『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス   作:護人ベリアス

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リューさん視点です。
この回でタイトルにある『正義』に関する話は完結ですかね。あとは今後の活動を描くくらいでその『正義』のあり方はこれまでで示せましたしね。
そして最初で最後に『偽善』に触れます。…最初にタイトルに入れたものの実は扱いきれずに困ってました。(笑)
ただその『偽善』に触れるため、そしてこれからの一大イベントをより華麗にするための布石として老神様には最初で最後の登場、ということで。
ここ数話で伏線は入れておいたつもりでしたけどねー
次からは本格的に結婚前イベントに突入します!


老神のはからい

「ギルドにこんな場所があるなんて…驚きです。」

 

「それは私もです…確かにギルドの施設が巨大なのは知っていましたが、まさか地下まであるとは…」

 

ベルと私は二人して初めて立ち入る薄暗いギルドの地下、そしてギルドの深部をついキョロキョロと興味津々になりながら進んでいた。

 

そんな私達の前を太々しく不機嫌に歩く豚…もとい肥えた男がいた。

 

「全く…当たり前だ。ここは神々でさえも滅多に立ち入れない場所なのだからな。」

 

「「え?」」

 

ベルと私は思わず口を揃える。…私達はそのような凄い場所に立ち入っているというのか?

 

「そんな事も分からずに来たのか…全く…なぜ神ウラノスはこのような輩をお呼びになったのだか…」

 

目の前でさっきからブツブツと文句ばかり言っている肥えた男はギルド長ロイマン。

 

…エルフにあるまじき行為の数々でギルド長まで登り詰めたこの男に同胞からつけられたあだ名は『ギルドの豚』。

 

…私としてもカジノに出入りしていたり、闇派閥(イヴィルス)に関係するギルド職員が少なからずいたという観点からこの男にも少々の疑念を抱かずにいられない。ということで好印象は決して抱けない。

 

その上この態度…私はいいとしてもベルに対しての小馬鹿にしたような態度は…相手がギルド長と言えど許し難い…

 

「ここから先は儂でも滅多に立ち入れん場所だ。さぁ。とっとと行け。」

 

「あの…この先に何が?」

 

ギルド側から強制的に呼び出しておきながら、このような等閑な態度を取られて、私は少々不快になるもそれを何とか抑えて目の前の男に抱いて当然の疑問を投げかけた。

 

「この先には神ウラノスがいらっしゃるのだ。そしてお前達をお呼びになったのも神ウラノスだ。分かったか?じゃあとっとと行け。」

 

そう言い残してそそくさと立ち去っていってしまったため、私とベルは二人その場に取り残される。目の前には重厚な観音開きの扉。…いかにも神のいる場所の入り口といったところ。

 

「神ウラノス…」

 

するとベルがポツリと呟く。…ベルは神ウラノスのことを知らないのだろうと私は察した。

 

「神ウラノスはギルドの事実上の主神でオラリオ建設にも携わったオラリオ草創期からいらっしゃる神ですよ。」

 

「それは知ってるんですけど…」

 

ぐふっ…

 

ベル相手に得意げに教えたもののまさかの普通にベルは知っていたという赤っ恥も良いところの大失態…

 

少しだけベルに物知り顔をしようとしたのが仇になりましたか…

 

とガックリ凹む私を他所にベルは何やら考え事をしているようだ。

 

「…とにかく神様をお待たせするのもいけないので行きましょう。リューさん。」

 

「それはその通りですね。では行きましょう。」

 

そうして私達は目の前の扉をそれぞれ押して開けるとそこもまた篝火があるくらいの暗い部屋。

 

その中で特に照らされている場所、神がいる場所としていかにもな台座に座る老男神が視界に入った。

 

「来たか…【妖精の護人(フェアリー・ガーディアン)】と【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】よ。」

 

…初対面の相手にその二つ名で呼ばれるのは羞恥心でどうにかなってしまいそうになるのが最近の私の悩み…

 

