『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス 作:護人ベリアス
これで最終章、リューさん達が帰還する前に神会を挟みます。
まずはリューさんの業績へのオラリオの反応。
そしていつの間にやら有名人になっていたリューさんは男神達に大人気になってます。(笑)
もうお尋ね者じゃない設定なので心置きなく男神達はリューさんを愛でれる訳です。
ただ長くなったので命名式は次回になります。
神々は妖精と白兎を逃さない
「何だい…この人の多さは…」
僕は会議室に入った途端に思わずそう漏らした。
今日は三ヶ月おきに開催される
それはともかく僕はいつもの席に向かうと隣にはもうへファイストスが座っていた。
「やぁ。へファイストス。今日は一体どうしたっていうんだい?何だいこの人の多さは?」
「あら。ヘスティア。あなたは当事者なんだから聞かなくても分かるでしょ?」
呆れ半分で返してくるへファイストスに僕は首を傾げた。
「何のことだい?僕が当事者?」
「…何言ってんだか…ほら…あっち見なさい…」
そう言ってへファイストスが指差したのは、長い黒髪をなびかせてただ歩いているだけで周囲の視線を集めてしまっている一人の女神。
フレイヤみたいな妖艶さではなく、彼女はその背筋の伸びた模範的な佇まいで周囲の視線を集める。
何より多くの神々が姿を最近は目にしたことがなかったことが視線を惹きつけている原因だった。
「あぁ…アストレアかい…なるほど…そういうことか…」
僕はようやく察した。
アストレアが
その彼女が突然オラリオに姿を現したら話題を攫うのも無理はない。
「正義の女神アストレア。今彼女に関する話題で神々は持ちきりよ。娯楽好きの神から真面目な神までみんなね。まぁそれはヘスティアも似たようなものだけど。」
…そこは一切の否定ができない…
アストレアはただ本人が帰還したことだけで話題を博しているわけじゃないのは僕も知るところだ。
それは僕もアストレアも話題を欠かない眷属を抱えているから。いやー僕はそんな眷属を持てて嬉しいなー
…なんて嘘だ。今からどんな目に合うか分かったもんじゃない…頼める神には頼んでおいたけど…命名式がひたすら心配でしかない…
なんてこれからのことで憂鬱になっているとあらかた神々が集まったらしく、会議室は急速に静まりかえった。
「うむ!今日はオラリオの外交問題が関わるから俺ガネーシャが司会を担当する。よろしく頼む!」
「「やっベー!?ガネーシャが自己紹介以外してるぞ!?」」
最初に口を開いたのはガネーシャだった。
早速娯楽好きの神々がガネーシャの珍しい様子に大げさに反応する。
まぁガネーシャは真面目な時はいい奴だからね。でも真面目になったってことはそれだけ重大なことが起きたということなのはいいこととは言い難い。
「うむ!知っての通りアレスがまたオラリオに侵攻を企んでいるというのはギルドから話が入っていたと思う。だがそれをアストレアの眷属が阻止した。ここでアストレア?久しぶりの
そういった瞬間歓声が上がると同時に視線がアストレアの方に向く。
「私からは特に。今回の一件は私の眷属のリューに一任してありました。そのため私の意向ではなく、彼女の思う正義に則り彼女は行動しました。今後は彼女の正義を親として総力で支えていくつもりでいます。」
流石と言うべきなのか…アストレアは淡々と自身の思いを語った。そこにはエルフ君への全幅の信頼が伺えた。
「ありがとう。アストレア。それでそのアストレアの眷属が結んできたラキアとの条約なのだが…配布資料に載せてある。とりあえず読んでくれ。」
そう言われて僕も目を通すことにする。僕は交渉成功の情報はベル君からもらっていたけど、細かいことは教えてもらっていなかった。
と目を通してみると正直言葉を失ったとしか言いようがなかった。
「…これ…オラリオに利益なくない?」
「あぁ…敢えて言うならラキアが二度と攻めてこないくらいか?」
「いや…それはうちのファミリアとしては商売あがったりなんだが…」
そんな不満が神々に漏れるほど条約の内容はラキアについてばかりでオラリオの利益が全く見えない。不満が漏れるのもわかるけど、それ以上にエルフ君はこんなのを結んでくるなんてどれだけ無欲なんだか…と思わず考えた。
「…見ての通りオラリオに利益はない。だがこの条約は批准されてしまったため皆事後承認してくれ。」
「「え?」」
一部の神々の声が重なる。分かるよ。だって事後承認っていきなり言われても困るからね。
「実は…ヘスティアの眷属がオラリオの代表として批准してきてしまってな…」
…って僕の眷属ってベル君のことかい!?いつの間にベル君はそんな大役を引き受けていたんだい!?
衝撃で固まる僕に冷たい視線が集まる。ベルくぅん…君は何をやってくれたんだい…?
「うふふ。ヘスティアが知らないのは無理ないわ。私が手を回したんですもの。」
そう声をあげたのはあのフレイヤだった。…フレイヤがベル君を狙ってるのは分かっているからベル君のためってことかい?
当然フレイヤに理由を尋ねる神も出てくる。するとフレイヤはクスリと笑った。
「うちのシルがどうしてもってね。私も親バカだから断れなかったのよ。」
冗談めかして言うフレイヤ。…あのあざとい店員君のため?絶対嘘だ。ベル君のために違いない。僕のベル君は渡さないと言う意味を込めて睨めつけてやるもフレイヤにあっさり流される。ぐぬぬぬ…
「そっか…シルちゃんが言うなら仕方ないよね…」
「そうだぞ。シルちゃんは親友思いだから、リューたんを助けるのは当然だ。」
なぜか納得し始める男神達…何だい?このあざとい店員君の名前の力は…そんなにあの子はすごいのかい?あとリューたんって…まさかエルフ君のこと?
