんじゃないかって僕は結論を急ぎそうになる。
だがどちらにせよ【深層】と呼ばれる場所において何があったかはベル君とエルフ君以外には分からない。それが僕には悔しい。
ベル君の最近の態度を考えても全くもって遠征前と変化なし。ちゃんとウブな少年のままだし、度を越えたお人よしのまま。
やはりベル君はファミリアを結成した頃からずっと僕一筋なんだなぁ…
だなんて結論には当然至らない。
こうなると四日間生死を共にしたエルフ君との間で発生したであろう『ろみおとじゅりえっとこうか』よりヴァレン何某君への憧憬の方が強力だったということになってしまう。これはこれで僕のベル君の危機である。
さらにさらに僕のベル君の周りにはサポーター君や春姫君、アイシャ君だけでなくファミリアを越えて多くのベル君を狙っている泥棒猫がいる。安心など到底できない。
「ぐぬぬぬ…」
僕はしばらくの間唸りを止めることはできなかった。