殺人貴はダンジョンに行く   作:あるにき

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短いっす


酒場での出来事 3

鮮血と共に腕がとぶ。

胴が音も無く崩れ去る。

首がゴトッと落ちる。

 

 

 

一瞬にして〝ヒュアキントス〟だったはずの肉片に成り果ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筈だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……………ハァ…………」

 

なんだ、今のは…………

思わず首に手を当てる。

実際には腕も胴も首も斬られてはいない。

魔法?スキル?あるいは呪詛?いやどれも違うと断言できる。あれはただの殺気(. .)だ。

向けられたのは殺気。それ以上でも以下でもない。それもまるで本当に殺された幻想を見てしまうほどの濃密な。主神の方針もあり対人戦闘というものに慣れているはずの私が恐怖している?しかしその証拠に手足、いや指一本動かない。私は今、殺人鬼(バケモノ)と対峙しているのだと、目の前にいるのは『死』の権化なのだと細胞の1つ1つに至るまで身体全てが理解した。

 

 

 

心の底からの恐怖。私は残る全ての力を用いて全力で逃げようと出口に走る

 

 

仲間の4人が地面に伏していることにすら気づかずに。

 

 

「ど、どけ!!邪魔だっ!!く、来るなぁ!!」

 

野次馬をどかして前にすすむ。

振り返ると死神(. .)はそこにいなかった。

慌てて辺りを見渡しても何処にもいない。しかし周りにいた野次馬どもの視線で気づいてしまった。ヤツは私の後ろにいるのだと

 

「————ッ!?」

 

振り向くとヤツは私の懐に入り込んでいた。

次の瞬間に私の意識は途絶えた——

 

 

——————————————————————

 

俺は名も知らぬ冒険者の懐に入り、

 

 

『閃走・六兎』を喰らわせる

 

腹部に二回、鳩尾に一回、肺に三回、計六回の蹴りを相手に喰らわせ意識を刈り取る。

地面に突っ伏しもう聞こえないとは思うが一応声はかけておく

 

「次はうまくやれ。何に注意し、誰を避けるべきかは分かっただろう」

 

そう言って眼鏡をかけて未だ呆気にとられている野次馬の中にいるベル君達の元に行こうとした瞬間。

後ろの方でテーブルが蹴飛ばされた。

誰もが視線を向ける。その先には灰色の毛並みを持つ獣耳の男——狼人(ウェアウルフ)というらしい——がいた。

 

「テメェ……何者だ?」

 

鋭い目つきと剣呑な威圧感に、周囲の人間は顔色を悪くする。

彼に同伴している仲間の服に刻まれたピエロのようなエンブレム。アルテミスから聞いた【ロキ・ファミリア】の人だ。都市最大派閥と名高い【ファミリア】の団員達、それが彼に萎縮しているのだからきっと彼は【ファミリア】でも幹部に入るのだろう。

 

「何者って………冒険者だよ。他に何か?」

 

粗暴で、刺々しく、はるかに劣るものの今まで戦ってきた吸血鬼(最強)と同じ本物(. .)の空気を感じ取る。

 

「ハッ!白々しいぞオラ!!テメェが出した殺気、的確に5人のみ(. . . . . . . )に出されていた。そうでもなけりゃここにいる野次馬どもが立ったままでいる(. . . . . . . .)説明がつかねぇ!!!」

 

確かにあれは今倒れている5人のみに向けたものだ。

 

「それにそれは……本気じゃねぇな?」

 

!そこまで見抜くのか……

純粋に凄いな

 

「まあ、否定はしないよ。それで?テーブル蹴っ飛ばしといて、要件はそれだけか?」

 

「ケッ!生意気なヤツだぜッ……ま、あの変態野郎の無様な姿が観れただけで今日んところは勘弁してやる。テメェ、名前は?」

 

細かい話はいい、と言わんばかりに名前を聞いてくる。聞きながら歩いて俺の1メートルほど前まで近づいて、俺を見下ろすように聞いてきた。

俺は狼人(ウェアウルフ)の目をまっすぐ見据えてハッキリと告げた

 

「遠野志貴だ。オマエは?」

 

右手を差し出す。

 

「【凶狼】ベート・ローガだ」

 

相手から見て左手で手を弾くように握手を返される。拒絶ではなく、少しは交友的なものだ。行儀がいいものではないが

クルッと背を向けて【ロキ・ファミリア】は酒場を後にする。

 

「シキさんっ!!」

 

ようやく緊張が解けたベル君たちが近寄ってくる。

 

「シキ様!いろいろ聞きたいことはありますが、その前に————貴方のLevelはいくつなのですか?」

 

「え?6だけど…」

 

いろいろ怒られると思っていたので唐突にLevelを聞かれて困惑してしまう

 

「Level…………」

 

ヴェルフが驚いたように口をあんぐりと開け、目を見開いて呟く。それはリリも同様で、次の瞬間2人は息ぴったりに声を揃えて

 

「「シックスゥゥゥゥゥゥゥぅぅぅぅぅぅうぅぅ????!!!!」」

 

その頃レンは酒場の騒ぎなどどこ吹く風で、すっかり眠りこけていた。




死にませんでした。
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