『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス 作:護人ベリアス
【アストレア・ファミリア】のメンバーってアリーゼさんと輝夜さんとライラさんにしか台詞無いんですよね。他のメンバーはちょっとした特徴は載ってるだけ。いつか掘り下げて描いてみたいところです。
「おはよー」
その声に僕は目を見開いた。
すると目の前にいたのは緑色の瞳をしたヒューマンの女性。
僕は思わず後ろに飛び退いてしまう。
「相変わらず初対面の方にも距離が近いですわね。そういったところは変わらいというか…団長は流石ですわ。」
「だから輝夜はいちいち猫被らないの!あんただって相変わらずの猫被りじゃない!」
「今の今飛び退かれた挙句目が点になってる人が近くにいるのになーんでそんな口論ができるのかねー」
そう口々に言い合う女性達に僕の目は点になりながらも周囲を観察してみる。
ここは…見覚えはないが…雰囲気はそう。リューさんの住む『星屑の庭』のよう。…おかしいな。僕はまだ18階層のリヴィラの街にいたはずなんだけど…
それはともかく次にその場にいた女性達に目を向けてみる。
命さんが着ているような極東の物らしき衣装を何となく着崩している黒髪のヒューマンの女性にその女性よりもさらに服を着崩していて目のやり場に困る桃色の髪の
僕の顔をじっと覗き込んでいた緑色の瞳を持つ赤い髪の女性。
僕を見てクスクスと笑ったりする女性達が10人程僕を取り囲んでいた。
…これがおじいちゃんの言うハーレムってやつ?あっ…でも!僕はリューさん一筋だからそんなの望みじゃないって言うか!
「ふふん!どうやら今の状況が飲み込めないっていう感じね!そうでしょう?ベル・クラネル!」
「えっ…はっ…はい。というかなぜ僕の名前を…」
なぜか自信げに問いかけてくる赤い髪の女性に戸惑いながらも僕は頷いた。するとその女性は胸を張って答える。
「よく聞いてくれたわね!清く正しく聡明で完璧な私でもよく分からなかったけど、これはきっと夢の世界ってやつなのよ!多分だけどね!」
…うわー僕の質問がスルーされた上にすごく適当な推測…というか夢ってどういうこと?
と疑問を抱くと同時に『清く正しく聡明で完璧な私』という自意識過剰と言わざるを得ない言葉がリューさんの言っていた話と心の中で繋がる。
それは…【アストレア・ファミリア】元団長のアリーゼ・ローヴェルさんの口癖だったと聞いた。
リューさんの尊敬していたという常に自信満々で明るく振る舞う赤い髪の女性。
目の前の女性は色々とリューさんの言っていた特徴と似ていた。さらに亡くなった人だとしても夢の世界らしいと言う推測のお陰で会える可能性はあると踏めた。
だから僕は恐る恐る尋ねてみた。
「あの…あなたはアリーゼさん…ですか?」
そう尋ねるとその女性は目をパチクリさせた。
「あら…私のこと知ってたのね。そう!私の名前はアリーゼ・ローヴェルよ!」
意気揚々とその女性は自分がアリーゼさんだと認める。となると極東風の女性がリューさんに小太刀を譲った輝夜さんで
そう納得半分疑問半分でいるとアリーゼさんは首を傾げる。
「というかこの子私のこと知ってるのね。さてはリオンから聞いたのかしら?」
「リオンじゃなくて
「そうそう!輝夜の言う通り!リオンはもう
「そうだったわね!そう!
