『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス   作:護人ベリアス

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リューさん視点です。
ついにリューさんがオラリオへ!


英雄の凱旋

ラキアとの条約締結から一週間。

 

私達は未だオラリオに帰還できていなかった。

 

原因はギルドから送られてきた指示だった。

 

帰還を一週間遅らせるよう指示された上に、その時にはマリウスさんを連れてくるなという念押し付き。

 

これにはベルが大喜びして、マリウスさんに舌を出して挑発するほどだった…

 

それほどベルがマリウスさんを敵対視するとは流石に想定外でした…言うまでもなくベルとの関係の方が優先であるわけで以後はマリウスさんとは距離を取らざるを得ないと判断した。

 

それはともかく一週間という暇を持て余す羽目になった私とベルはラキアの高官の方々に見送られながら、ラキアを発ち、二人で近辺の観光名所を巡りながらブラブラと一週間を過ごした。

 

その途中でベルとサラッと結婚の日をいつにするかを話した結果、オラリオに帰還し、私達の関係者の都合が合い次第挙行すると二人の間で決まった。

 

そしてふと気づく。

 

 

私達はプロポーズという一大イベントを経ないまま結婚を決めてしまったということを。

 

 

確かに私とベルの間では既に一生一緒にいると誓い合っているため、プロポーズも今更何をと言ったところであるのも事実。

 

まず対外的には私とベルは婚約者であって…と思ったところでさらなる事実をふと思い出す。

 

 

…そういえば私のわがままで私達は正確には恋人ではなかった…?

 

 

私がベルに告白した日。

 

私は確かに『返事は旅の後で結構です!』と言った記憶がある…

 

それはつまり私とベルは形式上は恋人になる期間も経ずにいきなり結婚ということに…なる?

 

それは色々結婚までのあんなイベントやこんなイベントをし損なってしまった…ということ?

 

あんなイベントやこんなイベントが何だったかは自分でもよく分からないが、後になって気づいてとりあえずしばらくベッドで悶絶することになった私であった。

 

一方のベルはと言うとそんな事実気づきもせずに帰路にある村々の服屋に入っては私のウェディングドレスを探し回り、私を着せ替え人形のごとくしてテンションMAX。…どうやらそんな些細な事実は結婚を如何に飾るかにご執心なベルにはどうでもいいらしい。

 

そんな形で一週間オラリオ到着まで過ごし、今ようやくオラリオに到着したというわけだった。

 

だが到着したはいいもののオラリオの様子が少々変だった。

 

まず第一にオラリオにはいつも都市外から来る人々に検問を張っていたはずなのに今日はそれを待つ列がない。

 

代わりに…なぜか一人だけ誰かが門の前に立っている。

 

あれは…シャクティ…?

 

「帰ったか。リオン。クラネル。まずはおめでとう、そう言っておこうか?」

 

シャクティが微笑みながらそう言ってくれる。

 

「ありがとうございます。シャクティ。ただ今戻りました。」

 

私は礼とともに頭を小さく下げる。

 

「ラキアとの条約に関しては大体聞かせてもらった。まさに偉業だな。さすがだ。リオン。」

 

「そんなことありません。アストレア様やシル、ベル。多くの方々の協力がなければ、成し遂げることはできませんでした。私一人が賞賛を受けるべきではありません。」

 

「ふっ。その反応。リオンらしいな。だが私を含め、多くの者はそうは思っていない。リオン。お前はオラリオの英雄だ。」

 

「え?」

 

シャクティの言葉にポカンとしてシャクティを見ていると、シャクティは突然背中を翻し、大きく息を吸った。

 

 

「開門!!英雄の凱旋だ!!」

 

 

シャクティの声が周囲に響き渡ると同時にオラリオの重い城門が音を立ててゆっくりと開く。

 

「今日の主役はリオンだ。」

 

聞き取れるか取れないかというぐらいでその言葉はオラリオの城内から漏れてきた大歓声に掻き消された。

 

シャクティがスッと私とベルに道を空けて、誘導するかのように城門の方へと腕を伸ばした。

 

「行け。これは今回の偉業を成したリオンへのオラリオからの感謝の印だ。堂々と受け取って欲しい。真っ直ぐクラネルと共に並んでバベルまで進んでくれ。」

 

「あの…これは一体…」

 

そうシャクティに言われてもはいそうですかと城内に入っていくこともするのが戸惑われた。そもそもベルと並んで行けという条件付きはどういうことですか…?それで躊躇っているとシャクティが困惑交じりに言った。

 