私の二つ名を決める時にその場にいたはずのアストレア様はなぜ止めて下さらなかったのでしょうか…アストレア様らしからぬどころか『いい二つ名でしょう?リュー?』だなんて満面の笑みで言われてしまったものだから困惑も極まりといったところ。

 

だが一方のベルはこの二つ名に特に不満はないようで…

 

それはともかく私とベルは神ウラノスの座る台座の下まで歩み出た。

 

「知っておると思うが、私がウラノスだ。今日はよく来てくれた。碌なもてなしもできなくてすまないな。」

 

「いえ…」

 

ちょっと物腰が柔らかいのが逆に私としては警戒を誘う。

 

実は呼び出されたのは極秘のそれも面倒な強制任務(ミッション)の依頼だったりするのでは…

 

なんて思惑が入り組んだりする場面で一切役に立たない私の頭脳を総力で働かせて考えてみる。

 

これでも今では私は【アストレア・ファミリア】の団長…

 

アリーゼのように聡明で完璧ではないにしても少しは頭脳を生かして行動するようにしなければ…と決意した私はとりあえず神ウラノスの思惑を深読みしてみる。

 

「そう硬くなるな。【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】よ。今回呼び出したのは強制任務(ミッション)の類ではない。」

 

…さすがは神。私の懸念などすぐに見抜いてしまう。…ただ真顔で私を【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】と呼ぶのだけはどうかやめてください…

 

「ならば今日はなぜ私とベルを…」

 

私はすぐさま聞き返す。なら今度は呼び出された理由が見えなくなったからだ。

 

「まずは礼を言わねばな。【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】。よくぞアレスを止めてくれた。これはオラリオがより平和に近づけるための布石の一つとなろう。」

 

「神ウラノスにそう仰って頂けるとは…光栄です。」

 

このタイミング…薄々予測していたが、やはりラキアとの条約成立を受けて呼び出したと考えて間違いなさそうだ。

 

「そして【妖精の護人(フェアリー・ガーディアン)】。そなたはその際に【ロキ・ファミリア】にラキアへの侵攻の依頼を出していたそうだな。【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】の努力が潰えると気づきもせずに。」

 

「それは…はい。その通りです…」

 

私を褒め称えたかと思っていると神ウラノスの矛先がベルに向く。それもベルの過ちを責めるような言葉。

 

私は神ウラノスの言葉に消沈するベルを擁護せずにはいられなかった。

 

「神ウラノス。ベルは私の身を案じて【ロキ・ファミリア】に依頼を出したのです。なのでこれにはたった一人でラキアに乗り込み周囲に気苦労をかけた私に責任があります。なのでどうかベルを責めないでいただきたいです。」

 

「そうやもしれぬ。だが【妖精の護人(フェアリー・ガーディアン)】の行動は偽善と言っても差し支えないものだ。」

 

私が擁護しても神ウラノスはベルの非難をやめようとしない。私はついカッとなって言葉を発していた。

 

「神ウラノス…それ以上のお言葉はいくら神と言えど…」

 

「だが決して間違えではなかったと私は思う。」

 

…突如考えを翻すような言葉に意図を計りかねるが、ひとまず私は言葉を止めて神ウラノスの話を聞くことにした。

 

「武器なき平和を目指す【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】を武器をもって救おうとした【妖精の護人(フェアリー・ガーディアン)】の行動は偽善以外の何物でもなかろう。【妖精の護人(フェアリー・ガーディアン)】の【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】を救おうと努力したという自己満足以上の価値はない。だが神アレスを抑えラキア王を動かせるとは神々でも予測ができなかったことだ。であるため最悪の事態に備えて依頼を行なったという観点では【妖精の護人(フェアリー・ガーディアン)】は正しいという他ない。その事態に陥れば【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】に恨まれようともその理想よりも【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】を守ることをそなたを含めた近しい者は優先しよう。それが当然だ。」

