『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス 作:護人ベリアス
今回からリューさんが久しぶりにダンジョンへ!
ということで異端児に会いに行きます。
ただ今回はフレイヤ様暴走事件の後処理も書くので異端児は未登場になります。
「ベル…あなたは見違えるほどお強くなりましたね…正直言葉にできないくらい驚いています…」
よし!リューさんに褒められた!よくやった僕!と心の中でガッツポーズする。
ちなみに僕とリューさんは今ダンジョンにいる。
ということで滅多にないリューさんとのダンジョン探索となったため、僕は張り切りに張り切っていた。何せ僕のカッコいいところを見せられるのはダンジョンで戦っているところぐらいだから。
それで僕は今見事にリューさんが褒めてくれるくらい凄いことをしたわけ。何をしたかって?
なんとあのゴライアスを僕一人で撃破したのだ。
これはもうアイズさんを始めとして【ロキ・ファミリア】との共闘の中で学べたことを活かせた結果だと思うし、何よりリューさんが後ろで見ているというのが僕の力を最大限に発揮するにあたって多大な影響を与えたのは言うまでもない。
ちなみにリューさん曰く黒いゴライアスを倒したのが僕とリューさんの最初の共同作業では?…とのこと。あの戦いからあんまり時が経っていないのに僕の周りは本当に激変したなーだなんて感慨に耽りながらもリューさんの言葉にはツッコミを入れておきたい。
…リューさん?結婚が近いから夫婦での共同作業とか気になっちゃって、ちょっと頰を赤くしながら仰るのは大変可愛くていいと思います。…ただモンスターの撃破が最初の共同作業という考え方はちょっといただけない…もっとケーキに入刀とか穏便なのの方がいいと思います…
と言っても僕とリューさんがイレギュラーに立ち向かって見事に克服したとか凄く心が躍る出来事だから別にいいんだけどね!
それはともかく相変わらずというかダンジョンにしばらく潜っていないと言ってもリューさんの洞察力には全く衰えを感じない。素早くゴライアスを撃破できたのもリューさんの後方からの指示のお陰でもあるし、回復みたいな支援も凄く的確でとにかく助かった。
…ただ気になる点が一つある。
「…リューさん?さっきからずっと気になってたんですけど…どうしてそんな大きなリュックを背負ってるんですか?」
…そう。普段のダンジョンにおけるリューさんは緑色のロングコートに木刀とニ双の小太刀という身軽な装備しか身につけていない。が、何故か今日のリューさんは木刀と小太刀の代わりに小道具を入れるポーチ、さらに中々大きいリュックを背負っているのである。
尋ねてみるとリューさんは一瞬首をかしげるが、僕の質問に合点がいったみたいな表情をする。
「このリュックですか?これはアーデさんのお勧めのリュックでして多くのドロップアイテムを収納できるそうです。と言ってもアーデさんのようなスキルもない私はそう多くの物を収納しても持ちきれないという欠点があるのですが。」
そう残念そうに話すリューさん。…リューさん?僕が気になっているのはそこじゃないんですよ…
「いや…リュック自体の話じゃなくてどうしてリューさんがサポーターみたいなことをしてるのかなって…」
…うーん。リューさんには旅行感覚で楽ーにウィーネ達のところに連れて行ってみんなとの交流を楽しんでもらおうと思ってたんだけど、リューさんの性格もあってそうはいっていないのが実は気になっていたのだ。
支援用の装備は全て持つと言って僕の話を聞いてくれないし…
モンスターからの魔石取りも率先してやってくれちゃうし…これは一緒にやろうと言ってくれたから共同作業みたいでちょっと楽しかったけど、血が飛び散る中々殺伐とした作業だし、何よりリューさんが嬉々としてやっているのが微妙に怖い。…笑顔で魔石を引きずり出すのはどうかやめてくださいね…?リューさん…?
するとリューさんはようやく僕の言いたいことに気づいてくれたらしい。
「…それは…私だけ何もせずにのうのうとしているのもいけないと思ったので。戦えない以上サポーターとして最善を尽くすのが道理だと思い…」
リューさんはちょっとだけ気まずそうにそう言う。
うん。リューさんの真面目な性格から考えるとそんなことだと思いました。リューさん、結構何かしてないと落ち着けないところあるもんね。だから色々なところから問題を拾ってきたり、困ってる人を見つけたりして、すぐにそこに飛び込んでっちゃうんだよね。僕そろそろリューさんの性格分かってきた。そんなリューさんも僕は大好きなわけだけど。
…ただね?リューさん?今回だけはちょっと見過ごすことができないんだよ?
