『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス   作:護人ベリアス

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ベル君視点です。
ついにリュー×ベルのベッドシーンですよ!
…と言いながらも告白回もベッドシーンはベッドシーンだった気がしてきましたね。
そしてベッドシーンの意はベッドの上から動かない回と言うだけの意味です。

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迷宮の楽園にて

「ん…ベルのことがぁ…私は大大大好きなんですよぉ…なんなら…しょうめいしてあげましょうかぁ…」

 

耳元で聞こえてくる甘々な声。

 

落ち着くんだ…僕。落ち着け。大木の心を持って悠然と…

 

…無理です。この状況とても耐えられそうにない…

 

僕は今危機的な状況を迎えていた。

 

 

僕とリューさんが一つのベッドで寝ているのだ。

 

 

…落ち着け。いくらリューさんが超可愛い寝言を呟きながら可愛らしくスヤスヤと寝ているとは言え、決してふざけた真似は…

 

と思っているのに心の中でおじいちゃんがチャンスだともがきながらも叫んでいる。

 

が、小太刀で一突きされた瞬間その叫びは終わった。

 

イメージしたのは血塗られた小太刀を片手に殺人鬼のような目をしている上に返り血を浴びているリューさん。

 

…ふぅ。幸か不幸かここに来る前に目の当たりにしたブチ切れリューさんからイメージした怖いリューさんの姿のお陰で僕は平静さを取り戻すことができた。いや…本当にリューさんは僕以外の前と言うか僕が関わってない時とのキャラが違いすぎて怖い…

 

それはともかくなぜ僕がこうも落ち着きを欠く羽目になったのかと言うと、言うまでもなくこの『僕とリューさんが同じ一つのベッドで寝ている』という初体験のせいだ。

 

まず第一に現在僕とリューさんは非常に残念で悔しいことに事実上の別居中である。所属しているファミリアが違うせいとはいえすごく辛い。その結果僕とリューさんは未だ同じベッドで寝たことがないのだ。それで僕はその初体験のせいで全く寝れずにいる。

 

こうなった元の原因はボールスさんにあった。ボールスさんは自称『後輩に気を利かせた優しい先輩冒険者』と言う体で異端児(ゼノス)のみんなとのパーティの帰りに計画していた18階層観光の宿泊先に融通を効かせてくれたのだ。

 

リューさんはボールスさんに不信感を全開にしていたが、僕が善意を無駄にしまいとボールスさんの行為を受け入れたのだ。

 

だがその好意は悪意というか悪戯心というかとにかく少なくとも今の僕にとって有難迷惑なものだったのだ。

 

部屋にあったのはダブルベッド。ついでに使えと言わんばかりに置かれた如何わしい小瓶。…一度ヘルメス様から貰ったのと凄く似てるやつだった。

 

その状況に対してボールスさんにあれだけ不信感を示していたリューさんのこと。きっとこの部屋に泊まるのを拒否してボールスさんを恫喝…ちょっと怖がらせに行くに違いないと期待半分心配半分でリューさんを見ているとリューさんは予想外の行動に出た。

 

 

リューさんはそのままパタンとベッドに倒れこむと僕をベッドに招き入れたのである。

 

 

驚きやらなんやらで動揺しまくってるとリューさんは『今日は疲れました。早く寝ましょう。』と一言言われてしまったがために僕は恐る恐るリューさんの隣に寝転んだ。そして気づけば…リューさんは寝息を立てていた。

 

それもリューさんは僕の方を向いたまま寝てしまったがため僕の理性は吹き飛びかけた。

 

視界に入るのはリューさんの整った綺麗な寝顔と美味しそうな果実のような唇。

 

聞こえてくるのはリューさんの規則正しい寝息とたまに挟まれる可愛過ぎる寝言。

 

とにかく目の前にいる妖精さんは可愛過ぎる、と僕は今更の結論を何度も出し続けた結果全く寝れなくなってしまう。

 

…そしてたまについ視界に入ってしまう小瓶も色々と落ち着くのに邪魔になった。…あとで絶対ボールスさんに仕返ししようと心に決める。

 

そうして今ようやく一人悶々と悪戦苦闘を続けた僕自身の何かとの戦いにようやく終止符を打った僕は小さく息を吐いた。

 

「もぅ…からかわないでください…アリーゼ…私はぁ…本当にリオンじゃなくてクラネルなんですからぁ…」

 

よし。僕。もう一度深呼吸だ。

 

また呟かれた可愛いリューさんの寝言にまたもや理性を吹き飛ばされかける。

 

…それにしてもリューさん余程『リュー・クラネル』という名前を気に入ったようだ。『星屑の庭』でリューさんは結婚したらリュー・リオンではなくリュー・クラネルになると伝えて以来だ。リューさんはあちこちでリュー・クラネルと自分から名乗っては一人恥ずかしくなってまい自爆するということを繰り返している。それはリューさんが僕との結婚を心から喜んでくれている証拠だと分かるから僕自身もすごく嬉しい。

 

そして今寝言で呟かれたアリーゼさんの名前に僕の関心が向いた。アリーゼさんがリューさんの夢に出てきているのだろうか?

