『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス   作:護人ベリアス

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今回もリューさん視点です。

隠密偵察?そんなのリューさんにできるわけないじゃないですか。(笑)
いつもやりすぎちゃう方ですよ?(笑)
当然武力行使の威力偵察になりまーす。(笑)
今回で大掛かりな戦闘シーンは最後となりそうです。

感想来るのがパタッと止まって…
あれ?
自分何かやらかした?
やっぱりリュー×ベルのイチャイチャが至高で戦闘とか完全どうでもよかった?
とビビってアンケートを作ってしまった次第です。
アンケートに答えていただけると嬉しいです!


チミチャンガさん、感想ありがとうございます!


白兎と妖精の探偵業(3)〈威力偵察編〉

「いたたた…リューさん…大丈夫ですか?」

 

「ベル!?」

 

 私はベルが話したことに驚き、思わず振り返る。だがベルは大慌てで叫んだ。

 

「リューさん!前!前!」

 

 ハッと気づくと眼前に剣先が見えた。危うく死にかけたところを小太刀で弾き、首を一突きして仕留める。

 

 死んだ男を突き飛ばして後続にぶつけて足止めした後、私は飛び上がり男の背後に回る。そして首を掻っ切り息の根を止めた。

 

「ふぅ…」

 

 二人とも腕は未熟だったのが幸いし、私達が死体になることはなかった。

 

 さらなる増援が奥の廊下から来ないことを確認して、私は死体など放ってベルに駆け寄った。

 

「ベル!一体どういうことですか!?正気なのですか!?」

 

 私は心配でつい立ち上がりかけたベルの肩を掴んでガクガクと揺らしてしまう。

 

「あうあうあう…大丈夫ですから。リューさん、まずは落ち着いて隠し扉を塞ぎましょう。死体を使えばできるんじゃないですか?」

 

「あっ…はい。」

 

 ベルに言われた通り二人掛かりで死体を引きづり隠し扉の前に置いた。これで退路を塞ぐ代わりに魅了(チャーム)に惑わされた客達と戦うという厄介な事態は避けられる。

 

「さてベル。話を聞きましょう。ベルは魅了(チャーム)されたはずだったのではなかったのですか?確かに薬が盛られたという水を飲んでいたはずです。」

 

 一時的に熱りが冷めたので奥に続いていく廊下を警戒しながらベルに尋ねる。

 

「実は…ですね?僕なぜか魅了(チャーム)が効かないんですよ。」

 

「…対異常では魅了(チャーム)は防げないはずです。」

 

「そこは僕も分からないです。ただマーメイドの歌も僕には効かなかったんですよ。」

 

 魅了(チャーム)が効かない…何かのスキルか?

 

「僕きっとこれリューさんにもう魅了(チャーム)されちゃってるからじゃないかって思うんですよね。」

 

「…」

 

「…」

 

 …闇派閥(イヴィルス)との戦闘を控えた中私は赤面して喜んでいいのだろうかと冷めた風に思ってしまう。今ばかりは冒険者としての自分が前面に出てきて、色ボケしたベル大好きな自分は鳴りを潜めた。

 

「…では先ほどあのドワーフに促されるまま酒を飲もうとしたのはなぜだったのでしょう?」

 

「…あれは…演技です。」

 

 私が流したのでベルも真顔で答える。

 

「演技?」

 

 演技ということは最初からベルはあのドワーフの企みに気づいていたということになる。だが私でも気づけなかったのにどうして気づけたのだろうか?

 

「水を少し飲んだ時にグラスの下の方に溶け残った白い粉末が見えたんです。それで薬を盛られたかもと気づきました。あとちょっと水なのに苦かったですし。それでももしかしてこの薬がお酒が少しまずいと言われて、お店の人達がおかしくなった原因なんじゃないかなって思って。それで薬が効いたフリをしてみたんです。お店の人達を頑張って真似してみました。」

 

 ベルがちょっとだけ胸を張って言う。

 

「…心配したじゃないですか。…私一人ではあの人数に対応しきれなかったかもしれませんでした。」

 

「僕はリューさんなら絶対大丈夫だって信じてましたので。あと僕が戦力外になったと思ったからあのドワーフは仕掛けてきたんだと思いますよ?お陰でここが町の人を苦しめる酒と深い関わりがあることが分かりました。」

 

「まぁ…確かに…」

 

 ベルが笑顔でそう言うが、私的には複雑。…信頼も時と場合によるような気がしてきました…

 

「…過去のことはこれくらいにしましょう。今からどうしますか?」

 

 ベルの方を向くとベルは腰に手をやって…そして蒼ざめた。

 

「…僕ナイフをあの酒場のどこかに落としてきちゃったみたいです…」

 

「「…」」

 

 沈黙が重くのしかかる。

 

 …いくらアジトを突き止めてもそれでは…

 

 …私も大概ですが、ベルもかなりのポンコツだったりするのでは…?

