『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス   作:護人ベリアス

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引き続き神会でヘスティア視点です。
前回から荒れる神会はお待ちかねの命名式でさらに荒れ狂います。(笑)


神々の祝福(?)

ラキアとの外交問題はエルフ君が送ってきた条約を承認すると言う形であっさり話が終わった。…まぁ嫌だって言いたくてもエルフ君の意志に従ったと宣言した後静かに沈黙を貫いているアストレアの圧もあって言えないんだけど。

 

それで一波乱を経てエルフ君とベル君の凱旋式の挙行が決まり、準備の打ち合わせが済むまでは良かった。

 

だが命名式となると一段の波乱は避け難いのは明白だった。

 

「俺は命名式は興味ないからな!君らに任せる!」

 

なんてカッコよく決めて、司会の役割を事実上放棄したガネーシャのせいで混乱に拍車がかかる。

 

こうして今まで以上に混迷を極める命名式が開始された。

 

だが今回は多くのランクアップした眷属達には少々幸運だった。

 

 

なぜなら今回の大目玉は二人もいて、そちらにほとんどの神の関心は向いていたのだから。

 

 

「さて!ついに今日の本命の登場だ!LV.5にランクアップしたベル君とリューちゃんだ!」

 

役割を放棄したガネーシャに代わって司会を務めているのはヘルメスだった。これに娯楽好きの神々も加勢する。

 

「おっしゃ!来ました!どっちから先行く!?」

 

「「うーん…」」

 

男神達が僕とアストレアに交互に視線を向ける。…何かどちらが与し易いか見極めているみたいで気分が悪いな…

 

「ここは…ヘスティアだな…」

 

「アストレア様怖いし…まずはベルきゅんでしょ…」

 

…どうやら僕で決まったらしい…って!?

 

「なんだいその決め方!?僕は絶対ベル君に無難な二つ名を持って帰るぞ!」

 

と喚くも男神達は右から左のような様子…ぐぬぬぬ…

 

「今のベルきゅんは白兎の脚(ラビット・フット)だったな!せっかくだからもうちょっとカッコいい名前にしないとな!」

 

「その通り!ここはベル君の最近の偉業を参考するのが相応しい!つまり今回の一件だ!」

 

「「それがいい!」」

 

上手いこと男神達を誘導していくヘルメス。…君はベル君を応援していると言っていた気も…さてはベル君に【ロキ・ファミリア】の第一級冒険者の持つ二つ名のような比較的無難な二つ名に誘導してくれたりするかな?、と小さな期待を抱いてひとまず噛み付くのをやめにしておく。

 

「ベル君はリューちゃんがラキアにたった一人で危険を顧みずに乗り込んだのを助けるために自らもラキアへ乗り込み、見事戦争を阻止するという偉業を成し遂げた!これを英雄と言わずして何と言う!このヘルメスはベル君に【白兎の英雄(ラビット・ヒーロー)】と言う二つ名を贈りたい!異論はないかな!」

 

「「おぉ!中々いいじゃないか!」」

 

…うーん。僕としては英雄というのは早すぎる気がするけど…悲惨な二つ名な訳じゃない。ここは黙認した方が…

 

「あら?それは本当に正しいのかしら?」

 

ここで声をあげたのはフレイヤ。それも疑問を投げかけてきている。…まさか反対だとでも言うのかい?

 

「交渉をしたのはアストレアの眷属よ?あの子じゃない。そもそもあの子はずっとオラリオにいたそうじゃない。あの子はヒロインを助けるヒーローというよりヒーローの帰りを待つヒロインかのよう。確かにラキアの噂が届いた後にラキアに向かったのは事実だけど、待ちきれなくなって追っていったに過ぎないわ。これもまたヒロイン的行動ね。」

 

「どうしたんだい?フレイヤ様。あなたは賛成してくれると思っていたんだが?」

 

「そうなの?ならそれはヘルメスの思い違いだった、ということね。」

 

…むむ。ちょっとヘルメスとフレイヤの間で不穏な空気が…何でこんなことになるんだ?

