ムース1/2   作:残月

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偽装道場破りの依頼①

 

 

 

 

早雲さんと玄馬さんに頼まれ事をされた次の日。二人には猫飯店に来て貰って詳しい話を聞く事に。

 

 

「で、何なんですか?道場破りをしてくれだなんて」

「うむ……乱馬とあかね君の仲をもっと進展させたいのだが」

「あの二人は素直にならなくてね……そこで考えたんだ。天道道場の危機となれば二人は協力する筈。だが、我々では正体がバレる可能性が高い」

 

 

俺の質問に玄馬さんが答え、早雲さんが話を繋げる。なるほど……確か原作でもあった流れだ。

天道道場の危機を演出した玄馬と早雲。道場破りが来るとでっち上げの話をしたのだが、本物の道場破りが現れてしまう。しかも、肝心の乱馬はシャンプーが持っている『即席男溺泉』を貰う交換条件にシャンプーとデートに行ってしまい、あかねが一人で道場破りと戦う羽目になる。しかし、あかねの事が気掛かりでデートに集中できない乱馬はあかねの手助けに参上し、道場破りと対峙する。シャンプーはデートを中断された事とあかねの事を気に掛けている乱馬に嫉妬して道場破りと結託し、即席男溺泉の袋を道場破りに貼り付ける。これで道場破りを倒せば即席男溺泉が手に入ると喜んだ乱馬だが、道場破りに貼り付けられた即席男溺泉には爆竹がセットされてあり、道場破りを倒すと即席男溺泉が手に入らないといった事態になった。が、乱馬はそれを知らずに道場破りを倒してしまう。更にシャンプーとデートをしていた事に不満爆発していたあかねだが、乱馬はそんなあかねの態度にシャンプーが持っていた最後の即席男溺泉を破り捨ててしまう。自分を助けに来た乱馬に不満を露にした上に最後の即席男溺泉を破り捨てさせたのは自分だと、あかねは涙を流す。しかし、それは乱馬の悪知恵で最後の即席男溺泉は別の袋とすり替えていたのだ。結局、その事がバレた乱馬はあかねにぶっ飛ばされるが二人の仲は少しだけ進展し、シャンプーは乱馬とのデートを楽しんだ。そして即席男溺泉で男に戻った乱馬と玄馬だったが。この即席男溺泉は一度しか効かないインチキ商品で結局元の体には戻れなかった……とまあ、こんな感じの話だったな。だが、この話を俺が受けるには少々問題がある。

 

 

「仮に変装したとしても直ぐにバレますって。乱馬とあかねとは良く会うんだし」

「だが、我々じゃもっと簡単に正体がバレちゃうからねぇ」

 

 

そう、原作のムースと違って俺は天道道場によく遊びに行くので、ちゃちな変装したとしてもバレる確率が非常に高いのだ。らんまの世界観なら眼鏡一つで変装可能だが、生憎と俺は普段から眼鏡だから変装のしようもないのだ。

 

 

「と言う訳なんで俺が道場破りってのは無理が……」

「面白そうじゃの。やってみるんじゃムースよ」

 

 

俺が道場破りを断ろうとしたら婆さんが会話に参加してきた。しかも俺に道場破りをしろとは何事?

 

 

「ムースよ、これはお主の修行にもなる。見事、道場破りをしてみせい」

「だから、俺が変装した所で正体がバレたんじゃ意味が……ぷわっ!?」

 

 

婆さんに正体を隠したまま道場破りをするのは無理だと言おうとしたら、婆さんに水を掛けられた。水を掛けられた俺は女に変身してしまう。

 

 

「何すんだ、婆さ……うぎゅ!?」

「これでよし」

 

 

抗議の声を上げようとした瞬間、喉を指で突かれた。不意打ち気味に刺さった指は俺の意識を一瞬飛ばす。

 

 

「何すんだ、このクソ婆……あ、あれ?」

「な、なんと!?」

「声が変わった?!」

「声帯をちょいと弄ったんじゃよ。さて、ムースよ。後はコンタクトレンズにして、服を変え、化粧をすれば別人になれるのぅ」

 

 

俺は自分の声に違和感を感じ、玄馬さんと早雲さんは驚いている。そりゃそうだ、女になった時の俺の声とは更に違う声になっていたのだから。そんな俺を尻目に婆さんは何処から出したのか、様々な女物の中華服に化粧品の数々を揃えていた。

 

 

「お、おい婆さん。まさかとは思うけど……」

「ムースとバレなきゃ良いのじゃろう?」

 

 

ニヤリと笑った婆さんに俺は即座に店の入口から逃げようとしたが、玄馬さんや早雲さんに取り押さえられた。

 

 

「後生だムース君!」

「見事、道場破りを果たしてくれ!」

「だぁぁぁぁぁっ!アンタ等は乱馬とあかねの仲を進展させる望みがあるんだろうが俺には絶望しかないだろうが!」

 

 

逃げようとする俺を玄馬さんや早雲さんはしがみついてくる。めちゃくちゃ必死なのか暴れてもびくともしない。

 

 

「さぁて……可愛くしてやろうかの」

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

ニヤニヤと笑みを浮かべた婆さんがジワジワと俺に迫る。その手には女物の服と化粧道具が握られていた。逃げられないと悟った俺の口からは女の悲鳴が出ていた。

 


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