僕は小さく溜息をつくと、リューさんは僕が一応は納得してくれたと思ったらしくホッとしたような表情になる。が、僕は全くもって納得していない。
またお説教タイムですかね…
「…リューさん?」
「はっ…はい!」
僕の声にリューさんちょっとビクッとしたと同時に僕はリューさんの頰に手を伸ばして、お説教ついでにグニグニと引っ張った。
「だーかーらー!リューさんはずっとワークホリックすぎるからこのウィーネ達に会いに行くときくらい全力で息抜きをしてって、アストレア様にシルさんにアリゼルさんにそれに僕に言われてましたよねー?どーしてそんなに働きたいんですかー?もっと肩から力を抜く時があってもいいって言われましたよねー?」
「はひ…もうしわけありましぇん…」
頰を引っ張られながらも謝るリューさん。
まーそんなに今回のことのみを考えると怒ることもないし、リューさんの柔らかい頰を触りたいとかそんな下心でやってるからいいんだけども。ただウィーネ達に会いに行くのをすんなり実行できたのはアストレア様を始めとしたみんなから息抜きをしろとリューさんに厳命が下ったからでそれには理由があるのだ。
遡るとフレイヤ様が『星屑の庭』に乗り込んできた日。
あの日オッタルさんとリューさんの握手を未然に阻止したことでリューさんにちょっと説教を受けた後、僕達はアストレア様とシルさんに連れ去られたフレイヤ様の元へ向かった。
そこで分かったのはフレイヤ様がオッタルさんにあのようなことをさせたのはただのおふざけだったわけではなかったということ。
【アストレア・ファミリア】が日に日にオラリオでの影響力を高め、リューさんがオラリオ中のファミリアに協力要請で飛び回る中で【フレイヤ・ファミリア】にはお声がかからないのがお気に召さなかったらしい。…それとオラリオでの影響力が低下するのを阻止したかったとも自白させられたとのこと。
それで劇的な演出でリューさんがその固い意志を表明する舞台を用意して恩を売るつもりだった…ということらしい。
ただこのフレイヤ様の自白が大きな波紋をもたらした。
確かに【アストレア・ファミリア】の誰もが最近多くのファミリアから協力希望の提案が多く舞い込んできているのを知っていた。だがフレイヤ様の言葉から分かったのはリューさんが協力要請で飛び回っていたということ。つまりその要請を受けたからこそ提案が舞い込んできていたということになるのだ。
そのリューさんは僕がいない間は外出しているかベッドで僕を想ってコロコロしている(…一度でいいからその様子を見たかった)様子しか目撃されていなかったらしい。それでリューさんが全く働かない理由が理解し難いとは思われて、探りを入れるかいれないかでみんなで迷っていたらしい。
だがここでまずリューさんの外出がファミリア間の交渉のためであり、遊びに行ったり息抜きしに行ったりしたわけでは一切なかったと判明する。
結局書類が届いてみんな確認して承認したり、継続して交渉することになっているからいいとしてもほぼ毎日外出していたらしいリューさんのことを考えると毎日オラリオ中を飛び回って交渉を重ねていたということになる。これには明らかな働きすぎと誰もが解釈した。…これだけでも正直お説教案件。
にも関わらずリューさんはアリゼルさんがまとめたというあらゆる書類を処理し終えていた。
書類の処理にファミリア間の交渉…それをどうして【アストレア・ファミリア】の誰もが知らずにこなせるだろうか?
