『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス   作:護人ベリアス

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またリューさん視点。
ベル君とガネーシャの対話は大した内容書ける気がしなかったのでカットです。ざっくり言うと今回の内容の事前打ち合わせ的な感じのをしてました。

チミチャンガさん、デスイーターさん、感想ありがとうございます!


正義の復活

「ベル!」

 

 私はベルの姿を見つけてすぐに声をかけた。シャクティの言う通りまた会うことができた。大したことではないかもしれないけど、やっぱり嬉しい。

 

「リューさん!」

 

 ベルがニコニコしながら私の名前を呼ぶ。それだけで幸せな気持ちになって抱き着きたくなるがとりあえず抑える。するとベルは私の後ろに立つアストレア様に視線を向けた。

 

「後ろの方がリューさんの神様のアストレア様ですね?初めまして。ベル・クラネルと言います。リューさんの婚約者です。」

 

 こっ…婚約者!?

 

「あの…!ベル…!シャクティに恋人になってないなら、婚約者ではないと…」

 

 きっとベルも私と同じ勘違いをしているかと思い、慌てて訂正しようとするとベルは私を見てニッコリと笑った。

 

「確かにまだ恋人ではないですけど、僕はリューさんといつか結婚したいと思っています。だから婚約者って名乗っちゃ…ダメですかね?」

 

 ベルに縋るような目をされては私は断りようもない。

 

「はっ…はい。むしろ私は嬉しいです…私はベルの婚約者…ふふふ…」

 

 ベルとの結婚式を挙げる情景が再び思い浮かぶ。

 

 ベルと結婚…

 

 ベルは幸せに浸って思考停止になっている私から再びアストレア様に視線を向けた。

 

「神様。僕は【アストレア・ファミリア】の団員ではなく、ファミリア間の結婚は前代未聞ですが、許可してくださいますか?」

 

「ええ。リューの幸せのためならなんとかしましょう。ただ私はいいとして…」

 

 私が嬉しさで半分ショートした頭で結婚式の情景を想像する中ベルはアストレア様との話を進めている。…最もその会話は右から左であったが。

 

 だが気づくと目の前で唸って私を見上げている人がいるのに気づいた。

 

「なーに幸せそうに惚けているんだね!エルフ君!僕は君から鍛錬のためのダンジョン探索だと聞いてたんだぞ!話が違うじゃないか!なんで君達はそんなに深い仲になっているんだね!」

 

 目の前にいたのはとても不機嫌な表情を浮かべる神ヘスティアだった。多分アストレア様が言葉を切ったのはこのためだったか。

 

「神様!さっき納得してくれたじゃないですか!恋人になるのも認めてくれるって!」

 

「ベル君!君にも聞くことがある!君は恋人になるって言ってたのに何で婚約者になってるんだい!結婚までは聞いてないぞ!」

 

「え?僕とリューさんは一緒に生きていこうって誓い合ったんですよ!そして僕はリューさんを幸せにするって約束したんです!だから結婚まで考えてるのは当然じゃないですか!」

 

 ベルも私と同じ考えだった。やはり私は間違っていなかった!

 

「むむむ…ベル君がぶっ飛んでるのは知ってたがここまでとは…恋人にもなってないのにもう婚約を…」

 

 神ヘスティアが悶絶する。…神ヘスティア的には違うようですね。一方のベルは私の方に振り向いた。

 

「リューさん。いつ結婚しましょうか?」

 

「えっと…それは一緒に考えましょう。簡単に決められることではありませんから。」

 

「じゃあまたたくさんお話ししましょうね!」

 

「って何君達は惚気ているんだぁ!!」

 

 せっかく結婚の話で盛り上がりかけていた私とベルの会話を遮るように神ヘスティアが叫ぶ。

 

「ヘスティア。これは眷族(子供)達の決断です。暖かく見守るのが神の役割ではありませんか?」

 

 ここで神ヘスティアを宥めてくださったのはアストレア様。アストレア様の言葉にちょっとだけ神ヘスティアは落ち着いた様子。

 

「…君は僕より下界にいる期間が長いからね。だからそう達観視できるんだよ。ベル君は僕の最初の眷族(子供)なんだ!」

 

「なら尚のこと幸せを願うべきでは?」

 

 そう言われて神ヘスティアは言葉を詰まらせる。

 

「…分かってるよ。僕だってベル君が好きな人と結婚できるなら嬉しい。それに君の眷族(子供)なら信頼できるし、そもそもエルフ君はベル君を何度も助けてくれてるから赤の他人じゃない。僕はただもうちょっとベル君が僕に相談してくれてもよかったなーって思っただけで…」

 

 神ヘスティアが拗ねたような表情になるが、それを見たベルは呆れたような表情になる。

 

「相談に乗る、相談に乗るって仰っていても、いざしたら神様は近くにとても素晴らしい人がいるだろう!って連呼してただけじゃないですか…」

 

