『正義』の妖精と『偽善』の白兎のファミリア・ミィス   作:護人ベリアス

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リューさん視点です。
ついにのついに結婚式!
めっちゃ焦らしたので期待に添えると良いのですが…
とりあえず神前式と人前式を混合させてあります。指輪交換もカットです。指輪交換はラキア出立前にしたことを今更思い出したので…あれ以来登場機会がないエメラルドとルビーの指輪…

あと自分結婚式経験ないのでそこら辺はご容赦の程を…



愛の誓いを今ここに

私は今まさに幸せの絶頂に至ろうとしている。そう確信していた。

 

今ベルと私は大聖堂に足を踏み入れた。

 

ついに待ち望んだ結婚式の時。

 

ベルと腕を組んだ私はベルとより距離が縮まり心地よい温もりを感じながら一歩一歩と前にゆっくりと進んでいく。

 

そんな私達を来賓の方々が大きな拍手で祝福してくれる。

 

入り口近くにいるのは様々な特色を持つ衣装で着飾った名前も知らない方々。恐らくはオラリオに来た外交使節の方々だろう。誰もが主に私を見つめている。…私の器を測ろうとでもしているのだろうか?

 

ただ私もそう辺りを見渡すわけにもいかないので横目に見る程度に留め、ベルと歩幅を合わせて歩くことに意識を集中させる。

 

そうして私達の歩むヴァージンロードを中程まで進むと段々と顔見知りも増えてくる。

 

まず視界に入るのは最近交渉でお話ししたファミリアの主神方と団長方。彼らもきちんと会場に招き入れてくれているのがシルとアーデさんの配慮は行き届いている証だろう。式の段取りをつけるのに尽力してくださったシルとアーデさんに心の中で感謝を述べる。

 

最前列近くにはアストレア様や神ヘスティア、を始めとしたベルと私のファミリアの方々やミア母さんを中心として豊穣の女主人の同僚達、そして【ガネーシャ・ファミリア】や【タケミカヅチ・ファミリア】と言ったベルと私に積極的に協力してくださっている方々が並んでいた。

 

誰もが満面の笑みで私達に拍手を贈り、私達の結婚を祝福してくださるのが心から嬉しかった。

 

そしてベルと私は舞台前の階段に辿り着く。

 

ベルと目配せをすると息を合わせて、一段、一段、とゆっくりと階段を踏みしめながら登っていく。

 

たかが数段の階段。

 

けれど少しずつ幸せに近づいていくような感覚を覚えて、私の心はこれまでになく高揚した。

 

階段を登り切ったベルと私は腕を解いて向き合った。腕を解くことで距離ができてしまうことを私は少々残念に思ったが、より素晴らしい幸せが目の前にあることはもう分かっている。だから惜しむことなく腕を解いた。

 

頭上のステンドグラスからはベルと私を優しく包み込むように明るい光が差し込む。まるで私達の式を祝福してくれるかのように。

 

ベルと私が向き合うと同時に私達を荘厳な音色で祝福してくれていたパイプオルガンの音色がそっと止む。音色が止むと共に静寂が訪れるが、時を置かず司会の二人が口を開いた。

 

「それではこれより、【アストレア・ファミリア】団長リュー・クラネルと【ヘスティア・ファミリア】団長ベル・クラネルの結婚式を始めさせていただきます。本日は多忙な中世界中よりお集まりいただきました皆様に新郎新婦に代わり感謝の意を述べさせていただきます。そして本日は皆様が結婚の証人となります。どうか新郎新婦の誓いをお見届けください。そして本日の司会を務めさせていただきますのは【アストレア・ファミリア】団員シル・フローヴァと申します。」

 

「共に司会を務めさせていただくのは【ヘスティア・ファミリア】団員リリルカ・アーデです。本日はこの二人で精いっぱい司会を務めさせていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします。それでは新郎新婦の深い愛の込もった誓いの言葉を交わしていただきます。」

 

シルとアーデさんの滞りない司会によりすぐにベルと私の誓いの場面がやってくる。

 

ベルと私は緊張と恥ずかしさもあってお互いに頰を赤らめたまま先程練習したばかりにも関わらず言葉がすぐに出てこない。

 

ただそれでも先に口を開いてくれたのはベルだった。

 

「新婦リュー・クラネルはあなたはここにいる新郎ベル・クラネルを、健やかなるときも病めるときも、富めるときも貧しいときも、妻として愛し、敬い、いつくしむことを誓いますか?」

 

ベルが穏やかな表情を浮かべてそう尋ねてくる。質問は典型的なもの。けれどベルが問いかけてくれた。それだけでも心は躍った。

 

私は答える。

 

「ええ、誓います。私リュー・クラネルはベル・クラネルのことを夫としてパートナーとして一生愛し続け、苦しみも喜びも共に背負うと誓います。」

 