「すまないな。このような派手な催しはリオンは好まないとは思っていたのだが、ギルドや娯楽好きの神々の意向でもあってな。仕事だと思って行ってくれないか?」

 

「シャクティさんがそうまで言うんです。行きましょう。リューさん。僕がずっと隣にいますから。ね?」

 

ベルが笑顔でそう言ってくれる。…ベルと一緒なら悪くはない…かもしれませんね。

 

そう思い直して私は二人にコクリと頷いて見せる。そしてベルに合図を出して、二人並んで歩き始めた。

 

ゆっくりと開かれていく城門から入ると城内の光景に私は目を疑った。

 

舞い散る色とりどりの紙吹雪。

 

拍手をする人々。

 

笑顔で私達に手を振る人々。

 

旗、それも『正義の剣と翼』のエンブレムが描かれた旗を振っている人々。

 

さらに数え切れない人々の大歓声が私達を迎えた。

 

「【アストレア・ファミリア】万歳!」

 

「リオン様!ご帰還おめでとうございます!」

 

「偉業を成し遂げられたリオン様に祝福を!」

 

「リューたぁーん!こっち向いてぇ!」

 

…たまに聞こえてくる珍妙な声はともかく聞こえてくる多くの声は私を賞賛する声。

 

…私はそんな偉業を成したつもりはない。

 

もっといい方法があったと思われるし、まずこれは陛下やマリウスさんの協力と理解があってこその成功だ。

 

私は途上で数多くの間違いを犯し、アストレア様から導かれなければ成功することなど不可能だった。

 

ベルがオラリオの介入をやめてくれなければ…

 

シルがベルにオラリオの使者という大任を確保してくれなければ…

 

私一人で成し遂げたわけではない根拠ならいくらでもある。

 

私一人がここまで賞賛を受けるのはおかしい。

 

「表情が歪んでますよ。リューさん。」

 

ベルは私の手を取って包み込むように握ってから言った。

 

「リューさんはきっとこう思ってるんですよね?私一人で成したわけではない。私は偉業を成してもいないし、英雄なんかじゃ全くないって。」

 

ベルがまさに私の思っていたことを告げたため私は素直に吐露した。

 

「…その通りです。私はこのような賞賛を受けるような立場ではありません。」

 

そう下を向いて言うとベルは私の手をギュッと握りしめ、いわゆる…こっ…恋人繋ぎという手の繋ぎ方をした。

 

 

「『もし英雄と呼ばれる資格があるとするならば…』」

 

 

ベルがそう口ずさんだ瞬間周りの騒音は急に耳に入らなくなり、ベルの言葉に一気に意識が集中したように感じた。

 

「『剣を執ったものではなく、盾をかざした者でもなく、癒しをもたらした者でもない。己を賭した者こそが英雄と呼ばれるのだ。』」

 

「ベル…」

 

ベルらしくない口調で紡がれた言葉に気を引かれた私はベルをじっと見つめた。

 

「…僕の祖父の言葉です。折れることも挫けることもあるかもしれません。ですがそれでも願いを貫いて、思いを叫ぶことができたリューさんは…」

 

 

「僕の誇る世界で一番カッコいい英雄です。」

 

 

ベルの一言一言がスッと私の心に染み渡る。

 

ベルがそう言ってくれるなら…私も自分自身に自信を持てる…そんな気がした。

 

「自信を持ってください。リューさん。僕はこんなカッコイイ女性をお嫁さんにできるのがとっても誇らしいんですから。」

 

「ありがとう…ベル…そうですね。この賞賛を私は誠意を持って受け取らなければ…」

 

ベルの言葉にそう決意した私はベルの手を握り返し、空いた手をスッとあげて二階から手を振ってくれていた女性に手を振り返してみた。

 

「きゃー!!リオン様が手を振ってくださいました!!」

 

「手をお振りになる姿もカッコいいです…さすがリオン様ですわ!」

 

その瞬間一際ドッと周囲が盛り上がる。私が手を振っただけで…

 

「すごいですね…リューさん…男女を問わずみんなに人気です…」

 

流石のベルも驚きを隠せないようだ。

 

「こう…すれば皆さんに応えられるかと思ったのですが…こんな形でいいのでしょうか?」

 

「いいと思いますよ。みんな喜んでくれてます。なんかリューさん。アイドルみたいですね。と言ってもリューさんは前から僕のアイドルですけど。」

 

「なっ…ベル…!?だからそういうことを公共の場で言われると…」

 

少々の不安もあったのですぐさまベルに尋ねてみるとベルはニッコリと笑って私が赤面してしまうようなことを投下してくる。

 

案の定私は赤面して手を振るどころではなくなって周囲に気づかれないように下を向いて表情を隠そうとする。だがそれはそれでまたドッと周囲は盛り上がる。

 

「リューたんをベルきゅんが真っ赤にしたぞー!」

 

「さすがベルきゅん!可愛いリューたんご馳走様です!」

 

「赤面生リューたんきたー!!俺初見なんですけどー!!」

 

…よく分からない叫びが数多く耳に入る。…あそこで叫んでいる方々は…?

