殺人貴はダンジョンに行く   作:あるにき

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こんばんわ
相変わらず短いですが、頑張りました汗
そして.......志貴でないです(ぼそっ


ではどうぞ


ベル・クラネルの逃走劇 前編

ベルとヘスティアは一緒にバベルにいくことになった。

ヘスティアの今日の仕事は【ヘファイストス・ファミリア】の支店の雑用だ。隠し部屋でレンが寝てしまったのを確認して部屋を出る。

階段を登って上がり出てくる小部屋は薄汚く、がらんどうの本棚には埃がうっすら積もっていた。

ヘスティアが階段を上がる音を背で聞きながら、お先に狭い部屋を後にする。

祭壇が備わった礼拝堂にも似た広い屋内は、相変わらず床のタイルから雑草が伸び放題だ。

天井、いや屋根にぽっかりと空いた大穴から青空が見えた。廃墟然とした教会内を見渡しながら、流石に綺麗にした方がいいだろうか、とベルは考える。

 

(…………魔力?)

 

屋内を突っ切っていたベルは、ふと顔を上げた。

詠唱中の魔法行使の際に感じる出力の余波、それを朧げに感じたのだ。あくまでかすかなもので、本職の魔導士でもないベルにはこれが意味するところはわからない。

一度足を止めたベルは周囲を軽く見渡し、振り返る。背後では小部屋から出てきたヘスティアが、不思議そうな顔で首を傾げた。

怪訝な思いを抱くベルは、彼女を後方に置いて、扉のない教会玄関口を1人で潜る。

 

「————」

 

そして、半廃墟と化している教会から一歩出て、朝日を浴びた瞬間。

周囲の建物の屋根や屋上にたたずむ、無数の影が目に飛び込んできた。

自身を見下ろす数えきれない瞳。正面玄関を包囲するように配置された彼等、冒険者は、弓矢、杖をそれぞれ装備している。

 

———【アポロン・ファミリア】。

防具に刻まれた太陽のエンブレムを視認し、凍りつくベル。

待ち伏せていた冒険者は彼が出てくるなり武器を構えた。弓使い達が一斉に矢を引き絞り、詠唱を済ませ待機状態であった複数の魔導士から大きな魔力の風が吹き上がる。

小隊長と思しき、襟巻きで口元を覆い隠すエルフ、彼が片手を上げた瞬間———ベルは脇目も振らず反転した。

未だに教会内にいるヘスティアのもとまで疾走し、驚く彼女に抱き着いて、押し倒すように礼拝堂に飛び込む。

間髪入れず、エルフの手が振り下ろされ——大爆発が起こった。

 

 

——————————————————————

 

相次ぐ轟音に、発生する衝撃波。

魔法と爆薬が結わえられた矢が着弾し、教会が破壊される。

鏡面玄関の真上に立っていた半壊した女神像が、ガラガラと音を立てて崩れ落ちた。

 

「っっ!?」

 

咄嗟に教会の裏口から出てしまったベルはあることを思い出す

 

——中にまだレンちゃんがっ…!

 

英雄になりたい彼にとって、レンという女の子を見捨てることなどできはしなかった。

しかし、物事は意思だけでは進まない。考えに行動が伴わなければ意味がない。

その現実を突きつけるように刺客がベルを襲う。

 

「——シャアッ!」

 

「!?」

 

戦慄する暇も与えぬ間に、あらかじめ裏手で待ち構えていたのか、複数の獣人が短刀を持って頭上より奇襲した。

その瞬間、ふと教会が目に入ったが酷い有様だった。

粉塵を巻き上げ前半分が瓦礫の山と化す、見るも無残な教会(ホーム)にベルとヘスティアは息を飲む。

隠し部屋は大丈夫だろうか?中にいるレンちゃ——

その思考は長く続かず奇襲は続く。しかしそのとき教会の、それも地下室への入り口から中に入ろうとするヒュアキントス(, , , , , , , )をベルはしっかりと見た。

 

「——くっ!!」

 

狙いはそっちかっ!!

急いでそっちに向かおうとする。が、無論奇襲者達の斬撃の雨は降り止まない。《ヘスティア・ナイフ》を咄嗟に構え、ヘスティアを守るように立ち回る。

弾き、躱し、鎧を浅く斬りつけられながら——あえて立ち込める砂煙の中に飛び込んだ。

レンを助けに行かなければならない、しかしこのままではおそらく捕まる。なら、一先ずはなるべく多くの敵をこの場所から遠ざける。

敵方が躊躇する気配を後方に置き去りにし、ベルは土地勘を頼りに裏道の一つへ逃げる。

 

「ぶはっ!?」

 

煙を抜けた瞬間に、大きく息を吸い込むヘスティア。

顔を埃まみれにするベルは彼女を横抱きにし、追っ手から逃げるべく走った。

 

(———仕掛けてきた!?)

 

白昼堂々と、街の中で!

容赦なく攻撃を加えてきた相手、【アポロン・ファミリア】にベルは動揺を重ねる。

闇討ちや迷宮の奇襲どころではない。敵は堂々と、ためらいなく、この地上でベル達に攻めかかってきた。

どうして!?戦争遊戯(ウォーゲーム)に応じなかったのは【アルテミス・ファミリア】のはず!こちらを攻撃する理由はないのに!!

【アポロン・ファミリア】は【アルテミス・ファミリア】を滞在させているだけの【ヘスティア・ファミリア】まで敵とみなした?

おかしすぎる。

外部の顰蹙(ひんしゅく)を切って捨て、ギルドの取り締まりさえ恐れずにすることなのか?

いまだに混乱が抜け切らず頭が疑問で埋め尽くされる中、不意に——『【ファミリア】同士の抗争で街が戦場になってしまうこともある』——エイナの言葉が蘇る。

己が今まさに、噂に聞いた派閥間抗争の当事者となったことを、ベルは悟ってしまった。

 

「ベル君、襲ってきたあの子達は………!?」

 

「【アポロン・ファミリア】ですっ!」

 

幅三M(メルド)ほどの細い路地裏を走りながら、胸の中のヘスティアに叫ぶように答える。ちなみに、吸血鬼などいない。

彼女はベルの肩から顔を出し、すでに遥か後方、煙に満ちて崩れ落ちた教会を睨みつけた。

 

「あの中にはまだレン君がっ!!」

 

「くっ!!」

 

背後を振り仰いで認める教会の廃墟跡——帰る(ばしょ)を失い。一人捕まったかもしれないという疑惑。この二つがベル達に衝撃を与えていた。

 

 

 

 

そしてしばらく敵方から逃げ惑いながらついに行き止まりに直面した。

ホームの周辺、土地勘という利がありながら相手の目を振りきれない。己の足を最大限に活かして次々と新手が沸いてでる状況に、ベルは唇を噛みながら、錯綜する裏道をかけていく。

 

「ベル君、行き止まりだ!?」

 

振り落とされまいと必死にしがみついているヘスティアの悲鳴。

道の奥、巨大な人家の壁が立ちはだかる。

袋小路に追い詰められたベルは、そこから更に速度を上げた。

 

「掴まってください!!」

 

はっ?とヘスティアが目を丸くする中、勢いをつけて大股で走行する。

見る見る内に迫ってくる壁面を前に、ベルは長い助走を利用し——踏み切った。

 

「ぅ——わあああああああああああああああああああああああああああっ!?」




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