 

アリーゼさんの名前が出てきたのはきっと今日リューさんと二人で18階層にある【アストレア・ファミリア】の皆さんのお墓にお参りしたからではないかと思い至る。

 

思い返すとリューさんは皆さんの墓前では何も言うことなく花を供え僕と共に黙祷を捧げただけだった。だからリューさんが何を皆さんに伝えたのかは僕には分からなかった。

 

リューさんがアリーゼさんの夢を引き継ぎ、実現に向かって邁進していることか。

 

それともリューさんと僕が結婚することか。

 

僕はと言うと結婚報告を心の中でさせてもらった。

 

アリーゼさん達はリューさんを僕と同じかそれ以上に大切に思っていた方々だ。だからリューさんには幸せになって欲しいと思っているに違いないし、リューさんにはきちんとした人と結婚して欲しいと思っているはず。

 

それで僕は伝えた。

 

リューさんを必ず幸せにするという覚悟を。

 

リューさんをアリーゼさん達に代わって必ず守り抜くという誓いを。

 

僕の思いがアリーゼさん達に伝わり、皆さんが僕のことをリューさんの旦那さんとして認めてくれたら嬉しいと心から思った。

 

ちなみに今のリューさんの寝言から察するにリューさんはアリーゼさんにからかわれてるの…かな?夢でもリュー・クラネルと名乗って自爆したのだろうなぁ…とにかくリューさんの表情は幸せそうなのできっといい夢を見ているに違いない。

 

「乙女ぇ…?ふふ…そうですねぇ…今の私は恋する乙女ですぅ…ベルに好きでいてもらえるように可愛くいたいですぅ…」

 

…リューさん普通に認めるんですね…ボールスさんあたりが言ったら誅殺されそうなのに…やはり夢の中のアリーゼさんに言われたからあっさりと認めたのだろうか?

 

リューさんはいつでも可愛いので何の心配もいらないですよ!と心の中で太鼓判を押す。…リューさんが起きたらまた一杯可愛いって伝えて喜んでもらって、照れてさらに可愛くなったリューさんを拝もうと心に決める。

 

そんなことを考えながらリューさんの可愛い表情を見ていると僕の心はとても和む。

 

ただこんな可愛いリューさんもリューさんのほんの一面。僕絡みやシルさんのような極僅かな人にしか見せない一面だ。…公共の場で自爆した時以外は。そして自爆した回数があまりに多すぎるために僕とリューさんは歩いているだけなのに周囲から暖かい目で見られることが多々ある。

 

リューさん…僕のことが大好きなのは分かるんですが、可愛い姿は僕だけに見せて…と思うと同時にそろそろ不穏な動きをする男神様は消すべきでは?とシルさんと真剣に相談し始めたこの頃。

 

そんな可愛いリューさんの笑顔の邪魔になるものは意外と少なくない。リューさんの願いを無視して不穏な動きをする人達。そして不覚にもリューさんを不安にさせるようなありえない行動を取ってしまう僕自身だ。

 

だから僕は不穏な動きをする人達に躊躇するつもりは毛頭ない。

 

だから僕はリューさんを不安にさせないようにたくさん愛を伝え、笑顔になってもらえるように努力して、リューさんに幸せだって感じてもらえるようにする。

 

それが僕が心で誓ったことだ。

 

そしてそんなリューさんには別の一面がある。

 

それは正義を尊び夢を追い求める凛々しくてカッコいいリューさんだ。そのリューさんは夢に向かって立ち止まることを許さない。夢の実現のために一切の努力を惜しむことはない。

 

そんなリューさんも僕は大好きだ。その一方そういう時は決まって危機が目前に迫っている上にリューさんは無理をして命懸けの行為に打って出てしまう。

 

リューさんが夢の実現を僕と同格かそれ以上に大切にしている以上止めるわけにはいかない。僕もリューさんを助けるために死力を尽くすつもりでいる。

 

…ただどうしても無理せずに命の危険なく過ごせないものか…そう思わずにはいられない。ラキアの一件だってオッタルさんの一件だって一歩間違えれば大変な事態に陥ってもおかしくはなかったのだから。

 

そしてそういう時のリューさんは何でも一人で抱え込もうとして張り詰めてしまうことが多い。そんな時リューさんは表には出さないが辛いことも多いはず。

 

だから僕は少しでもリューさんの背負う物を共に背負えればと思い、側で精一杯支える。

 

だから僕はリューさんに少しでも幸せにして辛さを吹き飛ばそうと努力する。

 

それもまた僕が心で誓ったことだ。

 

如何なる時も僕のやるべきことは変わらない。

 

 

僕はリューさんの旦那さんとしてリューさんを力の及ぶ限り支え抜き、幸せにする。

 

 

可愛いリューさんもカッコいいリューさんもどちらも僕の愛するリューさんなのだから。

 

とにかく僕はリューさんのことが大大大好きで世界で一番幸せにしたいのである。

 

なんて眠れない中考えているとふと気づく。

 

 

今のリューさん中々無防備じゃない?

