殺人貴はダンジョンに行く   作:あるにき

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ちょっとぶりです。それなりに忙しかったため少し空きました 


ではどうぞ


舞台の端で役者は踊らされる。(それぞれの動き)

「アルゴノゥト君が襲われてるって〜!」

 

都市北端、【ロキ・ファミリア】ホームの長邸。

街に出て情報を集めてきたティオナがら団員達が集まる応接間に駆け込んできた。

 

「ティオナ、本当……?」

 

「うん、【アポロン・ファミリア】が総出であの子を追いかけ回してるらしいよ!」

 

歩み寄って尋ねてくるアイズに対し、アマゾネスである少女は自分が見てきたものを語る。

彼女の説明を聞いたアイズは、感情の乏しい表情にかすかな心配の色をうかがわせた。

 

「ここまで表立っての抗争が行われるのも久々じゃな」

 

「アポロン派は、ギルドの罰則(ペナルティ)も覚悟の上だろう。」

 

ソファーの上に座りながらドワーフのガレス、エルフのリヴェリアが客観的に分析する。

自派閥の団員達も先程からホーム中でざわついている中、外で何が起こっているのか彼等は感づいていた。

 

「………その、そこで優雅に紅茶飲んでる人は?」

 

優雅に紅茶を飲んでいるのはアルテミス。志貴が行ってしまって客間に取り残されたフィン、ティオナ、アイズ、そしてアルテミスは客間から長邸に移動した。すぐに【ロキ・ファミリア】の幹部達が集まる中、我が物顔で紅茶を飲んで誰とも話さない彼女にとうとうしびれを切らし、ティオネが口を開いた。

 

「私ですか?私は【アルテミス・ファミリア】の主神アルテミスです。」

 

「え、ええ……それは聞いたんだけど……」

 

「あれ?そういえばロキは?」

 

次にティオナがふとした疑問を口に出す。

 

「少し前に見物に出かけやがったぞ、あのアホ女神は……」

 

アルテミスを除くその場の全員が「これだから神ってやつは」と思いはしたものの、アルテミスがいる前なので自重した。

 

「アイズ、貴方は何もする必要はありません」

 

リヴェリアやティオネ達がそれぞれ会話する一方、先程から微妙に落ち着きのない様子を見せるアイズにアルテミスは声を掛けた。

 

「その通りだよ、アイズ」

 

「アルテミス様……フィン……」

 

アルテミスは紅茶を啜りながら言葉の続きを紡ぐ。

 

「志貴が行きましたから。」

 

そうなのだ。彼は爆発音の発信場所が自身のいた教会だとわかった瞬間に飛び出した。……正確には飛び出したらしい(, , , )

 

「僕達はまだ彼の実力を全く知らない。オラリオ外(そと)からきた冒険者がどの程度なのかは知りませんが——」

 

志貴が向かったから大丈夫だ。などと言われても納得はできない。もともとこの抗争に手を出す気は無いがアルテミスに、もう少しましな説明をしてもらえるように言おうとするが、言葉は途中で遮られる。

 

「あら?ではあなた達は見えた(, , ,)の?」

 

「「!!」」

 

その言葉を自分の眷族を馬鹿にされているようにでも捉えたのかアルテミスは核心をつく。

2人とも何一つ言い返せない。

そう、あの時志貴は一瞬でレンが襲われていると直感し、どこからもなく『突然いなくなっていた』

それはLevel6の動体視力をもってしても不可能なほどのスピードだったのか。それとも気配を隠したのか。——或いは両方か。

 

「アイズ、すみませんが今が何時だか教えてもらえませんか?」

 

「え?」と思いながらも時間を教える

 

「なるほど……15分も経っていますね……志貴にしては遅すぎる(, , , ,)……大方道草食ってるだけでしょうが……」

 

「あの、アルテミス様………一体何が始まるのでしょうか」

 

フィンはアルテミスの状況に似合わない堂々としすぎた態度に何が始まるのかうずうずしてしまっている自分に気づく。

 

「もう終わりましたよ。」

 

そう言い終えてすぐこの部屋の扉が、トントントン、と、不器用な、慣れていない音で叩かれた。

ギィーと音を立ててドアから顔を覗かせたのは2人。

それは先程いなくなったはずの志貴と、10歳ぐらいの少女だった。

 

 

 

 

——————————————————————

 

「あれ?ヘルメスさんにアスフィさん。こんなところで何してんすか?」

 

