『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス   作:護人ベリアス

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今回は前回の続きなのでリューさん視点。

アストレア様の口調が分からない…何せ原作での発言たったの一回ですし…
また原作で登場するといいなって思います。

チミチャンガさん、カフェオレさん、ネコちゃまさん、感想ありがとうございます!


正義の妖精と正義の女神

「アストレア…様?」

 

 目の前にいる、オラリオで会うはずもないと思っていたお方に声が震える。

 

「リュー。久しぶりですね。」

 

 何から話せばいいか分からない。

 

 だがまずしなければならないことだけは分かった。

 

「申し訳ございません!」

 

 私は膝を折って、額を床に擦り付けて許しを請うた。

 

 シルに平和に導いたと感謝されようと。

 

 ベルに正義だと認められようと。

 

 私がアストレア様の顔に泥を塗ったという事実は変わらないのだから。

 

「私は…アストレア様に…」

 

「リュー。顔を上げてください。」

 

 私の肩にそっとあの方の手が触れているのに気づいた。

 

 あの方は私に頭を上げろと言ってくれている。

 

 それでも…私は額を床から離すことができなかった。

 

「リュー。私は嬉しいのです。あなたがこうして生きていてくれて。あなたが生きているだけで私は嬉しいです。」

 

「しかしっ…!私はあなた様の眷族として…」

 

「あなたは正義を守りました。このオラリオには正義が生き続けている。闇派閥(イヴィルス)によって…アリーゼ達が命を喪い…潰えかけた正義が。あなたのおかげで生き続けています。私はそれを成し遂げたリューを誇らしく思います。」

 

「ですが…!ですが…!」

 

 私はあの方に許されようとしている。

 

 許されたいけど許されたくない。

 

 許されれば気は楽になる。

 

 けれど許されるのは自分自身が認められない。

 

「私は最後にリューと会った時、正義を捨てなさい。そう言いましたね?」

 

 忘れるはずもない。

 

 かつては破門の言葉と解釈し、私を守るためだったと勝手に解釈した言葉。

 

 その神意はアストレア様にしか分からないものだ。

 

 ようやくその神意が聞けるのか。

 

 そう思った。

 

「…復讐とは恐ろしいものです。一度身を堕とせば、後戻りできない沼地のようなもの。そのまま狂気に至る者も少なからず見たことがあります。」

 

 私自身経験があるからこそ納得できた。

 

 この身に湧き上がる抑えようのない激情。

 

 抑えられないから吐き出すように仇にぶつける。

 

 けれど決して満たされない空虚なもの。

 

 それが復讐。

 

 そして復讐に取り憑かれた私はあの頃確かに狂気の域に至っていたに違いない。

 

「しかし…リューなら。復讐から身を洗い、自らに正義を取り戻すことができると確信していました。だから私はその復讐の足枷になる正義を取り払おうと思いました。」

 

「…なぜそのようなことを?」

 

 正義を捨てること。

 

 それはアストレア様の信念を捨てるのと同義。

 

 その理由をアストレア様本人の言葉から直接聞きたかった。

 

「アリーゼ達を喪ってしまったリューを助けたかったから。リューに生きて欲しかったから。」

 

「なぜ…!なぜ私にそこまでしてくださったのですか!?私は…」

 

「言うまでもないではないですか。」

 

 アストレア様は私の頰を両手で包み込み、ゆっくりと私に顔を上げさせた。久方ぶりに近くからしっかりと目を合わせて見たアストレア様は聖母のような微笑みを浮かべていた。

 

 

「リューは私の眷族(子供)だからです。親が子を思って行動するのは当然ではありませんか。」

 

 

 言葉が出てこない。

 

 アストレア様の微笑みを見たら、自分を否定することさえできなくなっていた。

 

 子である私自身を否定することは子のために信念を捨ててまで救おうとしてくれた親たるアストレア様までも否定することになってしまう。

 

「そしてよくぞ正義を取り戻してくれました。改めて言わせてもらいます。リュー。私はリューを誇りに思います。」

 

「アストレア様…」

 

「ただあまり私に心配をかけないでください。それと決して自らの身を犠牲にするような行為はしないこと。いくら私でも二度目は許せませんよ?」

 

「申し訳…ありません…私は…アストレア様に…」

 