と目をギラギラさせたシルさんがフレイヤ様を完全放置して、リューさんに自白させて結果分かったのはリューさんが書類の処理をみんなが寝静まってからしていたということ。
…要はリューさんは碌に寝ることさえしていなかったということ。これでリューさんが毎朝起こしに来ていた理由も早起きだったからではなく、ずっと起きていたからだと発覚する。
それをリューさんはみんなに気づかれないようにしながら慎重にことを進めていたらしい。それも噂が流れないようにしたり、手紙に自身が訪れたことを触れないようにしてもらうなど情報封鎖を徹底して。それでもフレイヤ様のような耳の早い神にはもうリューさんのスーパー・ワーク・エンゲージメントは呆れられながらも感服されるようになっていたみたいだけど。
…幸か不幸かフレイヤ様のお陰でリューさんの働き詰めを知ることになり、これには流石に僕も含めてお説教しなきゃと思いました。
ということでアストレア様とシルさんとアリゼルさんと僕でリューさんに超説教することになった。結果リューさんは仕事禁止、しばらく働かず僕とイチャイチャしているようにと厳命が下った。さらにウィーネ達のもとを訪れるのもリューさんにむしろ団長の役割を果たされては疲労でリューさんがいつかどうにかなってしまうとの恐れにより長期の旅行を許可されたというわけである。
…働くなっていう厳命を出させてしまうリューさんには驚きを隠せない。ただそれだけリューさんの平和とアリーゼさんのくれた夢への想いは強固なわけで…強く責めるのはどうなんだろうと思うところではある。だけどリューさんのみに何かあっては元も子もないので無理だけは絶対止めないといけないととは思うからこそお説教をしたわけで。
「とーにかくです!リューさんはしばらくリラックス!オーケー!?」
「…はい。肝に命じます。」
リューさんはシュンとしながらも頷いてくれる。…まぁ納得してくれたとは言うほど思わないけど。何せリューさんがいつも困ってる人を見つけては自ら助けに行って問題に飛び込んでいく少々困ったちゃんなのを僕は十二分に理解しているし。
「…それはともかく、です。ゴライアスを撃破したところですし、そろそろ18階層に向かいませんか?ここに留まる意味ももうないのでは?」
「そうですねーどうします?魔石とかはリヴィラで交換しますか?」
そう聞くとなぜかリューさんは顔をしかめた。
「それは…やめておきたいです。リヴィラの街はできれば立ち寄りたくありません。」
何故だろうと思ったが、考えてみるとリューさんには少なくとも最近だとリヴィラにいい思い出がないことを思い出した。
「あーそういえば【深層】で大変な目に遭う元凶ってリヴィラにありましたもんね…」
【深層】でのあの四日間は
そう思っているとリューさんはこれまたなぜか小さくため息をつく。それもなぜか頰を赤らめながら。
「そっ…そうではありません。その…ボッ…ボールスに顔を合わせたくないな…と。」
「ボールスさんにですか?」
突然出てきた名前に僕は首をかしげる。
ボールスさんにもあの時は賞金首ということで追いかけ回されていたけど…それはリューさんが頬を赤らめる理由にならないし…と考え込んでいるとその時僕は大事なことを思い出す。
ボールスさんの宿で僕とリューさんは付き合い始めたということを。
…まぁリューさんが自爆してしまったお陰で正確に付き合い始めるのがリューさんの旅が終わった後になったりしたし、まずボールスさんがからかってきたせいもあり、ボールスさんを串刺しにしそうになったりと、とにかく色々問題を起こした曰く付きの場所であったと思い出す。
…その時のことを思い出したら何だか頰が熱くなってきたなぁ。
「ふふふ…」
すると突然笑い出すリューさん。
「…何です?リューさん?」
何がおかしいのかと思い、ちょっとだけ頬を膨らませながら尋ねるとリューさんはクスクスと笑いながら答えた。
「いえ…ベルの頰も赤くなっていたので私と同じようにベルもあの時のことを思い出してくれたのかもと思ったら嬉しくなってしまってつい。」
「それはもうリューさんとお付き合いできた日ですから。ボールスさんと言われて一瞬ピンときませんでしたが、リューさんが一生懸命告白してくれたことを思い出したら頰が赤くなっても当然です。」
「なっ…!?ちょっ…ベル…からかわないでください!?…ってベル!?」
僕の言葉にリューさんは告白の時を思い出してしまったのか、さらに顔を真っ赤にさせて少し怒る。…けど可愛すぎる。
ということでそのままハグしてしまいました。
「…こうしてあの時もベルに抱き締めていただきましたね。」
リューさんは最初はちょっとだけ抜け出そうとジタバタしたけど、すぐに僕の腕の中に収まって僕の腰に腕を回して抱き締め返してくれる。こうやってすぐに素直に応えてくれるリューさんも僕は大好き。
「そうでしたね。そしてあの時僕はリューさんを絶対に幸せにするって約束しましたよね。僕は今リューさんを幸せにできていますか?」
「ええ…とても私は幸せです。ベルも幸せですか?私といて…」
「もちろんです。僕は愛するリューさんと一緒に入られて世界一幸せです。」
「そうですか…よかった。」
リューさんはそう言ってちょっとだけ抱きしめる力を強くする。…ちょっとじゃない気もするけど気にしない。
そうして二人で僕達は時を忘れて抱き締め合っていると何やら喧騒が近づいてくる。
…誰か来るのかと思った僕はリューさんと離れようと思ったが、リューさんは僕を抱き締めたまま動こうとしてくれない。ねぇ?リューさん?幸せに浸ってたくさんハグしてくれるのはすっごく嬉しいんです。でもそろそろ…
「おい!野郎ども!相手はゴライアスだ!気引き締めてかかれよ!報酬は山分けだぁ!!」
あっ…これボールスさんの声だ…ゴライアスを倒しにきたんだ…まずい…
「ちょ…リューさん?そろそろ…」
「もう少し…もう少しだけベルの腕の中にいさせて下さい…もう少しだけ幸せを噛み締めたいのです…」
ごはっ!?
