殺人貴はダンジョンに行く   作:あるにき

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お久しぶりです。遅れてすみません汗
そのくせ長くないです泣
唐突ですけどこの作品、ベル君不遇かも


ではどうぞ


パーティでの出来事 6

「こんばんは、ヴァレンシュタインさん、ロキさん。俺は遠野……」

 

そこまで言って思い出す。この世界では英国みたいに名前が先で苗字が後だ。この人たちは俺の出身地を極東の方だと気付いていないかもしれないし、ここは反対にした方がいいか

 

「シキ・トオノです。よろしくお願いします」

 

朱色の髪をした神、ロキ。

トリックスターなんて呼ばれていたこともあったらしい。下界に来てから人が変わったという話をアルテミスから聞いた。

 

「ふむ、その少年がアルテミスたんの眷族()か……」

 

ロキさんが俺をじっと見てくる。品定めのように。

朱色の瞳に凝視され、ジロジロと無遠慮に見られ、少々居心地の悪い時間が流れた。

 

「ふーん、中々肝が据わってるやん。ドチビの眷族()よりは評価できるなぁ」

 

何やら知らないが俺は合格らしい。

後ろの方で「なにをぉ?!」と言う声が聞こえるが無視しよう。

………無視できなかった。アイツ、ヘスティアがこちらにやって来た。

ピクピクと頰を痙攣させている。

そしてビッシッとロキさんを指差した。

 

「前のように直接言い争っても勝てないと知って、今度は眷族(こども)自慢かい!?あーやだやだっ、浅はかで見苦しい!」

 

パーティの料理を食い荒らしてたヤツの言うセリフではない。

 

「———あァん?」

 

ピキッ、とロキさんの顔に青筋が走る。沸点低いなぁ……

とりあえずこの二柱(ふたり)は見なかったことにしよう。

取っ組み合いになるような勢いで口論を始めた二柱(ふたり)をみてまたか、とヘファイストスさんがげんなりする。聞いてみればさっきまでは別のことで言い争っていたらしい。

ミアハさんも空々しい笑みを作り、ナァーザさん達は口を半開きにしていた。ベル君は唖然を通り越して絶望じみた顔をしている。そりゃ自分のとこの主神が口論始めたらな……頑張れ

その光景を見て他の神達がぞろぞろと集まって来た。

『今回もやって参りました』『祭りだ』『見ものだな』などと野次が飛んでいる。ヴァレンシュタインさんとベル君がなだめに行き、ヘルメスさんの仲介もあり、なんとかことなきを得る。

ヘスティアはベル君を連れて流れでどこかに行ってしまう。

もう片方の方も何処かに行くものかと思ったらそうではないようで、俺の方に戻って来た。

 

「ふー、ふー、……………ほんで当初の目的を忘れてたやないかい!!あンとドチビ!!………そんでシキ、話があるんやけどちょっとエエか?」

 

やっべ絡まれた。

 

—————————————————————

 

「はぁ……つまり、【ロキ・ファミリア】のホームに泊めてくれる、と」

 

俺はロキさん、ヴァレンシュタインさん、アルテミスのふたりと二柱(4人)で話している。

 

「ええ、ヘスティアに頼りきりではまだ、始まったばかりの彼女や彼の生活に余裕がなくなるかもしれませんし」

 

理由はわかる。確かにそれなら当分家を買うまでお世話になるつもりだった【ヘスティア・ファミリア】に迷惑はかからない。もっと言えばウチにはレンもいるのだ。今回のパーティでは眷族は1人というルールからアイツを連れて来ることはできなかったが、レンだって女の子なわけだし、ぎゅうぎゅうの空間に男ふたりと女神二柱と一緒というのは猫の状態でも苦かもしれない。

だから俺に断る理由はない。

 

「それにな?お前さんはオラリオ外から来た『Level6』や。弱小ファミリアじゃ庇いきれへん」

 

「庇う?」

 

