殺人貴はダンジョンに行く   作:あるにき

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どうもこんばんは
夏は時間があるものかとも思いましたが、案外そうも行きません。
と、まあ言い訳でしたが遅れてすみません。そして短いです(いつもの)
感想は主の活動原料なのでどしどしお願いします(懇願)
ズイ (ง˘ω˘)วズイ




ではどうぞ


手加減

鉄と鉄がぶつかる音。

激しい剣舞の音。

凄まじい速度で繰り出される紅緋の斬撃を蒼い短刀で対抗する。

細剣、サーベルとナイフの幾度もぶつかり合う。

片や魔法で風を使い、片や手に握るナイフ1本で対抗する。

冒険者同士の白熱した試合のはず。

ただ一つおかしいのは。

さっきの試合を演出せしめた黒髪に見慣れない服装の少年が命に関わりそうな攻撃以外の大半を食らっている(・・・・・・)こと。

違和感はこの試合のレベルについていけない私ですら感じてしまった。というかありすぎた。

一体これはどういうことなのか。

それは前衛にドが付くほど素人な私でもわかることだった。

 

 

 

 

 

 

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「し、終了!勝者、アイズ・ヴァレンシュタインさんっす!」

 

試合は終わり観客は黙る。

当然であれば観客は盛り上がるはずであるが今回はそうもいかない。

先程のティオナとの試合であれだけ圧勝した男が今回の戦いで、為す術なく地に伏しているのだから。

アイズが志貴の方へ歩く。

ティオナも向かう。

レフィーヤですらも。

 

しかしそれは身体をいたわるための行動ではなかった。

またそれは観客、【ロキ・ファミリア】の一同も気持ちは同じであった。

アイズとティオナ、レフィーヤが同時に口を開く。

 

 

「「どうして手を抜いたの(ですか)!!!???」」

 

「なんで.....?」

 

ティオナ、レフィーヤが口を揃えて同じ発言をして、アイズが遅れてこの場の全員の疑問を代弁した。

 

「な、何故それを...!?白熱の試合を演出してギリギリのところで負けるという角の立たない完璧な作戦の筈がっ!」

 

今の試合でボロボロになり、軽く血を口から垂らしながら本気でわからないという顔で少年は驚愕した。

 

「ギリギリって....ほぼモロ受けてたじゃないですか!」

 

「そうだよ!だいたいさっきのあたしとの試合で圧勝した癖に今度はぼろ負けしてたら違和感ありすぎっ!」

 

「そもそも角が立たないってどういうことよ?」

 

いつの間にかティオナの隣にいたティオネが言う。

 

「え?だってアイズってぶっちゃけ戦闘狂だろ?これでもし勝っちゃったらこれからも挑まれるじゃん。だから自分より弱いヤツことなんて気にしないだろうし、ここは負けておくかって」

 

ごフッ、と血を吐いた志貴を軽く無視してこいつの軽率さ加減にみんな驚く。

いや正確にはレフィーヤは心配している。

 

「さっきの試合は無効....もう1回」

 

アイズが静かに、かつせっかちにそう言って志貴に手を差し伸べ催促するがボロボロの志貴にその手を取れるはずもなくーー

 

「ば、バカ言うなっ!この傷自体はホンモノなんだぞっ!?血溜まり出来てるじゃないか!」

 

志貴は作戦の失敗に若干テンションを下げながらもう無理だと抗議する。

血溜まり出来てるとか言いながら、這いつくばっていても割と普通に会話している時点でしぶとさは相変わらずだが。

志貴は秋葉に同じことをやって似たような展開になったなァ、と自分の演技力の無さに落胆した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

志貴はその日ボロボロの状態で回復魔法が使える【ロキ・ファミリア】のメンツに回復してもらったが、何故だか志貴を回復する場合回復が遅く、半分程度しか回復出来ず、かと言って大してお金も持っていないためポーションも買えず、どうしたものかと悩んでいたところを【ロキ・ファミリア】の備品借りればいいんじゃね?後払いで

と思いつき速攻聞きに行くも、以前までファミリア総出でどこかに行っていたらしく、ポーションがそこをついたため明日にでも買いに行く予定だったらしい。

ボロボロがボロぐらいの状態に改善されたとはいえまだ怪我人。

しかし現実は無情で。

止血もして我慢すれば動けるようになったため買い出しに付き合うことになった。アイズはあれで手を抜かれたことにそれなりにご立腹らしい。【ロキ・ファミリア】の人からも不評をうけてしまい肩身が狭かったので逃げ出したかったのもあるので幸いではあるのだが。

でぃあんけ....なんかそういう神の【ファミリア】に行くらしく、またそこで看板娘ちゃんと仲良くなる訳だが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

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「しかし、彼の実力を見るタイミングがひとつ失われてしまったね」

 

先程の試合を【ロキ・ファミリア】の建物内から見ていた人物が一人、団長のフィンだ。

階は1階。見ていたのは中にはに沿った場所にある部屋の小窓からだ。

本来なら中庭に出て見物するか、テラスにでも行きたいところだったが、話の内容が内容なため中止し少し見づらいところからになったのだ。

 

「ああ、しかし戦闘時の技術面では期待は出来そうじゃないか」

 

「たかだかナイフであのウルガを凌ぐなんぞ馬鹿げとるのぉ!」

 

