ムース1/2   作:残月

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シャンプーの口調って難しい……


ムースの日記②とシャンプー

 

 

 

□月×日

 

ムースになってから二年が経過した。

婆さんとの修行も気絶した日からは厳しさが軟化した。正直、助かった。あのペースで修行してたら強くなる前に死んでたわ。

あの日からシャンプーの態度も少し変わった気がする。それまではツンケンとした態度だったけど少し優しくなった気がする。

 

 

□月◯日

 

親父が仕事で隣村に行くと言うので同伴した。隣村に行ったらエラく怯えた様子で迎え入れられた。理由を聞いたら女傑族に逆らったら大変な目に遭うと言われた。どんだけ近隣に迷惑を掛けてたんだよ。

 

後、最近背が伸びた。少し前までシャンプーとそう変わらない高さだったけど少し追い抜いた。

 

 

 

□月□日

 

婆さんに先日の話をしたら当然だと言われた。女傑族は戦闘民族であると同時に古代中国の武具や秘宝を取り扱う一族なのだと言う。秘宝の中には呪いのアクセサリーや武器が有るのだと言う。

そう言えば原作でも反転宝珠とかあったっけ。あれなんか明らかに呪いのアクセサリーだし。

そんな物を管理してるから余所者を村の中に引き入れるのを拒み、他所の村へと交流を控えているらしい。

閉鎖的な村の理由は此処にあったか。

 

俺が背が高くなった事が悔しいのかシャンプーにジト目で睨まれたので頭を撫でたらボディブローを貰った。解せぬ。

 

 

×月◯日

 

先日の話の続きになるが女傑族は他の村や部族の呪われた武器やアクセサリーを回収、管理していたらしい。

中には土地も含まれていた。先祖代々からその土地に呪いをかけていた一族が居たらしく、その一族を成敗した後に現地住民を説得して立ち退きをしてもらったとか……それって要は地上げなのでは?

 

 

×月△日

 

女傑族の閉鎖的な理由は理解したけど、このままじゃイカンと痛感する。日々の修行で強くなる反面、閉鎖的な村は社会から取り残されてるのを実感する。

特に親父の仕事で女傑族の村から離れると、この村が退廃的と思えてしまうのだ。

因にだが親父の仕事は村で育てた野菜を村の外へと売りに行く事。俺はそれに付いていくのだが文明の利器に触れると村の生活が虚しく思える。日本で生まれ育ち、スマホやゲーム三昧だった身としてはツラいのよ今の生活。いや、今の生活が嫌いって訳じゃないけどね。

 

シャンプーが可愛くてヤバい。遊んでいたら転んで膝を怪我したので傷の手当てをしてから、おんぶして帰ったら途中で寝てしまった。

背中に伝わる体温と寝息が俺の理性を奪う。

もう一度言うシャンプー可愛くてヤバい。

 

 

 

 

 

◆◇sideシャンプー◆◇

 

 

最初は私に纏わり付く鬱陶しい奴だった。

弱い癖に私を嫁にすると叫んでいた情けない奴。でも二年前のあの日。私はムースに負けた。武道大会の決勝戦で戦った私達だが私は負けた。反撃された時は悔しくて反撃したが、ムースのカウンターを食らった時に決着は付いていた。その後、ムースと縺れ合って気絶してしまったがママが言うには私はムースに勝ったと言っていた。そう言えば大丈夫と念を押されて。

家から出ると大人たちは口々に私とムースのどちらが勝ったかを話し合っていた。私達の意見を聞かずに勝手アル……むしゃくしゃしてたらムースはのんびりと木陰で休んでた。

 

 

「もう修行サボってるか。軟弱ネ」

「一区切りついたから休んでるんだよ。サボってる訳じゃないって」

 

 

ムースは私の方に視線を移すと気の抜けた笑みを浮かべていた。その笑みがパパに少し似ていて何故かイラッと来たネ。

私はムースの隣に座る。

 

