ムース1/2   作:残月

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ムース、怒りの血の拳

 

 

 

俺は絶望しきっていた。あれだけ手を尽くし、対策を練ったのに……原作通りに事は進んでしまった。

 

 

「ふ、く……かはは……」

 

 

口から乾いた笑い声が漏れる……なんか、もう……どうでもよくなってきた。

 

 

「お、おい……ムース?」

 

 

乱馬が俺に何か話し掛けて来るが、ろくに聞こえない。何処か遠くの出来事の様だ。どんだけやっても原作には敵わないって事なのか……

 

 

「良牙、お前が余計な挑発をシャンプーにするから!」

「何を!乱馬、お前がシャンプーを倒しちまったんだろうが!」

 

 

乱馬と良牙が言い争って責任の擦り付けをしていた。コイツ等、責任取る気、一切ねーな。

 

 

「そもそも女傑族のふざけた掟が悪いんだろうが!」

「だとしても、あかねさんを巻き込むな!」

 

 

もう……キレても良いよね?

 

 

「つまり、お前等は自分に責任は無く……尚且つ、此方に責任の所在を押し付ける……と?」

 

 

ユラリと俺が立ち上がると乱馬と良牙は俺に視線を戻した。俺が……何年も……何年も……

 

 

「ま、待てって……落ち着けよムース」

 

 

俺が何年も悩み苦しんでいたってのに……シャンプーはいつか乱馬に惚れてしまうのだろうとシャンプーに俺の思いを伝えられなかったってのに……コイツ等は無責任に……そう思った瞬間、俺の頭は沸騰した。

 

 

「もう許さん、叩きのめしてやる!」

「うわっ!?止せって!」

「自業自得だな乱馬」

 

 

俺が袖から九節棍を取り出して乱馬に襲い掛かると、良牙がドヤ顔をしていたのでイラっと来た。

 

 

「テメェも同罪だろうが!」

「どわっ!?」

 

 

ドヤ顔の良牙に手裏剣を投擲する。驚いた様だが俺を睨み付けてきた。

 

 

「恨みは分かるが!」

「売られた喧嘩は買うぜ!」

 

 

乱馬と良牙が同時に掛かってきた。よかろう、相手をしてやろう。主に憂さ晴らしだがな!

 

 

「せやっ!」

「おっと」

 

 

乱馬が先に拳を振るって来たので俺は数歩退がり、距離を取る。俺は乱馬の拳を左腕で受け止めると右手で持っていた九節棍を乱馬の脇腹に叩き込む。

 

 

「ごふっ!?」

「隙有り!」

「ねーよ」

 

 

脇腹の痛みに怯んだ所で良牙が蹴りに来たので袖から鉄球を出して良牙に放つ。

 

 

「甘い……ながっ!?」

「甘いのはお互い様だな」

 

 

良牙は鉄球を避けたが、その為に蹴りの速度が落ちたので距離を詰めて鳩尾に膝をめり込ませた。

 

 

「つ、強い……」

「俺も伊達に女傑族の生まれじゃないんでな」

 

 

乱馬が脇腹を押さえながら立ち上がってくる。こっちは長年、婆さんに鍛えられてるんだ。簡単に負ける訳にはいかない。

 

 

「へへっ……シャンプーの事や掟の事は悪いとは思うけど、強い奴と戦えるのは嬉しいぜ!」

「待て、乱馬!奴を倒すのは俺だ!」

 

 

乱馬は笑い、良牙はライバルの乱馬が自分よりも俺に興味が向いている事に怒ってる。やれやれ、一瞬で忘れてら……なら、こっちも本気でやるか……

 

 

「来いよ……相手になってやる」

「行くぜ!」

「負けるか!」

 

 

俺は両手に鉤爪を装着すると構えた。それと同時に乱馬と良牙も襲ってきたが、俺は先に飛び上がると良牙に狙いを定めた。

 

 

「ふ、俺にこんな武器は通じ……なん!?」

「まず、一人」

 

 

俺が右手の鉤爪を振り下ろすと良牙は俺の右腕を捕らえ、押さえ込もうとしたが俺は体を捻り、左膝を良牙の顔に叩き込んだ。

 

 

「良牙!?ちぃ、ムース!」

「うりゃ!」

 

 

良牙が敗北した事に驚く乱馬だが速度を落とさずに迫ってきたので、俺は右手の鉤爪を外して乱馬に投げる。

 

 

「こんなのに当たるかよ!」

「当てるのが目的じゃないんで……な!」

 

 

乱馬は鉤爪を避けるが俺は元々、鉤爪を避けられるつもりで投げていた。投げた鉤爪は背後の壁に刺さる。実は鉤爪はロープで繋がっているので、俺は乱馬にロープを絡ませて体勢を崩させる。更に左手の鉤爪も同様に投げるが、右手の時とは違って真っ直ぐに投げずに円を描く様に投げて乱馬の体にロープを巻き付ける形にした。そして体勢を崩していた乱馬は避ける事も出来ずに、ロープにグルグル巻きにされてしまった。

