『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス 作:護人ベリアス
ようやくの異端児登場です。
「やぁ!ベルっち!リューっち!よく来たね!」
ブンブンと手を振る
「うん!リド!久しぶり!それにウィーネもみんなも久しぶり!」
「ベル!ベル!」
ニコニコと笑う
「あのーベルっち?リューっちの視線が殺し屋みたいなんだけど?」
「あー来るまでに色々あってねー」
…そこの
と思っているとベルはこっそり私の耳元に近づいてきた。
「リューさん。見た目はモンスターのみんなとお話しするのは慣れないかもしてませんが、みんないい人で僕の友達なので大丈夫ですよ。」
…そんな理由ではないのに。ただベルと
「そうではありません。私は元から大丈夫です。」
私はそれだけ言って、一団の長と見たベルにリドと呼ばれる
「初めまして…ではないですね。以前【深層】ではお助けいただき感謝します。あなた方が助けに来て下さらなければ、私もベルも命を失っていました。心からの感謝を。ありがとうございます。」
私はそう言って頭を下げる。
「おう!ベルっちもリューっちも地上ではオレっち達を助けてくれたからお互い様だぜ!それにオレっち達と二人は友達だからな!」
友達…ですか。
ベルの言う通りモンスターにも心がある者もいる。ということは心を通わせることができる者がいる。
今までの価値観が覆されるような感覚を覚えなくもないが、私は彼らの事をベルから事前に聞き、またそのベルは彼らと共に生きることを夢としている。
ならば私の答えも一つでしょう。
私はリドさんの手を取って答えを告げた。
「ええ。私とリドさん、それに
私はそう笑顔で告げるとリドさんもニッコリ笑って返してくれた。
「おう!よろしくな!」
リドさんと握手を交わしているとなぜかリドさんの顔が引きつる。
「あのーベルっち?なんでそんな嫌そーな顔してるんだ?」
その言葉に私もベルの方を振り返ると言葉通りベルの表情は不機嫌そう…どうしてだろうか?
「…なんで最近のリューさんはそう易々と握手とかできちゃうんですか?以前は触れるだけで相手を吹き飛ばしていたのに…」
なるほど…ベルの疑問で大体察しました。…【猛者】の一件と同じ理由ですね。握手の妨害をしなかっただけ幾分かよいと言ったところか。これは曲がりなりにもリドさんがベルの友人だからだろうか?…ってリドさんはベルの言葉を聞いて慌てて手を引っ込めてしまったのですが…全くベルは余計なことを…
それはともかく私に起きた変化の要因は言うまでもなかった。
「それはベルのおかげですよ。ベルとたくさん触れ合い、そして何よりベルと共に夢を叶えたいという思いがより強くなった。そのために友好の証である握手などへの抵抗が私の中で弱くなったのだと思います。何も誰にでもではありません。必要に応じなければベル以外にはあまり触れ合いたくないという思いは…少なからず…あります。」
「リューさん…大好きです!リューさんはそのままが一番ですよ!」
ベル以外の人に率先して触れられたいとはまだ思えていないのは事実。いつまでも潔癖のままでいるのもも良しとはし難いところ。
私の言葉にベルは瞳をウルウルさせたかと思うとそのまま周囲の視線など御構い無しに私に抱きついてくる。…というか『そのままが一番』とはベル以外には触れ合えないままがいいということでしょうか…?ベルの独占欲というか…要望には少々困ったもの…断ることはないのでしょうが…
「あのーリューっち?…ベルっちどうしちゃったの?…なんかオレっち達が知るベルっちよりスキンシップが多いというか表情がコロコロ変わるというか…」
