ムース1/2   作:残月

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和風男溺泉を探せ⑤

 

 

 

八宝斎の爺さんに赤こけ壺を奪われた翌日。赤こけ壺を乱馬に任せた俺は店の厨房である物を探していた。

なんで乱馬に赤こけ壺を任せたかと言えば、爺さんの所在は基本的に天道道場だからだ。赤こけ壺を奪うには、やはり同居している乱馬の方が都合が良い。まあ、アニメだと普通に乱馬が赤こけ壺を取り返すからなのだが。

そして赤こけ壺を乱馬に任せた俺が店の厨房で探し物をしているのは、黄こけ壺探しだ。アニメだと赤こけ壺の表面に描かれた地図が示す黄こけ壺の在り処はなんと猫飯店の場所。店の改築の際に出てきた壺が黄こけ壺だったというオチだった。思い返すと俺は触れてなかったが婆さんが幾つかの壺を厨房の奥に置いていたのを思い出した。「漬物やキムチを浸けとく壺じゃ。その内、使うかの」なんて言っていた壺が……あった。

 

 

「やっぱり……黄こけ壺だ」

 

 

奥に片付けられていた壺を引っ張り出すと、出てきたのは黄こけ壺だった。青こけ壺と赤こけ壺と同じ模様と文字で描かれて黄色の壺だから間違いなさそうだ。

 

 

「婆さん、この壺って……」

「なんじゃ、その壺は猫飯店の改築の時に出てきた壺じゃぞ。あの時は気づかなんだが、これは黄こけ壺じゃのう」

 

 

婆さんに黄こけ壺を見せるとビンゴだった。

 

 

「やっぱりそうか。前に漬物とかキムチを浸けるって言ってたのを思い出して店の奥から引っ張り出してきたんだ」

「そう言えばそうじゃったな。すっかり忘れておったわ。となると乱馬が赤こけ壺を取り返そうと無駄になるかのぅ」

 

 

俺の発言と壺を見ながら婆さんは笑うが、話はこれで終わらないのを知っている身としては苦笑いをするしかない。

 

 

「無駄になるかは兎も角。黄こけ壺を見てくれないか?先に調べても損はないだろうからさ」

「そうじゃの……ふむふむ……」

 

 

婆さんに黄こけ壺の解読を頼むと俺は暇になる。取り敢えず乱馬が赤こけ壺を持ってくるのと婆さんの黄こけ壺解読が終わるまで片付けをしておこう。黄こけ壺探しで倉庫が荒れた状態だし。それと……弁当でも作るか。これから山登りになるんだし。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「やったぜ、ムース!赤こけ壺を取り返したぞ!」

「おー、お疲れさん。こっちの準備は終わってるぞ」

 

 

あれから一時間程が経過した頃に乱馬が赤こけ壺を持って猫飯店に駆け込んできた。一緒にあかねと良牙も来ていた。俺はと言えば作った料理を弁当箱に詰めていた。

 

 

「どうしたの、これ?」

「凄い量だな」

 

 

あかねと乱馬が俺の作った料理を覗き込んで来る。こらこらつまみ食いをしようとするんじゃない。

 

 

「乱馬が赤こけ壺を取り返してる間に黄こけ壺を見付けてな。んで、暗号を解読したら弁当が必要になりそうだったんで準備してたんだわ」

「…………へ、黄こけ壺はもう有るのか?」

 

 

俺の発言に乱馬、あかね、良牙はポカンとした表情になる。うん、まあ、そうだよね。

 

 

「前に店の奥に仕舞っていた壷が赤こけ壺と青こけ壺に似てたのを思い出してな。引っ張り出したらビンゴだったって訳だ」

「お、俺の苦労って……」

「苦労したのは俺だろうが!」

 

 

俺が笑いながら話すと乱馬がガックリと肩を落とす。すると乱馬の様子を見た良牙が乱馬にツッコミを入れた。

思い返してみると、アニメだと八宝斎の爺さんから壺を取り返す為に乱馬はPちゃんに下着を被せて、そっちに注意が向いている間に赤こけ壺を奪う……だったな。

 

 

「良牙が苦労したって何したアルか?」

「何をしたんですか良牙さん?」

「あ、えと……それは……」

 

 

シャンプーとリンスに聞かれて顔を赤くして黙る良牙。これはビンゴだな。お前は乱馬にもっと酷いことをしてるんだから、もう少し苦労しろ。

 

 

「そんな事より、黄こけ壺の暗号はなんだったんだ!?」

「三つ子岩に三つ壺、捧げて一番星が輝く時、和風男溺泉が涌き出る……って暗号だったんだ。んで、調べたら町外れの山に三つ子岩ってのがあるから、其処だろうと判断した」

「あ、三つ子岩なら知ってるわ!小学校の時に遠足で三つ子岩の近くに行ったわ!」

 

 

乱馬が和風男溺泉について話を促すので、俺は婆さんから教えて貰った暗号を説明すると、あかねが昔、其処に行ったと言う。これで準備は整ったな。

 

 

「ま、と言う訳だ。後は三つの壺を持って三つ子岩まで行けば和風男溺泉に巡り会えるって事だ。距離が距離だから弁当も用意したし出発するか」

 

 

話をしながら料理を弁当に詰めていた俺だが作業も終わり、弁当箱の蓋を閉める。これでよしっと。

 

 

「ホッホッホッ。ピクニックみたいじゃの」

「リンスも小学校で行くだろうから、下見になるな。さて、俺と乱馬と良牙で壺を持つからシャンプーとあかねは弁当箱を持っていってくれ」

 

 

婆さんの発言に俺はシャンプーとあかねに弁当箱を渡してから壺を持ち上げる。

ピクニックとは言うが……山に行ったら八宝斎の爺さんが待ち構えてるんだよなぁ……今までの分の借りも返したいし叩きのめしてやろう。そんな事を思いながら俺達は三つ子岩のある山へと向かい始めた。

 


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