『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス   作:護人ベリアス

22 / 54
今回もリューさん視点です。
シルさんの秘密がついにここで…というほどのことではなく、ご都合主義で決めただけですが。
以前の後日談でシル=神と書きましたが、そこからは少々変更してあります。

お気に入りがついに150突破しました!
ありがとうございます!


小悪魔の秘密

「もちろん入団したいです!ぜひお願いします!」

 

「ならそういたしましょうか。」

 

 一件落着。シルは【アストレア・ファミリア】の団員になったとさ。

 

 …とあっけらかんと流してしまってよいのでしょうか…

 

 私はテントの中で上着を脱いで半裸になったシルにアストレア様が恩恵(ファルナ)を与えている様子を見ながら、ぼんやりと考える。

 

 …一応反対はしたものの、いつもの如く謎のおまじない&上目遣いのコンボに呆気なく撃破された私はおとなしく眺める羽目になったのだ。

 

「…本当に良かったのでしょうか…」

 

「もう!リューったら!私だっていざとなったらリューの役に立てるんだからね!」

 

 儀式が終わってから私がぼやくと、ぷんすかしたシルが寄ってくる。

 

「ふふん。私だってもう魔法使えるんだから!」

 

「御冗談を…」

 

「いえ。本当ですよ?」

 

 私が冗談を言うシルの言葉を苦笑いしながら流そうとするとアストレア様がいたってまじめな表情でそう言った。

 

「…アストレア様?さすがにご冗談が過ぎますよ?」

 

 まさかと思いながらもアストレア様に尋ねる。するとアストレア様はシルのほうを向いて尋ねた。

 

「シル。あなたリューに伝えていないのですか?」

 

 舌を出しててへっ、と誤魔化すシル。何か私が知らないことがあるということか?

 

「いつもリューはシルの魅了(チャーム)の魔法に引っかかっているのですよ。」

 

 え?

 

「リューは私の手を握りたくなーる!」

 

 ちょこちょっと近づいてきたシルは突然そう唱えて、私の前で人差し指をくるくると回す。

 

「リューは私の手を握りたくなーる!」

 

 そしていつもの如く私の鼻をちょんと触った。

 

 いつものようにポカーンとした表情になる。

 

 だが一つ気づかされた。

 

 

 私はもうシルの手を握ってしまっていたということを。

 

 

「リューのお鼻を触るのは私がしたいからしてるだけだけど、今のでもう詠唱していたんだよ?」

 

 詠唱…?

 

 いたずらっ子みたいな笑みを浮かべて、くすくす笑うシル。

 

 完全に理解するまでにはしばらくかかった。

 

「…本当ですか?」

 

「うん!」

 

 …つまり恩恵(ファルナ)無しでシルは魔法を使える…ということ?

 

「以前リューに話したオラリオに戻る前に出会ったという銀髪の神威を発していた女性とはシルのことだったのですよ。」

 

 アストレア様が追い打ちをかけるように予想外のことを言うのでもう私の頭はパンク寸前である。

 

「正確には半神ですよ。リュー。私実はフレイヤお母さんと精霊の血を継いだ男の人の子供なんだ~」

 

 かるーく衝撃的な事実を言ってのけるシル。

 

 …これでようやくわかりました。

 

 

 私が簡単にシルの言うことを聞いてしまう理由。

 

 ミア母さんが『豊穣の女主人』にいる理由。

 

 私達の考えをいとも簡単に見抜けてしまう理由。

 

 シルが魔法を使える理由。

 

 

 皆説明がついたわけだ。

 

「半神なので恩恵(ファルナ)を与えても問題ないと私は判断したわけです。」

 

 アストレア様はそう言いながら私にステイタス更新用紙を見せた。

 

 

 シル・フローヴァ

 

 LV.1

 

 力:I0

 耐久:I0

 器用:I0

 敏捷:I0

 魔力:I0

 

 

 《魔法》

【インプズ・ウィスパー】

 ・魅了付与魔法

 ・相手のこの魔法に対する抵抗力が低いほど効果増大

 

 《スキル》

 

 

 

 …最初から魔法を用いられる点はでたらめだが、他は普通といったところか。これでスキルまであったら卒倒ものだ。

 

「では次はリューですね。どうぞ来てください。」

 