 

「…私の双葉の一双をお貸ししましょう。…小太刀は扱えますか?」

 

「はい。多分大丈夫です。これでリューさんと同じ武器で戦えますね!」

 

 …なぜベルはこの状況下でテンションが上がっているのでしょうか…

 

 確かにベルと同じ武器で戦うとなると…

 

 これはペアルックでは!?

 

 あっ…!それいいです!素晴らしいです!

 

 …今度私もナイフを購入してきましょうか…

 

「じゃあまずこの廊下を進んでみましょう。きっとこの建物から出るか、もしくはアジトみたいなのを見つけられるかもしれません。」

 

 ベルの言葉に賛同して私達は警戒しながら廊下を進んだ。

 

 しばらくすると行き止まりについてしまう。

 

「…あれ?おかしいですね?」

 

 ベルが首をかしげる。

 

 確かに行き止まり。

 

 だがさっきの隠し扉といいこの建物は思いの外に手が込んでいる。だから何かがまた隠されているに違いない。

 

「壁を触ってみてください。恐らく隠し扉がここにもあるはずです。」

 

「はい。」

 

 探ってみること数分。

 

 ベルが何かを押したようでベルの目の前の壁が大きな音を立て始める。

 

 すると現れたのは地下へと繋がるであろう階段。

 

「…言うまでもありませんが、この下には闇派閥(イヴィルス)の構成員がいる可能性が高い。心してかかってください。」

 

「…結局戦うことになっちゃってますね。僕ら…」

 

 …結局戦闘になるのか、と今更なことをベルは思い浮かべたらしい。どうやら今回ばかりは私の勘は当たってしまったようだ。…最も今回の場合勘が外れる可能性の方が低かったような気もするが。

 

「…なんか後ですっごいリリに怒られる気がしてきました。」

 

「…奇遇ですね。私も後でシルにこっ酷く怒られる気がします。」

 

 だなんて事後のことを想像しながら階段を降りているとまたもやドア。

 

 ここからは声を潜める。

 

 二人向き合ってドアの前に立つ。

 

 目を合わせて突入するかどうかをお互いに確かめる。

 

 そして息を合わせて二人でドアを蹴り破って、小太刀を片手に内部に突入する。

 

 目に飛び込んできたのは巨大な酒の蒸留施設。

 

 そして…

 

 

「来たな!【疾風】!思ったより遅かったな!待ちくたびれたぜ!」

 

 

 …安定の罠。さっきのドワーフがゲスな笑みを浮かべながら私達を見下ろしている。

 

「…囲まれてません?」

 

 勢いよく突入したもののグルリと数え切れないほどの闇派閥(イヴィルス)に囲まれてしまっている。それも二階にまで構成員が配置されていて、弓やら杖やらを構えている。

 

 背後の死角をなくすために自ずと私とベルは背中を合わせた。

 

「…闇派閥(イヴィルス)との戦闘ではよくあることです。」

 

「よくってなんですか!?」

 

 …【アストレア・ファミリア】は勇んで罠に飛び込んで返り討ちに…みたいなことは定期的にやっていたので私的には普通な気も…

 

「お前ら!やっちまえ!」

 

 ドワーフの掛け声とともに闇派閥(イヴィルス)の者達が一斉に襲い掛かってくる。

 

 私は目の前の敵に対応しながら、ベルに向かって叫ぶ。

 

「ベル!私には気にせず目の前の敵に集中を!あなたの死角は私が受け持つ!だが目の前の敵だけでなく二階の敵にも注意を払いなさい!奴らは同士討ちも辞さない戦い方をしてくる!」

 

 ベルは闇派閥(イヴィルス)のやり方を知らない。だから奴らとの戦闘に経験の多い私からできるだけ戦い方を教えておく。…本当は闇派閥(イヴィルス)の件にベルを関わらせるのは望ましくなかったが、仕方ない。

 

「リューさん!この人達みんな捕まえなくていいんですか!?」

 