格好の弄りネタを見つけたと言わんばかりにノリノリでリューさんのことを『クラネルちゃん』呼びする皆さん…
…え?なぜアリーゼさん達はリューさんと僕が付き合っていることを知って…というか僕の夢だからそういう弄りネタが出てくるのだろうか…ひとまず質問には答えようと考えをまとめる。
「あっ…はい。リューさんから聞きました。」
「もー。もうちょっと照れるなり何なりしなさいよ。つまらないわね。」
「ちっ…リア充め。せっかく恥かかせようと思ったのに平然として…」
「おーい。輝夜ー。本性出てるぞー。というか可愛い顔してんのにお前もなかなかすげーな。」
僕の様子が気に食わなかったようで口々にブーブー言う皆さん。…こんなファミリアの仲間を持っていたリューさんはかつて相当振り回されていたのでは…そんなことをつい想像してしまう。
ただそんなことを考えてぼんやりするよりも聞くべきことがあるのではと僕はすぐに思い至った。
「あっ!あの!いくつか質問してもいいですか!」
そう思い切って尋ねると視線が一気に僕に集まる。…女性の方にこうも見つめられるのは意外とキツイな…
「何?クラネルちゃんの【アストレア・ファミリア】での恥ずかしいお話とか?」
アリーゼさんがニヤニヤしながら聞き返してくる。…いや。そういうのじゃなくてですね…
「そうじゃなくて…実はリューさんのことで…リューさんはアリーゼさんの夢を引き継いだと言っていました。だけど武器なき平和という夢が果たして本当にアリーゼさんが思い描いていた夢だったのかな…と。それをリューさんがたまに気にしてることだったので是非聞いておきたかったんです。」
「流石ね。最初にクラネルちゃん…区別が面倒ね。今からはリューとベルって呼ぼうかしら。リューっていうのは言いにくいけど、リオンじゃ嫌らしいから仕方ないわね。」
アリーゼさんは僕がベル・クラネルなのでクラネルちゃん呼びすると区別がつかなくなると思い至ったらしい。
あのーからかい始めたのアリーゼさん達の方からですよね?それなのに面倒って…どれだけ適当なのやら…
「で、最初にリューのことを気にするあたりさすがはリューが大好きな相手ってところかしらね。あれだけベタ惚れするのには何か訳があると思ったけど、これだけ可愛い美少年で思いやりもあってしかも冒険者…まずリューに恋人ができること自体意外ではあるけど納得といえば納得ね。」
「正直暴走妖精が色ボケ妖精になるとは思いも寄らなかったがな…」
「それね!輝夜の言う通りね!」
…確かに元のリューさんってちょっと真面目すぎる上に最近まで碌に人と肌を触れ合うことさえもできてなかったからなぁ…ここまでデレデレで可愛くなるとは思わなかったというのには僕も少し同意する。アリーゼさん達はきっとかっこいいリューさんを僕以上に知ってるんだろうなぁ…
「それで私の夢のことだけど、はっきり言って私の夢がどうこうよりリューのやりたいことをやるべきだと思ってるわ!何せリューは難しいことを考えるよりも素直に行動した方が絶対上手くいくんだから!それにリューは間違えはしても絶対に正しいことを見失ったりはしないわ!」
アリーゼさんの言葉に僕は安堵した。もし違ったらとか思うと同時にリューさんの夢をアリーゼさんが望まなかったら…そんな懸念もあったが、アリーゼさんはそういう風に答えずリューさんの考えに任せると言った。その言葉からはアリーゼさんのリューさんへの信頼がよく伝わってきた。
「リューは馬鹿正直だが、その分曲がったことは決してしない。それが信頼に値するのは言うまでもないな。そしてそもそも私達は今や死人。今を生きるリューやベルを縛る理由もない。お前達が思うように成すべきだと思う。その成すことはリューならきっと正義に基づいていると私は信じている。」
輝夜さんもまた辛い現実を理由としながらもリューさんが最も尊ぶ正義をリューさんが貫き続けると言うことへの信頼を伝えてくれた。
「そうだなーまっリューならすっげーことやってくれそうってあたしは期待しちまうな!それもリューの信じる正義に基づいたな!あたしはリューが何をやらかすのか楽しみだなー!」
ライラさんはケラケラと笑いながらリューさんへの期待を示してくれた。…ライラさんの仰る通りリューさんは時折凄いことをやってのけてますよ…
僕には今聞いた言葉だけでも皆さんのリューさんをどれだけ理解していたかがはっきり伝わってきた気がした。そしてリューさんがこれから成すことへの期待と信頼も伝えてもらえた…そんな気もした。
ただその事実はリューさんにとってどれだけファミリアの皆さんといることが居心地がよかったかも想像させるもので今皆さんがいないことがとても悔やまれた。
「ありがとうございます。皆さんのお言葉を聞けてよかったです。リューさんもその言葉を聞けばきっと安心してくれるような気がします。」
僕はそう言ってお礼に頭を下げる。
「別にいいわ!私達はリューがただ自分の意志に従って幸せに生きてくれればいいって思ってるだけだから!さてそんな堅い話はこれくらいにして私はもっと楽しい話を聞きたいわ!それにベルにはまだ私達に聞いておきたいことがあるんじゃないかしら?」
アリーゼさんがニコニコしながら僕にそう聞いてくるので恐らくアリーゼさんも予測しているであろうことを聞くことにした。
「その…僕とリューさんの結婚を認めてくれるのかなっていうか…僕をリューさんのパートナーとして認めてくれるのかなって言うのは気になってました。」
そう言うとアリーゼさんは満面の笑みを浮かべる。
「そう!やっぱりベルはそれ聞きたいわよね!なら答えてあげるわ!正直リューがショタコンだとは完全な予想外だったわ!」
しょた…こん…
よく分からない言葉に僕は思わず首をかしげる。
「団長…神々の言葉を使っても案外通じないものですわよ。ベル。ショタコンとは要は年下の男の子が好きって言うことですわ。リューが年下好きとは意外や意外。」
年下好き…そういえば僕は今14歳でリューさんは21歳…
よく考えるとというか今更考えると僕のような歳で結婚するってなかなかおかしい?