 

…私は神々でも予測できないことを成し遂げて…いた?と小さな衝撃を受ける私をよそに神ウラノスは話を続けた。

 

「ここで尋ねよう。【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】よ。そなたの目指す武器なき平和は如何様に成す?」

 

突然私に話を振る神ウラノス。

 

一瞬ビクッとして言葉が出てこなくなるが、なんとか言うほど時をおかずに私は口は動かすことができていた。

 

「武器を持つ必要がなくなるということは争いをなくすということ。このオラリオにおいて私達が争いを起こす可能性があるのは人とモンスター。人との争いをなくすことは此度のラキアとの条約成立で示せたと思います。…ですがモンスターとの共存は…」

 

考えてみればその答えは分からない。

 

シルが確かにモンスターとの共存の可能性を見せてくれた。

 

だが誰しもシルのように魔法が使えるわけでもない。

 

「その答え。【妖精の護人(フェアリー・ガーディアン)】なら知っておろう?」

 

神ウラノスの言葉を聞いて私はベルを見つめた。…ベルがその答えを知っているとは…どういうこと?

 

「…ダンジョンの最下層にその答えはある…ですよね?ウラノス様?」

 

ベルが神ウラノスを見上げる。その神ウラノスを見上げるベルの瞳は決意に満ちているように感じたは気のせいだろうか。

 

「それを成すのを【ロキ・ファミリア】の協力なしに独力でそなたは可能か?」

 

「…できません。」

 

「【妖精の護人(フェアリー・ガーディアン)】よ。確かに【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】の夢は尊ぶべき壮大な夢である。だがそこに至るには未だ道のりは遠い。もし【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】を支えたいと思うなら、持てるもの全てを生かさねばならぬ。モンスターとの共存という【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】の夢の一部を果たすため、まだ武器を置くことはできぬし、【ロキ・ファミリア】からの協力も必要となろう。そこをそなたは忘れてはならぬ。」

 

「はい…忘れないようにします。」

 

「そして【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】よ。ダンジョンの最下層に達するためには武器無くしては不可能である。その点は当然理解できよう。そしてそなたが再認識すべきは、今はまだ下界は力を尊ぶ傾向が抜けきっておらぬことである。用いるべき時には武器を用いることを躊躇うな。道半ばで潰えることこそ一番避けるべき悪夢であると心得よ。」

 

「はっ…仰る通りです。…ですがそれでも私は最後の最後まで私のやり方を曲げることはなんとしてでも避けるために尽力いたします。」

 

私は神ウラノスの忠告を聞き入れられないと暗に告げた。

 

…確かに神ウラノスの言葉を間違えだと私には言い難かった。今回は相手が良かったと言っても差し支えない、謂わば幸運によって成し遂げられた業績。神アレスのみへの交渉なら武力をチラつかせても脅迫が一番成功したに違いない。

 

しかし私はそれが道理であろうと納得がいかなかった。

 

モンスターとの共存の答えがダンジョンの最下層にあることを理由にベルが武器を用いることは認められる。

 

だが仮に未だ多くの人が力を尊び、力を伴わぬ言葉を尊重しないとしても。

 

それでも私はもう武器を手に取らぬと誓った以上『用いるべき時』があったとしても武器を取らず解決すべきだと心に決めていた。

 

 

なぜならこれが私の正義なのだから。

 

 

例え神に否定されようともこれだけは曲げられぬ正義だった。

 

神ウラノスをじっと決意を込めた目で見返すと神ウラノスは険しい表情を作った。

 

…やはり私を愚者だと思ったのかもしれない。だが私はそう推測してもそれでも自身の表情を変えることなくそのまま神ウラノスを見返し続けた。

 

「【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】よ。その頑強な意志…賞賛にも値するかもしれぬが、嘲笑されても仕方ないものでもあるぞ?」

 

神ウラノスは険しい表情のままそう言う。

 

私はそれに半分開き直りながら答える。

 

「申し訳ありません。私は融通の利かず、道を少しでも踏み外すことも看過し難い頭の固いエルフですので。私の正義は決して曲げません。」

 

「えっ…ちょ!リュ…リューさん…!?」

 

ベルが小声で少し慌てている。…流石に言い過ぎましたか?