ガハハ、豪快に笑った。

フィンを挟むようにして立つ二人はリヴェリアとガレス。

この三人は【ロキ・ファミリア】の初期メンバーで当初こそとんでもなく仲が悪かったものの今は固い絆で結ばれている。

たぶん、きっと、おそらく。

その三人が見ていたのは先程ティオナとアイズと戦った志貴。

力をかなり制限していたとはいえ、息一つ乱さず圧勝。

しかも武器のリーチの関係上一対一ではすこしフェアではなかったはずがこれを勝ってみせた。

 

「ああ、たしかに彼は凄い。でも僕があの試合で見たかったのは彼の『底』だ。『これが出来る』ではなく『ここまで出来る』というのが知りたかった。

そうでないと【遠征】で彼への指示が出しにくいからね」

 

そのためアイズとの試合には一種の期待をしていた。

その期待はアイズの方に、だ。

さっきの圧勝ぷりを見ればアイズも負けじと頑張るはずだ。ただでさえ手加減や力加減といった加減(・・)が苦手な彼女は絶対に本気を出す。【ロキ・ファミリア】(うち)のエースをぶつければ彼の本気になった姿が見れると思ったが、それは志貴思わぬ行動のため不可能になってしまった。

 

「しかしまぁ、よくあんな演技で白熱した試合を演出、なんて言えたものだね。ユーモアがあって良いとは思うけどさ」

 

やれやれ、といった様にフィンが肩を竦めた。

 

「次の【遠征】までには時間がある。Levelの差もあってまず【アポロン・ファミリア】に敗北することはないだろう。目の前の問題が全て解決すれば、彼とダンジョンに行く暇ぐらいはできるだろうさ」

 

リヴェリアがそう言うが問題はその問題だ。

 

「確かにその通りだけどーーー」

 

「あの小僧のとこの【アルテミス・ファミリア】が抱えてきたナニカ、じゃな」

 

顎髭に手を添えながら思考する。

こちら側が把握しているのは『レン』という少女のことのみであった。

 

「ああ、まず女性限定の【ファミリア】だったはずの【アルテミス・ファミリア】に入れた経緯。ティオネが言うには崩壊した可能性が濃厚らしいが....」

 

「なに?あの【ファミリア】には同胞(エルフ)もいたんだぞ!?」

 

リヴェリアの顔が驚愕で染まる。ありえない、と。

エルフにとって同胞の命はとてつもなく重い。

このままではシキに理由を問い詰めかねないリヴェリアを窘めながら話を進める。

 

「あそこにはLevel.5もいたはずじゃぞ。おおよそオラリオ外(そと)に【ファミリア】崩壊の要因なんぞありゃあせん。

と、すれば」

 

「ああ、おそらくは怪物(モンスター)だろう。しかもオラリオ外(そと)に置いてはかなりのイレギュラー」

 

強化種などではないだろう。

アレはダンジョンによる後付けの強化であって、外のモンスターには適用されない。

それが仮に現れたとして、そして【アルテミス・ファミリア】が崩壊したとしたなら、それをどうやって打ち破ったというのか。鍵を握るのはシキかレンか。......あるいは両方。

特にレンについては著しく情報が全くない。

シキのように試合をした訳でもない。

それどころか一言だって言葉を発していないのだ。

シキがベル・クラネルの救出から帰ってきたときに初めて対面したが、シキがアルテミスに怒られている中、シキの隣に座りくすんだ瞳で虚空(・・)を眺めていた。

 

 

 

 

それっきり言葉を出すものが居なくなった部屋の中でフィンは一人、目を閉じて【アルテミス・ファミリア】(あの三人)が秘める秘密に思いを馳せた。

 

 

三人は既に気づいていない。

 

そしてその部屋の窓辺には大きなリボンをつけた毛並みの非常に良い黒いネコが感情というものを感じさせぬ虚空(・・)の瞳で眺めていた。

 

 

 

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夕闇が都市に満ち、空が蒼く移ろっていく。

都市中心部にそびえ立つ白亜の巨塔は、魔石灯を灯し始める広大な街並みを今も見下ろしていた。

 

「フレイヤ様、命じられていた物品(もの)が準備できました.......フレイヤ様?」

 

バベル最上階。

背後からかけられた従者(オッタル)の声に、フレイヤは反応を示さなかった。

怪訝そうな表情を浮かべる彼に美しい長髪を晒しながら、窓辺の椅子に腰かけ、視線の先の光景を眺める。

 

「......ふふっ」

 

銀の瞳が魅入るのは、服の下からでも傷を負っていることが察せられる見たことのない服装に()の入っていない眼鏡をかけた少年だ。

大通りを複数人で歩いている。おそらく帰宅中なのだろう。

彼が【ロキ・ファミリア】のホームに移住していることは知っている。アルテミスと一緒に門番に萎縮していたのを見ていたのだ。

彼は明らかに荷物持ちにされておりポーションなどの冒険者必須の道具を落とさないように慎重に運んでいる。一人だけ少年の身を案じる後ろ結びの少女がいるが、荷物持ちを手伝おうとすれば逆に少年に遠慮されていた。

 

 

「......本当に、アポロン派の行動に目を瞑ってよろしかったのですか?」

 

オッタルは主たる神に問いかける。

細い指で耳の後ろに髪をかけながら、彼女はクスリと小さく笑う。

 

「ふざけた真似をするからどうしてやろうかとおもったけど....そもそもアポロンでは彼の相手は勤まらない」

 

視線を眼下の少年に縫い付けながら、銀の瞳を細める。

 

「でも」

 

女神は欲望満ちた微笑みを浮かべて言った。

 

「これでようやく、彼の輝きが見れる」

 

 

 

 

 

 




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