「ふぐっ…それはだね…ベル君が…」

 

 …どうやらベルと私の恋路の一番の障害は神ヘスティアになるような気がします。

 

「とにかくだ!ベル君!エルフ君!ファミリア間の結婚は今まで聞いたことがないが、僕とアストレアで話し合ってなんとかしようじゃないか!ただ面倒ごとは起こると覚悟しておくんだね!なにせここのバカ神どもはそういう面白いことにはすぐ食いついてくるからね!」

 

 神ヘスティアが脅すように言ってくる。だが私にとってそんなこと瑣末なことだった。

 

「それは私にとって問題ではありません。」

 

「そうです!そんなの構いませんよ!」

 

「「だって私(僕)はベル(リューさん)とどんな試練にも立ち向かう覚悟をしていますから。」」

 

 私とベルの声が重なる。

 

 私とベルが同じ覚悟を持っているというのがとても嬉しかった。

 

「リューさん。僕どんなことがあってもリューさんと一緒にいますから。」

 

「私もそのつもりです。ベル。私は何があろうとベルを支えるつもりです。」

 

 私とベルは視線をからみ合わせる。

 

 まずいです…

 

 ベルに抱擁してもらいたくなりました…

 

 神ヘスティアもアストレア様もいますが、ここは頼んで…

 

 

「…盛り上がってるところ悪いんだが…そういう私事は別の機会にしていただきたいのだが…」

 

 突然妙に冷めた声が飛んでくる。

 

 シャクティだった。

 

 ベルのことしか気にしてなかったのでいたのに全く気付きませんでした…

 

「シャクティ!!何を言うか!!子供達の愛!!ガネーシャ感激ぃ!!俺を気にせず続けたまえ!!」

 

 そしてシャクティの隣でよく分からないポーズを取って私達に続行を促す神ガネーシャ。

 

 第三者がいることが分かった時点でもうそんなベルに甘えたいという感情はどこかに吹き飛び、カーッと顔が熱くなる。

 

 一方のベルも二人の存在を忘れていたらしく、顔を赤くする。

 

 

「「もうしませんから!?!?」」

 

 

 

 …と思わぬアクシデント(?)を乗り越えた私達。

 

 神ガネーシャの指示でその場にいたアストレア様、神ヘスティア、神ガネーシャの三人の神が用意された椅子に座り、その隣にそれぞれの眷族が立った。

 

「さて改めて仕切り直していこう!!まず俺がガネーシャだ!!」

 

「分かったよ。ガネーシャ。次いこ。」

 

「ガネーシャ。今日私だけでなくヘスティアまで集めた理由を教えていただきたい。」

 

 何度目か分からない神ガネーシャの自己紹介に神ヘスティアは呆れ顔になり、アストレア様に至っては表情も変えずに続きを求めた。きっと特にアストレア様は神ガネーシャの扱いには慣れているのでしょうね…

 

「…うむ。今日は他でもない。今後のオラリオについて話し合おうと思ってそなた達を呼んだのだ。」

 

 神ガネーシャの表情は仮面に隠れて見えないが、さっきまでの陽気さからは打って変わって声色からは真剣さが伺えた。

 

「まずアストレア。君のファミリアはどうなる?」

 

「リューは残ると決めました。なので存続となります。」

 

「うむ。【白兎の脚(ラビット・フット)】の予想通りだったな。」

 

「え…ベルの…ですか?」

 

 私の決断が予測されていたことに驚かされ、予想したというベルに視線を向けた。

 

「はい。リューさんはアリーゼさん達との思い出がある【アストレア・ファミリア】から離れるのが嫌だと考えると思ったので、ガネーシャ様に伝えておいたんです。あと神様もそういう線で説得したんです。」

 

「ベル…」

 

 私の考えが手に取るように分かってくれるベルに嬉しさのあまり抱きつきたくなるが、なんとか抑える。だから代わりに精一杯嬉しさを伝えようと思った。

 

「ありがとう。ベル。私はあなたに想われて幸せです。」

 

 微笑みながらそう言うとベルの頰はポッと赤くなる。

 

「リューさん…その笑顔反則ですよ…可愛すぎです…」

 

「なぁ!?!?」

 

 ベルにまた可愛いって言われた!可愛いって!