「あの…まさか僕達の結婚ってまずかったり…します?」
恐る恐る尋ねてみるとライラさんが笑いながら答えてくれる。
「まっ…倫理的にはちっとまずいかもなぁーどうする?倫理的にまずかったらリューとの結婚やめるのか?」
その言葉に僕は愕然とする。
だがすぐに思い直し僕は言い返した。
「まさか!リューさんがしょたこんであろうとなかろうと僕とリューさんは愛し合っています!だから愛がある以上結婚に一切の間違いなんてありません!」
僕の言葉になぜか皆さんは目をパチクリさせる。ついでに少々頰を赤らめながら。
「さっ…さすがね。ベル。あんたがリューのことが大好きだってことが改めてよく分かったわ。」
「…よくもまぁ愛という甘ったるい言葉を大声で…さてはリューが色ボケ妖精になったのはベルのせいか…あぁ…堅物だった私の好敵手はどこへ…」
「すげーリューも暴走癖は大概だけど、ベルも中々だな…そう考えるとお前らすごくお似合いかもな…」
皆さんは口々にそう言う。褒められてるのか…呆れられてるのか…皆さんが頰を赤くしたまま顔を背けてしまうので表情をよく読み取れない。
「まっ…まぁいいわ!私達はさっき言った通りリューが幸せであることが一番なの!だから例えリューがショタコンであろうとちょっと愛が重すぎだろうとベタ惚れすぎてなんかムカつくって思ってもリューとベルの結婚に反対するつもりは一切ないわ!」
色々アリーゼさんの本音が漏れてる気がするんですけど…気のせいですかね?
「私も同じくだ。色ボケすぎてポンコツ妖精がかなり悪化してる感もあるが、あれだけ幸せそうなら文句を言うべきではないだろう。」
「そうそう!むしろリューも色々新しい世界を知れていいと思うぜ!その方がリューの行動がもっと面白くなりそうだ!」
輝夜さんは少し不満もありそう。…真面目なリューさんがいいと思ってる人はやっぱりあのデレデレはキツイの…かな?ライラさんは…新しい世界って何の話なのかな?
「ということだからあとはベル!あんたの覚悟を聞かせなさい!あんたはリューとどうなりたいの?」
その質問と共に皆さんの視線が僕にまた集まる。
その視線はとても真剣で僕の覚悟を本当に問いただしているようだった。
それだけリューさんのことが心配できちんとリューさんを僕が幸せにできるか気にしているのだろうと思った。
だから僕もまた真剣にその質問に答えた。
「僕はリューさんの旦那さんとしてリューさんの夢を精一杯支えます。そしてリューさんに一杯愛してるって言う気持ちを伝えて、リューさんをみんなが羨むような世界で一番幸せな女性にしてみせます!」
そう僕は威勢良く告げる。
それが僕の覚悟。
きちんと皆さんに伝えられただろうか?
そしてその覚悟で僕はリューさんの旦那さんとして認めてもらえるだろうか?
不安を少々抱きながらも皆さんの反応を待った。
「…うん。いい目だわ。言葉からもその姿勢からも覚悟が伝わってくるわ。よし!この清く正しく聡明で完璧なアリーゼ・ローヴェルが認めるわ!ベル・クラネルはリュー・クラネルちゃんに一番相応しい男よ!だから誇りなさい!胸を張って僕はリューの旦那だって周りに見せつけてやりなさい!」
「はい!僕のリューさんへの愛を周りに見せつけてリューさんに寄り付く悪い虫は全員排除します!」
「よし!よく言った!リューに寄り付く男どもは全員排除よ!」
「それは迷惑な気がするが…?」
輝夜さんの呟きをよそに僕とアリーゼさんは意気投合する。アリーゼさんの許可もあるし今後はリューさんに寄り付く男は心置きなく排除しようかな!
「さぁ!リューも待っているかもしれないわ!そろそろお別れね!ベル!リューを幸せにしてね!」
アリーゼさんの言葉によって夢の終わりを告げられる。その言葉に続くように他の皆さんも別れを告げてくれる。
「ベル。リューを頼んだぞ。私達に代わってずっとそばにいてやって欲しい。」
「あたし達はあっちで見守ってるからよ!リューとベルは心置きなく暴走しちゃえ!楽しみにしてるぜ!」
「二人ともお幸せに!」
「リューをよろしくねー!」
輝夜さんとライラさんだけでなく名も知らない【アストレア・ファミリア】の方々も別れを伝えてくれる。それに僕も応えた。
「はい!今日はありがとうございました!僕が絶対にリューさんを幸せにしてみせます!どうか僕達を見守っていてください!」
僕はそう伝えて夢の世界に別れを告げた。
現実の世界にいる愛するリューさんの可愛い寝顔を拝むために。