可愛すぎるおねだりリューさんに即時ノックアウトにされかける僕。
よって冷静になるまで時間がかかったお陰で次の行動が遅れてしまう。
そのため次の行動に移ろうとした時にはボールスさん達の姿は僕の目に見えていた。
「おい?ゴライアスはどこだ?…って出たぁ!?階層主!?」
…え?何言ってんですか!?
「あれが…男神どもの言ってたリア充ってやつかぁ!?」
「なんて強烈な害を与えてくるんだ!?モンスター並みじゃねぇか!?」
「何言ってるんですか!?ボールスさん!?それに皆さん!?」
僕達を見てギョッとしたボールスさん達に僕はすぐさまツッコミを入れる。そのツッコミのおかげか知らないが、ボールスさんはすぐにギョッとしたのをやめてくれる。
「で?ゴライアスはどこ行ったんだぁ?」
「あっ…それなら僕達で倒しましたよ。」
「…【
「だから何言ってるんですか!?ボールスさん!?」
とボールスさんと掛け合いしているとふとリューさんはなぜ何も言わないんだろうと思ってリューさんに声をかけてみることにした。あとそろそろハグするのやめないとゴライアスの代わりに僕達がボールスさん達に攻撃されそうという懸念も少し。
「リューさん?そろそろ離れても大丈夫ですか?」
「あの…ベル…もう少しだけ…」
リューさんに声をかけたところまたもリューさんは可愛すぎるおねだりをしてくる。…あれ?リューさんあんなにボールスさんに見られるの嫌がってたのにどうしてだろう?まさかリューさんまたも自分の世界に入っていて、ボールスさん達の存在に気づいてないとか?
「でも…ボールスさんが…」
「…え?ボールス…?」
が、ボールスという単語を聞いた瞬間に声色が完全に変わった。
その次の瞬間僕は背中に強烈な痛みが走り地面に叩きつけられていると気づく。そして真上には目をウルウルさせたリューさんが見えた。…あ。僕リューさんに突き飛ばされちゃったのかな?
「おい…【
ボールスさんが少々心配気に言うのにリューさんは勢いよくグルリと身体を回転させる。
「…見ていたのか?」
リューさんが僕にしか聞こえなさそうな小さい声で尋ねる。…まずい…そういう可愛い反応をすると他の男が悩殺…
「あぁ?なんか言ったか?【
「【
ボールスさんの煽りような声にリューさんが叫ぶ。…あぁ。そういえばリューさん、あんまり【
「え…じゃあリオン?」
「リオンではない!?私はリュー・クラネルだ!?」
「「…え?」」
ボールスさんの言葉に反論するようにリューさんから飛び出た言葉に僕も含めて声が重なってしまう。
…リューさん?そのお言葉は大変嬉しいんですが、思いっきり自爆してますよ…?
自爆したことに気づいたらしいリューさんは耳の先まで真っ赤に染めて羞恥に飲まれ、俯きながら身を震わせる。…これリューさんがからかわれないように手を引いて退避したほうがいいのかな?と思った矢先リューさんはガッと顔を上げる。
「なぁ…クッ…クラネル?って呼べばいいのか?お前達って結婚…ぇ…?」
戸惑いながら事実確認をしようとしたボールスさんの言葉がその瞬間止まった。
「見るな。」
「「へ…?」」
首をかしげるボールスさん達。
「忘れろ。」
「「ひぃ…」」
恐怖で表情を歪めるボールスさん達。
「去れ。」
「「ぎゃぁぁぁ!!やべぇ!!殺されるぅ!?!?」」
悲鳴を上げながら退散するボールスさん達。
…
…悲報。
僕のお嫁さんは階層主よりも怖いそうです。
…うん。まぁでもリューさんを先にからかったのボールスさん達だし仕方ないよね。うん。リューさんは悪くない。悪いのはボールスさん達。納得。
と尻餅をついたまま納得しているとリューさんは立ち尽くしたままポツリと呟いた。
「…また私はやり過ぎてしまった…」
…リューさん?全てそれで片付けるのはよくないと思います。ですがすぐに自分の世界に入り込む癖だけは直した方がいいかも…あぁでもそういう可愛いリューさんを見るのもかなり好きだし…と一人悩む僕だった。
久しぶりのボールスさん登場!
キュービットになれなかった男はあの後メチャクチャリューさんに宿のサービスをしてくれたそうです。ついでに余計な手配も。
異端児編後についにリュー×ベルのベッドシーン!
※ベッドの上でのシーンとしか言っていません。