『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス 作:護人ベリアス
ちょっとだけ久しぶりのリューさん以外視点です。
もう一回シナリオ練り直したら案外長くなりそうな気がしてきたので章を復活させることにしました。今が二章目で大体あと三章くらいかと思ってます。
あとシルに関して以前サラッと採用した説を挙げてたって今気づきましたー
ちょっと当初の設定から変更します。
カフェオレさん、アルディアさん、感想ありがとうございます!
ふふふ。
ついに…ついに…
リューとベルさんが付き合ったー!!
…と言いたいところだけど、リューは何をドジったのか知らないけど、なぜか恋人になる予定というよく分からない状況。
…さすがリューだね。ポンコツエルフの称号は伊達じゃなかったみたい…
ちなみにリュー本人からはまだ報告を受けていない。何せリューはあのまま【アイアム・ガネーシャ】に泊まっていったはずだから。
じゃあ誰から聞いたかって?それはね…ふふふ…秘密だよ。
そしてそろそろリューが『豊穣の女主人』に帰ってくるころ。
ノックの音がする。どうやらリューが帰ってきたみたいだね。
「失礼します。ミア母さん…ってシル?」
リューがキョトンとした表情になる。
ここはミアお母さんの部屋。だから私だけがいるのはちょっと不自然。
でも前にも同じようなことがあったってリューは思い出せないかな?
「お帰り。リュー。ミアお母さんは今外出中だよ。」
「そうですか。ならミア母さんが戻ってから伝えることにします。」
リューはそう言って部屋から出ようとする。そこへ私はポツリと呟いた。
「ミアお母さんからの伝言。『居場所ができたらいつでもそこに行ってもいい。私は止めない。だけどいつ帰ってきてくれても構わない』だって。」
そう呟くとリューは勢いよく振り返った。
「…シル。何を知っているのですか?」
リューがちょっと警戒したように睨めつけてくる。冒険者としての癖ってやつかな。予想だにないことがあるとすぐに顔が険しくなる。こういう時のリューってポーカーフェイスがすっごく下手くそなんだよなぁ…
「何にも知らないよ!ただミアお母さんがここを出る前に言っていたことを伝えただけ!あとリュー目つきが怖い!」
そう悲鳴をあげるとリューはすぐに慌て始める。
「あっ!すいません。つい…」
「いいよ。リュー。それより何かあったの?昨日帰ってこなかったけど…」
ちょっと心配そうな表情を浮かべてリューに尋ねてみる。リューってこういう表情をすると弱いんだよね。
「…シル。それに関して報告があります。聞いていただけますか?」
「うん。聞かせて!」
来ました!リュー本人からの報告!
リューは頰をほんのり染めながらモジモジしている。こんなリューも可愛い!
「ベルと結婚の約束をしてきました…」
…あれれ??
…確かシャ…ううん。風の噂によると修行から帰ってきたら恋人になろうって約束したって聞いたよ?どうなってるの?私の予想の斜め上を行っちゃってるよ?
「…ええ?リュー?まずベルさんと恋人になるために告白するって言ってたよね?」
「はい。告白してきました。」
「じゃ…じゃあ恋人にもうなったってこと?」
「いえ。それは今後行く予定の修行から帰ってきてからのつもりです。」
…そこは噂通りなんだね。
「なのに結婚の約束?」
「はい。ベルとの話題にいつ結婚式を開くかが出ました。」
…何で?何で恋人になっての交際期間が省略されてるの?何で結婚まで話が進んでるの?
「ベルが私のこと大好きだって。それにベルが私を幸せにしてくれるって言ってくれました。だから私はそれだけでもう幸せで…」
リューが腰をクネクネさせて完全にデレている。…見ているこっちが恥ずかしいくらいのデレっぷりだよ…
「おーい。リュー」
「でもちゃんと伝えましたよ?私はベルのことが大好きで、一生ベルを支えていくって誓いましたから。」
「おーい。」
「そうしたらベルが私を抱き締めてくれて、それはもうベルは暖かくて…」
…ダメだ。もう完全にベルさんにメロメロに…それは前からかな?
とにかく!話が進まない!私は私でリューに話すことがあるの!
「ねぇリュー!一回落ち着こ?ね!?」
私が声を張り上げるとリューはハッと言葉を止める。すると瞬く間にカーッと顔を赤くする。…まさか今無意識にデレてたとか?そんなことないよね?
「…すいません。つい…」
ついって何?勢いに乗って話しちゃいましたーみたいな?そんなことやると独り身揃いのここのみんなブチ切れてリューをボコボコにしようとして、みんな仲良くミアお母さんにボコボコにされちゃうよ?