私は溢れんばかりの誠意と愛情を込めてそう告げる。私の答えにベルはとても幸せそうに微笑んだ。

 

そして私もまたベルに尋ねた。

 

「新郎ベル・クラネル、あなたはここにいる新婦リュー・クラネルを、健やかなるときも病めるときも、富めるときも貧しいときも、妻として愛し、敬い、いつくしむことを誓いますか?」

 

私の質問もまたベルと同じく典型的なもの。けれどベルも私と同じように感じてくれたようで感極まった表情になりながら答えてくれる。

 

「はい、誓います。僕ベル・クラネルはリュー・クラネルのことを妻としてパートナーとして一生愛し続け、幸せな日々を共に過ごしていくと誓います。」

 

先ほども聞いた誓いの言葉。けれどこの場所で、この結婚式場で聞けたというだけ私は幸福感で一杯になった。

 

私は幸せ一杯に頰を緩ませながら微笑んで見せた。

 

ベルと私はお互いに頰をさらに赤く染めながら見つめあっていると誓いの言葉の場面を終えたため、司会の二人が口を開く。

 

「ここに新郎新婦の誓いが交わされました。ではその証として永久の愛を込めて誓いのキスを交わしていただきましょう。お二人共。お願いします。」

 

…ついに訪れてしまったベルと私のファーストキスの瞬間…

 

私は目を閉じて小さく深呼吸をした。

 

ゆっくりと目を開けるとベルが私に許可を求めるように目配せしてきた。それに私は問題ないという意味を込めてコクリと小さく頷いた。

 

そうしてベルと私は少しずつ距離を縮めていく。

 

近づいてくるベルの綺麗な深紅の瞳。

 

柔らかそうなベルの唇。

 

私はそんなベルの魅力に引き寄せられるように近付くとついにベルと触れ合った。

 

温かい。

 

柔らかい。

 

心地いい。

 

気持ちがいい。

 

そんな説明不足な感想しか頭に浮かばない。

 

それくらい私の頭はベルとキスできているという感動に浸っていた。

 

ベルが私との距離をもっと縮めたがっているかのように私の背に手を回してくる。

 

私も同じ思いに至っていたので私もベルの背に手を回した。

 

ベルの瞳は幸せで蕩けてしまっているかのよう。

 

きっと私の瞳も同じように蕩けているであろう。

 

もっとベルに近づきたい。

 

もっとベルの温もりを感じたい。

 

もっとベルと一つになりたい。

 

そんな思いがどんどん強くなっていく。

 

初めてのベルとする唇と唇でのキスはいつも以上にベルと私を二人の世界に引き込む力があった。

 

そうして私は時間の感覚を失い始め息が少々苦しくなるくらいまでベルとキスを何度も何度も交わした。ベルもそんな私を受け入れてくれた。

 

幸せをとことん心に満たすことができた私は呼吸を整えるためもあって名残惜しく思いながらもようやく唇を離した。そして互いに手をほどき少しだけ距離を作る。

 

ベルは少々不満げだったが、私が呼吸を整えているのを見て、納得してくれたようですぐに幸せそうな表情に戻ってくれた。

 

これがキスの力…なるほど。定期的にベルにねだることにしよう。そう私は心に決める。

 

こうして誓いのキスを終えたもののどうキスをすればいいか等の打ち合わせはしていなかったため、確認のためにシルとアーデさんに目を向ける。私に釣られてベルも二人を見た。

 

すると視界に入った二人は口を大きく開けて唖然としていた。

 

…何かベルと私が変なことをしたのだろうか?そう疑問に思っているとベルが小声で話しかけてくる。

 

「…リューさん。シルさん達だけじゃなくて来賓の方々が…」

 

そうベルが言うので来賓の方々に目を向けると…

 

…ほぼ全員が唖然として私達を見ていた。唯一の例外は神フレイヤで今にも笑い出しそうな表情だった。

 

…ベルと私は余程まずいことを…したのだろうか?

 

そう不思議に思っているとアーデさんがわざとらしく咳払いをする。

 

「…新郎も新婦も誰もがお二人の愛がはっきりと分かる熱ーくて深ーい誓いのキスをどうもありがとうございました。これでお二人の愛は永久に続くことでしょう。」

 

「そうですね。新郎も新婦もここまで大胆に愛を示せるならきっと二人の愛は失われることはないでしょうね。お幸せそうな夫婦で何よりです。」

 

…なぜだろうか。二人の言葉は本来すごく嬉しいもののはずなのに何故か嫌味にしか聞こえない…

 

「皆様。ディープキスを公共の場で披露するという並外れた度胸を持つ新郎新婦の誓いの証がここに生まれたことを祝福して盛大な拍手をお願いします。」

 

ディっ…ディープキス!?

 

私はシルの言った言葉に恥ずかしさが一気にこみ上げてきた。

 

ディープキスというと破廉恥と言われかねないあの!?