 ベルが後ろで剣が交わって起きた金属音を響かせながら叫ぶ。

 

「そんな余裕はない!ベル自身の命が危なくなる。捕らえるのは全員叩きのめした後の生き残りだけでいい!皆殺しにしなさい!」

 

「リューさんちょっと怖いですよ!?」

 

 ベルは後ろで私に悲鳴を上げているような気がしたが…気にしてはならない。

 

 敵の練度は低く、Lv.2もほとんどいないのではと思えるほど。だが上から飛んでくる遠距離攻撃が難だ。避けられるものの目の前の敵と斬り合っている真っ最中に飛んでこられると流石に対応しにくい。

 

「【ファイア・ボルト】!」

 

 ベルはどうやら二階の連中の撃破に重点を置くことに決めたらしく魔法を打ち始める。あまり背後での動きは見えないが、きっと互角以上に渡り合っていることだろう。

 

 私も二階の敵を排除したいが、私の魔法はやり過ぎといっても過言ではないほど強力な魔法。おそらくこの地下で使っては天井が崩落しかねない。状況としてはベルよりも二階の敵を排除できずに遠距離攻撃にも対応しなくてはならない私の方がマズイかもしれない。

 

 敵を十人ほど屠ったぐらいで闇派閥(イヴィルス)も流石に怖気付いたようで攻撃の手が緩む。小康状態に陥ったところで私は後ろに数歩下がってベルと再び背中を合わせた。

 

「リューさん…なんか減らないんですけど…」

 

「…二人では案外荷が重いようだ…敵が多い…」

 

 私もベルも体力がある方ではない。二人揃って呼吸が乱れ始めている。

 

 長期戦は望ましくない。だが敵のこの物量を押し切るのはいささか人数が足りなかった。

 

 私とベルは小太刀を構え直し迎え撃つ準備をする。

 

「リューさん。一気にかたをつけるべきです。リューさんの魔法を使いましょう。」

 

「…いいでしょうか?私はやり過ぎてしまうかもしれない…」

 

 私が少し躊躇する。闇派閥(イヴィルス)を殲滅できても建物ごと吹き飛ばしてしまえば私達の命もなく元も子もないからだ。

 

「…そんなに余裕がないです。僕の魔法が…」

 

 そう言われてハッとなる。ベルが使う魔法の属性は火。酒樽に引火するとマズイと今更気づいた。

 

 既に近くに置かれた酒樽に引火すると同時に酒が気化し始めているようだ。魅了(チャーム)の効果を持った酒が気化したことですでに近くの闇派閥(イヴィルス)の構成員の動きが魅了(チャーム)でおかしくなり始めている。

 

「分かりました。一気にかたをつけましょう!」

 

「はい。援護します!」

 

 ダンジョンに鍛錬をしに行っていた時と同じように。

 

 何度もこなした私達の戦い方。ベルが前衛で私が後衛。

 

 いつも通りベルが正面に向かって突貫していく。

 

 そしてベルが抜けて手薄になったように見えた私に襲いかかる敵に私は応戦しながら詠唱を始めた。

 

「【今は遠き森の空。無窮の夜天に鏤む無限の星々 】」

 

 これを最後に歌ったのは【深層】。

 

 これは私の最後の切り札。

 

「【愚かな我が声に応じ、今一度星火の加護を】」

 

 この魔法にはかつて親友(アリーゼ)を消し去ったという辛い過去を思い出させるものだった。

 

 だが…

 

「【汝を見捨てし者に光の慈悲を】」

 

 今は違う。

 

 この魔法で私はトラウマを打ち払った。

 

 この魔法はベルの隣で戦うための大きな力となる。

 

「【来れ、さすらう風、流浪の旅人】」

 

 私の緑風が作り出す正義の剣。

 

「【空を渡り荒野を駆け、何物よりも疾く走れ】」

 

 私の魔法の詠唱文を覚えていてくれたようでベルは敵中で猛威を振るっていたところを退いてきてくる。呼び戻すために詠唱を遅めて敵中に突っ込む手間が省けた。

 

「【星屑の光を宿し敵を討て】」

 

 この魔法でお前達闇派閥(イヴィルス)を倒す。

 

 

「【ルミノスウィンド】!!」

 

 

 緑風を纏った光弾が私の周囲から飛び出し、視界を真緑に染め上げた。




これにて潜入捜査編(どこが?)終了です。
今回の事件の後始末はさっくり次の冒頭で終わらせます。
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