 

「おい。そこの色ボケども。これ以上惚気るなら追い出すぞ。」

 

 ここでシャクティの怒りの篭った声が私に冷水を浴びせてきたかのように頭を冷やす。

 

「「すいません…」」

 

 私たちが謝罪してからしばらく間が空いてからアストレア様が口を開く。

 

「それでガネーシャ。【アストレア・ファミリア】は現状団員が一人です。今のオラリオは【ガネーシャ・ファミリア】の手で治安を維持できていると聞きます。なのになぜ私達の行動が気になるのです?」

 

「私は【群衆の主(ガネーシャ)】だ。群衆の声に耳を傾けずにはおれん性分だ。だから今このオラリオにおいて正義の復活を待ち望む声が大きいと気付かされた。確かに【ガネーシャ・ファミリア】は信頼を受けていると自負している。だが本当に困っている群衆は【アストレア・ファミリア】に期待していると思った。」

 

 最近の風聞を考えれば、神ガネーシャが気づいてしまうのも仕方ない。

 

 それに私は何度も聞いたことがある。【アストレア・ファミリア】がいれば、と。

 

【ガネーシャ・ファミリア】は大所帯でオラリオ一の規模を誇る派閥でギルドからも信頼が厚く、今のオラリオの治安維持の第一線を務めている。

 

 だがすべての事件に対応できるほどの力はない。特に未だ日常茶飯事と化している人身売買や密売には手が及んでいないのは事実。

 

 強気を挫き弱きを助けることを第一にした【アストレア・ファミリア】が積極的に解決に乗り出していたのはそういった犯罪であり、【アストレア・ファミリア】がなくなった今それらが幅を利かしつつあるのは私としても見逃し難いところがある。

 

「俺はアストレアとその眷族(子供)に昔のような協力関係を要請したい。」

 

 神ガネーシャは言い終えるとアストレア様に頭を深く下げた。

 

「当然です。ガネーシャ。良いですね?リュー。」

 

アストレア様はそう尋ねるが、私としては言うまでもない。

 

【アストレア・ファミリア】の団員として。

 

もし救うべき人々が正義の復活を求めるなら。

 

私は彼らのために立とう。

 

私は正義のため、弱き者のために戦おう。

 

「もちろんです。私一人では非力でしょうが、私も是非協力したいです。」

 

「そうか。よかった。」

 

 神ガネーシャは頭を上げるとニカッと笑っていた。

 

「【疾風】。そなたの名誉回復は我々に任せてくれ。元々闇派閥(イヴィルス)の壊滅に尽くしてくれたにも関わらず汚名を着せてしまったのは我々の体面のためだった。すまなかった。」

 

「いっ…いえ!私は復讐に囚われて度を超えた報復を行なったのは事実です。汚名を背負うのに当然のことをしてしまったと思っています。」

 

「だがそなたのおかげでオラリオは生まれ変われた。【群衆の主】として。改めてそなたに感謝を示したい。ありがとう。今後もオラリオのために尽くして欲しい。」

 

「分かりました。及ばずながら全力を尽くさせていただきます。」

 

「うむ。だがそうファミリアの再建は楽ではないだろう。だからしばらくは【ヘスティア・ファミリア】を頼るといい。もちろん俺も支援はするぞ!」

 

【ヘスティア・ファミリア】が私達を支援?

 

 疑問が浮かんでいると神ヘスティアが少々不機嫌そうながら口を開いた。

 

「…ベル君の頼みだからね。しばらくの間【竃火の館】の部屋を貸すよ。」

 

「ヘスティア。いいのですか?」

 

 アストレア様が確かめるように聞く。

 

「エルフ君への恩返しだよ。これまでずっと助けてもらったからね。」

 

「感謝します。ヘスティア。」

 

「ありがとうございます。神ヘスティア。」

 

 私とアストレア様がお礼を言うと神ヘスティアは少々満足げになったが、何か言いたげに私の方をジロリと睨んできた。

 

「ただし!ベル君とイチャつくなら僕のいないところでしてくれよ!」

 

「イチャつくとはどこからどこまでがイチャつくなのでしょうか…?」

 

 素直に質問してみると神ヘスティアはムスッとした表情になる。

 

「むむむ…!イチャつくの定義が分からないとはさては気づかずにベル君とあんなことやこんなことを…ベル君!君はエルフ君と一体何をしたんだね!」

 

 神ヘスティアが堪忍袋が切れたかのようにベルに後ろに立っていたベルに掴みかかって問いただそうとする。

 

「ちょっと神様…!?落ち着いて!?」

 

「あらリュー。私も非常に興味あります。ぜひ教えてください。」

 

「アストレア様まで何を!?」

 

 ベルから何があったか聞き出そうとする神ヘスティア。

 

 神ヘスティアを落ち着かせようと必死になるベル。

 

 私をベルをネタにからかおうとしてくるアストレア様。

 

 アストレア様にからかわれて赤面する私。

 

 さっきまでの雰囲気から激変し、完全に混沌と化した雰囲気。

 

 シャクティが怒りの雷を落とすまでそう時間はかからなかった。




実は作者ガネーシャが好きだったりします。
特にネオ・ガネーシャになると言ったときはカッコいいなって思いましたね。
本当は異端児の話出すつもりだったんですけど、話の収拾がつかなくなるのでやめました。
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