ムース1/2   作:残月

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右京と乱馬の再会

 

 

 

◆◇side右京◆◇

 

 

ムースの兄さんと挨拶をした次の日。ウチは風林館高校に来ていた。勿論、転校する為と乱馬を探すためだった。教室に入ると昔の印象を残したまま大人になった乱馬を見付ける。

 

 

「えー、と言う訳で、転校生を紹介する」

「久遠寺右京、趣味はお好み焼きや。よろしゅう頼んまっせ、挨拶代わりや。お好み焼き乱れうち、食うてんか」

 

 

ウチは挨拶をした後に焼きたてのお好み焼きをクラスの皆さんに配り出す。生徒達は皆、お好み焼きを褒めてくれた。

 

 

「間違いない、昨日の奴よ」

「……ん、右京?」

 

 

教室の真ん中くらいの場所で乱馬の隣に座ってる女の子がウチを見て、何かを呟き乱馬は呆然とした表情でウチを見ていた。

 

 

「ねぇ乱馬、聞いてる?」

「……久しぶりやのう、早乙女乱馬!10年間、探したで、乱馬!」

 

 

ウチを見て呆然とした乱馬に女の子が話し掛けるけど、乱馬の視線はウチに釘付けだった。ウチは久しぶりの再会として昔焼いていた通りにソースで絵を描いて、お好み焼きを投げた。

 

 

「あー……そうだ、お好み焼きのウっちゃんじゃねーか、久しぶり!」

「そ、そうや……」

 

 

乱馬はお好み焼きを受け止めるとウチとの距離を詰める。いや、近い近い!息が掛かるくらいの距離に乱馬の顔がある。ウチは不覚にも少しドキドキした。

 

 

「乱馬、幼馴染なの?」

「ああ、昔、ちょっとの間だけな。ウっちゃんと出会ったのは幼い頃、親父と武者修行の旅に出ていた時だった。親切なウっちゃんはいつも俺にお好み焼きを奢ってくれたっけ」

 

 

女の子の発言に乱馬は昔の思い出を話してる。その顔は懐かしいものを思い出して楽しい事を語っていた顔だった。ムースの兄さんが言っていた通り、もしかしたら乱馬は……乱ちゃんは何も知らなかっただけなのではと思ってしまう。

 

 

「ウっちゃんは俺と勝負したらお好み焼きをくれる約束をしてたんだ。だから毎日勝負して、貰ってたんだ」

「それって強奪じゃない!」

 

 

そんな風に思っていたら乱ちゃんの説明は続く。

 

 

「違う、ウっちゃんは毎日、俺の為にお好み焼きにソースで描いた絵を用意してくれてたんだ」

「へー、戦いの中でも生まれた友情だな」

 

 

乱ちゃんの説明に周囲の目が暖かくなっていく……でも、重要な部分の説明がまだだった。

 

 

「なら……乱馬。別れの時を思い出してみーや」

「別れの時って……そりゃツラかったよ。ウっちゃんも泣きながら手を振って……」

 

 

ウチの言葉に昔を思い出した乱馬だがまだ足りない。もうちょっと気合いを入れて思い出さんかい!

 

 

「えーっと……あれ?何で親父が右京の親父の屋台を引いて俺はその屋根に乗ってるんだ?」

「泥棒じゃない!」

 

 

そう、乱馬と乱馬の親父はウチのお父ちゃんの屋台を盗んだ上にウチとの結婚の約束を破った。

 

 

「違ーう!あれは右京の親父に貰ったんだー!ついでに右京も貰って行く約束だったんだが……」

「んな、猫の子じゃあるまいし」

「……その約束を破って、あっさり捨てて行きくさって!」

 

 

すると親父の早乙女玄馬がいつの間にか教室に入ってきて叫んだ。クラスの一人がツッコミを入れて、ウチも当時の悔しい思い出が蘇り少し、涙目になってしまう。

 

 

「でも貴方、お父さんいたでしょ?」

「そーだよ。どうしてこんなクソ親父について行きたかったんだ?」

「乱馬、お前……訳を知らんのか!?」

 

 

乱馬の隣にいた女の子の発言に乱馬が乗ってくる。その発言にやはり乱ちゃんは何も知らなかったと確信する。だったら訳を話せば昔みたいに……乱ちゃんを好きになれるんやろうか。

 

 

「兎に角、置き去りにされたくらいで大騒ぎすんなよ。男らしくねーな」

 

 

そんなウチの考えを打ち砕いたのは乱ちゃんの発言だった。幼馴染みの許嫁になんやねん、その発言は。昔の事を謝る気も一切ない感じやし……ウチの怒りは頂点に達した。

 

 

「……お前の気持ちはようわかった」

 

 

そう言ってウチは、お好み焼きを焼いてソースに果たし状を書いて投げた。

 

 

「信じたウチが馬鹿やった。乱馬!お前は特に、究極のスペシャルモダンメニューで焼き入れたる!首洗うて待っとれよ!」

 

 

ウチは怒り心頭で教室を後にした。ムースの兄さんには乱馬を信じてみろと言われたけど、とてもそんな気にはなれなかった。

 

 

 

 

◆◇sideムース◆◇

 

 

 

 

「うーん、やっぱりこうなったか」

 

 

俺は校庭に生えてる木の上から教室を覗きながら呟いた。出前の依頼が風林館高校の近くだったから様子を見に来たけど、予想通りな結果になっていた。

そもそも乱馬は右京の事を男だと思っているから無神経な発言で右京を怒らせていた。

 

 

「果たし合いは放課後の筈だし、後で見に来るか」

 

 

そう言って木から飛び降りた俺だったが、その途中で右京を見付けてしまう。教室を飛び出した右京は廊下を歩いていたいたのだが……その目には涙を溜めて悔しそうな表情をしていた。

 

 

「今回はフォローすると乱馬の為にも右京の為にもならなそうだな」

 

 

原作同様に決闘させた方が遺恨が無くなりそうだしね。フォローするとすれば決闘の後の方が良さそうだ。

 


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