私達の様子にリドさんは呆れ気味…来て早々この有様に少々申し訳なさを感じてきました…の前にベル?私に頰をスリスリしないでください…周囲に見られてるので恥ずかしい…と思いながらもベルがあまりに嬉しそうな表情なので止めようにも止められない。
「ベルと妖精さんはラブラブなんだね!ちょっと羨ましいな!すっごくお似合いだね!」
すると後ろにいたウィーネさんがニコニコしながらそう言う。…ウィーネさんも中々嬉しいことを言ってくれる。先程は少し威圧しすぎたかもと少しだけ悔やむ。
「じゃあベルと妖精さんはもう結婚してるの?」
その瞬間ベルは頰スリをやめる一方私はピクリとも動けなくなった。
結婚…
そうですね。もうそう遠くないうちにベルと私は結婚…
ふふふ…ベルは白いカッコいいタキシードを着こなし、私はベルの選んでくれたドレスを纏い…
「ウィーネ!ストップ!結婚って言うとリューさんが妄想の世界に行っちゃうからダメ!リューさん!?戻ってきてください!そんな可愛い表情を僕以外に見せないでください!」
「え…あっ…はい。ふふ…ベルがまた私を可愛いって言ってくれました…」
結婚式の場面に意識が飛びかけたところベルの可愛いという言葉によって現実に引き戻される。
結婚をもう少し想像して幸せな気分に浸りたかったが、ベルに可愛いと言ってもらえたので我慢することにしようと一応は納得する。
一方のベルは私が現実に引き戻されるのを確認してから小さく咳払いをするとウィーネさんの質問に答えた。
「まだ結婚はしてないよ。もうすぐ式は挙げる予定だけどね。その報告も兼ねて今日は来たんだよ。」
「ふーん。そっか!じゃあベル!妖精さん!おめでとう!」
ニコニコしながらお祝いを口にするウィーネに周囲も続いてお祝いを口にしてくれる。
「うん!ありがとう!ウィーネ!みんな!」
「ありがとうございます。ウィーネさんも皆さんも。」
お祝いにベルも私も皆さんに笑顔でお礼を伝える。…そういえば未だにベルと私は抱き合っていると今更ながら気づくが、指摘しようと思ったところでウィーネさんの次の言葉に思考を奪われてしまった。
「ちなみに気になってたんだけど、結婚するとベルと妖精さんは何が変わるの?私結婚のことよく分からないんだ!」
結婚すると…ベルと私の何が変わるか?
そういえばあまり考えたことがなかったと気づかされる。…結婚式という行事ばかりに気を取られていました…
ベルがこちらを見つめ悩ましげな表情をする。二人でしばらく見つめ合うが、お互いに答えが出てこない。…ベルも何も考えてなかったのですね…ある意味良かった…
ベルも私も答えを出さなかったためか
…これはきちんとした答えをお教えする方が良いのでは?と私は思い至るが、よく考えると私の周囲に既婚者が一切いないため参考さえも思い浮かばない。
ベルはしばらくして何か閃いたような表情になり、ウィーネさん達の方に振り向く。
「ほっ…ほら!結婚すると名字が変わるでしょ?それで僕とリューさんが家族だって周囲にわかってもらえるようになるんだよ!だから結婚は大事でね…」
ベルが自論を述べるが、それに私が疑問に思ったことを口にする。
「結婚すると名字が変わるとベルは今言いましたけど、私がリュー・クラネルだと仰ったのはベルではないですか。まだ私達は結婚していませんよ?矛盾しているのでは?それにそもそも私達はもう家族だと周囲も認識しているのでは?」
そう疑問を伝えるとベルは私の方を向いて少々気まずそうな表情をする。
「あーリューさんが僕のことを家族だって思っているのはすっごく嬉しくてギューっとしたいんですけど、あれは言葉の綾というかリューさんがリュー・クラネルという呼ばれるのがすっごく嬉しそうだからまだ結婚してないけどいっかと思っただけというか…」
最後の方はゴニョゴニョと言い終えてしまったためきちんと納得がいかなかったもののつまりは…本当は私とベルは家族ではない…?