ヘルメスとアスフィは同時に振り返る。

そこにいたのは、遠野志貴。そしてどこか貴族然とした服装の可愛らしい少女。

少し前のアポロン『宴』に参加し、アポロンに戦争遊戯(ウォーゲーム)を挑まれていた、オラリオ外(そと)からきたLevel.6

ヘルメスにとっては気を利かせてベルとアイズが踊るように仕向けようとしたものの、邪魔された。つまるところ、ベル・クラネルの英雄譚に不要な存在だと感じていた。

ヘルメスは神といえど、旅を続けてきた者だ。故に人を見る眼、英雄を見極める眼は確かな者だと自負している。そのヘルメスが志貴と初めて目を合わせた時に感じた感情は『恐怖』だ。

軽く話して、少し様子を見ただけでも彼の人間性は良い人の部類だと判断できた。しかしこの感情、この『恐怖』は何だ。

冒険者のソレとは違う。もっと歪んで禍々しい、ナニカ(, , ,)だ、そう考えていた。

その男が今まさに全く気配を感じさせず、真後ろまで迫っていた。

 

「…………や、やぁシキ君。こうして話すのは2回目かな?どうしてこんな場所へ?」

 

平然を装いそう言葉を返す。

 

「いや、【ヘスティア・ファミリア】の教会(ホーム)が爆発したのを見て不安で戻ってきたんすけど、まあ、見ての通りレンは大丈夫だったのでベル君探しに行かないとなって、捜索中です」

 

「な、なるほど………しかしシキさん。今、ベルさんはかなりあちこち移動しながら応戦を続けています。それに……」

 

アスフィが冷静さを取り戻し、志貴と話し始める。

それに、に続く言葉は【ガネーシャ・ファミリア】によって封鎖されている、の意だった。

 

「ベル君やヘスティアは恩人なんです。だから、俺は見捨てません。」

 

どうやって封鎖されている場所へ行くのか、という質問には答えず、「じゃあそろそろ行きます」と軽く会釈して、屋根から降りる志貴。レンも同様に下に降りる。

降りる間際、志貴とヘルメスは目があった。その目を見てヘルメスは全てを悟った。

先ほどの2人の会話を聞かれていた。

話してまずいことは言ってないものの、今回の事件に一枚噛んでいることが完全に露見してしまった。

急いで口止めを、とヘルメスとアスフィは顔を見合わせ、屋根から見下すように降りていった志貴に声をかけようとしたものの、そこにはもう志貴はそこにはいなかった。

 

「ヘルメス様………シキさんの隣にいたあの少女は……」

 

「あぁ、アポロンが誘拐を企てていた少女だ。」

 

「やはり………」

 

 

 

 

 

 

 

いったいどんな速度でここまで戻ってきたと言うのか。

【ロキ・ファミリア】から戻ってくるのに、バベルからでもなければ40分はくだらない。ましてこの人混み。

 

 

 

 

「シキ・トオノ………これは警戒するべきか」

 

 

 

—————————————————————

 

8本のメインストリートが集結する都市中央、中央広場(セントラルパーク)

白亜の巨塔『バベル』の前で、大刀を背に備えるヴェルフと獣人に変身しているリリはたたずんでいた。

 

「………遅すぎないか?」

 

「そう、ですね………いくらなんでもあのベル様がここまで遅刻して、一報も届けないなんて」

 

大刀とバックパックを備えるヴェルフとリリは、今日から再開される迷宮探索のため、ベルを待っている最中だった。ちなみに志貴は用事があるようで来れない。明日から参加という形だ。

広大な中央広場(セントラルパーク)内では多くの冒険者が移動を続けている。

理由はおそらく今さっきなった大きな爆発音(, , , , , , , , , , , , , )だと考えるのが妥当だ。

 

「…………嫌な予感がするのは俺だけか?」

 

「………」

 

白布に包まれたベルの新武器(ナイフ)を片手に、ヴェルフは懸念を口にする。リリは黙りこくった。

 

 

 

ふと、その瞬間。

ヴェルフの視界にまるで蜘蛛の如き動きで通行人の誰にも気づかれない速度で走るシキ(, ,)の姿を一瞬。本当に一瞬だけ捉えた。

 

「行くぞ!」

 

何かを考える前に早く行かないとベルがまずい、という状況を直感したヴェルフは立ち上がる。

 

「え?ど、どうしたのですかヴェルフ様!?」

 

「いいから行くぞリリ助!!」

 

強引に走り出す彼を追いリリも走る。

彼等の足が向かう先は、緋色の炎雷が鳴り響いた西方、第七区画。




順番としては、ロキファミリア→ヴェルフ達→ヘルメス達。です。
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