「それでリュー。ミアお母さんには何を話そうと思って来たの?」
「あっ…それは…」
リューが途端に気まずそうな表情になる。まぁそうだよね。私にはリューの考えてることはお見通しなんだから。
「いいよ。リュー。言って?」
「…『豊穣の女主人』を出ることにします。」
「そう。じゃあどこに行くの?」
サラッと流すとリューが悲しそうな表情になる。
私が止めなかったのが悲しいとか?それはそれでリューちょっと可愛い。
「…一時的に【ヘスティア・ファミリア】の
あらら…もうベルさんと同居の約束までしちゃってる…
リューったら用意周到!、と言いたいところだけど、きっとベルさんが誘ったんだろうなぁ…ついでに言うとベルさん自身きっと恋仲の男女が同居することの意味の重さに気づいていないはず。何せこの数ヶ月ヘスティア様とずっと一緒に住んでいたのにベルさん平然としていたからね。
「そっか。」
「…はい。もちろん借金がある以上きっちりと借金は返します。ですがベルにすぐにでも来るように言われてしまって…」
あーなるほど。ベルに言われて断れなくなっちゃったか。
「なのでシルには大変申し訳ありませんが、今日中にここを出る支度をして…」
「じゃあ一緒に準備しに行こうか。」
私はそう言ってリューの手を取って部屋を出ようとする。だがリューは動かない。
「…え?」
リューの目が点になっている。なんでシルも一緒に?と言わんばかりに。
ふっふっふ。リュー。甘いねぇ。
「私も一緒にリューと旅に出るの。」
「えっ…えええええ!!!」
リューの絶叫が部屋中に響いた。
「あの!?シル!?それは一体どう意味で!?」
「大丈夫だよ?ミアお母さんはリューが『豊穣の女主人』を出るっていうかもって予想してたから、私にリューが出ることを許可するって伝えてくれたし。」
「そうではありません!シルも一緒にとは一体どういうことですか!私は旅行に行くわけではありませんよ!」
「知ってるよ?だけどリューが活躍する姿を近くで見たいなーって思って。」
「そんな軽い動機でシルを危険に晒すわけにはいきません!ダメです!」
もう!リューったら頑固なんだから!
「じゃあ私が【アストレア・ファミリア】に入ればいいの?」
「シル!冒険者とはそんな生半可な気持ちでなれるものではありません!」
リューはプンスカして私がついていくことを許してくれない。
仕方ないなー
「リュー。」
私はリューの目の前に人差し指を出して、クルクルと回し始める。
「リューは私と旅に出たくなーる!」
「…はい?」
「リューは私とずっと一緒にいたくなーる!」
そしてトドメにリューの可愛いお鼻にちょんと一撃。
「えいっ!」
「…シル?」
リューがぽかーんと間抜けな表情になっている。
ふっふっふ。私が何をしたか分からないようだね。
「リューが私に一緒に行くことを許可してくれるようにするおまじないだよ?どう?私と一緒に行きたくなったでしょ?」
「いや…シル?あの…」
リューは私のおまじないで簡単に動揺し始める。だけどもうちょっと押しが必要なようだね。
「リュー…お願い…」
最後に止めの上目遣い。
「…分かりました。アストレア様に頼んでみます。ですが【アストレア・ファミリア】に入るのは私が許しません。いいですね?」
「うん!私はリューと一緒に旅に出てればそれでいいよ!」
よし!リューはちょっとちょろすぎ!もしくは私のおまじないが効いたのかな?
「…それでは準備しに行きましょう。アーニャ達にも暇を告げなければ。」
リューの表情には寂しさがありありと伺える。
確かに今のリューの最優先はベルさん。
だけどリューは『豊穣の女主人』を離れることに寂しさを感じている。
それは『豊穣の女主人』は確かにリューにとっての居場所になっていたんじゃないかなって思う。
リューが立ち直る最初のきっかけを作ったのはきっとこの『豊穣の女主人』。
リューがここに留まるように導いた私としては、リューにとって『豊穣の女主人』が大事な居場所になって良かったと心から…
「ホニャー!リュー!ここを出るってどういうことニャ!」
「しかもあの少年の尻とずっと一緒だなんてズルイにゃ!ミャーも行くニャ!」
「尻目当ての馬鹿猫は黙ってな。リュー。幸せになりなよ。」
せっかくいい感じにまとめようと思ってたのにドアからひょっこり団子三兄弟の如く顔を出すアーニャ、クロエ、ルノア。
もうリューと私で生み出していた静かめな雰囲気はどこかに吹き飛び、破茶滅茶な雰囲気に様変わりする。
…うん。これぞ曰く付きの店員揃いの『豊穣の女主人』かな。結局ここではこんな感じの見送りしかできないかな。
しんみりと送りだすんじゃなくて、笑顔で送りだす、みたいな。
…最もリューには不当にミアお母さんに課された借金があるからまた来ることになるのは確実。
そして何よりリューにとってもベルさんにとっても『豊穣の女主人』は最初に出会った最初の場所。
きっとこれからも二人ともお得意様でいてくれるに違いない。
手荒い見送りをする三人に揉みくちゃにされながらも笑顔の絶えないリューを見守りながら私はそう思った。
ちなみに現在ミア母さんはシルがオラリオが出ることの許可を得るために悪戦苦闘しています。(笑)