『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス   作:護人ベリアス

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今回もリューさん視点です。
戦友とは誰だ?と思った方。
あの暑苦しいあの方の眷属ですよ。(笑)

カフェオレさん、マルク911さん、感想ありがとうございます!


正義のファミリア・ミィス
戦友との邂逅


 すごく久方ぶりではないかと錯覚するほど眩しく感じる日の光。

 

 もう赤くなりつつある空を見上げてながら、私とベルは階段を登り終えた。

 

 私とベルがこっ…にはなっていないが、リヴェラにしばらく滞在した後、あの眼帯の男に殺意のこもった目を向けながらそれなりに助けてもらった恩の礼を言ってリヴェラから立ち去った。

 

 両思いとお互い認識しているけれど、私の頑固さのせいで恋人にはなっていないというなんとも奇妙な関係を持て余しながら今度はきちんと連携を取ることを確認した上でダンジョンでの帰路に挑んだ。

 

 いざきちんとお互いの気持ちが分かった上で動くと連携も上手くいき、今までよりも一人の時よりも断然モンスターの殲滅スピードが早いのを感じた。

 

 ベルと共闘をきちんと出来たということに私は幸せを感じることができた。

 

 私はベルを支えることができる。

 

 私はベルと共に戦うことができる。

 

 こんなに幸せだと感じたのはきっと私がベルと共闘さえも出来なくなったかと思ったから。それでもベルの方に気が散りがちなのは変わらないが。

 

 だがこれでオラリオの外での修行もさらなる成果が出るであろうと自信を持つことができた。私はこの修行の旅に期待をかけた。

 

 

 私はもっと強くなってベルを支えたい。

 

 

 ダンジョン探索が終われば、私は『豊穣の女主人』にベルは【竃火の館】に帰り、時によれば『豊穣の女主人』に来店してもらって少しだけ話すというのがお決まりだった。(これはミア母さんの指示でもあったりする。もちろんベルと少しでも一緒にいたいと考える私を慮ってではなく、お金を落としていって欲しいというミア母さんの思惑によるものだが。)

 

 だがもう夕方。これからどうしようかとベルに尋ねようと思ったところ、バベルの下の噴水で見知った顔を見つけてしまった。

 

 それもいつもならここにいるはずもない人物。

 

 なぜかフードまで被っていていかにも正体を隠しているかのような様子。

 

 しかも私の方に向かってくるではないか。

 

 何事かと思い、警戒も兼ねてその場で立ち止まる。

 

「あれ?リューさん。どうしましたか?」

 

 ベルが私の動きに気づいて立ち止まる。私は視線をその人物に送り、ベルに気づかせる。

 

 その人物との距離がどんどん狭まってくる。

 

 もう一太刀浴びせるには十分な距離になっている。

 

 ベルはその人物がフードを被っていることに警戒して、私を庇うように私の前に立った。

 

「誰ですか?フードを外してください。」

 

 ベルが圧をかけながら言う。

 

「そう警戒するな。【白兎の脚(ラビット・フット)】。別に私はお尋ね者を捕らえに来たわけじゃない。」

 

「…じゃあなぜ僕達に話しかけてきたんです?」

 

「私は『正義の眷族』に話があってきたのだ。他意はない。信じて欲しい。」

 

『正義の眷族』という言葉にベルがピクリと反応する。少なくとも敵ではないと思ったらしく、すっと私とその人物の間から退いて私の隣に立った。

 

「そなたなぜ何も言わない…?」

 

「なぜあなたが来たか分からないから…そう言っておきましょう。シャクティ。」

 

 目の前のフードを被った人物。

 

 それは私達【アストレア・ファミリア】の戦友だった【ガネーシャ・ファミリア】の団長、シャクティ・ヴァルマだった。

 

 

 

 とりあえず場所を変えようとシャクティが言ったため、中央広場から離れてシャクティについて行くことにした。

 

「すいません…どこに向かってるんですか?あとリューさんに話っていうのは…」

 

 ベルが戸惑いながら尋ねる。私とシャクティの関係はベルには話したので納得してもらったが、警戒は解いてない様子だった。

 

 何せ私は死んだはずのお尋ね者でシャクティはオラリオの治安維持を担う【ガネーシャ・ファミリア】の団長。素性の相性は最悪だ。だが私とシャクティの関係はそれだけじゃない。

 

 そして私は今歩く道がどこに繋がっているか知っている。

 

「我々の本拠(ホーム)だ。」

 

 一気に視界が開けると現れたのは巨大な象の面を被った男の坐像。

 

【ガネーシャ・ファミリア】の本拠(ホーム)【アイアム・ガネーシャ】である。

 

 …噂には聞いていましたが、相当な悪趣味ですね…

 

 ベルは呆気に取られ、その様子を見たシャクティは苦笑いしている。

 

「事前に伝えられなくてすまなかった。【白兎の脚(ラビット・フット)】の逃げ足の速さは聞き及んでいてな。逃げられると私でも骨が折れる。もっともリオンを置いて逃げるとは元々思っていなかったが。」

 

 今度はベルが苦笑いする中、シャクティが含みのある視線を私に向ける。

 

 さてはシャクティ…何か知っている?