 優しく私の母のように叱るアストレア様を前に私は涙腺がはち切れそうになる。

 

「今日まで大変な心労をリューにはかけてしまいました。我慢もしてきたでしょう。今は我慢をしないでください。」

 

 そう言われて私はもう我慢ができなくなってしまった。

 

 私は子供のように泣きじゃくった。

 

 アストレア様はそれから何も言わずにただ私の背をさすってくれた。

 

 

 私の主神がアストレア様で本当に良かったと心からそう思った。

 

 

 

 それからしばらく。

 

 涙を何とか止めることができた私はアストレア様に促されアストレア様と向き合って座っている。

 

 私には聞きたいことがあった。

 

「アストレア様。いつ…あとなぜオラリオに戻ってこられたのですか?」

 

「戻ったのは数日前です。そして戻ったのはリューに会いたかったからです。」

 

「私に…ですか?」

 

「そうです。私達神には距離は関係なく眷族(子供)達の魂の輝きというものが見えます。そしてその輝きが一段と眩くなるのを私は一ヶ月前に見たのです。」

 

 一ヶ月前…というと…

 

「私の今の眷族(子供)はリューのみ。それまではリューの魂はずっと燻っているのが見ていて分かりました。輝けるのに輝こうとしない。そのような感じです。ですがあの一ヶ月前。一瞬消えかけた輝きがあの時から確かに眩い輝きを示し始めるのを見ました。」

 

「…心当たりはあります。」

 

 間違いなくベルと過ごした【深層】での四日間のことだ。あれしかありえない。

 

「私は居ても立っても居られなくなりました。リューに何か変化があったなら私も手助けしたいと思いました。そして私はすぐに住居としていた場所を発ちました。」

 

「それで…【ガネーシャ・ファミリア】に?」

 

「はい。ここに来たのはオラリオに向かう途中でガネーシャからの使者という方に会いました。その方に連れられてここに。」

 

「その方はシャクティでしたか?」

 

「いえ。名前はお伏せになったので分かりませんが、銀髪の…神威を発している女性でしたので神の一柱であることは確かです。そして【ガネーシャ・ファミリア】と懇意があり、リューのことをよく知っている方でした。」

 

「私のことをよく知る神…ですか?」

 

 最近関わっていて、私の生存を知る神…神ヘスティアか?しかし神ヘスティアは銀髪ではないし…

 

「その方からたくさんリューのお話を聞くことができました。今リューは『正義の眷族』と呼ばれているそうですね。」

 

「いっいえ…私は大したことは…」

 

「自分を低く評価するのはリューの昔からの悪い癖です。リューは立派な行いをしています。今のオラリオの平和とオラリオの人々の称賛の声がそれを示しています。」

 

 最近私の名前がやけに有名になって、正義の味方の如く祭り上げられて称賛の声を聞くようになったのは事実。正直褒められるのには慣れていないのでむず痒いと思っていたところ。

 

 そして同時に人々の記憶に蘇った名前がある。

 

「私の名と共に【アストレア・ファミリア】の名も人々は思い出しました。」

 

 かつてオラリオの秩序と平和を【ガネーシャ・ファミリア】と共に司った正義のファミリア。

 

 それが【アストレア・ファミリア】。

 

「…私が密かに活動する間も何度も耳にしました。【アストレア・ファミリア】がいれば、と。確かに闇派閥(イヴィルス)は崩壊しました。ですが無法者は未だ存在し、奴らの行為に苦しむ人々がいます。私には…」

 

【アストレア・ファミリア】の団員として奴らを討つ責任がある。

 

 そう言おうとしたが、アストレア様はその言葉を途中で遮った。

 

「リューはどうしたいのですか?」

 

「え?」

 

「あなたは今こう思ったはずです。【アストレア・ファミリア】の団員として責任があると。しかしそれはリューのしたいことではないとも受け取れます。」

 

「…いえ!私は自分の意志で行動を…」

 

「そうかもしれません。リューは正義感が強いですから。ですがもっとしたいことがあるのではないでしょうか?」

 

 そう言われてハッと気がつく。

 

 やはり神相手には偽りを申すことができない。

 

 私は確かに自分の意志で正義のための行動を起こしている。

 

 今だって悪には憤りを覚える。

 

 だがそれ以上に大切な人ができてしまった。

 

 ベル。

 