 

「あなたがしたいことは分かるわ。あなたが今この下界に一番欲しているもの。それをあの子に託そうとしている。」

 

「よく分かってるじゃないか。フレイヤ様。なら俺のやり方を邪魔する理由もないんじゃないのかな?あなたもまた似たようなことを望んでいるのだから。」

 

その場にいる多くの神々がヘルメスとフレイヤの会話について行けずポカーンとしている。そして僕もその一人。

 

「ふふ。ヘルメスには分からないでしょうね。…そうね。ヘスティア?あなたなら分かるはずね。今あの子がどれだけ輝き、そしてあの子が輝ける方法も。」

 

突如僕に話が振られてついビクッとしてしまう。おかげで一瞬反応に詰まるが、それでもフレイヤの言いたいことはベル君を一番長く見守ってきた神として分かっていた。

 

「…フレイヤ。君の言う通りベル君は今までで一番輝いているよ。確かに今のベル君だって英雄に憧れているまだ子供っぽいところもある。だけど今のベル君はもっと大きなものを見ている。エルフ君…リュー君がとても美しい夢をくれて、同じ夢を見て、そして叶えたいと言っていた。だからヘルメス。君のそんな計らいは必要ないよ。あの子が輝くのに必要なのはベル君やリュー君の周りにいる僕達がその美しい夢を叶えるのを支えてあげることだよ。それが今のベル君が一番輝ける方法さ。」

 

「つまりはそういうことよ。ヘルメス。あなたのそういう余計な振る舞いはあの子が輝く邪魔なの。あの子は神造の英雄なんかになっても輝けない。あの子は周囲との支え合いがあってこそ輝ける子。あなたの理想とする姿にはならない。ふふ。ということであなたの案は却下ね。」

 

「はは…二人とも手厳しいな…まぁヘスティアまでそう言うなら俺は手を引くしかないようだ。ならどうする?二人には別案があるのかい?」

 

「そうね…ヘスティアの言う通りあの子の力になるような二つ名をあげないとねぇ…」

 

そう言って考え込むフレイヤ…って何で君がそんなに悩んでいるんだ!?

 

「ちょっと待った!フレイヤ!君が何で決めようとしているんだ!!ベル君は僕の眷属だぞー!!」

 

「あら?別に問題はないのではなくて?だって私もそのあの子を支える者の一人なんですもの。」

 

「なっ…何を言ってるんだい?」

 

 

「あの子とアストレアの眷属の夢。私も力添えしてあげるって言ってるの。」

 

 

そのフレイヤの言葉で会場は一気に沸き立った。

 

それもそのはず。あのフレイヤがベル君の夢に協力すると神会(デナトゥス)の場で宣言したのだから。

 

しかも今までのように気に入った眷属を自分のファミリアに無理やり引き込むこともなく、だ。

 

「フレイヤ様がベルきゅんに関心があるのは分かってたけど、そう来るのか!?」

 

「というかベルきゅんとリューたんの夢って何なんだー!俺気になるー!!」

 

「フレイヤ様!今までのようにファミリアに引き込まずにしておくその心は!?」

 

僕が聞き返すまでもなく、男神達が一斉にフレイヤに質問を投げかける。興奮した男神達を他所にフレイヤは至って冷静に返した。

 

「まずあるのは無理に私のファミリアに引き込もうとする時の不利益が多すぎることね。何せ私のファミリアに入るということは私の虜となるということ。あの子とアストレアの眷属を引き裂くことと同義。これには反対する者が多すぎるということぐらい自覚があるわ。」

 

肩を竦めながら、ガネーシャやアストレア、そして僕の方を見渡す。

 

…うん。あのガネーシャでさえ腕を組んで不快感を示してるし、アストレアなんて表情を全く変えずフレイヤを見返している。…こういうのが一番怖いんだよ…そして一番威厳がないのが僕って言うのかい…ぐぬぬぬ…

 

「ぐぅ…フレイヤ様への愛かベルきゅんとリューたんの大恋愛…えっ…選べぬ…」

 

さらに一部の男神達は悶絶している…何で君達がそんなに二人の将来を気にしてるんだい…?

 

「それに『美の女神』の立場から言うとあの子達の愛はとても美しい。ちょっとまだ可愛らしくて未熟なところも多いけど、それでもあの子達の愛の結びつきはとても強い。それこそ私でも介入できないほどにね。」

 

「なんと…あのフレイヤ様がそこまで評価するとは…」

 

「ベルきゅんとリューたんの愛はそこまでとは…愛の力…恐るべし…」

 

フレイヤの思わぬ高評価に男神達が驚きを示す。

 

男神達は気づいてないみたいだけど、フレイヤの表情には不満のような感情も見え隠れしている気がする。…さては本当はベル君を自分の物にしたかったけど、二人があまりに強く結ばれているせいで介入できないと悟り、諦めたといったところだったのかな?

 

ただでさえベル君には憧憬一途(リアリス・フレーゼ)っていう極秘のレアスキルがあって、魅了(チャーム)が効かない上に【助力神風(アグジュアリ・ウィンド)】なんていうリュー君を意識したとしか思えない魔法まで発現しているんだ。

 

つまりベル君がフレイヤに靡くわけなんてないのさ!ベル君は一生僕のファミリアだぁ!、とフレイヤに言ってやりたいけど、ここは我慢しておく。

 

「それで私はあの子達の美しい愛を表現できるような二つ名が一番相応しいと思うわ。」

 

…え?そう来るのかい?