 

「私はリオンに話があったが、【白兎の脚(ラビット・フット)】には我が主神がお待ちかねだ。悪いが、時間を取って欲しい。ちなみに神ヘスティアからも『豊穣の女主人』のミア・グラントにも許可は取ってある。」

 

 最初からシャクティは私とベルの逃げ道を封じてあったということか。ただ許可を取ったと言っている以上何かしらの危険があるとは思えない。

 

 妙な用意周到さに不思議さを覚えながらもシャクティに続く。

 

 するとお世辞にも品がない建物の入り口の門で仁王立ちしている者がいる。あれは…

 

「シャクティ!!お疲れ様だ!!よく連れてきてくれた!!」

 

 あの大声。あの象の面。まさしくここの主人。神ガネーシャである。

 

「ああ。二人とも見つけてきて、同行してもらった。」

 

「おう!!感謝するぞ!!俺がガネーシャだ!!」

 

 私とベルはひとまず神の姿を認めた以上礼に則り、お辞儀する。

 

「あっ!あの!僕にお話があるってシャクティさんから聞いたんですけど!」

 

 ベルが神相手で恐縮しているのか少しオドオドしながら問いかける。

 

「お前が【白兎の脚(ラビット・フット)】か!!俺がガネーシャだ!!」

 

「いや…そうじゃなくて…」

 

 再びの自己紹介にベルが困り果てた表情になる。この神は同じ正義を貫くアストレア様の同志であったが…いざ直接会ってみると理解し難い。そういえばシャクティから主神のぼやきを何度も聞いていたと今更思い出す。

 

「うむ!!【白兎の脚(ラビット・フット)】よ!!男同士腹を割ってじっくり話し合おうではないか!!」

 

「あわわ…神様!?」

 

 ベル…申し訳ありません。いくら私でも神と相構えることはできないのです…

 

 猛獣に捕食されそうなウサギの如く神ガネーシャに肩を組まれて捕らえられたベルは私に助けを求めるような視線を送ってくるも何もできない私は見送ることしかできない。ベルはそのまま屋内に連れ込まれていって、私とシャクティだけが残された。

 

「…さて私は私でリオンに話がある。さぁついてきてくれ。」

 

 そうシャクティは言うとベルの後を追うように屋内に入ることになった。

 

 

 

「…それで?シャクティ。ベルを引き離してまでして何を私に話すことが?」

 

 シャクティと並んで廊下を歩くも行き先は教えてもらわずただシャクティの歩くのに合わせてついて行くのみ。ベルが神ガネーシャと歩いて行ったのとは別の所に連れてかれようとしていた。

 

 私は直感で神ガネーシャにベルに話すことがないと思っていた。神ガネーシャとベルにそもそも面識自体がないように感じたのも理由の一つだ。

 

「我が主神に【白兎の脚(ラビット・フット)】と話があるのは本当だ。後でまた会うことになろう。なんだリオン。そんなに【白兎の脚(ラビット・フット)】のことが心配か?」

 

「なぁ!?」

 

 くっ…やはり私がベルに好意を持っていることがバレて…

 

「ちょっとカマかけただけでボロを出すとは…くふふ…やはりリオンは素直だ。」

 

 私の動揺を見て、シャクティが腹を抱えて笑い出してしまう。

 

「シャクティ…笑わないでください。」

 

「すまない。すまない。かつてのリオンから考えるとちょっとありえないと思ったものでな。」

 

「それは…シャクティの言う通りです。」

 

 ベルは私にとって初恋の相手。

 

 つまり今まで恋とは無縁の生活を送っていた。それどころか人と触れ合うことさえもなかった。だから人肌に触れたのは最近までアリーゼとシルだけ。その時期のことを知るシャクティからすれば意外に思うのも当然だ。

 

「まぁ。いい傾向だ。私と違ってまだお前は若い。恋の一つや二つ経験するのも良かろう。」

 

「…そういうシャクティはどうだったのですか?やはりあなたでも恋を?」

 

 そうさりげなく聞いてみるとシャクティは遠くを見るような表情になった。

 

