『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス 作:護人ベリアス
ちなみにリューさんの故郷『リュミルアの森』からの帰還途上に時間が飛んでいます。
…いや、故郷に向かったとしたのは単にあの『アルヴス・ルミナ』をリューさんに使って欲しかっただけなので…
と言っても手に入れたのは大聖樹の枝だけなのでまだ使えませんけど!
今回から『遠恋のファミリア・ミィス』のメインイベントに突入します!
遠恋中はベル君が出てこなくて甘い話を投下できないのが作者的にも辛いです。(笑)
でもこのイベントはリューさんにとってとても大事なのでドラマティックな形に書き上げたい…
ヒロト@アニオタ初伝さん、感想ありがとうございます!
シルの【アストレア・ファミリア】入団から二週間。
既に私達は目的地『リュミルアの森』からの帰路を進んでいる。
「アルヴス・ルミナ』の素材である大聖樹の枝は予定通り入手できた。
だが他の事項は何一つ予定通りとはいかなかった。
まず第一に私達が忘れていたことがあった。
それは誰も料理ができない、ということだ。
私は食料を炭にしてしまうため、シルとアストレア様の反対で却下。
シルは私が反対したものの、シルができると言い張ったため、一日料理を任せることになってしまった。…その結果、案の定劇毒…もとい独創的な味のする物質が完成した。それを食したアストレア様は卒倒。アストレア様と一食分の食料という尊い犠牲によってシルの料理担当になることは阻止された。
最後にアストレア様は料理はできるものの、毎日お手を煩わせるわけにはいかないと私が反対した。
ということで野宿という選択肢が消滅した。
それで私達は途上の村々を点々としながら目的地に向かうことになった。
その村々においてアストレア様の名声は未だに健在で、行く先々で歓待をしていただいたので何一つ不自由がなかったのが不幸中の幸いだった。
だがそう好調にも進まない。
途上の村々では歓待を受けたができたが、外部の者との交流を極度に拒絶する同胞の村ではそうはいかない。泊まる先も碌に見つけられず、入団者探しもままならないまま素材を手に入れてすぐに去るしかなかった。
そのおかげでもうオラリオへの帰路にいるというわけだ。
ちなみにシルは完全に観光気分になっていて、森のモンスターと触れ合ったりしている。そこで魔法を使ってモンスターと触れ合うのだから抜け目ない。順調に魔力の経験値を貯め続けている。…私が戦うのは、シルが魔法を使う余裕も無い時か群れの中の一匹とシルが触れ合いたい時にその一匹以外皆殺しにするか、である。…他を皆殺しにしろと平然と言ってのけるシルに恐怖を抱くと同時に残された一匹に哀れみを感じてしまったのは人として普通のことだと思う。
そして今は地図に載っていたラキア王国領の山中にある村に向かっている。
日が落ちるまでそう時間がない。早く村で宿を見つけれれれば、と少しだけ足を急いだ。
「もうすぐだよ!」
地図を見ていたシルが告げる。
…なぜ私が見ていないか、と?私は地図を見ていると同じ場所を周回するようになってしまうちょっとした病を患っているのです。シルはこの病を『方向音痴』、と呼んでいた。方向に音痴という概念があるのかは甚だ疑問です。
しばらくして村に着く頃かと思った時に視界に入ったのは、木の柵。
今までの村にはなかった厳重さだ。
門らしき場所には門番のような者が一人立っている。
それも煌びやかな装飾で飾られた杖を持った。
こんな田舎の村には似合わない者に不信感を抱きながら私達は近づいた。
よく見ると門番らしき者は女性の冒険者のようだ。それも耳の形状からエルフと推定される。こんな場所に他種族との交流を嫌う同胞がいるとは意外でしかない。
「止まれ!何者だ!」
同胞はこちらに杖を向けて叫んでくる。
「怪しい者ではない!宿を探しに来た旅の者だ!」
私がそう返すも同胞は杖を構えたまま。他意がないことを示すために両手を上げながら、とりあえず指示通り立ち止まる。
すると同胞はヅカヅカと私たちの元に近づいてきた。…警戒しておきながら、不用意に近づいてくるとは…不用心にもほどがある。
「貴様ら…ラキアの者か!?何をしに来た!?」
突如いらぬ疑いをかけられる。ラキア領の者のはずなのになぜラキアの者に向かって敵意を示すのだろうか。どちらにせよ私達はラキアの者ではない。弁明が必要だ。
「違う!私達はオラリオのファミリアの者だ!」
「そうです!冒険者様!私達はただ宿を探しているだけです!」