「なぁ。ガネーシャ?これは交渉をリューたんが成功させて、ベルきゅんが総仕上げをしたって感じってことか?」
別の男神がふとガネーシャに尋ねる。
「その通りだな。」
そうガネーシャが言った途端急に一部の男神達が沸き立った。
「さっすが!リューたんとベルきゅんだぜ!」
「そうだ!たった二人であの戦バカを黙らせて、戦争を止めるなんて凄すぎる!」
「二人で成し遂げた偉業!これは愛の力に違いない!」
「その通り!この条約も仕方ないな!オラリオに得があるかどうかはともかくあのラキアを根本から変えちまったんだぞ!?」
「それはリューたんなら余裕だろ!だってリューたんは…」
「「『私はいつもやり過ぎてしまう。』だからな!」」
…エルフ君の最近大流行りしている迷言を決めゼリフの如く男神達は言い放ってゲラゲラと笑っている。…ぐぅ…今からが心配で仕方ない…
「あとラキアの王子が【アストレア・ファミリア】に入団って何だ?ガネーシャ?」
「俺も分からん。アストレア?これはどういうことだ?」
謎の一文に質問がたらい回しにされた末にアストレアに回ってきた。
「それはリューから連絡がありました。なんでもなぜかリューと同じファミリアに入団したいと言われて断れなかったと。リューが言うには正義を共有できる方だと連絡がありましたが…」
そこでアストレアが口籠る。すると男神達が代弁し始めた。
「いや…違うだろ…」
「…それどう考えてもリューたんに惚れちまったパターンじゃね?」
「絶対リューたんのご機嫌を取ったな。ラキアの王子め…それにあっさり騙されちゃうリューたん…」
「リューたんが鈍感すぎてちょっと可愛い…」
「おっとこれはベルきゅんとの三つ巴か!?」
「残念だったな!リューたんはベルきゅん一筋!何せリューたんはベルきゅんのことが大好きで大好きで仕方ない!本当は旅にだって出たくないくらいベルきゅんと一緒にいたい!んだからな!ラキアの王子ごときに立ち入る隙などない!」
エルフ君の迷言をまたも引用しながら大騒ぎする男神達。…なんで君らがそんなにテンション上がってるんだ?本当の関係者は僕とアストレアだけのはずなのに…
「…二人のことはともかくラキアの王子が今オラリオに入ると人々の反応が芳しくないだろう。二人の帰還からしばらく時を置いてからオラリオに来てもらうことでいいな?アストレア?」
「構いません。どちらにせよ二人も二人きりの旅を望み、きっと実行しているでしょうから問題ないでしょう。」
淡々と言ってのけるアストレア。それにしてもなぜそんな無表情で言うんだい?
それはともかく確かに特にベル君がエルフ君に男が寄り付くのを嫌がるだろうからなー
何せエルフ君がオラリオにいない間中変な男が近づいていないか心配してて、僕がベル君を女の子から遠ざけようとしていた理由がようやく分かったと共感されたくらいだし…
ベル君のエルフ君への愛が深すぎてびっくりしているよ。…それが僕だったらって定期的に思うけど、もうさすがに諦めることにした。
「さっすが!アストレア様!親心半端ない!よく眷属のことが分かっていらっしゃる!」
「そうだ!ラキアの王子ごときにリューたんとベルきゅんの愛は邪魔させない!俺達で守るんだー!!」
「なぁ!二人で帰還するならここはパーっと凱旋式でもやろうぜ!そうすればリューたんとベルきゅんの愛の成した偉業がオラリオ中の人々に広まる!」
なぁ!?なんて恐ろしい計画なんだ…!そんなことしたらベル君とエルフ君は大変なことに…これだから娯楽好きの男神は…
「ん?凱旋式?いいな!二人の偉業を都市を挙げて感謝し、祝福する…素晴らしいな!ガネーシャ大!賛!成!」
ぎゃー!!ガネーシャー!?何で君まで賛成してるんだ!?
「あら?いいんじゃないかしら?私は面白そうでいいと思うわよ?」
ここでフレイヤまで賛成しだすものだから流石に僕が吠えた。
「ちょーっと待った!フレイヤ!何で君まで賛成するんだい!?」
吠える僕に対してフレイヤはいつもの余裕綽々とした様子で返された。
「いいじゃない。今あの二人はオラリオで一番有名な男女なのはヘスティアも知っているでしょ?そんな二人が愛の力で偉業を成し遂げた…今までにない英雄譚。これを祝福するのは眷属達の成長を微笑ましく見守る私達の役目だと私は思うわよ?」
「ぐぬぬぬ…僕だって二人の偉業は祝福するぜ?でも凱旋式はやり過ぎだと…」
フレイヤに押し負けそうになりながらも何とか阻止しようとするが、ここで突如ガネーシャの横槍が入る。
「あっ。ヘスティアよ。今ロイマンから連絡があった。ウラノスも凱旋式に賛成だそうだ。オラリオを救った偉業をオラリオを挙げて祝福せよ、とな。」
「ウッ…ウラノスがかい!?」
どっ…どうなってるんだ!?
こうしてベル君とエルフ君の凱旋式は圧倒的多数の賛成で決定となった。
…もうダメだ…僕のライフは限界だ…なのに…
まだ命名式があるなんて…
珍しくはっちゃけた回になりましたね。(笑)
もう一話はっちゃけます!(笑)