「ああ、そうや。外から来たLevel6 これだけでも大騒ぎやのに、其奴が優しそうな少年となれば勧誘したら靡くかもしれない、なんて考えるやつらが出て来てもおかしくない」

 

世界1の都市で勧誘騒ぎとなれば暴力的な手段を用いる輩だって出るかもしれない。それをどうにかするためだとアルテミスは言う。

 

「トオノ……さん」

 

「?えっと、ヴァレンシュタインさん?」

 

実はまだ自己紹介をしていないため、ぎこちない返事を返してしまう。

 

「志貴、でいいですよ、たぶん同じ歳ぐらいだし、敬語も使わなくていいし」

 

「……なら私もアイズでいいよ。よろしくシキ」

 

俺も敬語はいいかと考えて普通に答える

 

「ああ、よろしく」

 

「人格に問題があるわけじゃなさそうやし、ウチの眷族()に合わせても問題なさそうやな」

 

ところでアルテミスからアイズさん……アイズ、もとい【剣姫】は戦闘狂だと聞いたような……

 

「シキが私達のホームに来るなら、その時は……戦ってみたい」

 

本当に戦闘狂なのか……

マジかよ、なんて答えればいいんだ?

 

「ま、まあ……その、うち……な?」

 

「うん、絶対」

 

めっちゃ目が輝いてる………

戦闘狂って……銭湯狂じゃだめなのか……

いや、それはそれで怖いな。

 

「それで志貴。流石に善意だけ、というわけではありません。条件というか、やって欲しいことがあるらしいです」

 

アルテミスが言う。

8人と同時デートとかじゃなければいいが……

あれは死徒と戦うよりも辛かった……あれ?頭が……?

 

「………?」

 

「どうしました?」

 

「いや、なんでもない」

 

さっきまでなに考えてたんだっけ?まあいっか

 

「それで、ロキさん

やって欲しいことってなんですか?」

 

「ああ、それな。簡単なことや。ウチの【ファミリア】に協力して欲しいんや」

 

それはあまりに大雑把というか、適当な言い方でイマイチ容量を掴まない

 

「協力?」

 

「ウチらみたいな大手の【ファミリア】はギルドの方から街の支援活動をやらされることがよぉある。それはまぁ、街でもトップの武力を有しているわけやから当然っちゃあ当然やな。そしてもう一つ。『遠征』や。」

 

「遠征?」

 

オラリオの外にでも行ってモンスター退治でもするのだろうか

ん?でも外のモンスターはあまり強くないって聞いたな。実際そうだったわけだし、そうするとわざわざレベルの低い場所に行くより、ダンジョンに行った方がいいんじゃないか?

 

「その顔だと知らないって感じやな。オラリオの冒険者の言う『遠征』はな、ダンジョンに潜るんや」

 

ん?ダンジョンに潜るだけなら冒険者はいつもやることだろ?そうすると……

 

「そうや。それこそ大人数でダンジョンを泊まりがけで攻略する」

 

「……なんのために?」

 

「そりゃあ、『冒険』するためやろ。

まあ、それだけやないで?ギルドから採集のクエストを受けたりとかダンジョンのさらに先に進んだりするためやな。」

 

「さらに先?」

 

「そうや。ダンジョンは今は別に1番奥まで隅々探検され尽くされたわけじゃないんや。まだまだ謎が深い。行けてない階層がある。そこに行くために遠征してるんや」

 

「なるほど……でも俺。戦うのはあまり好きじゃないんです。なにぶん冒険者になる前は貧弱体質だったもんで、何事も無駄なく穏便に済ませたいんです」

 

「ぬ、流石にこれだけ聞いたらあんまりやりたいとは思わんよなぁ……

しっかし戦うのが好きじゃないねぇ」

 

もっと言えは魔眼の行使のしすぎは冒険者になったから問題ないわけじゃない。体が強くなっても俺は『死』を理解してるわけじゃないんだ

俺と大先輩の違いはそこだ。

大先輩はなんでか知らないが、俺より魔眼保有者として優れていた。俺みたいにたまたま手に入れてしまったのではなく、持つべくして生まれたのだろう。詳しい事情は知らないが

 

「じゃあ、こう言ったらどうや?

