ちょっとぶりですね
長くなるよう努力はしているのです。です
ではどうぞ
遠野志貴という人間の本質は世捨て人のようなものなので、根本的にこの手のことで緊張はしない。というか気にしないのだ。全くというわけではないが、一般より緊張の度合いは低いだろう。その世捨て人の考えはズボラな面もあるが、元々の素養の良さもあり、大体のことを堂々と危なげなくこなせてしまうのだ。
俺はアイズのほっそりとした腰の辺りに右手を回すと、アイズも俺の肩に手を置いた。
音楽に合わせて踊り始める。
「———」
「んんっ——」
なんとなくイメージはしていたがアイズはかなり不器用なようだ。根っからの剣士であろう【剣姫】のアイズには社交的な踊りは縁がなく、勝手がわからないのか。
それに今のちょっとで勝手は掴めた気がする。
相手の目を見る。足の向かう先を、判断を、相手の声を、瞳から察するんだ。要は駆け引き。特別な技なんてない。
相手がどうしたいかを読んで、それを踏まえた上で、自分の動きに反映させる。余談だが、志貴のすごいところは相手に合わせているようで、しっかりダンスの原型をとどめている
「ほらアイズ、目を見て」
「わ、分かった」
瞳が交わる。交わったとき俺達はどちらからともなく、笑った。アイズも少しはコツが掴めたようで、
——右でいいかい?
——うん。
俺とアイズは揃ってステップを踏み始めた。
タケミカヅチさんと
『————うぉ?!シキ?!アイズたん??!!おいっコラッ………』
『はぁ?何を言って……………』
『志貴……!!』
これでもしアイズのパートナーがベルだったらヘスティアは絶叫していただろうが、志貴だったから……という理由だけで絶叫しなかったわけではない。
ロキやアルテミスも同様の理由。見てしまったのだ、
まるで絵画を動かしているようだった。
ふたりの踊りはまさにそれだ。ふたりとも美男美女。志貴の方はやや地味めだが、充分美形だし、着飾っていることもあり、その地味さは感じさせない。
志貴は
ただ純粋な空気。2人を取り巻く空気はそれだ。甘ったるいわけでも冷たいわけでもない。ただ純粋に踊りを楽しむふたりがそこにいた。
そしてそれに皆が見惚れていたのだ。………数人を除いては
『あっちゃー……ごめんベル君。先約がいたようだ』
言葉とは裏腹に少し苛立ち気味の顔。決してベルの方には見えないようにしているが。
『い、いえ、大丈夫ですよ。それにあんな急に踊れるかどうか………はぁ』
心の片隅で抱いていた、好きな女性と踊れるタイミングを失ったベルは影でため息ひとつ。
『………オッタル、ここにミノタウロスの群れを連れてこれないかしら?』
『不可能です、フレイヤ様……』
1番やばい視姦魔(志貴命名)が何やら物騒なことを言っている。
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お、悪寒が………?
「初めて……」
「ん?」
「ダンスを踊ったのは、これが初めて……」
アイズの唇が動いた。
俺とあまり身長差のない彼女は、ほぼ同じ目線で話しかけてくる。
「子供の頃は、少し、憧れていたけど……」
「そうなのか?」
「うん」
意外だ。
俺はアイズのことをあまりよく知らないが、それでも出会い頭に戦ってなんていう子は踊りなんかには憧れない。
なんだか嬉しくって口元が緩んだ。
「だから、嬉しい……ありがとう」
そして笑った。
一瞬、あどけない女の子の顔をその笑みの中に見て、目を奪われてしまう。
凛々しい彼女の表情からこぼれ落ちた、幼い少女の笑顔。
気づいてしまった。
「———どういたしまして」
照れを隠しながら少し間をおいて言葉を返す。
多分アイズは過去に、それこそさっきの笑顔のような、あどけない女の子のとき。大切なものを奪われたのだろう。あの笑みは奪われたものの笑みだ、と志貴は直感的に理解した。
でもきっと今は必要ないことだ。今聞くことじゃないし、気にすることでもない。
俺はいま笑うことができているだろうか。分からないけど、いまはアイズの笑顔が絶えないように踊りをふたりで楽しむだけだ。
腰と肩に手を添えあって
美しい弦楽器の調べに合わせて、金の長髪が揺れる。
ステップを踏んで俺達は、横に揺れてくるりと回る。薄暗い大広間、周囲で優雅に舞う多くの人々。
照らし出される光の下、俺は彼女と踊りながら、夢のような
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ダンスを終えた俺とアイズは、ダンスホールから元いたロキやヘスティアのいた辺りに戻ったら、そこにはアルテミスもきていた。
最後までリードして、手を離す。触れ合っていた箇所の感覚がまだ生きているようで俺が変な気持ちになっていると、アイズは緊張の糸が切れたように吐息をつく。
何人かの神や人に笑いかけられ、俺は少し照れながら感謝を告げた。