 

「流石です!フレイヤ様!それが一番いい!」

 

「俺達みんなでまずはベルきゅんの恋の成就を祝福だぁ!!」

 

一気に同調しだす男神達…これはまずい展開じゃないかい…?

 

「俺に名案があります!」

 

「「おお!よし!どうぞ!」」

 

 

「オラリオの市街を歩く時もリューたんに変な虫がつかないように気を張って、常にリューたんを守っていたベルきゅんはまるでリューたんの騎士の如し!そこで俺はさるエルフの里に伝わる英雄譚からの引用で【妖精の護人(エルフ・ガーディアン)】を提案する!」

 

 

ある男神が高らかに告げる。

 

…決して悪くはない。…だが…

 

「ちょっと待ったー!!ベル君はエルフではないのにどうして【妖精の護人(エルフ・ガーディアン)なのさ!」

 

すかさず僕は横槍を入れる。…この二つ名だといつでもどこでも呼ばれるたびにベル君がリュー君との関係を指摘されることに…

 

「ヘスティア?その突っ込み無理があるの。分かってるよな?ベルきゅんはリューたんの護人っていう意味だぞ?」

 

「ぐぬぬぬ…」

 

「よし!ヘスティアは論破完了!これにてベルきゅんの二つ名は【妖精の護人(フェアリー・ガーディアン)】で決定!」

 

「「ウェイ!!!」」

 

男神達によって僕の反論はすぐに流されて、間髪入れずに既成事実にされてしまう。…くぅ…他の協力を頼んでおいたヘファイストスやタケの力を借りる時間もなかった…

 

妖精の護人(フェアリー・ガーディアン)】…まぁ今のベル君にぴったりと言えばぴったりなのかな…

 

とぼんやり考えていると急に騒いでいたはずの男神達が静かになる。

 

何事かと思い、見回してみると視線は皆アストレアに集まっていた。

 

…なるほど。僕相手には見くびったような態度を取れたけど、アストレアには流石に怖くて無理…ということか…

 

「あら?どうかなさいましたか?」

 

ここで状況に気づいたらしいアストレアが表情を変えずに言う。

 

「…いや…それは…」

 

それに男神の一人が口籠もりながら答える。…君らそんなにアストレアのことが怖いのかい…?

 

そんな様子の男神達にアストレアはニッコリと笑顔を浮かべた。

 

「皆さん?リューの二つ名はご自由に決めてくださって結構ですよ?」

 

「「…え?」」

 

大勢の神々の声が共鳴したような気がした。

 

それほどアストレアの今の発言は驚きが大きかった。

 

「私とシルはこの一ヶ月リューと旅に出ていたわけですが…来る日も来る日もベルとの思い出話ばかり…しかもとても蕩けた表情で大層幸せそうで…親の立場としては微笑ましい限りですが…いくらなんでも限度というものがあります。」

 

あっ…あれ?アストレアちょっとキレ気味?

 

 

「なのでリューが悶絶しそうなとっておきの二つ名をプレゼントしてあげてください。」

 

 

とても綺麗な笑顔でさらっと自分の眷属を男神達に売ったアストレア…

 

…リュー君?君はどれだけベル君との話をアストレア達にしたんだい…?

 

「おっしゃー!!アストレア様のお墨付きだぁ!!俺ら男神が総力を挙げてリューたんに素晴らしい二つ名をプレゼントするぞー!」

 

「…というかアストレア様を怒らせるほどデレたリューたん…すごすぎだろ…」

 

「アストレア様からこんな許可今後一万年絶対もらえないぞー!お前ら気合い出せやー!!」

 

ベル君の時以上に白熱した神会(デナトゥス)は最後にリュー君の二つ名を決めて終わることになる。

 

 

二つ名は、【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】…

 

 

ベル君の可愛い女性…的な意味…

 

ど直球すぎるというか…リュー君が悶絶どころか呼ばれるたびに憤死しそうな二つ名…

 

これには流石に良識的な神が異論を述べてたけど、当のリュー君の主神であるアストレアが何でもいいと事実上の認可をしてしまっているので強硬に反対もできず…決定…

 

リュー君…

 

御愁傷様です…




妖精の護人(フェアリー・ガーディアン)】と【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】…
かなり初期から新しい二つ名を決めるのをワクワクしてたんですけど、いざ考えると意外と難しい…
とりあえず二つ名に相手の特徴を組み込んで二人の繋がりを強調した…みたいな感じですかね?
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