ムース1/2   作:残月

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究極のエロ妖怪との接触

 

 

人間とは慣れる生き物なのだ。

どんなに大変なトレーニングでも続ければ日常となる。

どんなにツラい思いをしても時間が経てば忘れる。

 

 

 

 

でも……これは未だに慣れない。

 

 

 

 

「よ、お嬢さん達可愛いね。オマケしちゃおう!」

「大歓喜!オジさん、太っ腹ネ」

「……ありがとーございます」

 

 

店の親父に商品をオマケしてもらったシャンプーと俺。オマケしてもらったのは嬉しいが俺の心中は穏やかではない。そう……俺は今、女の状態で買い物をしているのだ。

 

これは初めての経験ではなく、今まで何度も行ってきた事だ。基本的に猫飯店の食材などは業者や婆さんの知り合いの物売り等から買うのだが、時折、商店街で買い物もする。その際に俺は女の姿である事を婆さんやシャンプー、リンスから強要される。何故なら、買い物の時にオマケしてくれる確率が高いからである。婆さん曰く、「女の武器を最大限に使うのも女傑族の女の強さよ」と言われたが、俺は男です。

 

 

「ムース。いい加減、慣れるネ」

「慣れたら色々と終わると思ってんだよ」

 

 

シャンプーと一緒に商店街を歩きながら会話するが、女の身はどうにも落ち着かない。しかも買い物をする為に俺はいつもの服から黒のタートルネック、ジーンズに着替えている。シャンプーやリンスはもっと可愛い服やスカートを穿かせてみたいと言っていたが、そっちは断固拒否する。

 

 

「早く帰ろう。雨が降りそうな天気になってきた」

「あいや、本当ネ」

 

 

雨が降りそうなのもあるがさっさっと男に戻りたいんだよ。なんて思ってたら本当に雨が降ってきた。

 

 

「あ、ヤバいな。ほら、シャンプー傘を」

「ダメよ。私が使ったらムースの傘がなくなるネ」

 

 

俺は懐から折り畳みの傘を出すとシャンプーに差し出す。俺は既に変身してる状態だけど、シャンプーは雨を浴びると変身してしまうからシャンプーが使った方が良い。

 

 

「俺は大丈夫だからシャンプーが使って……うひぃ!?」

「ムース!?」

 

 

シャンプーに傘を渡そうとした瞬間、何者かにケツを触られた。その触り方に背筋が寒くなり鳥肌が立った。振り返ると小さな影が素早く物陰に消えていった。

 

 

「にゃー、にゃー」

「嘗て無い程に悪寒が走った……なんだったんだ?」

 

 

今まで生きた中で一番の悪寒だったと思う。ま、まさか……俺がある意味一番懸念していた事態が始まったのでは……俺は傘を差すのが間に合わず、猫になったシャンプーを抱きながら、一抹の不安を胸に猫飯店に帰る事にした。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

次の日。俺の予想は的中していたらしい。リンスを小学校へと送っていく最中、女性の悲鳴が聞こえたのでそちらに視線を移すと、婆さんと同じサイズの爺さんが道行く女子高生を襲っていた。間違いない……八宝斎だ。究極のエロ妖怪。となると昨日の悪寒の正体は奴か。今の俺の体質を考えると、あまり関わりたくないな。

 

 

「あの……ムース兄様、あのお爺さんが……」

「見ちゃいけません」

 

 

俺はリンスの目に八宝斎を映してはならんと、足早に小学校へリンスを送り届けようと思ったら、八宝斎が目の前に立っていた。

 

 

「なんじゃ……昨日のお姉ちゃんかと思ったが違うみたいじゃのう」

「そりゃ残念だったな。俺はこの子を送らなきゃならないから失礼するぞ」

「あ、あの……さようなら」

 

 

全然気づかなかった……気配を消して俺の前に現れるとは。しかも発言から、昨日、俺のケツを触ったのはコイツで確定した。昨日と違って男の状態の俺を見て女の俺とは別人だと思ったらしく、がっかりしていた。原作の乱馬の気持ちが痛い程分かる。リンスが行儀良く爺さんに頭を下げたが、そんな必要ありません。

 

 

「おお、スイート!数年後には更なる美少女になると見た!」

「リンス、行くぞ。この爺さんには関わるな!」

 

 

俺はリンスを抱き抱えるとダッシュで小学校へと送り届けた。リンスにはあの爺さんに関わらないようにとしっかりと言い聞かせておいた。

 

 

後に聞いた話だが、八宝斎は原作通り天道家に居座ったらしく、乱馬が愚痴っていた。

あの爺さんをどうにかしないと今後の生活に確実に支障をきたすな。

 




今回のムースの服装は『fate hollow ataraxia』 ライダー私服verになります。

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