 

「あの…あれは…」

 

「あー男神様達ですねー神様から危険だって何度か聴いてますー」

 

「きっ…危険?」

 

「あっ…大丈夫ですよ。後でリューさんに近づけないように『警告』しておくので。」

 

…ベル?

 

そんな清々しい笑顔で『警告』だなんて言わないでくださいよ!?

 

あなた男神様に何をするつもりですか…?

 

「あっ…それはともかくそろそろバベルの前に着きそうです。」

 

ベルが明らかに話を逸らすが、バベルに近づいたのは事実なので突っ込まないでおく。

 

バベルの前にある広場の中央には神ガネーシャを中心に多くの神々とギルド職員が集っていた。

 

私たちが着くと神ガネーシャはスッと手を挙げ、それと同時にサーっと辺りが静かになった。

 

「よくぞ帰還してくれた!オラリオの誇る偉業を成せし者達よ!さぁ近くに来たまえ!」

 

神ガネーシャの言われるまま私達は神ガネーシャの前まで来たところで私はそこで敬意を表するため跪いた。それに見様見真似にベルも慌てた様子で跪く。

 

すると神ガネーシャは私達に視線を向けず、まるで周囲に話しかけていることを感づかれないようにするかのように小声で話しかけてきた。

 

「すまないな二人とも。本来ならばアストレアやヘスティアに静かに迎えてもらうのが相応しいと思ったのだが、ウラノスの意向やら諸々があってできなかった。」

 

「いえ…その点はお気になさらず…」

 

神ガネーシャの意図を察した私は顔を上げずに答えた。

 

「うむ。確かにウラノスの打算やらあるが、ここは我々の感謝の気持ちを素直に受け取ってもらいたいと俺は思う。どうか俺たちの感謝の思いだけは疑わないでくれ。よくアレス相手に偉業をやり遂げてくれた。」

 

「はっ…」

 

神ガネーシャ。

 

かつてよりアストレア様と共闘してきたこのお方は一部の奇行を除けばこのような気遣いもできる神格者といっても決して過言ではないお方だ。シャクティが誇りに思いながら仕える理由も分かるというものだ。

 

「英雄達よ!顔を上げよ!」

 

ここで普段通りの大声に戻る神ガネーシャ。どうやら公の顔に戻ったようだ。

 

指示通り私とベルは顔を上げた。

 

「この度ここにいる二人の冒険者…特にリュー・リオンはラキアの侵攻を阻止し、永久にラキアの戦争行為をやめさせるという偉業を成し遂げた!よってオラリオの全民衆を代表して、【群衆の主】であるこの俺!ガネーシャの手で凱旋式を挙行させてもらった!リオンよ!この場でオラリオの皆への言葉はあるか!?」

 

神ガネーシャ…ここで私に言葉を求めますか…と少しだけ困惑するが私は先程賞賛を誠意を持って受け取ると決めた以上私は誠意を持って言葉を…私のこれからの正義を表明することに決めた。

 

「私リュー・リオンのためにこれほどの凱旋式を挙行していただくという栄誉に浴せたことを心から感謝します!この度は【アストレア・ファミリア】の仲間達を始め、多くの方々に支えられて始めて成し遂げられました!そのため皆様に感謝を示すと同時にこの場をもって私の決意を表明したい!」

 

私は神ガネーシャに負けじとできる限りの大声を張り上げた。

 

「私達【アストレア・ファミリア】は正義を掲げてこれまで闇派閥(イヴィルス)戦ってきました!ですがその闇派閥(イヴィルス)が壊滅した今私は新たな正義を掲げたいと思います!」

 

私は大きく息を吸い、かつてアリーゼが語り、今では私とベルの夢となった理想を再び口にした。

 

 

「それは武器のない平和の実現です!」

 

 

私の言葉と同時にざわめきが起こる。…恐らく多種多様の意見が飛び交っているのだろう。そして恐らく私の理想を理解してくれる人は多くはない。

 

私は少しだけ時を置いて言葉を続けた。

 