 

 

「勝負有り……だな、乱馬」

「ま、まだ負けちゃいな……と、どわ!?」

 

 

俺が勝負有りと言うと、乱馬は無理矢理立ち上がろうとして庭の池に落ちた。

しかも乱馬はロープでグルグル巻きの状態なので当然起き上がれずに池に沈んだままだった。

 

 

「ったく……」

「う、え……げほっげほっ……」

 

 

女になった乱馬を引き上げると咳き込んでいた。まあ、急な事で動揺した上に溺れ掛けたから呼吸が乱れるのも当然か。

 

 

「懲りたか乱馬?」

「ま、まだまだ……」

 

 

水に落ちて女になった状態で俺を睨む乱馬だが女の状態で睨まれても怖くねーな。しかもロープ巻かれた状態で身動きとれないだろうし。

 

 

「この響良牙を侮るな!」

「ほらよ」

「うわっ!?」

 

 

良牙が背後から襲ってきたので乱馬を投げ渡す。高めに投げ渡した為に良牙の顔の位置に乱馬の胸が当たっていた。良牙は乱馬を支えきれずに、そのまま倒れてしまう。

 

 

「女の胸に抱かれて幸せか、良牙?」

「テメェなぁ~」

「ま、待て乱馬。動くな!」

 

 

俺の挑発に乱馬が立ち上がろうとするが、ロープで動けない為に良牙の上でモゾモゾと動くしか出来ない。良牙は乱馬とはいえど今は女の体で、その胸に顔が当たって動揺している。更にモゾモゾと動くから女乱馬の柔らかい体は思春期男子には刺激的だろう。

 

 

「な、なんと……」

「乱馬君と良牙君を二人同時にあしらうなんて……」

 

 

縁側でパンダから戻った玄馬さんと早雲さんが驚いていた。そりゃそうか、原作でもほぼ負け無しのふたりだったからな。その強さを知ってれば二人同時に負けるなんて思う筈もない。

俺はそんな事を思いながら、玄馬さんがパンダに戻る時に使ったであろうヤカンを借りると、乱馬と良牙に歩み寄る。乱馬は良牙からロープを外してもらっていた様だが、良牙は乱馬とはいえど女の体に触るのに照れているのか顔が赤くなっていた。

 

 

「そら、お湯だ」

「え、どわちちちち!?」

 

 

俺がヤカンからお湯を注ぐと女乱馬は男に戻ったがお湯が熱かったのか、のたうち回っていた。

 

 

「テ、テメェ……」

「俺の怒りはこんなもんじゃないぞ。覚悟しろ……」

「止めるネ、ムース!」

 

 

乱馬は俺を睨み付けてくるが俺の怒りは収まらない。乱馬や良牙を馬鹿にした行動を取ったが俺の心は全然晴れなかった。やっぱボコボコに叩きのめさないとダメかな?俺はそんな事を思いながら乱馬を殴り飛ばそうとギリギリと拳に力を込めた。

しかし俺が拳を握りしめると同時にシャンプーの制止が掛かった。振り返ると心配そうな顔をしたシャンプーが。そっか……乱馬が心配なんだよな。やっぱ原作通りでシャンプーは乱馬に惚れて……

 

 

「ムース、もう乱馬と戦う必要無い。女傑族の掟を覆す切っ掛け、あかねと見つけたネ!」

「え……どういう事だ?」

 

 

シャンプーは俺に駆け寄ると俺に抱き付いてきた。待て、どうなってるんだ?シャンプーは乱馬に惚れたんじゃ?

 

 

「だから、もう戦わないで……辛そうな顔見たくないネ」

「そうよ、それに……ほら」

「へ……痛だだだ!?」

 

 

シャンプーが抱き付いてきた事に動揺してると、あかねも俺の側に歩み寄ってきていた。右手を引っ張られるが。その瞬間、激しい痛みが走った。

 

 

「あ、あれ……なんで……」

「気付いてなかったのね。こんなに血が出るまで拳を力一杯握ってたのに」

 

 

自身の掌を見ると血で染まっていた。まさか、さっき乱馬を殴ろうと力を込めた時に?

 

 

「ムース、私の為に怒ってくれたのだな、大歓喜!」

「へ、え、あれ?」

「ほら、シャンプーから話があるのよ。手の治療もあるから此方にきなよ」

「あ、あの……ちょっと?」

 

 

シャンプーは嬉しそうに、あかねは羨ましそうにしながら俺の手を左右から引っ張る。俺は困惑したままシャンプーとあかねに手を引かれて天道家の居間に連れ込まれた。嬉しそうにしている女子二人に対して、俺、らんま、良牙、玄馬さん、早雲さんは理解が追い付かずポカンとしていた。

 

 

マジで何があったの?

シャンプーは凄く嬉しそう……と言うか浮かれてるし、あかねはシャンプーと妙に仲良くなってるし。

もしかして……原作と変わってきてる?

 

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