 シルのステイタス更新用紙を一通り見終えてシルに手渡した。そして上着を脱いでアストレア様の前に座った。

 

「ステイタス更新も久しぶりですね。」

 

「はい。もう五年が経ちましたから…」

 

「そうですね。…では始めます。」

 

 そういうとアストレア様は慣れた手つきで淡々と更新作業を進める。

 

「できました。おめでとうございます。リュー。無事Lv.5です。」

 

 アストレア様からステイタス更新用紙を受け取り、そこに連なる文字を私は粛々と読み始めた。

 

 

 リュー・リオン

 

 Lv.5

 

 力:I0

 耐久:I0

 器用:I0

 敏捷:I0

 魔力:I0

 狩人:E

 対異常:D

 魔防:G

 堅守:H

 

 《魔法》

【ルミノス・ウィンド】

 ・広域攻撃魔法。

 ・風・光属性魔法。

 

【ノア・ヒール】

 ・回復魔法。

 ・森林地帯における効力補正。

 

 《スキル》

 

妖精星唱(フェアリー・セレナード)

 ・魔法効果増幅。

 ・夜間、強化補正増幅

 

精神装填(マインド・ロード)

 ・攻撃時、精神力を消費することで「力」を上昇させる。

 ・精神力消費量含め、任意発動。

 

疾風奮迅(エアロ・マナ)

 ・疾走時、速度が上昇すればするほど攻撃力に補正。

 

恍惚妖精(エクタジー・フェアリー)

 ・想い人を思い浮かべることで全能力の高補正。

 ・想い人との接触で回復可能

 ・効果は接触者同士の感情の高ぶりに比例。

 

 

 ……レベルが上がったのは喜ばしいことです。

 

 ……アビリティ増えたのも喜ばしい。

 

 ですが…

 

 

 最後のスキルは何ですか…?

 

 

「リュー…次の神会(デナトゥス)が楽しみですね…」

 

 振り返ってみるとアストレア様が遠い目をしている。神会(デナトゥス)

 

 …ということは私の二つ名に関して!?

 

 …まさか世にも恐ろしい二つ名をこのスキルのせいで与えられてしまうかもしれないのか…

 

「へー恍惚(こうこつ)妖精…ちょっとポンコツ妖精と発音が似てるね!」

 

 シルは私のステイタス更新用紙をのぞき込んで今にも笑い出しそうな様子。

 

「…発音だけです!私は決してポンコツではありません!」

 

「ベルさんが関わってる時以外はね!」

 

 私はポンコツであることを否定するもシルは一切聞く耳を持ってくれない。

 

 …ただベルが関わるとというのは流石に否定できない…

 

「ふむふむ…つまりリューはベルさんのことを思い浮かべると強くなるんだ…ってステイタスで表示するまでもなくその通りなんじゃない?」

 

「シルの言う通りではありますね。ですがステイタス化することで目に見えて強くなるということですよ。」

 

「あと接触で回復可能って…」

 

 と言ったところでシルは言葉を止める。

 

 なぜ止めたのかと思い、シルのほうを見るとそれはもう素晴らしい笑顔で私を見つめていた。

 

「…これはオラリオに戻ったら検証が必要だね。」

 

 え?

 

「ちょっと待ってください…?検証とはいったい何のことですか…?」

 

「まずは手をつないで…あとハグとかキスも試してみないとだし…」

 

 思案顔でポンポンとよくわからないことを言い始めるシル。

 

「あの…意味が分からないのですが…」

 

「え?リューがベルさんとどんな接触をしたら一番回復できるか検証するんだよ?」

 

「何をしようとしているんですか!シル!?」

 

「えー面白そうじゃん!」

 

「私は全く面白くありません!」

 

「もーリューったら恥ずかしがり屋さん!オラリオの市場の真ん中であんなことを…」

 

「あー!言わないでください!私がやりすぎてしまった時の話はしないでください!」

 

 …こうしてオラリオに帰還するのが少しだけ憂鬱になった私でした…




リューさんの新二つ名は今後のお楽しみということで!
本当はリューさんの魔法を増やしたかったんですけど、詠唱文が思い浮かばなかったのでなしです。どうやって原作者さんは考えているのやら…
あとリューさんの魔法と言えば、ルミノス・ウィンドしかないですしね!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。