 

 

…ここは今考えてたことの誓いの証みたいな感じでキッ…キスでもしてもいいんじゃないかなーと思う。

 

心の中のおじいちゃんは寝込みを襲えと叫んでいるが、再び血染めのリューさんに小太刀を突き立てられて沈黙する。

 

ただ代わりに血染めのリューさんは返り血だけでなく地で頬を赤く染めて、唇以外ならキスしても構わないのでは?と小声で言う。

 

今考えてみると僕とリューさんは恋人として色々なことをしているようでしていない。

 

事あるごとに手を繋いで、さらに恋人繋ぎもした。

 

ハグとなると数え切れないほどした。

 

今日でついに二人で同じベッドで寝るまでした。

 

 

ただキスだけはしたことがないのだ。

 

 

間接キスは数え切れないが、唇同士のキスどころか頰へとか額へもしたことがない。

 

ただ一度だけリューさんが旅に出る前にできそうな雰囲気になったことがあったが、リューさんが見事に怖気付いて未然に終わっている。

 

…これはいいのでは?リューさんは熟睡していて目を覚まさないだろうし…

 

あぁ…でも唇にしたら正式にファーストキスになっちゃいそうでまずいし…ファーストキスは結婚式の日にしっかりしたいというか…きちんとリューさんに意識がある時にリューさんに僕の大好きだっていう思いが伝わるようにしたいし…

 

なら頰か額ならどうかな?それならファーストキスには含まれないだろうし、本番前の練習にもなって、一応誓いのキスにもなるのでは?

 

…でも僕第一キスの仕方よく分からないし、万が一リューさんを起こしてしまったり、やり方が悪くてリューさんを不快にしてしまったらまずいし…

 

なんて一人また悶々とする僕。

 

するとなぜか突然髪を触られるような感覚がした。

 

そして続いて額にそっと触れるような暖かくて優しい感触がした。

 

気づけば視界に入るのはリューさんの可愛い寝顔ではなくリューさんの綺麗な首筋。

 

…あれ?

 

僕の顔に全身から熱が集まっているような感覚がした。

 

目をつい大きく見開いていると感触が消えて、代わりにクスクスと笑うリューさんの顔が見える。

 

…起きてた…の?

 

「ふふふ…可愛いベル。ファーストキスは結婚式までお預けですが、今夜一緒に寝てくださった御褒美です。これでゆっくり寝てくださいね。」

 

リューさんはそれだけ言うと目をギュッとつぶって僕に何も言わせることなく、そのまま寝てしまう。

 

リューさんにファースト額キスを取られた…

 

リューさんの初めて見る小悪魔的一面にさらにリューさんのことが大好きになると同時に絶対にファースト頰キスとファーストキスは絶対に僕から…と決意する僕。

 

こうしてリューさんのおかげで何度もリューさんを幸せにすると誓っていたのに僕が先にリューさんに幸せな気分にさせられてしまいちょっとだけ複雑な僕だった。

 

ちなみにまたしばらく僕が寝れなくなってしまったのは言うまでもないと思う。




深夜テンションで額にキスをかましてベル君を悩殺したリューさんでした。(笑)
次回から二話はアリーゼさん登場回です。
亡くなった人を登場させるのは禁じ手感がありますが、夢の中だから問題ないですよね!

この作品では今話で書いたようにリューさんの二つの顔を書いています。
ベルくん大好き可愛いリューさんと正義を尊ぶカッコいいリューさんです。
可愛いリューさんは14巻以降から出現した顔でカッコいいリューさんは元から『クロニカルリュー』などで見せていた顔ですね。
どっちもリューさんなわけですが、ベル君が惚れるならカッコいいリューさんかな?
ただ本当にベル君が惚れるとすれば、14巻の途上の悩めるリューさんはなくてはならない気がします。
意外とこの作品でリューさんは悩んでないんですよね。

悩む姿を見せず周囲の模範として周囲を導いていく。

そんな指導者像に則ってこの作品のリューさんは動いています。定期的に暴走妖精になるのはあまりに厳格に動きすぎていることから来る反動ですかね?(笑)
悩めるリューさんも書いてみたいです。それに復讐の炎に取り憑かれたリューさんも。
それなりにこの作品も終幕が見えてきてるので次回作ではそんなリューさんを書きたいところです。
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