え…そんな…
「あっ!リューさん!?大丈夫です!?えーっと…何というか…そっ…そうです!僕とリューさんは心で繋がっているというか想いが通じあっているというか…とにかく結婚しなくても僕とリューさんは家族ですから!ごめんなさい!余計な誤解を招くようなことを言ってしまって!」
私のショックを受ける様子を見てか慌ててベルは取り繕うように言う。
…そうですか。ベルと私の心は繋がっていて、お互いの想いも通じ合っているんですね。…ふふ。そうベルに言っていただけるだけでも私は幸せに…
「はい。リューさん。一回落ち着いて、ウィーネ達への答えを考えましょう。」
「あっ…ひゃい。」
また幸せに浸ろうとするとベルに頰を引っ張られ意識を戻される。…むぅ。こうも私を幸せにしてくれるベルが悪い…いえ幸せな以上悪くはないんですが…とにかくベルのせいである。
さて…なぜ結婚するか…ですか…
しばらく再び考えた末に私は答えを出した。
「…やはり私の場合結婚式という行事への憧れが強いのだと思います。ベルと私が愛し合うことを親しい方々に祝福していただきたい…私はこれだけ幸せになれたんだと形にすることでアリーゼや輝夜…今は亡き仲間達を安心させたい…そういった思いが強いです。」
命を懸けて私を救ってくれた仲間達は人付き合いが下手で何かと問題を起こす私をいつも心配してくれていた。だからこうして夫を持ち家族を持つことが彼女達の黄泉での心配を少しでも解消できるのではと勝手に思っていたりもする。
私が話しながらベルの方を見ると、ベルは私の顔をじっと見つめたまに相槌を打ちながら聞いてくれている。その様子にベルも私の自論に同感であることに安心しながら私は話し続けた。
「だから私は結婚をとても尊く大切なものだと思っています。なので結婚式は思い出に残る幸せに満ちたものにしたいですし、その後の結婚生活もベルと仲睦まじく幸せに過ごしたいと思っています。その契機としても結婚式は大切なのではないでしょうか?」
一通り自論を話し終えるとベルは耐えきれなくなったかのように私をさらにギュッと抱きしめたかと思うとベルはニコッと笑った。
「リューさんの言う通りです。リューさん。絶対結婚式を幸せ一杯の1日にしましょう。そして僕とリューさんは一生仲良く暮らしていきましょうね。約束です。」
「ええ。もちろん。約束します。ベル。」
ベルと私は未来への誓いを交わしてそのままお互いのぬくもりを確かめるように優しく抱き合った。
…周囲の何とも言えない複雑げな視線を見事に無視して。
「…つまりベルと妖精さんがさらに幸せラブラブになるのに結婚は大切ってこと?」
「多分…というかなんかオレっち達の居場所なくない?」
そう口々に呟かれる呟きでようやくベルと私はハッと意識を引き戻された。もちろん抱き合ったままだが。
「あっ…ごめん。みんな…ついリューさんの言葉でリューさんをギューっとしたくなっちゃって…」
「なっ…わっ…私のせいですか?私はただベルと一緒に幸せな結婚式を挙げて幸せな結婚生活を…」
と私が言いかけたところでリドさんがストップをかけた。
「ストップ。リューっち。リューっちとベルっちがラブラブで幸せ絶好調なのはよく分かった。…うん。オレっち達はさすがに二人の結婚式に行けないしさ。ここは二人の友達として二人の結婚のお祝いにくれパーティでもどうかな?」
リドさんの嬉しい提案にベルと私は一瞬顔を見合わせるが答えは決まっていたため、ベルも私もすぐに笑顔で返した。
「うん!お願いね!今日はよろしく!」
「ええ。ではお言葉に甘えてお願いします。今日は楽しませていただきます。」
「よし!じゃあ今日は二人の結婚祝いにパーティだ!!みんな今日はハメ外すぞ!!」
ベルと私の同意でリドさんはパーティの開催を宣言する。それと同時に歓声が上がり
こうしてベルと私は皆さんに奥へと招かれ私達の結婚を祝福してくださるパーティは幕を開けた。