 最近の私は如何にベルを支えるか、如何にベルと共に戦うかの一点のみに関心があった。

 

「話してくれると嬉しいです。私はリューの力になりたい。」

 

 そうアストレア様に言われてしまったので、私は素直に私の心にあることを話した。

 

「…大切な人ができました。一ヶ月前に私を救い、私に正義(希望)を与えてくれた方です。名前はベル・クラネル。【ヘスティア・ファミリア】の団長です。」

 

「ヘスティア…彼女も下界に降りてきていたのですね。それでその方とどうなりたいのです?」

 

「彼とは将来を誓い合う仲です。近いうちに恋人になる約束をしました。…私は彼と添い遂げたいと思っています。」

 

 私は思っていることをありのままにアストレア様に伝えた。

 

 するとアストレア様は微笑んでこう告げた。

 

「なら改宗(コンパージョン)しましょうか。」

 

「アストレア様!何をおっしゃるのです!」

 

 突然のアストレア様の提案に驚かされる。改宗(コンパージョン)ということは【アストレア・ファミリア】を抜けるということではないか。

 

「そのベル・クラネルと添い遂げたいなら同じファミリアであることが常識です。ヘスティアには私から頼みましょう。私はリューに幸せになって欲しい。」

 

「嫌です!私は…一生【アストレア・ファミリア】の団員です!」

 

 私は今でも【アストレア・ファミリア】の団員であることを誇りに思ってる。

 

 私はこの尊敬できる女神の眷族であることを誇りに思っている。

 

 私は正義の剣と翼の旗印の下戦えていたことを誇りに思っている。

 

 だから【アストレア・ファミリア】から抜けることはありえない。

 

「ですが別ファミリアの男性との結婚など聞いたことありません…」

 

 そう困ったようにアストレア様が言うが、私は納得しない。

 

「どうか私に【アストレア・ファミリア】に留まらせてください!私はアリーゼ達の遺した正義(希望)をこれからも団員として守り抜きたいのです!私達のことは私達の手で解決します!だからお願いします!どうか私を【アストレア・ファミリア】に…」

 

 私は頭を下げて、アストレア様に懇願した。

 

 これが私の本意だったから。

 

 確かにベルのことが自分の中で最優先になっているのは事実。

 

 それでも私は正義のために生きるという生き方を捨てるつもりはなかった。

 

「リューがそこまで言うなら…それでもいいですが…障害は少なくないと思いますよ?」

 

 許可をいただけたことで嬉しくなって顔を上げたが、アストレア様の表情は困惑したまま。

 

 確かに常識的には障害が多い。でも私には全く心配はなかった。

 

「【ヘスティア・ファミリア】は他派閥との連合に抵抗がない派閥です。私も何度か加勢させていただきました。それに…」

 

 

「私の想い人はどんな不条理も打ち破る英雄ですから。」

 

 

 自信を持ってそう告げるとアストレア様はクスリと笑った。

 

「ふふ。それほどまでリューが惚れ込んだお方。是非会ってみたいものです。」

 

 アストレア様はそう言い終えたところでノックの音がする。

 

「使いが来たようです。ファミリアの今後のことは後で話しましょう。リューの想い人のこともその時に。」

 

「なっ…!アストレア様!何を!?」

 

 アストレア様にベルのことを話すなんて…神相手に嘘はつけない。洗いざらいアストレア様にバレて、如何に私がベルのことが大好きであるかを知られてしまうということ…

 

 想像するだけで恥ずかしいです…

 

 

 そんな恥ずかしい思いをすることが確定した未来を想像するも、こうやってアストレア様とお話できることを心から喜んでいるのは疑いようもない事実。

 

 アリーゼ。

 

 私はあなたに【アストレア・ファミリア】に誘っていただけて本当に良かった。

 

 あなたに心からの感謝を。




実はアストレア様はもう銀髪のあざといお方からもうリューのベルとのデレデレポンコツ話を聞かされています。
アストレア様がリュー本人の口から直接話を聞いて、お楽しみになるのはまた別のお話。

魂の輝きが見えた云々はフレイヤ様を参考にしました。美の女神じゃないのに見えるかは分かりませんが、使いが来たから一緒に来ましたというよりも自発的にリューに会いに来たとした方が良かったのでこうしました。輝きが見えたとかにしないとタイミングばっちしで帰還できませんしね。
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