シルと二人掛かりでそう言うも同胞の表情は変わらない。
「抜かせ!こんな時に来る者などラキアの者しかいまい。私の魔法を受けたくなくば、とっとと立ち去れ!」
戦う意志がない者に攻撃を加えると宣言した同胞にわずかに怒りを覚える。
これは戦うしか…
「リュー。落ち着きなさい。」
すると後ろからアストレア様が声を上げる。…私の苛立ちをお気づきになったようだ。
アストレア様は前に進み出て、同胞と向き合った。
「私の名はアストレア。オラリオにあるファミリア、【アストレア・ファミリア】の主神です。この村に害をもたらすつもりはありません。もしよろしければ宿を貸していただきたいのです。当然金は払います。」
「アストレア?知らんな。そんな神は。」
その言葉にさすがに私もキレる。
「アストレア様に無礼です。あなたも同胞であるなら敬意の払い方ぐらい存じているのでは?」
怒りを込めた視線を送ると同胞は負けじと応じてくる。
「そもそもその言葉自体が信用できんからな。私が敬意を払う理由がない。」
「何だと…」
私は怒りに任せて言い返そうとする。
だが私は言葉を止めた。
なぜなら奥から大慌てで老人が飛び出してきたからだった。
「冒険者様ぁ!落ち着いてください!神に武器を向けるなどもってのほかですぞ!」
その声に同胞は振り返った。
「長老!だが証拠は…!?」
長老と呼ばれた老人は詰め寄ろうとする同胞をよそにアストレア様の前に息絶え絶えになりながらやってきた。
「大変なご無礼を働きました。どうかお許しください。アストレア様。」
どうやら長老はアストレア様のことを知っていたらしい。
「構いません。彼女は義務を果たしただけです。いきなり訪ねた私達にも非はあります。」
アストレア様の言葉に長老はペコペコと頭を下げる。
「アストレア様の噂は周辺の村々に広まっております。ついに世界に正義が戻ってきたと我々一同歓喜しているところでございます。そして我々を救って…これは後ほど。ささ。お入りください。ご案内いたします。」
そう言って長老は道を開ける。さっき立ち塞がった同胞は不機嫌丸出しだが、一応は道を開けてくれた。
するとアストレア様は私の方を向いてこう告げた。
「リューの夢。まだ道のりは遠いですね。」
アストレア様の言葉がグサリと心に刺さる。
…アストレア様の言う通りだ。
私は結局解決を
一方のアストレア様は言葉で解決した。その平和的解決方法は私がかつての【アストレア・ファミリア】でほとんど任されたことのない方法だ。それを用いてアストレア様は武器を用いることなく、問題を解決した。
この方法は今までの私にはできなかった方法。だが私はアストレア様が用いた言葉による解決を突き詰めなければならない。私の夢のため、私が正義を貫くために、私はこの方法を用いられるようにしなければならない。
…やはり夢まではほど遠い。
アストレア様の言葉が心に刺さったまま私は招かれるがままに村へと立ち入った。
「ささ。どうぞどうぞ。」
私達は長老に連れられて村の集会場のようなところについていた。そこには溢れんばかりの村人達が集まってきていた。同胞の魔道士はいつの間にやら姿を消してしまっていたが、特に気にはしなかった。
向かう途上、過度に村人達は私たちのことを気にしていた。いつものことと言えばいつものこと。私達【アストレア・ファミリア】は人々からの信頼は厚い。歓迎を受けることも多々ある。だが今回は期待…そんなような眼差しを向けられている気がした。
「あの…これは一体…?」
流れで私達は集会場の壇上に置かれた席に座らされてしまう。それで私が戸惑いがちに聞いてみる。
すると長老は私達の前に突然ひざまずく。
「【アストレア・ファミリア】の皆様!どうか…!どうか…!我々の願いを聞いていただきたいのです!」
長老の声はひどく切実で焦りを含んだもの。
そして集会場の人々の視線もまた焦り、期待、様々な感情を含んだものだった。
その時ようやく私は気づいた。
そしてその解決者として私達【アストレア・ファミリア】が期待されているのだ、と。
この村は古くはどこのファミリアにも国家にも属すことのない平和な村だったらしい。
だが平和はラキア軍の侵攻によって崩れ去った。それもエルフの里を焼き払った魔剣を武器に勢力を拡大していた最盛期のラキア軍だ。
言うまでもなく平和だった村はラキア軍に飲み込まれ、ラキア領に属することになった。
それから時を経て、ちょうど数ヶ月前。
ラキアはオラリオへの第6次侵攻を行なった。
私達の知る通りラキア軍はオラリオのファミリア連合を前に大敗した。
