ムース1/2   作:残月

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ムースの日記③

 

 

 

×月◯日

 

ムースになってから五年が経過した。ムースになった時も思ったけど体がハイスペックなんだよな。視力を除いて。元の俺の体と比べても天と地の差がある。でなけりゃ婆さんの修行の途中でくたばってる。

 

 

×月△日

 

所謂『気功波』的な技を学ぼうとしたら出来なかった。これは俺自身の才能に問題があった。気功波的な技は才能に頼る部分が多く、出来る人間と出来ない人間に分かれるらしい。思えば原作のムースも暗器使いで気功波的な技は使っていなかった。

それを思うと獅子咆哮弾を会得した良牙や乱馬は才能が有ったんだな。

 

 

×月◇日

 

気功波は習得出来なかったけど人の気を感じる修行を始めた。この修行で『心眼』を会得すれば気配察知能力が格段に上がるらしい。心眼と言っても相手の心を読むとかの類いではなく、音や気配で相手の位置を認識したりするものだとか。オマケに俺は視力が異常に悪いから却って心眼を会得しやすいらしい。視力が悪い分、観の目を鍛えやすく攻撃範囲内を把握して制空圏を組みやすいらしい。

原作のムースもこれを会得してればもっと強かったのでは?と思う。シャンプーと間違えて他の人に抱きついたりしないだろうし。

 

 

×月□日

 

心眼の修行をしてるけど一向に進展しない。心を静めて気配に敏感にならなきゃいけないらしいけど、焦って上手くいかない。座禅してるけど、寧ろ色々と考えちゃうんだよな。

 

 

×月×日

 

シャンプーに妹が産まれた。おめでたいね、ひゃっほう……じゃねーよ!原作に居なかったわ、そんなキャラ!俺がムースになった事やシャンプーに負けなかった事といい、予想外のストーリーだよ。因にだがシャンプーの妹の名は『リンス』

何処までも整髪剤の名で攻めるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

心眼を会得すべく座禅を続けるが雑念が増してる気がする。目を閉じて座ってると心が静まるどころか考える事が増える。

なんで俺はムースになってしまったんだろう。

なんで俺はシャンプーに負けなかったんだろう。

なんでシャンプーに妹が出来たんだろう。

 

原作と違ってムース(俺)はシャンプーに負けなかったけど、原作が始まるとシャンプーは乱馬に惚れてしまうのだろうか……

 

そんな事ばかり考えてしまう。思えば原作のムースは一言で言えば可哀想なのだ。

初登場時は男乱馬と互角の実力で女らんま相手には圧倒する実力者(アニメだと女らんまに負けてたけど)

しかし、再登場した時から弱体化が続き、負けるシーンが増えた。

その後もギャグ要員としての側面が強くなり、乱馬と良牙の修行話はあってもムースのは無し。

良牙と同じライバルキャラだったのに、この差はいったい……

 

それにムース最大の悲劇はシャンプーの事だろう。女傑族の掟でシャンプーにはフラれてしまい、幼い頃から惚れていたシャンプーは同じく掟で乱馬に惚れてしまう。

 

そう考えるとムースって不憫と不遇が重なりあったキャラだったんだよな。

それを思うと……俺も原作のムースと同じ様な運命なのだろうか。俺自身もシャンプーに惚れていた。

原作が始まるとシャンプーは乱馬に惚れてしまうのだろうか……

 

 

「ムース、雑念が増しとるぞ」

「ムース、お昼ご飯持って来たネ」

 

 

悶々とした気持ちのまま座禅を続けていたのだが結構な時間が経過していたらしい。目を開けて眼鏡を掛けると婆さんとシャンプーが来ていた。シャンプーの手には岡持ちが。どうやらお昼ご飯を持ってきてくれたらしい。

 

 

「まだ心眼の会得には至っとらんらしいの」

「上手くいかないんだよなぁ……」

「焦りは禁物ネ……さ、食べるヨロシ」

 

 

呆れた様子の婆さんに苦笑いを浮かべるとシャンプーが岡持ちからラーメンを取り出して渡してくれる。

 

 

「ああ……ありがとう、シャンプー」

 

 

シャンプーからラーメンを受け取って礼を言う。俺は今、ちゃんと笑えているだろうか。

 


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