なんやかんやあって日本に到着。風林町に到着して猫飯店を目指していた。
「シャンプー姉様、あれはなんですか?」
「あれは……」
リンスは初の日本で興奮してるのか、道行く先々で気になった物をシャンプーに聞いていた。
「ホッホッホッ……初々しいのぅ」
「楽しそうだな……婆さん」
俺は婆さんの隣で荷物を担いで歩いているのだが……
「なんじゃムース。何が不満なんじゃ?」
「女の姿にされて歩かされりゃ不満だっての」
そう……俺は日本に到着するなり、婆さんに水を掛けられて女にさせられていた。なんか慣れないんだよな。
「暫くは、その変身体質で過ごさねばならんのじゃ、少しは慣れておかんとな」
「慣れたくないけど慣れなきゃなんだな……」
どうもジロジロと見られてる様な気がするんだが……
「ホッホッホッ……美人じゃからのぅ」
「ムース兄様、美人ですもの」
「私と並ぶ美人ネ」
「からかうなよ」
俺と婆さんの後ろを歩いていたシャンプーとリンスが追い付いて会話に参加する。男が美人と言われても嬉しくないってのに。
話をしていると猫飯店に到着。店には既に看板も出ており、アニメで見た店構えと同様だった。
「凄いです、お婆様!」
「立派なお店ネ」
「そうじゃろう、そうじゃろう」
リンスやシャンプーが立派な店構えに驚き、婆さんが得意気になっている。実際、いつの間に建てたと言いたくなるが立派な店構えだ。村に居た時からちょくちょく色んな所に連絡してたみたいだけど、下準備はさせていたんだな。何処にどれだけの繋がりを持ってるんだろう、この妖怪婆さんは。
「店の準備は来週からとして先に引っ越し作業を進めるか」
「ご近所への挨拶回りとかもだな」
「あ、だったら私、あかねの所に行ってくるネ」
「私もシャンプー姉様に同伴します!」
ご近所への挨拶の話をしたら、シャンプーはそわそわした様子であかねの所へ行こうとしていた。本当に親友みたいになっとるな。
「天道家に行くなら皆で行くとしよう……これから長い付き合いになるからの」
「………はーい」
婆さんの言葉に不満顔のシャンプー。初めての友達だから早く会いたいんだろう。………少し妬けるな、ちくせう。
「とりあえず今日明日の所は引っ越し作業を完了し、明後日に天道家に挨拶に行く予定じゃな。リンスの小学校への手続きもせねばならん」
「あう……小学校とかドキドキです」
「大丈夫だよ、リンスは可愛いから人気者になれるさ」
婆さんの発言にリンスは不安そうな顔になるが、安心させる為にも頭を撫でてやるとリンスは頬を染めながらも笑顔になった。天使の笑みだわ、リンスちゃん。
「なんかムースの方がリンスの姉みたいネ」
「女扱いは勘弁してくれ。と言うか猫飯店に到着したんだし、俺は男に戻るぞ」
シャンプーにジト目で睨まれたが女扱いは嫌だってのに……さっさっと男に戻ろう。
◆◇◆◇
この二日間の間に引っ越し作業を完了し、天道道場を目指していた。引っ越し蕎麦としてラーメンを岡持ちに入れて四人出歩いている。因にだが俺はちゃんと男の状態である。
「男の方の乱馬さんに会うの初めてです」
「また会おうとは言ったけどまさか、こんなに早くになるとは思わなかったな」
本当にこんなに早くとは思わなかったよ。原作じゃムースの登場はもう少し後で同時に挨拶には行かなかったから。
「あかねにも私とムースが許嫁になった報告が出来るネ」
「はは……俺とシャンプー。乱馬とあかねで随分と似た関係になっちまったな」
シャンプーが俺の腕にスルッと抱き付いてくる。岡持ち持ってて危ないと思ったけど悪い気は……いや、寧ろ嬉しいんだけどね。
でも、本当に似た関係になった。許嫁が出来た事や娘溺泉に落ちた事とかも含めて。
「ふむ……乱馬はムースよりも先に娘溺泉に落ちて既に女になる体質に慣れておる筈じゃのぅ」
天道道場に向かう際の婆さんの一言が妙に印象的だった。なんか嫌な予感がしてきたが大丈夫だろうか?