「突然付き合わせて悪かったな」
「ううん。楽しかったよ」
「はは、そっか。喜んでもらえて何よりだ」
そこからまた次の言葉を続けようとしたとき、アルテミスとロキがこちらに駆け寄ってきた。
「志貴!今度は私と一緒に踊りましょう」
男嫌いなら俺達のダンスなんてやらないと思っていたが、どうしたんだ急に。
「アイズたんもうちと踊ろー!!拒否権はなしやァ!」
ロキさんもそうだが、この2人目が怖い。俺とアイズ。2人揃って捕まってしまった。
しゅぱっと光の速さで身だしなみを整え、鷹揚に手を差し出してくる。
断れる訳もなく、苦笑する俺が応じようとすると———。
「——諸君、宴は楽しんでいるかな?」
主催者である、アポロンさんが登場した。
従者達とともに俺達のもとへ足を運び、正対する形になる。
いつの間にか舞踏の演奏は止まっており、その声は思いのほか響いた。いや、これはきっと
「盛り上がっているようなら何より。こちらとしても、開いた甲斐があるというものだ」
俺達が動きを止める中、他の招待客も自然と集まり、アポロンさんを中心に円ができあがる。
適当な言葉を並べた後、月桂冠を被る男神はアルテミスとヘスティアに目を向けた。
「遅くなったが……アルテミス、ヘスティア。先日は私の
「………いえ」
アルテミスは心底話すのも嫌そうに
「………ああ、ボクの方こそ」
笑みを浮かべているアポロンさんに、ヘスティアは返事をしつつ怪訝な表情をする。
ひとまずことを荒立てないようにヘスティアが話をつけようとすると。
男神は最初からみなまで言わせず、発言を被せてきた。
「
次には、そう要求される。主に俺とアルテミスに。
首を傾げて顔を見合わせる俺とベル君。アルテミスもそのときの状況を聞いているため、今の発言にはポカンとしてしまっている。その中ヘスティアだけはサーっと血の気が引いていた。
気づいたのだ。話を聞く限り手を出しても傷を負わせたのは
後からのち3名が気づく。ヤバイ、と。
割とこっちが悪いぞ、と。冷や汗をダラダラとだす
「私の愛しいルアンは、あの日、目を背けたくなるような姿で帰ってきた……私の心は悲しみで砕け散ってしまいそうだった!」
……ん?と現場にいた
まるで演劇を見ているかのように、アポロンさんは胸を押さえ、かと思うと両腕を広げて大げさに嘆く。左右に控えていた従者達は泣く素ぶりを見せ、極めつきによろよろと俺達の側に歩み寄ってくる影があり「あぁ、ルアン!」とアポロンさんはソレに駆け寄った。
ルアンと呼ばれた小柄な影、
「痛えぇ、痛えよぉ〜」
「……志貴とクラネルの話によれば、団長以外の一緒に来ていた【アポロン・ファミリア】の団員は志貴に睨まれただけで気絶したと聞いています。あなたのそれは明らかな言いがかりです」
「いいや、こっちには証人もいる」
パチン、と指を、弾くと、俺達を取り囲む円から複数の神とその団員が歩み出てくる。
証人……あのときいは酒場の客?俺は顔なんざ覚えていなが、都合が良すぎる。
しかし、其奴らは、口を揃えてアポロンさんの言葉を肯定し、そして低劣な笑みを浮かべた。
嫌〜な予感が胸の中に芽生えた。
「待ってくれ、アポロン!?あのときシキ君はボクのために怒ってくれたベル君の代わりに行動してくれたんだ!!アルテミスだけを責めるのは筋違いだよ!?」
「ああ、だからヘスティア。キミは
なっ?!っと戦慄しているヘスティアを目尻に志貴は動く。
「おい、アンタ。ルアンって言ったか。」
「痛えぇ〜……ん?な、なんだよ……」
志貴はルアンに話しかけた。
酒場でヘスティアを馬鹿にしていて俺がナイフを突き立てた
「アンタ……
「へ?」
何を言っているのか分からないと言った顔をされる。しかし、志貴は構わず続ける。
「だから、傷だよ。俺にやられたんだろ?なら俺がその治療費を払うのが筋だ」
「え、えぇと……」
「実は俺、『エリクサー』持ってるんだけど」
「!!??」
エリクサー。万能薬とも言われるそれは現存する治療系アイテムでは最高の回復力を誇り、瀕死の傷すらたちまち直す。
それを持っていると言われたら普通は驚く。なにせ額がとんでもないのだ。
しかりルアンが驚いた理由は別にある。なぜならこいつは別に怪我なんてしていない。実際に持っている訳ではなく、ブラフだが。きっとさっきのは志貴をはめるための罠だろう。
こうして、志貴がまた言葉を発っそうとした瞬間。
多少強引ながらアポロンさんが話を切った。
「……………他の【ファミリア】の団員を傷つけたというのに傷を直せば許されるとでも思っているのか!?見下げ果てたぞアルテミス!!———こうなればその腐った根性を叩き直さなければならない!!!」
口角を釣り上げ、こう言い放った。
「ならば仕方がない。アルテミス———君に
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