 

すると神ウラノスは小さく笑った。

 

「アストレアが自身の正義をそなたに預け、ガネーシャやフレイヤを動かした理由…分かった気がするぞ。そなたに神の導きなど必要あるまい。己が正義を貫くがよい。そしてその正義を以ってこのオラリオに平和をもたらせ。」

 

「非力ながら尽くさせていただきます。」

 

私はそう言って一礼しておく。…その時隣でベルが小さく息を吐いていた。…そんなに緊張させるほどまずいことを私は言ったのでしょうか?

 

「うむ。期待している。」

 

私の一礼に神ウラノスはゆっくりと頷いた。

 

これで神ウラノスの話は終わりか。

 

私はそう思った。

 

だがそうはならなかった。

 

「それで今回お前達を呼んだのは私から【妖精の護人(フェアリー・ガーディアン)】と【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】への祝福と激励としてそなた達の結婚をギルドを介してささやかな支援をしようと思っている。平和を希求するという意志をオラリオの内外に示す場として利用させてもらうという政治的側面もあるが受け取ってもらえるだろうか?」

 

…え?

 

…神ウラノスは何に支援してくださると言った…?

 

頭の中の整理をし切れなかった私は聞き返した。

 

「…申し訳ありません。神ウラノス。何に支援してくださると仰いましたか?もう一度伺えないでしょうか?」

 

「うむ。だから【妖精の護人(フェアリー・ガーディアン)】と【白兎の麗人(ラビット・ハニー)】の結婚の支援を…」

 

「えええ!?!?」

 

私は神ウラノスの言葉が終わらぬうちに絶叫していた。

 

ギルドからの支援ということは事実上オラリオの公式行事になるも同然。

 

それも私とベルの結婚式が!?

 

となるとオラリオ中から集まった人々に祝福されながらベルと私は愛の誓いのキッ…キスを…

 

結婚式…想像するだけでとても幸せになれそうだ。ベルと二人で幸せに式を挙げる光景…

 

 

あぁ…早く結婚式をあげたいものです…

 

 

…その後はひたすらベルとの結婚式に関してに思いを馳せていて、神ウラノスがその後何を言っていたのか等は何も覚えていない。諸々の話はベルがつけてくれた…らしい。

 

その後のことで唯一覚えているのはベルが顔を真っ赤にしながら私の手を引いて『星屑の庭』まで送ってくれたこと。…手を繋ぐぐらいのこと何度もこれまでにしているでしょうに…なぜ顔を真っ赤にまでする必要があったのでしょうか…




異端児の一件でリューさん協力してましたけど、異端児についてって知ってたんでしたっけ?具体的描写はざっくり確認してもなかったんですが…
さてはリューさん事情なんて構わずベル君への愛で協力したんですね。分かります。

そしてアンケートご協力ありがとうございます。
来週から結婚前エピソードに入る予定なのでそれまででアンケートを締め切りとします。
現状はアリーゼの亡霊が一番ですね。これは一話分確定です。
そしてそれを追うのがヘスティア様と異端児。ヘスティア様が食い込んでくるのは少々意外でした。異端児は一度は深入りしようと作者もした分理解できます。
ネタ枠ガネーシャ様は…結婚祝いでの台詞あり登場に留めるかもですね。
そしてその他枠ですが、ご意見を寄せていただいた場合はお礼も兼ねて台詞あり登場は確実にさせることにしています。どれだけ出てくるかは作者次第となることはご了承ください。
と現状報告をすると同時にアンケートご協力お願いします!
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