「これは私の正義です!全ての人に賛同を求めるのは難しいことも当然理解しています!ですが…この度のラキアとの交渉を通じて…そして今後の活動をもって私はその正義を皆様に示していく所存です!なのでどうか不肖の身ですが、この身を粉にしてオラリオの平和のために尽くしていく覚悟であります!」

 

私は言葉を終えた。

 

音がなくなった…そう感じた。

 

私の言葉に呆れたのか…

 

私の理想主義的発言に失望したのか…

 

それとも誰にも理解していただけなかったか…

 

そんな悲観的な思考にすぐ至ってしまった私。

 

しかし次の瞬間誰かが拍手をする音が響いた。

 

するとその拍手の音はどんどん大きくなり、周囲一帯に拍手の音が響き渡った。

 

私は思わず周囲を見渡した。

 

私の視界に入ったのは広場に集まっていた観衆達が皆揃って拍手をしている姿。

 

それだけではない。私の前にいる神々やギルド職員まで拍手に加わっている様子だった。

 

隣に跪くベルも拍手をしている一人だった。…ちょっと涙ぐんでいるのは感動が極まって…と言った感じなのか?

 

しばらく大喝采が続いた後再び神ガネーシャが手を挙げたことでその拍手は終わりを告げた。

 

「うむ!よくぞ覚悟を示してくれた!リオンよ!その覚悟にガネーシャ!超感激!である!今後もオラリオのために尽くしてくれ!」

 

「はっ!」

 

神ガネーシャに私は威勢良く返した。

 

実はアストレア様のように少しは振る舞えたら…と度々私は憧れていた。

 

…ええ。これで私も少しはアストレア様のように威厳のようなものを示せたのでは…と思う。

 

我ながら少しは間違えずやり過ぎず振舞うことができ…

 

「良い返事だ!では改めて皆の者!【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】と【妖精の護人(フェアリー・ガーディアン)】に盛大な拍手をお送りしようではないか!」

 

神ガネーシャの掛け声で再び盛大な拍手が巻き起こる。

 

だが今の掛け声に私は大きな疑問を抱いた。

 

「あの…【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】と【妖精の護人(フェアリー・ガーディアン)】とは誰のことです…?」

 

「そうですよ…二つ名かな?とは思いますけど、リューさんは【疾風】で僕は【白兎の脚(ラビット・フット)】ですよ?」

 

拍手で声をかき消されそうになりながらも神ガネーシャに聞こえるか聞こえない声で二人して尋ねてみる。

 

すると神ガネーシャは一瞬首を傾げたかと思うとニカッと笑った。

 

「ああ!これは【疾風】と【白兎の脚(ラビット・フット)】の新しい二つ名だ!なかなか俺はいい二つ名だと思うぞ!」

 

「「…」」

 

私もベルもしばらく声を出すのに時を要した。

 

「つまり…私が【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】で…」

 

「僕が【妖精の護人(フェアリー・ガーディアン)】…?」

 

二人して顔を見合わせて事実を確認してみて、再び神ガネーシャを見上げる。

 

神ガネーシャは頷くばかり。

 

 

「「えっ…ええええ!?!?!?」」

 

 

拍手をかき消さんばかりの私達の悲鳴が上がる。

 

私達二人で凱旋させた理由…

 

娯楽好きの男神達が積極的に顔を出していた理由…

 

何と無く感じていた生暖かい視線…

 

 

全てこの恥ずかしさ極まりない二つ名のせい!?!?

 

 

くぅ…なぜこんな二つ名が…

 

そしてそんな二つ名がついているとも知らずに私達は恋人繋ぎでお互いの手を握りしめて、人々の歓声の中を歩いてきたということ…?

 

私は気づいてしまった恥ずかしすぎる事実に神々の前だろうと御構い無しに赤面してしまった顔を隠して悶絶する羽目になった。

 

…私はいつまで経っても威厳のある姿を周囲に示せていない気がする…

 

はぁ…また私は公共の場でやり過ぎてしまった…




リューさん無事やり過ぎて憤死いたしました。(笑)
もはや公衆の面前でイチャつくのが定番化しているこの頃です。
これでまたオラリオ中の人々に二人の愛の力の強さが誇示されたことでしょう。

そして此度は二度目のアンケートを設けさせていただきました。
結婚前エピソードに関するアンケートです。
とりあえず選択肢にはトリッキーなものばかりです。現状展開上必要なキャラ三名とのエピソードは確定なのですが、せっかくだからトリッキーなキャラもあってもいいかなと思ってアンケートにしました。
ということでご協力お願いします。一定数票が入れば執筆予定です。
投稿時期は規定のキャラとの兼ね合い次第ですが、週一投稿を固持した場合は7〜8月頃を予定しています。
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