 

…私はまさかシルの言うように公共の場でしかもファーストキスでディープキスをしてしまったというのですか?

 

ディープキスの用語は知っていてもどんなものかは把握していなかった私だったが、シルがそう言うならきっとベルと私がしたのはディープキスなのだろう。

 

…これから数日のうちにここにいる団長方や使節の方々と交渉をしなければならないのに…どうやって顔を合わせればいいのだろうか…また…やり過ぎてしまった…

 

ベルと私が相当大胆なことをしたのはシルが拍手を喚起したにも関わらずまばらにしか拍手が起こらなかったのが何よりの証拠で明らかである。大きな拍手になるのに時を要したのは動揺から身動きができなかったからに違いない。

 

そう思うと私は恥ずかしさでどこかに逃げたい気分になった。

 

一方のベルはと言うと最初は耳まで真っ赤にして動揺していたが、一度小さく息を吸うと私の腰を抱いて来賓の方々の方に向かってベルと共に私を並び立つようにすると笑顔を振りまき始めた。

 

…どうやらベルは私を巻き込んで開き直ることにしたらしい。

 

そんなベルに呆れが半分くらいあったが、こうやって戸惑った時の私の手を引いてくれるベルには心から感謝したい。そうも思いながら私もベルに合わせてベルの腰に手を回した。

 

こうして今私は結婚式の場に立ち、多くの方々の祝福を受け、幸せに浸ることができている。

 

多くはベルのお陰。

 

私はベルとの出会いに改めて感謝しながら心の中で再びベルをずっと愛し続けると誓った。

 

「ここに二人の結婚は皆様の証人の元成立致しました。お二人のお気持ちをご理解し祝福していただいたことに二人を大切に想う者として心からの感謝を述べたいと思います。」

 

シルがそう言うと拍手が次第に静かになる。

 

ということはまもなく閉会の辞か…そう私は理解した。

 

「お二人の終生変わらぬ愛と末永いお幸せを祈りまして、新婦リュー・クラネルと新婦ベル・クラネルの結婚式、閉式と…」

 

 

「お待ちを!」

 

 

私の鋭い声がシルの言葉を遮り、大聖堂に高らかに響いた。

 

私の介入にシルは言葉を詰まらせて私を見つめる。そんなシルに私は問題無いと目配せするだけと来賓の方々を見た。

 

ベルの私の腰を抱く手の力が少しだけ強くなる。

 

ベルは私が今から何をするか知っている。だから思うところがあるのかもしれない。

 

そんなベルを安心させようと私はベルの腰をそっと撫でた。

 

「私リュー・クラネルは皆様にここまで素晴らしい式を執り行っていただき、祝福してくださったことに心から感謝したいです。そして恐縮ですが、私はこの場を借りて皆様に提言したい儀があるのです。」

 

そう私が言うとこの場にいる誰もが私を注視すると共に小さなざわめきが起こった。

 

そのざわめきを気にすることなく言葉を続けようとするとベルが突然口を開いた。

 

「どうか皆様。妻の述べることを聞いてください!これから妻が述べるのはこれからのオラリオ…いえ世界にとって極めて大事なことなのです!だからどうか静粛にお聞きください!」

 

ベルがそう呼びかけるとすぐさま大聖堂は静まり返った。一方の私はベルが口を開いたことに小さな驚きを覚えていた。なぜならベルは私の今からすることにあまり賛成的では…

 

「リューさんを一人で戦わせるなんて僕にはできませんよ。僕達は夫婦でパートナーです。共に戦いましょう。」

 

「…ありがとう。ベル。」

 

そう小声で言って私の背を押してくれるベルに私は礼を言うと私は先ほどの言葉を続けた。

 

「提言したい儀。我が夫ベルと私には夢があります。とても壮大で。けれどある意味ありふれた夢が。その夢に関わるある方を実はこの大聖堂にお呼びしています。私はその方を紹介し、そして未来永劫続く友好な関係を築き上げたいと考えています。どうぞお入りください。」

 

私の言葉と共にベルと私の後方の床にあった隠し扉が開く。

 

そこから顔を出したのは…

 

 

「私達の友、ウィーネさんです。」

 

 

私がこの場を借りて成そうとしたこと。

 

それは異端児(ゼノス)の皆さんとの友好関係の樹立。

 

かつてダンジョンで語り合ったことをこの場で為そうと決めていたのだ。

 

これは命がけの賭け。

 

私は幸せの絶頂から絶望に転げ落ちかねない大博打に手を伸ばした。




元々結婚式をただ結婚するだけで終わらすつもりでないのは伏線を書いたつもりだったので薄々分かっていた方もいるかと思います。
ここはカットするわけにはいかなかったんです…
次回はリューさんとベル君の異端児(ゼノス)との友好と平和への思いの演説回です。
二人の言葉は果たして人々に届くのか…
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