大敗自体は兵を出していなかったらしいこの村には関係のない話。
だがラキア領ということは税を支払う義務がある。この村は第6次侵攻に向けた軍資金徴収のための臨時増税を課せられ、苦しい状況に追い込まれた。
さらに戦争好きで有名なラキアの主神アレスはまたもや第7次侵攻を計画し、さらなる臨時増税を領内の村々に課した。
さらなる臨時増税にこの村は耐える余力は残されていなかった。これ以上の税を払えば、村人達が生きていく術は喪われる。そう村人達に思わせるほどに状況は追い込まれていた。
そのためこの村は税を納めることを拒否し、ラキアへの対抗を決め、冒険者を雇って税を徴収しにくるラキアの人間を追い返すようになった…と。
「それであの魔道士を?」
私には先程詰め寄ってきた同胞の魔道士が思い浮かんだ。
「その通りです。…お恥ずかしい話、我々にはファミリアを雇い入れるだけの資金はもうありませんでした。ですがあのエルフの冒険者様は宿と食事の提供だけで引き受けてくださいました。聞くところによるとオラリオでも高名なソロで活躍なさっている上級冒険者様だとか。私から言わせていただきましてもとても人徳のあるお方と断言できます。…少々関わりずらいところはありますが、何度もラキアの兵を倒してくださいました。」
私は今の長老の言葉に不信感を持った。
まず
ほぼ確実にリヴェリア様のように大規模なファミリアに所属しているし、そんな冒険者がいたら確実に有名になっているはず。
「して…その冒険者を雇っているのになぜ私達に依頼を?」
長老の言葉を聞いたアストレア様が質問する。
「…お一人で村全体を守っていただくのも骨の折れる話です。【アストレア・ファミリア】の冒険者様達ならあのエルフの冒険者様と協力して村を守っていただけるかと…」
協力…?あの典型的な偏屈なエルフの魔道士と?…難しいとしか言いようがないと私は思うのだが…
「どうか…一ヶ月の間でもいいのです!どうか我々をお守りください!」
長老はそう叫ぶとまた平伏してしまう。それどころか後ろに集まっていた村人達まで平伏してしまう。…こうなると私に断るという選択肢はなくなってしまうではないか…
「リュー。」
アストレア様が私の方を向いて告げる。
「あなたの判断に任せます。」
「えっ!?」
私はアストレア様の言葉に驚かされる。依頼を受けるかどうかはアストレア様やアリーゼが決めることが多く、私が決定に関与することはあまりなかったからだ。
「リュー。私もリューの判断に任せるよ。」
ここでシルまでアストレア様の言葉に賛成してしまう。
「しかし…私は…また間違えるかもしれない…」
私は俯いて呟いた。
さっきだって間違えた。自分の新たな夢と正義を掲げておきながら、実行からは程遠い思考をしていた。そもそも今までなんて何度間違えを犯したか分からない。
私には判断するような資格はないのかもしれない…
何も考えずただ誰かの剣として生きる…それが無能な私に相応しい生き方なのかもだ…
「違うよ。リュー。」
シルは私の頰をそっと触って告げた。
「リューは確かに間違える。いっぱいやり過ぎちゃう。それでもね…リューの判断のおかげで助けられた人はたくさんいる。リューの判断は間違ってはいても誰かの幸せにつながっているの。だから迷わないで。リューの正義に従って。リューの夢に向かって進んでいって。私もアストレア様もリューを支えるから。」
「…シルに全て言われてしまいましたね…」
シルは私を優しく見つめながらそう言い、アストレア様は肩をすくめながらも柔らかな表情だ。
そうだ。
私にはかつてのように信頼でき尊敬している人達がそばにいてくれる。
なら…
私はシルの言う通り迷わずに進もう。
私の夢を叶えるために。
「長老。」
私は平伏したままの長老に話しかける。長老が少しだけ顔を上げた。
「お引き受けしましょう。あなた達の命は私が保証します。」
「本当ですか!?ありがとうございます!ありがとうございます!」
長老は私の言葉に涙ぐんで礼を何度も言葉にする。
「長老。まず私にはしなくてはならないことがあります。ご協力いただけますか?」
手始めにあの同胞の魔道士と話をしなければ。
次回!
名無しのエルフさん名前が判明!
あと『遠恋のファミリア・ミィス』はラキア編ということになります。
ラキアvsリューさんの対決になります!
雑魚ラキアと思ってはいけません。武力では雑魚でも(軍事国家なのに(笑))、現在のリューさんのやり方の相手の場合大敵なのです。
はてさてリューさんの夢の行く末は如何に…