「ふっ…私は【象神の杖(アンクーシャ)】であくまで『冒険者』だ。いつ死ぬかも分からんなかでそんなことは考えたことは憧れはしてもあまりなかったな。我が主神の信念のために戦い生きる。それだけだ。」

 

「大切な人のために生きる。私と一緒かもしれません。そうやって生きられることはとても素晴らしいと思います。」

 

「そっそうか…私とリオンが一緒…いや…まさか…な。」

 

 自分の素直な気持ちを述べるとなぜかシャクティの顔が赤くなったような気がしたが…きっと気のせいでしょう。

 

「…私のことはいい。それで【白兎の脚(ラビット・フット)】とはどうなのだ?お前の酒場の同僚がお前の奥手さに辟易としていたぞ。」

 

 私の同僚…まさかシル!?

 

「さらに定期的に惚気話は持ち込んでくるのはいいが、血生臭い話ばかり。全く好意を向ける相手と一緒にいたいからと言ってダンジョンに一緒に潜るというのは女性としてどうなのだ?」

 

 …絶対にシルです。私はベルとの話をシルにしか話していません。シルには大変恩がありますが、いささか口が軽いような…

 

「ベルを『冒険者』として支えたい。それが私の願いです。だから一緒にダンジョンに潜るのは当然のことです。」

 

 そう言うとシャクティは声を上げて笑った。

 

「さすがだな。すっかり乙女になったと思ったが、そういうところは冒険者のままのようだ。」

 

「シャクティ!私は今だって冒険者だ!」

 

 まるで私に冒険者としての資格がないと言われたような気がして不服に思い抗議する。

 

「そうではない。と言いたいところだが、残念なことにリオンはこのオラリオにおいて故人な上に冒険者の資格を剥奪されているのを忘れたのか?」

 

 くっ…見事に忘れていました。

 

 え?

 

 なら私はベルとダンジョンに潜ることが…できない?

 

「リオン。お前は注意力不足だ。お前は今は故人ということになっているのだ。毎日のようにダンジョンを出入りしては生存を疑われることは明白だろう?」

 

「…シャクティの言う通りだ。以後気をつけます…」

 

 気をつける…

 

 つまりベルとダンジョンに行けない…

 

 つまりベルと一緒にいられない…

 

 え?

 

 ベルと背中合わせで戦うこともベルとモンスターから魔石をひきづり出すこともできないのですか…?

 

「…そんな絶望に飲まれたような表情をするな。事実を伝えただけの私が罪悪感を感じてしまうだろう…」

 

「申し訳ありません…」

 

 シャクティに呆れた表情で言われてしまうもショックなものはショック。例え修行で成果を収めても意味がなくなってしまうのでは…

 

「…まぁそこは私がなんとかしてやろう。」

 

「本当ですか!?」

 

 シャクティの救いの言葉に私は目を輝かせてシャクティを見つめる。

 

「…本当に【白兎の脚(ラビット・フット)】と一緒にいたいのだな。それで進展はどうなのだ?お前の同僚の話だと全く進展がないと聞くが?」

 

 そう聞かれると答えに困る。

 

 何度も私とベルの関係に名前をつけようと頭の中で試みていたが、どうもしっくりくる名前が浮かばない。

 

 恋人。

 

 …それは私の頑固さのためなりそびれた。延期状態にある。

 

 友人以上恋人以下?

 

 …それではほとんど友人になってしまうではないですか…

 

 自分で考えて自分一人で傷つく。

 

 気を取り直して…

 

 恋人になる約束をしていて、それでいてお互いに愛情を向けあっている関係…

 

「婚約…者?」

 

 とりあえず頭に浮かんだ言葉を呟いてみると、シャクティが目を見開いて驚きの声を上げた。

 

「なっ!?いつのまにそんなところまで発展したのだ!?あの同僚はそんなこと言っていなかったぞ!?」

 

 シャクティ…食いつきすぎです…そんなに私のことに興味があるのですか…?

 

「それは…今日です。」

 

 つい数時間前の幸せな時間を思い出して、頰が熱くなる。

 

 ベルと抱き合って…手を繋いで…

 

 あぁ。ベル。今あなたは何をしているのでしょうか…?

 

 …神ガネーシャに揉みくちゃにされていないといいのですが…

 

「そうか…お前は【疾風】だからな。疾きこと風の如く、と言ったところか。やはり動けば進展も早いということか。」

 

「私の二つ名は関係ないでしょうに…」

 

「それで?いつ式を挙げるのだ?リオンのことだ。そう派手なものはするつもりがないのだろう?」

 

「…え?」

 

「…なぜそんなキョトンとするのだ?」

 

 式とは…式って…

 

 結婚式のことですか!?!?