 

「いいか、私と引き分けた奴が軟弱だと私が困るネ」

「アレはまだ勝ち負けが決まってないと思うんだけどなー……親父たちも連日話し合いをしてるみたいだし」

 

 

私はムースに話し掛ける。あの勝負は私の勝ちと主張するべきだとママが言っていたから。でもムースは村の大人達と違って困った風に頬を掻いて苦笑いしてた。

そして其処で会話が途切れるとムースは私の顔をジッと見てた。何を考えてるか分からないネ。目は瓶底眼鏡で窺えないアル。

 

 

「何、私を見つめてるか」

「ん、ちょっと考え事」

 

 

何も言わずにジッと見つめられるのも癪だから睨んだのだがムースは考え事と答えた。

 

 

「ふん、そうやってボーッとしてるがいいネ。次は私が勝つのだから」

「うん、気を付けるよ」

 

 

私が皮肉を込めるとムースは先程と同じ様に気の抜けた笑みを浮かべていた。なんかイラッとするアル。

 

 

ムースにイラッとする日が続く。最近では遊んでいてもムースに勝てない。トランプや花札でもムースはスゴく強かった。それどころか村の外で手に入れたというゲームをしても勝てなかった。私はそれにイライラし、ムースに殴り掛かるが軽くあしらわれたヨ。

 

 

そんなある日、ムースは曾バアちゃんから修行を受けていた。曾バアちゃんは村で一番の強者で、曾バアちゃんの修行は余程の才覚を持たねば受けられない。つまりムースは曾バアちゃんに認められる程の実力?なんかモヤモヤするネ。

 

 

 

最近、ムースと遊んでないネ。ムース、曾バアちゃんと修行ばかりネ……少し寂し……いやいや、そんな事、無いネ!

 

 

ムースが修行中に倒れたと聞いてサアッと血の気が引いた。なんで、そんな事に!?聞いたら曾バアちゃんが修行をさせ過ぎたと言ってたネ。そんなになるまで修行頑張ったのカ!?

ムースの家に行ったらムースは布団の中でスヤスヤ寝てた。心配して損したね。でも良く見たら体や顔には細かい傷が沢山有った。

 

 

「何を寝てるか……早く治さないと愛想尽かすぞ、ムース」

 

 

私はムースの頬を引っ張る。こんなになるまで修行するなんて何考えてるか。私を放ったらかしにして。ムースの頬を引っ張っていたら曾バアちゃんに叱られた。ムースが起きないから私が叱られたね。

 

 

ムースの見舞いを終えてから私は曾バアちゃんに問い掛ける事にした。

 

 

「曾婆ちゃん……ムース、大丈夫アルか?」

「うむ……過労と怪我で熱を出しておるからの。暫くは安静にせねばなるまい」

 

 

曾バアちゃんの言葉にホッとする。そしたら曾バアちゃんは今後の修行は無理をさせず、シャンプーとの時間を作らせると言っていた。やた、またムースと遊べるネ。

怪我が治ったら仕方ないから少しだけ優しくしてやるネ。

 

 

 

最近、ムースの背が伸びた。少し前まで同じくらいだったのに悔しいアル。そんな事を思っていたらムースは私の頭を撫でていた。頭にキたので中段突きを叩き込んだ。

 

 

ある日、外でムースと遊んでたら私は転んで膝を擦りむいてしまた。痛くて立てないと思てたらムースは袖から救急箱を取り出したかと思うとテキパキと処置をすませる。暗器の使い道、間違えてないカ?

その後、私はムースに背負われて家に帰った。途中で寝てしまったらしく気が付いたら私の部屋だった。

 

その話を曾バアちゃんは楽しそうに私に語った。ムースが頼りになるとか強いとか。ママはそれに反論してたけど……私、ムースの背で寝てたのだな。そう思うと顔が熱い……風邪でも引いてしまったかな?

 

 


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