殺人貴はダンジョンに行く   作:あるにき

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少し遅れました。今日というか昨日は忙しかったので


ではどうぞ


酒場での出来事 2

「——何だ何だ、どこぞの『兎』が一丁前に有名になったなんて聞こえて来るぞ!」

 

声が聞こえて来たのは真隣のテーブルからだった。

六人がけのテーブルに座っている内のベル君より小さい子供——と思ったが、小人族(パルゥム)だとヴェルフが言っていた。——が杯を片手に叫んでいる。

 

新人(ルーキー)は怖いものなしでいいご身分だなぁ!世界最速兎(レコードホルダー)といい、嘘もインチキもやりたい放題だ、オイラは恥ずかしくて真似できねえよ!」

 

幼い少年のような声色が、騒々しい酒場の隅々まで響いていく。あの容姿で俺より年上かもしれないのか……

周りの視線が集まってくる。無論、俺やベル君、ヴェルフやリリのだってそうだ。

騒いで注目を浴びている小人族(パルゥム)の服には太陽を刻んだエンブレムが施されている。ファミリアのだろう。そうすると彼らは他派閥の構成員達なのだろうか

椅子にもたれ掛かる小人族(パルゥム)の男は、ぐいっとお酒をあおり、唖然としたベル君たちをみてせせら笑った。

 

「ああ、でも逃げ足だけは本物らしいな。昇格(ランクアップ)できたのも、ちびりながらミノタウロスから逃げおおせたからだろう?流石『兎』だ、立派な才能だぜ!」

 

この煽り、どっかの番外位(裸ワイシャツ)を思い出す……

それは置いておいて、その小人族(パルゥム)はワザとこちらに聞こえるように話してるんだろう。その証拠に、あいつと同席している奴らが止めもせず、面白そうにこちらを見ている。

ベル君には『構うな』と目配せをする。ベル君は意図は分かったようで難しい顔をしながら俯いた。

 

「オイラ知ってるぜ!『兎』は他派閥(よ そ)の連中とつるんでるんだ!売れない下っ端の鍛治師(スミス)にガキのサポーター、寄せ集めの凸凹(でこぼこ)パーティだ!」

 

言葉の矛先はベル君ではなくヴェルフとリリに向かった。調子の良い幼い声に、くっくっと男の仲間が喉を鳴らす。ベル君が一瞬席を立ちかけるがそれを止めるようにヴェルフ達は同時に口を開いた

 

「よせ、構うな。気が済むまで言わせてやれ」

 

「ベル様、無視してください」

 

2人が余裕そうに言うものだからベル君も少し落ち着いて聞き流す体制に入ろうとした瞬間。

聞き捨てならない声が聞こえた

 

「威厳も尊厳もない女神が率いる【ファミリア】なんてたかが知れてるだろうな!きっと主神が落ちこぼれだから(, , , , , , , , , , ,)、眷属も腰抜けなんだ!!」

 

小人族(パルゥム)がそう言った瞬間俺はそいつの後ろに回って、そいつの首元にナイフを突きつけていた。

 

ベル君がブチギレそうになったようにも見えたが俺の行動に呆気に取られる。

 

「悪いな、ヘスティア(アイツ)は俺んとこの主神の友達なんだ。眷属として、黙っちゃいられないだろ?取り消せ」

 

「………だ、誰だよてめぇ…」

 

周りは誰もが何も口にできず、静寂に包まれていたのを小人族(パルゥム)が破った。

 

「言ったろ。いまお前が馬鹿にしてた神の神友(とも)の眷属だ。それで?取り消すのか?」

 

しばらく硬直していたが皮肉気味に口を釣り上げて震える声で言葉を発する

 

「へ、へへへ……おい『兎』ぃ……図星かよ。しかも自分でかなわないと思って他の【ファミリア】のやつに助けてぶびっ?!」

 

言い終わる前に後ろから払い蹴りで椅子ごと蹴飛ばした。

 

「それ以上喋るな。脳天かち割って二度と喋れないようにするぞ。馬鹿!」

 

俺が大声を出したことで状況が掴めてなかった小人族(パルゥム)の仲間たちも怯みながらも一斉に立ち上がる。

 

「てめぇ!?」

 

「やりやがったな!!」

 

そいつらにテーブルが蹴り上げられ、宙を舞う。瞬く間に響き渡る皿が割れる音と支給の悲鳴。邪魔な障害物を取り払って1対4という状況にニヤついている冒険者。1人まだ席から立っていない奴もいるが、態度から察するにリーダー格か何かなのだろう。

俺はあくまで脅しとして眼鏡をとって奴らの『死』を視る

 

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私はヒュアキントス。今起きている酒場の乱闘騒ぎで突如仲間の後ろに回ってきた、見たこともないヒューマン。見たこともない男がLevel2の冒険者の背後を取れるはずが無い。小手先だけの手品だろうと割り切っていた。

仲間の1人がテーブルを蹴飛ばし、私たちと『ソイツ』との間に邪魔なものを退かす。

その間に眼鏡をとった『ソイツ』の目は蒼かった。それに私を含めた5人が疑問に感じる。——魔法か?スキルか?いや、魔法なら詠唱しなければいけないのでこの間合いでは使用など不可能。スキルであっても私はLevel3の冒険者。いかに強力なスキルだろうと新人に負けることはない。それはここにいる私の【ファミリア】の仲間全員に言えることだ。

 

私は座ったまま、他の仲間は立っている。周りにいた奴らも立ち上がり野次馬、観客同然に盛り上がっている。

私、いや私たちは『ソイツ』の目をジッと見る。スキルの警戒としてだ。

 

 

 

先ほども言ったが、その(.)は蒼かった。

濁ることの無い深い蒼。

それは綺麗だが、何処かゾッとする何かを秘めている。

 

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その(.)を見続けていたヒュアキントスは、バラバラになっていた。

 

鮮血と共に腕がとぶ。

胴が音も無く崩れ去る。

首がゴトッと落ちる。

 

 

 

一瞬にして〝ヒュアキントス〟だったはずの肉片に成り果ていた。




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