 

お前さんとこの『特殊なお嬢ちゃん』も庇う……守っちゃる」

 

「!」

 

特殊なお嬢ちゃんとはレンのことだろう。確かにこの世界では特殊だ。

それを言ったら俺もだが、レンはその外見もある。可愛いだけならまだしもアイツの耳はすこしとんがっているのだ。なにも知らない奴が見たらハーフエルフに見えるだろうが、エルフが見たら気づくだろう。そんな未知な存在が見つかったときどうなるか……アルテミスはそれを危惧したらしい

というか

 

「……アルテミスから聞いたんですか?」

 

アルテミスに視線を向けるが概要はなにも言ってないと同じく視線で返される

 

「安心せい。特殊な子がいるって聞いただけやから。しかし、娯楽好きな神に見つかったら何されるか分からんなぁ?」

 

煽るように、俺に訴えかける。

事情を説明するかは別にして、ここは大人しく勧誘、というか協力するべきだろう。やたらデメリットがある気がするが気のせいだろ

それに俺やレンはなんでこの世界に来たのか全くわかってないんだ。

それを知るためにもいろいろ情報の入りそうな大手【ファミリア】にいることはプラスだと思う。

 

「分かりました、俺は———」

 

 

——————————————————————

 

「ところで、【ロキ・ファミリア】って大手なわけだからかなり団員いるんだよな?」

 

「うん……ホームもおっきい。館って言ってるけど、あれはお城……」

 

「城?」

 

近くに想像しただけで城作るような奴がいたので、どのぐらいの大きさなのか気になった。

 

「丁度ここからも見えるよ」

 

アイズが近くにあった窓の方に近づいて、指を指す。

 

「どれどれ……」

 

俺も窓の方を除く。

そうしたら、街の端の方——方角は北——に一軒馬鹿でかい家、というか城がそびえ立っていた。

 

「ほ、ほんとに城だ……」

 

城というにはすこし小さいかもしれないが、それでも今住んでいる廃教会の何倍もデカイ。

 

「アレ、【ファミリア】の全員住んでるのか?」

 

「うん、大体は」

 

「すごいな……」

 

ほんと団員何人いるんだよ

 

「あんなところに住んでるんならやっぱり食事とかも豪華なものなの?」

 

「ううん。料理人の人を雇ってるし美味しいけど、豪華って訳では無いと思う……」

 

「へぇ……アイズは、何か好きな食べ物とかあるのか?」

 

「ジャガ丸くん」

 

ものすごい勢いで食いついて来た。

目がキラキラしている。そりゃもう凄くキラキラしてる。よっぽど好きなんだろうな……

さっきからあまり表情の変化が無いからもしかしたら嫌われているのかとも思ったが、表情が乏しいだけなのだろうか

とはいえじゃが丸くんは聞いたことがある

 

「じゃが丸くんって、屋台とかにあるやつだろ?なんだか何処かのお嬢様みたいだと思ってたけど、案外庶民派なんだな」

 

「庶民派……そうかも知れない……

でもじゃが丸くんは美味しい」

 

彼女が着ているドレスは凄くよく似合っている。それこそ、冒険者らしさなんて全くなくって、何処かしらの令嬢と言われた方が納得できてしまう。

しかし、さっきの戦って発言と、好きな食べ物のことでアイズもやはり冒険者なのだと分かった。

 

「良かったら今度食べに行こうな。奢るからさ」

 

「………うん」

 

すこし微笑んだ。

その顔がやたら魅力的で赤面してしまったのは仕方ないだろう。

それからしばらくじゃが丸くんの話を聞いて会話を楽しんだ。

 

 




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