 

 私がウェディングドレスを纏い、ベルがタキシードで身を固めて、神の前で愛を誓い、誓いのキスをする…

 

 あの結婚式ですか!?!?

 

 マズい…想像しただけで頭がクラクラする…

 

 ベルと私が結婚…うふふ…

 

「おーい。リオン。そんな蕩けた表情をしてないでいつ挙げるか教えてもらえないか?私も招いてもらえると嬉しいのだが。」

 

「結婚式…まだ考えてませんね…しかし…すぐにでも挙げたいです…」

 

 誓いのキス…してみたいです…

 

「…考えてない?」

 

「…え?」

 

「…は?」

 

 シャクティが何を言っていると言わんばかりの表情になる。

 

「…婚約したのなら結婚式を挙げるのは当然だろう?」

 

「いえ…約束したのは恋人になろうということで…」

 

「は?」

 

「え?」

 

 …なぜシャクティはこんな表情に?

 

「…それは婚約したとは言わん。」

 

 婚約者とは言わない…

 

 つまり私はベルとまだ結婚できない!?!?

 

「というかなぜ『恋人になろう』と約束するのだ?普通になればよかろう。」

 

 そう言われて一瞬言葉に詰まる。

 

「それは…諸事情と言いますか…」

 

 言えない…まさか私が頑固すぎが原因でこうなってるだなんて言えない…

 

「しっ…しかし!!私とベルはずっと一緒にいると誓い合いました!!私をベルは幸せにしてくれると!!そして私はベルにずっと支えると誓ったのです!!」

 

 自分で先程二人で話し合ったことを確認するように叫びながら、幸せな気持ちになるもシャクティがさっき告げた結婚式を挙げられないという事実に相殺されて…どころかショックの方が勝り始めている…

 

「…そこまで二人で話しておいて恋人になっていないと言うのか…?」

 

「…ええ。まぁ…」

 

「さっぱり分からん…まぁリオンの脳はお花畑だからちょっと誇張が入っているかもしれんか。」

 

「お花畑ではありません!?」

 

「恋人にもなっていないのに婚約者だと名乗っておいてか…?」

 

 くっ…言葉が出ない…

 

「とっ…!とにかく!私とベルは将来を誓い合った仲なのです!!それは事実です!!」

 

「分かった。分かった。それは信じてやろう。結婚が決まったら私にも連絡をしてくれ。何があっても駆けつけよう。はぁ…今後が心配になってきた。」

 

「ありがとうございます。シャクティ。」

 

 感謝の意は伝える。…最後のはきっと幻聴だ。ため息とかも私は聞いていない…

 

「さて。リオンの惚気話はこれくらいにしておこう。今日ここに来てもらったのは他でもない。あるお方に会ってもらいたかったからだ。」

 

 そうシャクティが言って立ち止まったのはかなり廊下の奥にあった部屋のドアの前。

 

「私に会ってもらいたい方?」

 

 そんな人物いるだろうか?私の知人などそう多くないはず。

 

「私はここで失礼する。しばらくしたら使いが来るからそれまでゆっくり水入らずで話すといい。」

 

「ちょっ…!中には誰がいるのです!?」

 

「それは自分の眼で確かめろ。」

 

 そう言い残してシャクティは立ち去ってしまう。

 

 一人部屋の前に残された私はどうしようかと思うが、誰かも分からない相手に会うしかないと決心し、ドアに手をかけてノックをする。

 

「失礼します。」

 

「どうぞ。」

 

 その綺麗な透き通った声を聞くもドア越しだとイマイチ誰の声か判別できなかった。

 

 ゆっくりとドアを開けてみると、隙間から心地よい風が流れ込んでくる。

 

 視界に入ったのは風になびく黒髪。

 

 幾度となく見たあの神々しい後ろ姿。

 

 知っている。

 

 私はこの方を知っている。

 

 風がすっと止む。窓を閉めたようだった。

 

 そして振り返ったことで私は旧知の人物であると確信した。

 

 

「アストレア…様?」

 

 

 目の前に佇み、神々しく微笑んでいるのは私の主神…【アストレア・ファミリア】の主神、私の尊敬する正義を司る神、アストレア様その人であった。




後日、シャクティはしばらくの間ガネーシャの顔を見ることができなかったという 。

アストレア様の姿は設定がないので想像で。もしかしたら今後詳しい容姿の設定が出るかもしれませんが。
あとシャクティのリオン呼びはアスフィがリオンと呼んでいたので推定で。クロニカルリューでは名前を呼んでいなかったので。
ちなみにシャクティは38歳らしく(ダンメモ参照)リューさんより歳上なので姉貴的存在かな?って思ってこうなりました。
リューさんポンコツだから同性のみんなから妹的扱い受けているような…
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